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2026.06.23 らしくコラム

Webアクセシビリティ対応改修を外注する費用と進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

Webアクセシビリティのイメージ

この記事のポイント

  • 合理的配慮の義務化を背景にWebアクセシビリティ対応の重要性が高まっており、JIS X 8341-3/WCAGの適合レベルAAが実務上の主要な目標とされています
  • 改修は「現状診断(自動+手動評価)→改修実装→適合試験」の3フェーズで進め、サイト規模と対応レベルによって費用が変わります
  • 外注先はアクセシビリティ専門の評価・改修実績と、支援技術を用いた手動試験の経験で選ぶことが品質確保の鍵です

Webアクセシビリティ対応改修とは:対象範囲と外注の位置づけ

Webサイト改修のイメージ

Webアクセシビリティ対応改修とは、既存のWebサイトやWebアプリケーションを、障害のある方や高齢者を含むより多くのユーザーが利用できる状態に整備する作業を指します。新規制作とは異なり、すでに稼働しているサイトの品質課題を洗い出し、優先順位をつけて修正するという性質を持ちます。

対象範囲はHTMLの構造・CSSの配色・JavaScriptの操作性・画像への代替テキスト・フォームの入力支援・PDFなど非HTMLコンテンツまで多岐にわたります。自動チェックツールで検出できる問題は全体の一部であり、スクリーンリーダーやキーボード操作を使った手動評価が欠かせません。

こうした専門性の高さから、Webアクセシビリティ改修は内製が難しいと判断する企業が多く、アクセシビリティ専門の評価・改修実績を持つ外部パートナーへの委託が選ばれています。

STEP 1 現状診断 自動+ 手動評価 STEP 2 課題整理 優先順位 付け STEP 3 改修実装 HTML/CSS/ JS修正 STEP 4 適合試験 支援技術 検証 STEP 5 公開・ 宣言 適合宣言 公開
図:Webアクセシビリティ対応改修の外注プロセス(診断〜公開まで5ステップ)

今、対応が求められる背景:合理的配慮の義務化とユーザー層拡大

2024年4月1日、改正障害者差別解消法が施行され、民間事業者にも「合理的配慮の提供」が義務化されました。これはWebサイトをすべての民間事業者がJIS規格に準拠させる一律義務ではありませんが、障害のある方から情報アクセスへの対応を求められた際に誠実に応じる義務が生じます。

この義務化を背景に、Webアクセシビリティ対応を検討する企業が増えています。とりわけ行政・公共サービスに近い事業、医療・福祉・金融・教育分野では対応の優先度が高まっています。

法的な背景以外にも、対応を進める実務上の理由があります。日本の65歳以上人口は総務省の統計によれば2024年時点で全人口の約29%*1に達しており、文字サイズや色コントラストへの配慮はシニア層の利便性にも直結します。また、適切な見出し構造や代替テキストの設置はGoogle検索での評価にも影響するため、SEOの観点からも無視できません。

JIS X 8341-3とWCAG:適合レベルA/AAの意味と実務目標

Webアクセシビリティの国際標準はW3C(World Wide Web Consortium)が策定したWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)です。現在広く参照されているのはWCAG 2.1で、知覚可能・操作可能・理解可能・堅牢という4原則のもとに達成基準が整理されています。

JIS X 8341-3:2016(高齢者・障害者等配慮設計指針 — 情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス — 第3部:ウェブコンテンツ)は、WCAG 2.0と整合した日本産業規格です。国内の公共機関のWebサイトはこの規格を参照して整備されており、民間企業の対応指針としても参照されています。

適合レベルはA・AA・AAAの3段階に分かれています。レベルAは最低限の達成基準で、対応しなければ一部ユーザーがコンテンツに全くアクセスできなくなる項目が含まれます。レベルAAはレベルAの全達成基準に加えて、より多くのユーザーが利用しやすくなる基準を含み、国内の公共機関や多くの企業が実務目標として設定しています。レベルAAAは一部のコンテンツタイプでは達成が技術的に難しく、サイト全体への一律適用は通常求められません。

