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週4日勤務が「法律」になった国々|4日勤務制度
海外のリモートワーク事情 / 働き方制度・法律

週4日勤務が「法律」になった国々

── ベルギー・アイスランド・UAEの実験から学べること

「週4日制なんて、まだまだ先の話では?」 そう思っている方に、少し驚いてほしいデータがあります。

ベルギーでは2022年10月、フルタイム労働者が週4日で働く権利が法律で認められました。
アイスランドでは2015年から4年間の政府主導実証実験を経て、現在は労働人口の86%が短縮勤務または短縮権を持っています。
UAEでは2022年1月から、公務員の勤務が週4.5日制に法定移行しました。

これは実験や構想の話ではなく、すでに「制度」として動いている現実です。 大企業を中心に出社回帰の動きが話題になる一方で、こうした制度改革が静かに進んでいる国もあります。
週4日勤務とリモートワークは、どちらも「どこで・いつ・どのように働くか」を問い直す動きです。

今回は3カ国の制度の中身を丁寧に見ながら、日本企業がリモートワークを含む柔軟な働き方を設計するうえで参考になる点を考えてみます。

ベルギー ── 「週4日勤務権」を法律にした国

制度の概要

2022年10月3日、ベルギー連邦政府は「労働協約(Labour Deal)」の一環として、週4日勤務を法律で認めました。
ポイントは「労働時間の総量は変わらない」という点です。
週38時間勤務の人が週4日制を選択した場合、1日あたり9.5時間働くことになります(会社協定があれば最大10時間)。
賃金は据え置き。
企業側は従業員の申請を拒否する場合、書面で理由を示す義務があります。
申請は6カ月単位(更新制)で、対象はホワイトカラー・ブルーカラーを問わず全フルタイム労働者。
また、同法では「つながらない権利(Right to Disconnect)」も同時に規定され、従業員20名以上の企業に義務づけられました。

リモートワークとの関係

ベルギーは2016年に「柔軟な働き方法(Wet flexibel werken)」を整備し、オランダと同様に「働く場所」の変更申請を認めています。
2023年時点でベルギーの在宅勤務経験者は46%に上り(4dayweek.io)、週4日制との組み合わせによって「いつ・どこで働くか」の両軸を従業員自身が設計しやすくなっています。

週4日制は単なる休日増ではありません。「何のために出社するか」を問い直すきっかけになっています。

参照元

・ベルギー連邦政府 Labour Deal: https://www.belgium.be/en/work/employment_legislation
・American Bar Association(法制度解説): https://www.americanbar.org/groups/labor_law/publications/labor_employment_law_news/spring-2023/belgium-introduces-4-day-work-week/
・在宅勤務率データ(4dayweek.io): https://4dayweek.io/country/belgium

アイスランド ── 「実証実験」が働き方の常識を変えた

制度の概要

2015〜2019年、アイスランド政府とレイキャビク市が主導し、約2,500名(労働人口の約1%)を対象に「短縮勤務週実験」を実施しました。
週40時間から35〜36時間へ削減し、賃金は維持。
対象は病院・保育園・行政機関など公共部門が中心でした。

結果は「overwhelming success(圧倒的な成功)」と評価されています(Autonomy+Alda、2021年)。
生産性は維持または向上。
バーンアウト・ストレス指標は大幅に改善しました。

この実験を受けて、複数の労働組合が使用者側と交渉を行い、現在はアイスランドの労働人口の約86%が「短縮勤務」または「その権利」を持っています。

2023年のGDP成長率はEU・OECD平均を上回る4.1%、失業率は3.6%。「短い労働時間が経済を損なわなかった」実績として注目されています。

参照元

・Autonomy+Alda 公式レポート「Going Public」: https://autonomy.work/portfolio/icelandsww/
・米国議会図書館 法律解説(FALQs): https://blogs.loc.gov/law/2022/01/falqs-the-icelandic-reduced-workweek-trial/

UAE ── 「週4.5日制」を政府が率先して動いた

制度の概要

2022年1月1日、UAEは連邦政府機関の勤務体系を「月〜木の8時間+金曜午前のみ(4.5日制)」に変更しました。
土・日が公式週末になり、それまでの「金〜土週末」から「土・日週末」へ移行しています。

目的は明確です。
「生産性向上・ワークライフバランスの改善・グローバルビジネスカレンダーとの整合」の3点。
金曜礼拝の時間を守りながら、世界の市場と時間軸を合わせるという実用的な判断でもあります。

なお、シャルジャ首長国ではさらに一歩進んで「月〜木の週4日制(土・日・金の3連休)」を公務員に導入。
同地区の調査では職員の満足度90%向上、精神的健康87%改善という結果が報告されています(シャルジャ統計コミュニティ開発局)。

リモートワークとの関係

民間部門への法的義務化はないものの、2021年施行の新労働法(Federal Decree Law No.33)では「フレキシブルワーカー」という働き方が明記され、在宅勤務・リモートワークへの柔軟性が法的に後押しされています。
ドバイ道路交通局などは「フレキシブルな勤務開始時間+一部在宅」を組み合わせることで交通渋滞の緩和にも効果が出ているとしています。

参照元

・UAE政府公式ポータル(勤務体制): https://u.ae/en/information-and-services/jobs/working-in-uae-government-sector/working-hours-in-the-public-sector
・新労働法(Federal Decree Law No.33 of 2021)解説: https://www.lexology.com/library/detail.aspx?g=2241bfc3-4a49-4fe8-8fa5-5e2874409019

