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2026.06.19 らしくコラム

電子帳簿保存法対応のシステム改修を外注する進め方|要件・スコープ・費用の判断軸

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

帳簿書類の電子保存

この記事のポイント

  • 電子帳簿保存法の電子取引データ保存義務化(令和6年1月1日以降)で、社内システムに求められる対応スコープを3ステップで切り出す方法を解説します。
  • 改修を外注する前に社内で決めておくべき事項と、ベンダー選定の3つの評価軸を整理します。
  • 費用を左右する要因と、RFP作成で法令対応の証跡を残す設計のポイントを示します。

電子帳簿保存法とシステム改修の関係:3区分と義務化の起点を整理

電子データの保存作業

電子帳簿保存法対応のシステム改修とは、同法が定める電子取引データ保存の義務要件を満たすために、社内の受発注・請求・契約管理などのシステムを整備または改修することを指します。

電子帳簿等保存 帳簿・決算書等の 電磁的記録保存 任意(優良・一般) 帳票出力機能改修 スキャナ保存 紙書類をスキャンして 電子保存 任意(要件充足時) OCR・スキャン連携 電子取引 電子的に授受した 請求書・契約書等 義務(R6.1.1〜) 検索・改ざん防止機能
電子帳簿保存法の3区分とシステム改修の主なスコープ(電子取引のみ義務)

電子帳簿保存法は「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3区分で構成されています*1。このうちシステム改修が急務となるのは「電子取引」区分です。令和6年1月1日以降、メール・クラウドサービス・EDIなどで授受した請求書・契約書・注文書・領収書等の電子取引データは、紙へのプリントアウト保存が認められなくなりました。

電子帳簿等保存とスキャナ保存はいずれも任意適用です。自社の改修優先度を考えるときは「電子取引データ保存の義務化への対応」を第一の起点として設定することが実務上の出発点になります。

電子取引データ保存に求められる3要件

国税庁が公表したパンフレット(令和6年11月版)によれば*1、電子取引データ保存の原則的なルールは以下の3つです。

  • ①改ざん防止:タイムスタンプ付与・訂正削除履歴が残るシステムでの授受保存・事務処理規程の策定運用のいずれかを実施
  • ②可視性確保:保存データを確認するためのディスプレイやプリンタ等を備え付けること
  • ③検索要件:「日付・金額・取引先」の3要素で検索できること(基準期間売上高5,000万円以下等の場合は緩和あり)

①の改ざん防止措置はタイムスタンプサービスとのAPI連携か、システムに訂正削除履歴を残す設計変更が必要なケースが多くあります。③の検索要件は、専用システムがなくても表計算ソフト等での索引簿作成や規則性のあるファイル名管理でも対応できます。

猶予措置の現状と打ち切りリスク

原則的な保存ルールに未対応であっても、「相当の理由がある」と税務署長が認める場合は猶予措置が設けられています*1。事前届出は不要で、人手不足・システム整備の資金不足・システム整備が間に合わないといった理由も認められます。

ただし猶予措置を利用するには、税務調査の際に電子取引データのダウンロードへの対応と、プリントアウト書面の提示提出に応じられる体制が必要です。猶予措置はあくまで原則対応への移行期間であり、整備計画を立てて進めることが求められます。

法令要件から改修スコープを切り出す3ステップ

法令要件を把握したら、次は自社に必要な改修スコープを明確にする作業です。「何をシステムで対応し、何を運用ルールで補完するか」を整理しないと、外注先への依頼内容が曖昧になり、改修後も要件未達のまま運用が始まるリスクが生じます。

ステップ1:自社の「電子取引」フローを洗い出す

まず、社内で電子取引が発生しているフローを網羅的に把握します。電子取引とは、書面であれば保存義務が生じる書類(注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書等)に相当する情報を、電子方式で授受することです*1

洗い出しの対象として確認すべきのは、メール添付での請求書受領・クラウドストレージでの見積書共有・EDIシステムでの受発注・クレジットカード明細のオンライン閲覧・電子契約サービスでの契約締結などです。部門ごとに利用しているサービスが異なるケースも多いため、業務ヒアリングを通じて部門別にフロー図を作成すると漏れを防ぎやすくなります。

