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吉本興業で35年!竹中イサオの“泣く子も笑う”処世術-Vol.11
お笑いの総本山、吉本興業のプロデューサー生活13,000日、5,000人の吉本芸人と渡り合った竹中イサオの処世術コラム。社内外、業界内外からの悩みや疑問、提案に対してボケとツッコミでビシビシ返していきまっせ!
竹中 功(たけなか いさお)
1959年大阪市生まれ、吉本興業で約35年間タレント養成やイベント・映画製作を担当。数々の謝罪会見をこなした「謝罪マスター」でもある。
単行本「よい謝罪 仕事の危機を乗り切るための謝る技術」(1,400円+税)、日経BP社より好評発売中!
質問:「ピース綾部さん、英語が出来ないのにNYに行くそうですね。私も英語しゃべれないけど行きたいんです。そんなの甘いですか?」(しなもんさん)
ええね、ピース綾部くんのアメリカ行き!ボクも応援したいね!ボクもアメリカ大好き、ニューヨーク大好きやし!
何がええ言うても、街のサイズがええね!バスと地下鉄に乗ればほぼマンハッタンからブルックリン、クイーンズ辺りどこでもウロウロできるよ。マンハッタン島って東西4km、南北20kmやもん。そこに地下鉄とバスの交通網が敷かれてあるから移動は楽勝やで。
昨年は3ヶ月間ニューヨーク・ハーレムに住んでたし、今年も半月間、マンハッタンの40th,STに住んでたよ。
音楽のライブも芝居も映画もアートもファッションも溢れてる。公園も広くて楽しい、リスも走り回っとる。この1、2年でラーメン屋さんの数もめっちゃ増えたで!地元の人によると「寿司に次ぐ和食がラーメン。ヘルシーやねん!」とか?ヘルシーかどうかはボクは知らんけどね。
また地下鉄の駅ナカの踊りや歌、ギターやピアノの演奏などのパフォーマンスの腕前は上等やし、地下鉄Lラインの車内に突然現れ出るポールダンサーに1ドルのチップ渡すのもたまらんよ!
質問くれた「しなもんさん」はNYに何しに行きたいのかな?それを教えてよ!
10%以上かも?と言ったら言いすぎかも知れへんけど、英語を話せない人イッパイいてるよ、ニューヨークには。旅行者だけでなく、働いている人も。この前もタクシーに乗ったら運転手が「ウエア、フロム?」って訛った英語で聞かれたんで、「フロム・ジャパンや。アーユーは?」て聞いたら「ロシアや」言うたんで、知ってる唯一のロシア語の「スパシーバ!」(「ありがとう」の意味)て言い返したら、運転中やのに振り返って喜んでたわ。もちろん、「こら、前向いて運転せぇ!」て注意したよ、日本語で。
そんな感じやねん、ニューヨークって。
会話が必要な国やなくって、コミュニケーションが必要な国って言う感じやね。もちろん、言葉が一番早く、うまく、意思を伝え合える方法なんやろうけど、結構、伝えたい意思が強ければ、ゼスチャーも有効やし、普段使ってる日本語も有効やったりするねん。やっぱり「しなもんさん」真面目なんやろうな。ちゃんとアメリカに行ったら英語で話さなアカンて決めてるんやったら・・・。
簡単に書いて申し訳ないけど、コミュニケーションにはコツがあるねん。
2007年ごろから女子高生の間で使い始められた「KY」(「空気が読めない」の略)ってところでの「K」の部分やね。「K」って言うのは、その場にいる人間が共有している周辺のムードってところかな?それを壊さないことやシラケさせないことは大事やねん。
「その場の空気」を感じ取って「今は何で盛り上がっているのか?」「どんな話題を出すか?」なんていう「話題」やその場の「笑いの波」に上手く乗らないと「KY」のレッテルを貼られてしまうで。昭和のセリフで言うと「シラケ鳥が飛んできた」ってところやで。
女子高生の前でうまい波乗りを見せれる人はそれをすればいいし、出来ない人は先に波に乗っている人の邪魔をしないことやね。サーファーの間では「ワンマン・ワンウェイブ」なんて言うのよ。サーフィンしたことないけどね。
話を戻して、ボクに言わせたら「KY」って言ってる彼女たちにとっての「K」は、所詮、自己中心のものの見方やからね。人はそれぞれ違ってて当たり前やねん。結局、気にせんでええってことやで。
でも違和感みたいなものとかも感じながらも、上手にコミュニケーションを取れる人は共通の話題や興味が一緒や近いところを探して交換しあうねん。だから「K」を「読む」力はいるとは思うわ。
交わす会話で使う言葉のひとつひとつ、服装や髪型、趣味や持ち物などなどの色んな面に触れたり見たり聞いたりしながら、人間関係の距離をおいたり縮めたりするもんやねん。ここはコミュニケーションの重要ポイントやね。まずは「車間距離」ならぬ「人間間距離」やね。
これがコミュニケーションのコツやねん。
ただ「KY」って上からの目線やから、そのつもりで相手すればええよ。
悪いけどボクは未だに女子高生には「KY」とは言わせてないよ。なぜならボクは、彼女らの言うてることの意味は分かるけど、話題や興味の理解には苦しむってだけのことやからね。でもひょっとしたら「KY」のレッテルを貼られてることに気付いてないだけなのかも?