3カ国比較:週4日制とリモートワークの設計思想

3カ国に共通するのは「働く時間・場所・ペースを、国が率先して設計し直した」という点です。
ベルギーは法律で権利を保障し、アイスランドは実験データで説得し、UAEは政府が自ら手本を見せました。
アプローチは違っても、方向は同じです。

項目 🇧🇪 ベルギー 🇮🇸 アイスランド 🇦🇪 UAE
制度の種類 週4日勤務権(法律) 週35〜36時間制(実証実験→労使協定) 週4.5日制(公務員法定)
施行年 2022年10月 2015〜2019年(実験) 2021年〜労使協定化 2022年1月
対象 民間・公共の全フルタイム労働者 公共部門(約2,500人→86%に拡大) 連邦政府公務員・学校・大学
総労働時間 変わらず(週38時間を4日に圧縮) 削減(40時間→35〜36時間) 変わらず(4日+金曜半日)
リモートワーク親和性 高い(2016年柔軟労働法と連動) 高い(公共部門から普及、在宅比率向上) 中(公共部門一部でリモート拡充)
公式URL belgianenterprise.be(掲載) autonomy.work レポート u.ae 公式政府ポータル

日本企業が参考にできる3つの視点

1. 「時間の圧縮」より「目的の再設計」

週4日制を導入して失敗する企業の多くは「同じ仕事を4日で」という圧縮思考に入ります。
アイスランドの実験が教えてくれるのは、「会議の削減・業務プロセスの見直し・役割の明確化」がセットで進んだからこそ生産性が落ちなかったという事実です。
リモートワークも同じ構造です。
「在宅でも同じ業務を」ではなく、「何のために誰とどこで働くか」を問い直すことが出発点になります。

2. 「権利として認める」という制度設計

ベルギーの週4日制は「認めてあげる」でなく「申請できる権利」です。
企業側に拒否理由の書面説明を義務づけたのは、「使う側が主役」ではなく「働く側が主役」という発想の転換です。
日本では2025年4月から改正育児・介護休業法が施行され、子育て世代へのテレワーク選択肢提供が努力義務になりました。
法の流れは少しずつ変わっています。

3. 「データで動く」という方法論

アイスランドは実証実験の結果を全国で共有し、労使双方が納得した上で変化を起こしました。
「生産性が下がる気がする」という感覚論ではなく、「実際に計測してみる」という方法論が普及を支えました。
リモートワークの導入・継続・調整においても、「なんとなく出社回帰」ではなく、自社のデータを見ながら判断する文化が問われています。

まとめ:週4日制は、問い直しの装置

「週4日制」という言葉だけを見ると、休暇増や福利厚生の話に聞こえます。
でも本質はそこではありません。
週5日・週40時間という枠組みは、工場労働が中心だった20世紀に設計されたものです。
知識労働・クリエイティブ労働・リモートワークが当たり前になった時代に、同じ枠組みをそのまま使い続ける必然性はありません。
3カ国の試みは、「どこで・いつ・どのように働くか」を問い直すための装置として機能しています。
週4日制を取り入れるかどうかは別として、その問い自体を自分たちの組織に持ち込んでみることが、今の日本企業に必要なことかもしれません。

「5日じゃないと仕事が回らない」のか、それとも「5日あるから仕事が5日分に膨らむ」のか。
どちらが自社の実態に近いか、一度チームで話し合ってみるのも悪くないと思います。

参照データ・URL一覧

※ 本記事の情報は執筆時点(2026年3月)のものです。
各国の法律・制度は変更される場合があります。

カテゴリ 情報源・タイトル URL
ベルギー政府 Belgium.be 公式 — 労働法・働き方改革 https://www.belgium.be/en/work/employment_legislation
ベルギー(法制度詳細) American Bar Association — Labour Deal解説(2023年) https://www.americanbar.org/groups/labor_law/publications/labor_employment_law_news/spring-2023/belgium-introduces-4-day-work-week/
ベルギー(在宅勤務率) 4dayweek.io — ベルギー在宅勤務データ https://4dayweek.io/country/belgium
アイスランド(公式レポート) Autonomy+Alda — Going Public: Iceland's Journey to a Shorter Working Week https://autonomy.work/portfolio/icelandsww/
アイスランド(法律解説) 米国議会図書館 — FALQs: Icelandic Reduced Workweek Trial https://blogs.loc.gov/law/2022/01/falqs-the-icelandic-reduced-workweek-trial/
アイスランド(経済成果) IT Pro — GDP成長・失業率・生産性に関する分析(2024年) https://www.itpro.com/business/business-strategy/icelands-four-day-working-week-trials-have-been-a-roaring-success-economic-growth-spiked-workers-were-happier-and-burnout-plummeted
UAE政府公式 u.ae — 公共部門の勤務時間(政府ポータル) https://u.ae/en/information-and-services/jobs/working-in-uae-government-sector/working-hours-in-the-public-sector
UAE(新労働法) Lexology — Federal Decree Law No.33 of 2021 解説 https://www.lexology.com/library/detail.aspx?g=2241bfc3-4a49-4fe8-8fa5-5e2874409019
日本(テレワーク実態) 国土交通省 — 令和6年度テレワーク人口実態調査(2025年) https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi03_hh_000165.html
日本(出社回帰調査) JILPT — テレワーク実施率の現状(2024年12月号) https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2024/12/top_02.html

影山綾子

影山綾子

\記事のエビデンスとしてイラストやグラフを転載OK/
・ライター、メディア、新聞社の強い味方
・在宅勤務に関する情報発信メディア:テレワークリモートワーク総合研究所
・年4回の市場調査
・ご要望に合わせて設問の用意可能
・運営:株式会社LASSIC(ラシック)
・イラスト:ねじまきデザイン製作所

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