ステップ2:3要件に対する現状ギャップを測定する

洗い出したフローごとに、3要件(改ざん防止・可視性確保・検索要件)を現状のシステムや運用が満たしているかを確認します。

要件 確認ポイント 未対応時の対応手段
①改ざん防止 受領・保存時にタイムスタンプが付与されるか。
訂正・削除の履歴がシステムに記録されるか。
または事務処理規程が策定・備付されているか。
タイムスタンプサービスとのAPI連携改修、または事務処理規程の策定(システム改修なしの選択肢あり)
②可視性確保 保存したデータをディスプレイやプリンタで確認できる環境が整っているか。 既存の閲覧システムで対応可能なケースが多い。専用ビューア追加が必要な場合はシステム改修の対象となる。
③検索要件 日付・金額・取引先の3要素で絞り込み検索が可能か。
日付または金額の範囲指定検索・2要素組み合わせ検索ができるか。
表計算ソフトによる索引簿作成や、規則性のあるファイル名管理でも対応可(基準期間売上高5,000万円以下等はダウンロード対応のみでも可)

ギャップ測定の結果、「①改ざん防止だけが未対応」という企業では事務処理規程の整備でシステム改修を回避できるケースもあります。一方、複数の取引フローで③の検索要件が満たせていない場合は、文書管理システムの新規導入や既存の会計・ERPシステムの改修が視野に入ります。

ステップ3:対応をシステム改修・運用ルール整備・既存ツール活用に分類する

ギャップ測定の結果を「システム改修が必要か」「運用ルール整備で代替できるか」「既存ツールの設定変更で対応できるか」の3軸で分類します。この分類作業こそが、外注依頼の範囲を決めるうえで最も重要な工程です。

特に①改ざん防止は、事務処理規程の策定という「ゼロコストの選択肢」が法令上認められています。システム改修の費用対効果を判断する前に、まず運用ルール整備で要件を満たせるかを検討することが実務上の現実的な順序です。

外注前に決める改修スコープ:社内でやること・外に出すことの分類

外注先に改修を依頼する前に、社内で担う部分と外注する部分の境界線を明確にしておく必要があります。この境界設定が曖昧なまま発注すると、スコープクリープ(当初の合意外の追加作業)が発生し、費用超過や納期遅延につながるリスクが高まります。

要件定義は社内主導で行うことが前提

「どの取引フローをどの法令要件に対応させるか」という要件定義は、業務を熟知した社内担当者が主導する必要があります。法令対応の責任は発注者側にあるため、「要件定義も含めてベンダーに丸投げ」という発注形態では、法令上の要件を満たすかどうかの確認が不十分になるリスクがあります。

社内で決めておくべき主な事項は、対象となる取引書類の種類と保存期間・保存先となるシステムまたはフォルダの構成方針・検索インデックス(日付・金額・取引先の形式)の定義・改ざん防止手段(タイムスタンプ or 事務処理規程)の選択です。

外注先ベンダー選定の3つの評価軸

電子帳簿保存法対応のシステム改修を外注する際、ベンダー選定で確認すべき評価軸は主に3つです。

①法令知識・アップデート対応力:電子帳簿保存法は税制改正のたびに要件が変わる可能性があります。法令改正時に自社システムの改修対応を継続して行えるか、過去に同種の法令対応改修実績があるかを確認します。

②既存システムとの連携実績:会計システム・ERPシステム・文書管理システムとの連携が必要になるケースが多いため、同種の製品・プラットフォームとの連携実績を持つベンダーを選定することが改修リスクの低減につながります。

③改修後の保守継続性:法令対応後のシステム保守・バージョンアップ・障害対応を委託できるか。改修プロジェクトの完了後も継続的なサポート契約が結べるベンダーを選ぶことで、法令改正時の追加対応コストを抑えられます。

一括発注 vs モジュール発注の選択

改修範囲が複数のシステムにまたがる場合、全スコープを一社に一括発注するか、機能モジュールごとに複数ベンダーに分けて発注するかを検討します。

一括発注は調整コストが低く責任の所在が明確である一方、対応できるベンダーの選択肢が絞られます。モジュール発注は各機能に強みを持つベンダーを組み合わせられますが、ベンダー間の調整を自社が担う必要があります。業務規模が大きく既存システムが複雑な場合は、元請(プライムベンダー)として全体を取りまとめる一次受けベンダーに依頼し、各開発はその配下に集約する形が管理コスト面で現実的な選択肢になります。

電子帳簿保存法対応の改修費用:規模・スコープ別の費用を左右する要因

電子帳簿保存法対応のシステム改修費用は、自社の既存システム構成・対応スコープ・選択する改修手段によって大きく異なります。以下は市場参考値として整理したものであり、一次資料による公表値ではありません。実際の発注前に複数ベンダーへの見積取得と詳細要件のすり合わせが必要です。