実務上は「JIS X 8341-3:2016 達成等級AA」を目標に設定し、自動チェックと手動評価の組み合わせで適合状況を確認することが標準的な進め方です。

改修対応の中身:代替テキスト・コントラスト・キーボード操作など主要な6領域

Webアクセシビリティ改修で実際に手を入れる主要な領域を整理します。どの領域も「自動チェックだけでは漏れが出る」という共通の難しさを持っています。

代替テキスト(alt属性)の整備

画像に適切なalt属性を付与することは、視覚に障害があってスクリーンリーダーを使うユーザーへの情報提供に直結します。単にalt=””とするのではなく、画像が伝える情報を正確に記述する必要があります。装飾目的の画像はalt=””(空文字)として読み上げをスキップさせる判断も必要です。

色のコントラスト比の確保

WCAG 2.1のレベルAAでは、通常テキストの前景色と背景色のコントラスト比に一定の基準(達成基準1.4.3)が定められています。デザインリニューアル時に意図せずコントラストが低下したサイトでは、色の組み合わせを見直す改修が必要になります。テキストが多いページほど修正箇所が増えます。

キーボード操作の担保

マウスを使えないユーザーはTabキーやEnterキーを使ってページを操作します。JavaScriptで実装したカスタムのドロップダウンメニューやモーダルウィンドウは、キーボード操作に対応していないことが多く、改修工数がかかります。フォーカスの順序と視覚的なフォーカスリング(フォーカス時の枠線表示)の確保もこの領域の課題です。

見出し構造と論理的な読み順

h1〜h6タグが意味のある階層構造を持っているかどうかは、スクリーンリーダーのユーザーがページを素早く把握するために重要です。デザイン目的でh3をh2より先に使う、見出しを装飾用として乱用するといったマークアップは修正が必要です。

フォームのラベルとエラー通知

入力フォームの各フィールドには、label要素でラベルを関連付ける必要があります。エラー発生時にはエラーの内容と修正方法を文章で明示し、スクリーンリーダーに読み上げられる実装が求められます。フォームはページ内でも改修工数がかかりやすい箇所の一つです。

支援技術対応:ARIAの適切な利用

ARIA(Accessible Rich Internet Applications、アクセシブルリッチインターネットアプリケーション)はHTML標準だけでは表現しきれないUI要素(タブ・スライダー・ライブリージョン等)のロール・ステート・プロパティを追加するW3C仕様です。誤ったARIA属性は支援技術の誤動作を引き起こすため、適切な知識を持つエンジニアによる実装が不可欠です。

外注の進め方:診断→改修→適合試験の3フェーズ

Webサイト開発画面のイメージ

Webアクセシビリティ改修を外注する際は、「現状診断」「改修実装」「適合試験」の3フェーズで段階的に進めるのが一般的です。各フェーズで確認すべき内容を整理します。

フェーズ1:現状診断(自動チェック+手動評価)

まず自動チェックツールでサイト全体をスキャンし、機械的に検出できる問題を洗い出します。axe(Deque Systems製のオープンソースツール)やLighthouse(Google製)が広く使われています。

ただし、自動チェックで発見できる問題はWCAG達成基準の一部に限られます。スクリーンリーダー(NVDA・VoiceOverなど)を用いた手動評価を組み合わせることで、キーボード操作の不具合や読み上げ順序の問題、コンテキストが欠落している箇所を発見できます。診断フェーズの成果物として「問題一覧と優先度付きの対応提案書」を受け取ることが、次フェーズを円滑に進める前提になります。

フェーズ2:改修実装

診断結果をもとに改修の優先順位を決めます。レベルAの達成基準に関わる問題(アクセス自体を妨げる問題)を先行して対処し、その後レベルAAの基準に向けた改修を進めるのが標準的な順序です。

改修の難易度はコンテンツの種類によって異なります。HTMLのalt属性追加や見出し階層の修正は比較的迅速に対応できますが、JavaScriptで実装されたインタラクティブコンポーネントのキーボード対応やARIA設計は工数がかかります。動画コンテンツへのキャプション追加、PDFのテキスト化なども時間と費用を要する作業です。

フェーズ3:適合試験と公開

改修完了後に、設定した適合レベル(多くはJIS X 8341-3:2016 達成等級AA)に対して試験を行います。自動チェックと手動評価を組み合わせて達成基準への適合状況を確認します。試験結果を「アクセシビリティ方針」ページや「ウェブアクセシビリティ適合性評価報告書」として公開することで、外部への説明責任を果たすことができます。

