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2017.11.07 事例紹介

感情解析研究開発事業の開発事例と可能性

【LASSIC感情医工学研究所レポート】Vol.7

LASSICが鳥取環境大学、鳥取医療センターと共同で設立した感情医工学研究所では、感情解析技術を産業分野に活かし、企業理念である「『らしく』の実現をサポートする」ことを目指し、実用化のための研究を行っています。

精神・心療内科の分野では、気分状態に不安を抱える患者が年々増加し、こころを良好な状態に導くメンタルヘルスケアが注目されています。また、日本人の生産性が諸外国に比べて低いことが課題となっている中、アンガーマネジメントなどの感情コントロールは生産性を向上させる効果があると注目されています。

今回は、現在までの感情医工学研究所の研究開発事例やプロダクト例をご紹介しながら、今後の感情解析技術の応用可能性についてご紹介します。

マルチモーダルトラッキング

まず、感情医工学研究所での研究開発のベースとなっている技術が、「マルチモーダルトラッキング」です。

観測可能な複数の生体情報(心拍、脈拍、血圧顔面温度,表情、音声、脳波、呼吸、眼球運動、発話内容など)や対話内容から総合的に感情を測定する技術で、さらに、その遷移履歴を活用して感情推定精度を向上させるための開発も行っています。


なお、生体情報を入力する技術領域では、ソリューションを持つ企業との業務提携等を行っています。

これまでのプロダクト群

現在までのトライアルプロダクトをご紹介します。

これらのプロダクトを軸に、感情解析技術の研究開発やソリューション企画などを行っています。

開発事例:笑顔トレーニング「スマイルアジャスター」

Smile Adjuster (スマイルアジャスター)は、見た目と声のトーンで自分の印象を確認したり、トレーニングしたりすることができるツールです。

例えば、営業先に向かう前に自分にとって100%に近い状態を確認・キープして、お客様と良い状態で対話するための準備に利用することができます。

SmileAdjusterイメージ

開発事例:感情TV会議システム「MeeTro」

「MeeTro」は、iPadを使ったテレビ会議システム(プロトタイプ)で、会議中の各拠点の感情状態をリアルタイムでモニタリングすることができ、会議終了後には白熱度や参加度を確認することができます。

これにより、感情状態に応じて会議の進め方を変更したり、白熱度や参加度を元に次回に向けた振り返りを行ったりすること等が可能です。

meetro

開発事例:感情分析型対話システム「喫煙先生」

「症状処方」という心理療法のロジックを活用し、喫煙中の機械対話を通じて、楽しく減煙することをサポートするアプリです。

喫煙先生イメージ

対話アルゴリズムプログラム「Everest」

精神科医が臨床で使用している認知行動療法の対話アルゴリズムを元に、文字情報からの感情推定を行った上で、その感情状態に応じて適切な応答を返すプログラムです。

自己認知を促すことで、感情状態の好転を支援します。

Everestイメージ

「Everest」について詳しくは、下記の記事をご覧ください。


開発事例:認知行動療法を応用した対話アプリ「iST」

認知行動療法のカウンセリング手法(前記のEverest)をエンジンに組み込んだスマホ対応チャットアプリで、振り返り機能があり、自分の気分の傾向を把握することができます。

istイメージ

開発事例:表情解析システム「Emotion Measure」

PC等のカメラからユーザの表情を解析し、リアルタイムにグラフ化するシステムです。

解析結果と作業タスク等を組み合わせて分析することで、組織の生産性向上に繋げることも可能です。

EmotionMeasureイメージ

表情解析結果のグラフ表示例


emotionmeasureイメージ2

カメラで撮影した映像からリアルタイムで表情解析を行う


emotionmeasureイメージ3

作業タスク別や複数人同時解析の表示例

 

検証事例:自然オフィス空間の効果検証

2017年夏に、鳥取県智頭町特産の杉の木を使った、「森林セラピー」が疑似体験できるオフィス空間『五感の森~chizu~』を鳥取本社社内に試験導入しました。

『五感の森~chizu~』イメージ

『五感の森~chizu~』

この『五感の森~chizu~』によって社員のストレスがどの程度解消されて、生産性の向上に寄与するか効果検証を行っていますが、そのための測定・検証にも感情解析技術を利用しています。

 

対話ロボットやIoT機器を用いた認知症治療の診断支援・負荷軽減サービスの研究開発に取り組んでいます

現在、新たなプロジェクトとして、対話ロボットやIoT機器を用いた認知症治療の診断支援や、医療スタッフの負荷を軽減するサービスの研究開発を行っています。

◯医師の処置判断の支援

対話機能を搭載したロボットやタブレット端末による患者との対話を通じて、認知力の確認や感情状態の分析を行い、それらの情報を医療機関に提供することによって、医師の処置判断を支援する。

◯スタッフの負荷軽減

加速度センサや位置センサを搭載したウェアラブルデバイスを通じて転倒検知や徘徊防止などの「見守り」を行い、医療スタッフの負荷軽減に繋げる。

医療支援イメージ

感情解析技術 応用範囲のイメージ

特定条件下での感情状態や、感情の時間的推移を測定することにより、個人や組織のパフォーマンスと感情状態との相関関係を把握したり、消費者の感情状態を分析することによって市場ニーズを理解するといった、広いビジネス領域に応用できる可能性があります。

応用イメージ

今後も感情医工学研究所の「感情×IT」にどうぞご期待ください。


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