費用を左右する3要因

①対応スコープの広さ:電子取引データ保存のみの最小限対応から、スキャナ保存・電子帳簿等保存まで含めた全区分対応では費用レンジが数倍変わります。改修対象の取引フロー数や書類種別が多いほど、要件定義・テスト工数が増加します。

②連携先システムの数と複雑さ:会計システム・ERP・文書管理システム・EDIのそれぞれと連携するAPIを開発・修正する必要があります。連携先が多いほど改修工数と検証工数が増えます。

③改ざん防止手段の選択:タイムスタンプサービスとのAPI連携を開発する場合は、開発費用にサービス利用料(月次)が継続的に加わります。訂正削除履歴をDBに記録する設計変更や、事務処理規程整備(非システム対応)を選ぶ場合は費用構造が変わります。

内製対応 vs 外注の選択基準

比較軸 内製対応 外注
必要スキル 既存システムの設計知識・法令要件の理解・DB設計・API開発・テスト設計の全領域を網羅できるエンジニアが必要 社内は要件定義・検収判断を担う担当者のみで対応可
期間 社内リソース次第。兼務エンジニアが担う場合は通常業務との競合で遅延が発生しやすい スコープと要件が明確であれば計画的なスケジュール管理が可能
法令改正対応 改正のたびに社内エンジニアが継続対応する必要がある 保守契約を結べば法令改正時の追加対応を依頼できる
証跡・ドキュメント 設計書・テスト結果の整備は自社責任 契約書・仕様書・検収記録が法令対応の証跡として残る

内製対応は既存システムへの深い理解を活かせる利点がありますが、電子帳簿保存法対応には法令要件の正確な解釈・タイムスタンプサービスとの連携設計・検索機能の設計など、専門知識が複数の領域にわたります。兼務担当者が対応する場合、要件漏れや設計ミスによって法令未達となるリスクが生じます。

外注RFP作成の要点:法令対応記録として使えるドキュメント設計

電子帳簿保存法対応の改修を外注する際のRFP(Request for Proposal・提案依頼書)は、単なる発注仕様書ではなく、法令要件への対応計画の記録として機能します。適切なRFPが整備されることで、ベンダー選定の透明性が高まり、改修後の税務調査対応でも「どの要件に対してどの機能で対応したか」を示す証跡として活用できます。

RFPに必須の記載項目

電子帳簿保存法対応のRFPに含めるべき項目は以下の通りです。

  • 対象法令の明示:電子帳簿保存法第7条(電子取引)への対応であることを明記し、施行令・規則が定める3要件を仕様要件として列挙する
  • 対象取引フロー一覧:どの書類種別・どの取引経路(メール・クラウド・EDI等)を対象とするかをフローチャートまたはリスト形式で添付する
  • 現状システム構成:既存の会計システム・ERP・文書管理システムの名称・バージョン・連携方式(API/CSV/RDB直接等)を記載する
  • 改修スコープの定義:「〇〇機能の新規開発」「〇〇システムとのAPI連携」「タイムスタンプ付与処理の追加」など機能単位でスコープを明確化する
  • 検収基準:3要件(改ざん防止・可視性確保・検索要件)それぞれを満たすことを確認するテストケースを検収要件として定義する
  • 保守・法改正対応の要件:改修後の保守SLA(障害応答時間等)・法令改正時の追加対応の可否・費用感を提案書に含めることを求める

ベンダーへの確認事項

提案書評価時に確認すべき主な事項を整理します。法令対応の実効性を見極めるうえで、技術的な提案内容だけでなく、法令知識の深さと保守継続体制の確認が重要です。

  • 電子帳簿保存法対応のシステム改修実績(同種業種・同規模での実績が望ましい)
  • タイムスタンプサービスとの連携実績と推奨サービス名
  • 自社既存システム(会計・ERP)の連携対応経験
  • 改修後の保守契約(月次費用・対応範囲・法改正時の追加費用感)
  • テスト環境の提供有無と検収手順(機能テスト・結合テストのドキュメント提供)

内製対応との比較で見る外注の難易度

電子帳簿保存法対応の改修を内製するには、法令解釈・既存システム設計・API開発・タイムスタンプ連携・DB設計・テスト設計の全領域を担えるエンジニアが必要です。これらを兼務担当者が短期間で対応する場合、設計ドキュメントの不備や検収精度の低下が起こりやすくなります。

