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吉本興業で35年!竹中イサオの“泣く子も笑う”処世術-Vol.20
お笑いの総本山、吉本興業のプロデューサー生活13,000日、5,000人の吉本芸人と渡り合った竹中イサオの処世術コラム。社内外、業界内外からの悩みや疑問、提案に対してボケとツッコミでビシビシ返していきまっせ!
竹中 功(たけなか いさお)
1959年大阪市生まれ、吉本興業で約35年間タレント養成やイベント・映画製作を担当。数々の謝罪会見をこなした「謝罪マスター」でもある。
単行本「よい謝罪 仕事の危機を乗り切るための謝る技術」(1,400円+税)、日経BP社より好評発売中!
相談:「いつも拝読してはゲンキをいただいています。今日は同じチームにいる同僚のことでご相談を差し上げました。この人とは2人で外にミーティングに出かける機会も少なくないのですが、会議の書類を忘れてくることは日常茶飯事。クライアントからの問い合わせの返信を忘れて、こちらに問い合わせがきたことも、少なくありません。部署が違うので、この人の上司に相談したこともあるのですが、上司もややあきらめ気味のようです。イサオさんなら、この人にどんな対応をされますか。明朗な解答をお待ちしております。」(アチャ子さんより)
なるほど、アチャ子さん、同僚の失敗屋さんに辟易してるんやね。
書類を忘れたり、返信が遅かったりするんか、あと時間を間違ったりもあるんちゃうかな?「ミスをもっと聞かせて」って言ったら、上司には報告もできないような逸話が山ほど出てくるんやろうね。私としてはそれを聞かせてもらって笑いたいところやけど、そんな気楽な状況やないようですね。
この同僚は悪意はないようやけど、そんなポカが多い人と一緒に働くとエネルギーが無駄に減るから辛いよね。
でも世話焼きと言われてもいいから、その同僚を何とかしてあげましょうよ!
たぶんそう考えてアチャ子さんも相談してくれてるんやと思うけど、その通り!
上司に言いつけて仕事を外させるっていうのが出来るかもしれへんけど、ここは「やさしさ」をもって接して、ミスが少なくなるようにアドバイスもして成長を目指しましょうや!
その同僚のレベルやスキルがアップしたら、結果一緒にいい仕事が出来るわけやから、つまり、あなたのプラスにもなりますしね。
ところでアチャ子さん、聞いていいかな?ひょっとして完璧主義者やない?
仕事では、自分にも相手にも高い水準を望んで、その通りに行かないと相手も自分も厳しく批判して反省を求めるタイプではないかな?
あるいは、完璧主義者と言っても、自分には甘いけど他人には厳しいタイプ・・・?
えっ、そんなタイプやないって?自分にも厳しいって?
これは失礼致しました!
もし完璧主義者だというなら、仲間のダメな部分や失敗も受け入れる懐がいるかもね?
それと、運が悪いという割り切りも必要やで。
そして、自分だけが特別「できる社員」と言えるとは限らへんということも、忘れたらアカン。
忘れ物とかミスが多い人って、反省はしてるやろうけど、どうしても忘れてしまうのが本人も悩みだったりするねん。本人も直したいのに何度も繰り返してしまうねん。
そんなわけで、ボクが上司なら、あの手この手で改善を手伝うかな!
ベタやけど具体的なその方法を並べてみるわ。
まず、ぼくは何でもメモを取る癖を勧めるわ。
実はボクはiPhoneのアプリ「リマインダー」を使ってるんよ。その字の如く「思い出させる」と言うアプリで、Siriに「コラム、2月10日入稿、リマインド」とか話しかけて登録してるねんけど、もう一方、手書きメモも大好きなんで併用してるよね。
まずリアルメモ帳の1枚に1項目だけを書き込んで、そしてその用件が済んだらポイとゴミ箱に捨てるのですわ。メールが来たり、電話で話したこと、思い付いたりした用事をどんどん書いていくのよね。たまには企画やアイデアも書いておくよ。「歯ブラシを買う」「車の税金をはらう」「週刊文春の次号を買う」「ダウンタウンの番組のビデオを撮る」「次のコラムはこういうネタを書こう」「こんな返礼品のふるさと納税があればええな」等など。リアルメモ帳に項目が増えるのも嬉しいし、1枚ずつ減っていくのも快感になるよ。
何なら同僚のメモ帳に、用件を書き込むのを手伝ってあげたらええかも。そのメモを一緒に見て、忘れもんとかがないように確認したげたらいいかも。書いただけではなく、ここは進行や終了の確認が重要やで。書きっぱなしでは意味がないからね。
ただ、せっかく用意したメモ帳を自宅に忘れてきたりメモ帳自体を無くしたりもするのが落とし穴で(笑)、そこの危機管理も必要やね。何ならメモやなくって、その人専用のホワイトボードでもデスクに置こうかな!“リマインダーボード”やね。アナログでええかも!