ところで綾部くん、「アメリカでビッグになって帰ってくる」って言ってたよな。
何度も何度もこのコラムで言うてるけど、夢や目標を「言葉」にすることがええことなんよ。その事でそれらに一歩も二歩も近づけるねん。それは自分自身への応援でもあり、プレッシャーでもあり、また他人からも応援や後押もしてもらえる事になるねん。小さな声で何を言ってるのか分からへんと言われる人は、少しだけでええから大きい声を出してみてな。せやないとなかなか応援もしてもらえへんで。そらそうやん、何をしたいか、何になりたいかを伝えてくれないと具体的に手伝われへんでしょ!それってコミュニケーションになってないってことやで。
そこで綾部くんは「まずはコメディアンとして活動します。最終的には、ハリウッドのレッドカーペットを歩きたいと思います」と言うてる。
ホンマ、ええね。まずはここには少なくとも3つのワードがある。「コメディアンになる」「レッドカーペットを歩く」「アメリカでビッグになる」と、これだけ「言語化」していたら、何からやり始めたらええかが見つかるような気がするなぁ。
まずは英語を勉強するって言ってるよね。とりあえず日本語の通じないところに行くのが一番や!
何て言うのかなぁ。「アップル」を「リンゴ」と言う日本語に置き換えることなく、スーパーに売ってるのを見て「美味しそうな『リンゴ』や」じゃなくって「美味しそうな『アップル』や」って感じるようにならんとアカンねん。そのうちに「seems delicious apple」なんて単語も身に付いて、アメリカ人に近づくねん。
もちろん、英語を話せるようになるだけで、楽しさや便利さは何十倍にも何百倍にもなるけど、気分も何十倍アゲアゲにしたいなら、生の「コメディショー」を見に行きまくるのがおすすめやね。
最初は言葉が分からなくってもええねん、その場へ行けば、さっきの「K」に触れれるねん。ボクが綾部くんなら、将来の自分がそのステージに立っている姿をイメージして妄想を膨らませに行くわ。あと、DVDも英語のままで「コメディ映画」を見まくるね。日本語字幕はあってもええけど。
今ならご贔屓(ひいき)は、ウィル・フェレル(1967年7月カリフォルニア生まれ)というおっちゃんやね。米国NBCテレビ「サタデー・ナイト・ライブ」出身やで。
お気に入り映画作品なら「オースティン・パワーズ」「ズーランダー」「俺たちニュースキャスター」「プロデューサーズ」「タラデガ・ナイトオーバルの狼」「俺たちフィギュアスケーター」「俺たちダンクシューター」「俺たちステップ・ブラザース-義兄弟-」「俺たちニュースキャスター史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク」などなど。中でもこの「俺たち」シリーズは、仲良しのみうらじゅんも大のオススメやわ。どれも主役は、アホ丸出しの役柄を堂々と押し付けてくるグイグイ野郎の作品だらけ。ホンマに下劣で笑けるよ!
日本の笑いは、漫才で慣れ親しんでいるように「ボケとツッコミ」の駆け引きで、皆さんはそれを見て安心感を手に入れているようやが、アメリカの笑いは結構、投げっぱなしで、勢いだけで来よるねん。そのパワーに圧倒されるのがアメリカの笑いの快感のようやわ。ここらが日本人には少し馴染めないようで、なかなかアメリカのコメディ映画は日本で当たらへんねん。ひょっとしたら日本の笑いを吉本が染み込ませすぎたんかも!吉本がアメリカンを寄せ付けない身体にしてしもたんかも知れんな。
また文化の違いからか、日本では、「アメリカの映画や舞台では、簡単に差別用語をよく使うなぁ?」なんて言われてるなぁ。アメリカでは、肌の色も宗教も政治も笑いの対象にしてしまう。日本のツッコミのようなフォローなしにボケを投げまくりよるねん。「主張一筋」やね。次期大統領のトランプさんも見ようによっては大物コメディアンと言えるかも知れへんね。
日本は上に書いたように「ボケ」と「ツッコミ」が交換され続けてから「オチ」に導かれるというプロセスを楽しむもんやからちょっと違うようやね。
話を戻すと、ボクは何でもいいので目標を設定して海外に行くのには大賛成やね!
もちろん、休みが取れないとか、予算の問題も大きいと思うけど、「旅」がもたらしてくれる「刺激」や「魅力」は、時には大きく人生に影響を与えてくれる要素になりよるねん。
ネットがつながってる環境はどこにでもあるので、旅行先でも「1日に3時間だけ仕事をしよう」というのも可能やで。
ホンマにチャンスがあれば「自分を知る」のに異国の文化に触れるのがボクのおすすめやね。ボクなんか今年、自分探しと執筆でタイのバンコクに日帰り旅行、3回も行ったもん。まだ自分が見つかれへんけどね。
人間関係は、会話力や英語力より、コミュニケーション力が大事っていう事やねん。ここが肝やで。
一回きりの人生、いくつになっても「旅」に教わることは多いよ。「旅」しような!