外注先の専門ベンダーに依頼することで、法令要件を満たす設計の質とドキュメントの整備水準が高まり、税務調査時の対応証跡として機能する成果物を得られます。LASSICでは、要件定義から改修・保守までを元請(プライムベンダー)として一貫して支援しています。

まとめ:電子帳簿保存法対応の外注で失敗しないための3つの判断軸

本稿では、電子帳簿保存法の電子取引データ保存義務化を起点に、システム改修スコープの切り出し方・外注前の準備・費用の見方を整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。

第一に、改修スコープの起点は「電子取引データ保存の3要件」です。改ざん防止・可視性確保・検索要件のうち、どの要件がシステム改修を必要とし、どの要件が運用ルール整備で対応できるかを社内で先に判断することで、外注依頼の範囲を最小化できます。

第二に、要件定義は社内主導で行うことが法令対応上の必須条件です。ベンダーに丸投げすると「何の要件に対してどの機能で対応したか」の根拠が曖昧になり、税務調査時の証跡として機能しなくなるリスクがあります。

第三に、ベンダー選定では「法令知識・既存システム連携実績・改修後の保守継続性」の3軸を評価基準とすることで、改修完了後の法改正対応も見据えた発注が可能になります。猶予措置は整備を急ぐ理由がなくなる制度ではなく、あくまで移行期間です。早期に整備計画を確定し、信頼できるパートナーとの連携を進めることが実務上の現実的な選択です。

よくある質問

電子帳簿保存法に対応するためにシステム改修は必須でしょうか?

一概に必要とは限りません。電子取引データ保存の3要件のうち①改ざん防止については、タイムスタンプ付与やシステム改修を行わず、事務処理規程を策定・運用・備付けするだけで要件を満たすことができます*1。③検索要件も、表計算ソフトで索引簿を作成したり、規則性をもったファイル名でデータを管理したりする方法で対応可能です。まず運用ルール整備で対応できる要件を特定し、どうしてもシステム改修が必要な部分を絞り込むことが費用最小化の出発点になります。

猶予措置が利用できる間は、何もしなくても問題ありませんか?

猶予措置は原則的な保存ルールへの移行を前提とした制度であり、何もしなくてよい制度ではありません*1。猶予措置を利用するには、税務調査の際に電子取引データのダウンロードへの対応とプリントアウト書面の提示提出に応じられる体制が必要です。また「相当の理由があると税務署長が認める」という要件があるため、整備計画が存在しないまま放置し続けることはリスクになります。電子取引データを消さずに保存しながら、整備スケジュールを立てて進めることが実務上の対応として求められます。

電子取引データ保存の検索要件は、Excelの索引簿でも満たせますか?

満たせます。国税庁のパンフレット(令和6年11月版)でも、表計算ソフト等で「日付・金額・取引先・備考」を管理した索引簿を使用して電子取引データを検索できる方法が、③検索要件を満たす方法として認められています*1。また、「日付_金額_取引先名_書類種別」のように規則性を持たせたファイル名で特定のフォルダに保存する方法も有効です。ただし、索引簿のファイルと実際の電子データの対応関係が正確に保たれている必要があります。

外注先に改修を依頼するとき、どれくらいの期間を見ればよいですか?

対応スコープと既存システムの複雑さによって異なります。事務処理規程の策定など非システム対応は数週間〜1か月程度で整備できるケースがあります。一方、既存の会計システムやERPとの連携を伴うシステム改修では、要件定義・設計・開発・テスト・検収を含めると3か月〜6か月以上のリードタイムを想定して計画を立てることが一般的です。外注の場合はベンダーの稼働状況によって着手時期が変わるため、早期に複数ベンダーへ打診を行い、スケジュール感を確認することをお勧めします。

電子帳簿保存法対応のシステム改修費用は、税務上どのように処理しますか?

開発したソフトウェアの性質によって処理が変わります。自社利用のためのソフトウェア開発・改修費用は、一般的に無形固定資産として資産計上し、耐用年数5年で償却する処理が行われます。一方、保守・運用費用や既存ソフトウェアの軽微な修正費用は、修繕費として損金処理される場合があります。ただし会計処理の判断は自社の会計方針や税理士の指導に従う必要があり、本記事の内容は一般的な情報です。具体的な処理については顧問税理士または公認会計士にご確認ください。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

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  1. *1 出典:国税庁「電子取引データを適切に保存できていますか?(令和6年11月)」(2024年)


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