公開後も、コンテンツ更新や新機能追加のたびにアクセシビリティが劣化するリスクがあります。定期的なチェック体制や制作ガイドラインの整備を継続維持策として外注先に相談しておくことが大切です。

費用相場:サイト規模・対応レベル・フェーズで変わる費用の考え方

Webアクセシビリティ改修の費用は、サイトのページ数・コンポーネントの複雑さ・目標とする適合レベル・診断から試験まで一括依頼か分割依頼かによって幅があります。以下は市場参考値であり、一次資料に基づく数値ではありません。実際の費用は複数社に見積もりを依頼して確認してください。

フェーズ 内容 費用目安(市場参考値) 備考
現状診断 自動チェック+手動評価+問題一覧作成 数十万円台〜 サイト規模(ページ数・テンプレート数)で変動。
診断のみ依頼も可能
改修実装 HTML/CSS/JS修正・ARIAラベル整備・コントラスト修正など 小規模サイト:数十万〜百数十万円
中〜大規模:数百万円以上
JavaScriptコンポーネントが多いほど高額になる傾向。
動画キャプション・PDF対応は別途見積もりが多い
適合試験 支援技術を用いた手動確認・適合性評価報告書作成 数十万円台〜 改修と同一業者に依頼する場合は一括見積もりになることが多い

費用に影響する主な要因

費用が高くなる要因として、ページ数が多い・テンプレートが多様である・JavaScriptで構築したインタラクティブなUIが多い・動画や資料(PDF)が多い、といった点が挙げられます。逆にCMSテンプレートが統一されているサイトは、テンプレートを修正することでサイト全体に一括適用できるため、効率よく進めやすくなります。

また、診断フェーズを先行して行うことで「実際に改修が必要な箇所の全体像」を把握してから改修費用を見積もれるため、予算の精度が上がります。いきなり全体改修を一括発注するよりも、診断→優先度確認→改修の順で進める方がコスト管理しやすいでしょう。

内製では発生する見えないコスト

自社エンジニアで対応しようとする場合、スクリーンリーダーや支援技術に関する専門知識の習得に時間がかかります。WCAG達成基準の解釈と実装の判断、手動評価のノウハウを持つ人材がいなければ、作業完了後も問題が残るリスクがあります。専門パートナーに委託することで、習得コストと手戻りリスクを低減できます。

外注先の選び方:アクセシビリティ専門実績と手動試験経験で見極める

Webアクセシビリティ改修の外注先を選ぶ際に確認すべき主なポイントを整理します。一般的なWeb制作実績だけでなく、アクセシビリティ専門の知見があるかどうかが品質を左右します。

適合試験・評価報告書の納品実績があるか

JIS X 8341-3:2016またはWCAG 2.1に基づく適合性評価報告書を実際に作成・納品した実績があるかを確認してください。公共機関や金融機関のWebサイト改修実績がある場合は、高い水準の評価経験を持つ可能性があります。過去の納品物(アクセシビリティ方針ページや適合性評価報告書の公開事例)を見せてもらうことも有効です。

手動評価(支援技術を使った試験)の経験があるか

スクリーンリーダー(NVDAやVoiceOver等)を使った手動評価の経験がある担当者がいるかどうかは、品質を左右します。自動チェックだけで「対応済み」と報告するベンダーは実態の問題を見落とす可能性があります。手動評価の手順や使用する支援技術を具体的に説明できるかを提案段階で確認することが大切です。

改修後の維持管理まで提案できるか

公開後もコンテンツ更新や機能追加でアクセシビリティが劣化するリスクがあります。更新ルールを含むアクセシビリティガイドラインの整備、担当者向けのトレーニング、定期チェックの継続支援まで提案できるパートナーを選ぶことで、長期的な品質維持につながります。

デジタル庁のガイドラインや業界動向を把握しているか

デジタル庁は「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」を公開しており、国の方針に沿った対応知見を持つベンダーかどうかの確認に役立ちます。JIS規格の改定動向やWCAG 2.2(2023年公開)への対応方針についても説明できるかを確認しましょう。

内製チームへの知識移転を行うか

外注で改修を行っても、その後の社内運用担当者が同様の問題を生み出してしまうと品質が持続しません。改修後に内製チームが適切な更新・確認を続けられるよう、ガイドラインや手順書の整備、勉強会形式のトレーニングを提供しているかも選定基準に含めることを推奨します。