次に、別の対策案やけど、前にこのコラムでも書いたように、忘れもんの多い人はデスクの上の「整理整頓」ができてないことも多いねん。デスクの上がぐちゃぐちゃやから出かける時に持っていくものが目につきにくかったり、引き出しの中もぐちゃぐちゃで何が何だかわからなくなってるねん。やっぱり「整理整頓」は大事やで。
要るものと要らないものを分け、デスクの上は作業をするところやから、物置になっていないかもチェックやね。そこも手伝ってあげて欲しいな。
あとミスを減らす簡単な方法やねんけど、見つけたミスを責めたりすることだけではなく、その原因を解明して、同じことが起こらないように注意していくことがもっと大事やねん。
そしてその時は、ミスした人間が自分のミスと向き合うことは教えないとアカン。
質(たち)が悪いのは、自分のミスを認めなかったり気付かないことやねん。ミスと向き合い、反省して、次からそういうミスを犯さないように注意する力を付けささなアカンで。ここは踏ん張って教えてあげような!
そして、ミスを認めたらしっかりと反省して、「謝罪」することが大事。
そして、その人が「すいません」と言ったら、すぐに「いいよぉ」と許してあげよう。理解して受け入れてあげよう。
今日のコラムはこの「いいよぉ」がテーマやで!
この「謝罪」を受け入れる「いいよぉ」というセリフは、「吉本新喜劇」のアキ(本名:荒木良明。1969年生まれ。岸和田市出身。高校時代からの友人・ケンと「水玉れっぷう隊」を結成。2014年吉本新喜劇に入団しマイケル・ジャクソンのダンスなどで人気沸騰)のギャグで、いま関西の小学生の間でも大人気で、しかもコミュニケーションに大いに役立っているらしいんよ。
何とこのセリフのお陰で「いじめ」が減ってきたらしいよ!相手が「ごめんなさい」と言ったら、それをすぐに寛容に受け入れる「いいよぉ」のやり取りが、グッドなコミュニケーションになってきているらしいねん。
2015年10月25日の朝日新聞の読者の投書で見たんやけど、「吉本ギャグ 雰囲気いいよ~」と言うタイトルで、「今の時代、ささいな問題に親が介入してこじれることが多いですが、小学生の問題のほとんどはその場で謝れば済むことです。『いいよ~』ギャグのおかげで、お友達に『ごめんなさい』言える子が増えたように思います。」(抜粋)と書いてあったんよね。
私も昨年の初め、大阪のある市の小学校の校長会の講師で呼んでいただいた際に、校長先生方が「いいよぉ」を連発されていて、「子どもの中で『いいよぉ』が流行っていて、一度素直に謝れば『いいよったらいいよぉ』と吉本のギャグを言いながら相手の謝罪を受け入れてくれるようになったので、ケンカや意地の張り合いをしなくなったんです。」とおっしゃっていました。
ミスを指摘するのは簡単やけど、そうではなくて許すということが、このギャグによって簡単に行われるようになったんだそうです。
ちなみに、このギャグの誕生秘話はと言うと、吉本新喜劇の座長の辻本茂雄とのやり取りの中、アキが借金取り役、辻本がお爺さん役という設定で、反省もせず返済から逃げようとするお爺さんを、借金取りのアキが何度も脅したところ、お爺さんが突然、素直に「すいません!」と詫びたので、安堵の気持ちで「いいよぉ」と返したところ、客席の大爆笑が取れたので、そのままギャグとして使うようになったんだそうです。それからは、アキがチンピラ役をやろうが女性役をやろうが、相手に怒るだけ怒った末、謝られると突然やさしくなって、「いいよぉ」の一言で相手を許してしまうシーンは大爆笑のテッパン・ネタになっているんですね。
是非とも皆さんには、アキの出ている吉本新喜劇を見に行って生のこのギャグを見て、タイミングや声の出し方にも触れて欲しい と思ったりします。
(まずはyoutubeで「アキとシゲオ」「シゲオとアキコ」などで検索して見てみてください!)
ということで、同僚くんには、ミスが見つかったら責めるのでなく、次に同じミスを犯さないように原因を究明して、アドバイスしてあげような。そしてミスしたら正直に謝ることも教えてあげよう。あなたに対してだけやなくって、上司であっても、取引先の人であっても、ミスしたときには「ごめんなさい」を言うことをね。
そして謝った時には間髪入れず、そしてやさしく、「いいよぉ」と許してあげよう。
吉本ギャグで楽しくミスと付き合うのがええと思うよ。
同僚のミスと付き合うのは大変やろうけど、自分も完璧な人間ではないというところに気付くことは肝やで。
一回きりの人生、相手もミスも気持ちよく「いいよぉ」と受け入れて、褒めるところも探してあげたら!一緒に仕事するの楽しくなるで!