まとめ:Webアクセシビリティ外注改修を成功させる3つの判断軸

本稿では、Webアクセシビリティ対応改修を外注する際の背景・仕様・進め方・費用・選定基準を整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。

第一に、合理的配慮の義務化はWebサイトのJIS準拠を一律に課すものではありませんが、対応の必要性が高まっている背景として正確に理解することが大切です。JIS X 8341-3:2016 達成等級AAを目標に設定し、自動チェックと手動評価を組み合わせた診断から始めることが現実的な第一歩です。

第二に、改修対応の中身は代替テキスト・コントラスト比・キーボード操作・見出し構造・フォームラベル・ARIA設計の6領域にわたり、専門知識が必要です。自動チェックだけでは発見できない問題が多く、支援技術を用いた手動評価が品質を左右します。

第三に、外注先は「適合試験・評価報告書の納品実績」「手動評価の経験」「改修後の維持管理支援」の3点で選ぶことが、長期的な品質維持につながります。診断フェーズを先行させて課題全体像を把握してから改修費用を確定するアプローチがコスト管理に有効です。

よくある質問

Webアクセシビリティ対応改修を外注するとどのくらいの費用がかかりますか?

費用はサイトのページ数・現状の品質・対応レベルによって大きく異なります。診断(自動+手動)は数十万円台から、小規模サイトの改修は数十万〜百数十万円、数百ページ規模のサイトや操作が複雑なWebアプリでは数百万円以上になるケースもあります(いずれも市場参考値であり一次資料ではありません)。診断・改修・試験の3フェーズそれぞれで費用が発生する点を前提に予算計画を立てることが大切です。

WCAG 2.1のレベルAAとレベルAはどう違いますか?

WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)の適合レベルはA・AA・AAAの3段階です。レベルAは最低限の達成基準、レベルAAはレベルAに加えてより幅広いユーザーに対応する達成基準です。国内の公共機関や多くの企業はレベルAAを目標に設定しています。JIS X 8341-3:2016はWCAG 2.0と整合する規格であり、達成等級AとAAが実務上の主要な目標とされています。レベルAAAはサイト全体への一律適用は通常求められません。

改正障害者差別解消法でWebサイトのJIS準拠は義務化されましたか?

2024年4月1日施行の改正障害者差別解消法により、民間事業者にも「合理的配慮の提供」が義務化されました。ただし、Webサイトをすべての民間事業者がJIS X 8341-3に準拠させる法的義務が一律に課されたわけではありません。合理的配慮の義務化を背景にWebアクセシビリティ対応の重要性が高まっているという位置づけです。障害のある方からアクセシビリティへの対応を求められた際に誠実に応じる義務が生じるという理解が適切です。

外注先のアクセシビリティ改修実績はどこで確認できますか?

外注先選定では、実際に納品したサイトのアクセシビリティ適合宣言や試験報告書を提示してもらうことが有効です。JIS X 8341-3に準拠した適合試験(機械チェック+スクリーンリーダー等の支援技術を用いた手動評価)の実施経験があるかを確認してください。デジタル庁が公開している「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」も、知見を持つベンダーを見極める参考になります。

Webアクセシビリティ改修で対応に時間がかかる箇所はどこですか?

工数がかかりやすい箇所は、JavaScriptで実装したカスタムUIコンポーネントのキーボード対応とARIA(Accessible Rich Internet Applications、アクセシブルリッチインターネットアプリケーション)属性の整備、フォームのラベル付けとエラー通知の実装、動画コンテンツへのキャプション・音声解説の追加、PDFなどの非HTML資料のテキスト化などです。自動チェックで検出できる問題は全体の一部であり、支援技術を使った手動評価で初めて発見される問題が多い点も、期間見積もりを難しくする要因です。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

LASSICに相談するメリット

LASSICは元請(プライムベンダー)として、Webシステムの設計・開発・改修・保守運用を一気通貫で支援しています。Webアクセシビリティ対応改修においては、現状診断から改修実装・適合試験・公開後の維持管理体制の整備まで、お客様の状況に合わせたご提案が可能です。


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  1. *1 出典:総務省「人口推計(最新結果)」(2024年)


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