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2026.07.02 らしくコラム

eBPF活用(可観測性・ネットワーク)を外注で進める

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

eBPFによるカーネルレベル観測のイメージ

この記事のポイント

  • eBPFはLinuxカーネル内でプログラムを隔離実行し、アプリケーションの改変なしに通信・処理を観測・制御できる技術です。
  • ネットワーク可観測性・セキュリティ監視・Kubernetesネットワーキングが主な使いどころで、既存のAPMやトレースツールとは役割が異なります。
  • カーネルバージョン依存や専門人材の確保が導入の論点になるため、対応範囲を明確にした外注活用が現実的な選択肢になります。

eBPFとは何か カーネル内でプログラムを隔離実行する仕組み

ネットワーク可観測性のイメージ

eBPFとは、Linuxカーネルの内部で隔離されたプログラムを特権コンテキストのまま実行し、カーネルのソースコード変更やカーネルモジュールの追加なしに機能を拡張できる技術を指します*1。もともとはBerkeley Packet Filter(BPF、パケットフィルタリングの仕組み)を拡張したもので、頭文字の意味を超えて汎用的な名称として使われています。

仕組みとしては、開発者がC言語などでeBPFプログラムを記述し、LLVM/clangコンパイラでバイトコードに変換します。このバイトコードはカーネルに読み込まれる際に「verifier(検証機構)」でメモリ操作の妥当性や無限ループの有無などをチェックされ、問題がなければJIT(Just-In-Time、実行直前にネイティブコードへ変換する方式)コンパイルを経て動作します*1。この検証と変換の2段階を経ることで、カーネルをクラッシュさせるリスクを抑えながら、ネイティブコードに近い効率で処理を実行できます*1

eBPFプログラムは、システムコール・関数の呼び出しと復帰・カーネルのトレースポイント・ネットワークイベントといった、あらかじめ用意された複数のフックポイントに接続して動作します*1。さらにkprobe(カーネル関数への動的フック)やuprobe(ユーザー空間プログラムへの動的フック)を使えば、事前定義されたポイント以外の任意の箇所にも接続できます*1。この仕組みにより、対象のアプリケーションを改変・再起動することなく、稼働中のシステムの内部で何が起きているかを外側から観測・制御できる点が、他の監視手法と異なる特徴です*1

eBPF プログラム 記述 検証 verifierで 妥当性確認 JIT ネイティブ コード変換 フック接続 syscall等の ポイント 観測・制御 アプリ改変 なしで実行
eBPFプログラムがカーネルに組み込まれ実行されるまでの流れ

この一連の処理はカーネル空間内で完結するため、アプリケーション側にエージェントを組み込んだりコードを変更したりする必要がありません*1。既存システムへの影響を抑えながら可観測性やセキュリティ機能を追加できる点が、eBPFが注目される背景にあります。

可観測性・ネットワーク・セキュリティ eBPFの3つの使いどころ

eBPFの活用領域は、公式のアプリケーション一覧では大きくネットワーキング・可観測性・セキュリティの3つに整理されています*2。それぞれの領域で、既に一定の実績を持つOSS(オープンソースソフトウェア)プロジェクトが存在します。

ネットワーキング領域では、CiliumがeBPFベースのKubernetesネットワーキング・可観測性・セキュリティを提供するプロジェクトとして紹介されています*3。Ciliumは「Hubble」という機能でネットワークトラフィックの可視化を行うほか、L4(トランスポート層)・L7(アプリケーション層)の通信を細かく制御するネットワークポリシー機能も持ちます*3。ほかにCalicoがKubernetes向けのプラガブルなeBPFネットワーキングを、Katranが高性能なレイヤー4ロードバランサーを実装しています*2

可観測性領域では、PixieがKubernetes環境でテレメトリデータを自動収集する仕組みを、Parcaが継続的プロファイリング(実行中プログラムのCPU・メモリ消費を継続的に計測する手法)のプラットフォームを提供します*2。Tetragonは深い可視性とリアルタイムのランタイム制御を統合したプロジェクトです*2

セキュリティ領域では、Falcoが振る舞い(ビヘイビア)ベースの異常検知を行う監視ツールとして紹介されています*2。OpenTelemetry eBPF Profilerは、システム全体・複数言語をまたいだ継続的プロファイリングを実現するプロジェクトです*2。これらはいずれも、カーネルレベルでシステムコールとネットワーク通信の双方を同時に見ることで、単一のログやメトリクスだけでは把握しにくい挙動を捉える設計になっています*2

APM・分散トレーシングとの違いと補完関係

可観測性の文脈では、APM(Application Performance Monitoring、アプリケーション性能監視)や分散トレーシングと呼ばれる手法も広く使われています。これらは主にアプリケーションコード内にSDK(開発キット)を組み込み、リクエスト単位の処理時間や呼び出し関係を記録する方式です。一方でeBPFは、カーネル内のフックポイントから通信やシステムコールを観測するため、アプリケーションコードの変更なしに計測できる点が異なります*1

両者は代替関係ではなく補完関係にあります。分散トレーシングはアプリケーションのビジネスロジック内部で「どの処理に時間がかかったか」を追跡するのに向いています。一方でeBPFは、アプリケーションの外側からネットワーク通信・システムコール・カーネル内部の挙動を横断的に観測するのに向いています。実際に、eBPFのエコシステムにはコード変更なしで分散トレーシングを実現しようとするプロジェクトも存在し*2、既存の計測手法を置き換えるのではなく、計測できる範囲を広げる技術として位置づけられています。

自社で分散トレーシングや構造化ログの基盤をすでに持つ場合でも、コンテナ間のネットワーク経路やカーネルレベルのボトルネックまでは可視化できていないことがあります。eBPFはそうした計測の空白領域を埋める手段として検討する価値があります。

カーネル依存と専門性 eBPF導入で押さえるべき論点

セキュリティ監視のイメージ

eBPFの活用を検討する際には、いくつかの技術的な論点を事前に押さえておく必要があります。

第一に、対応するLinuxカーネルのバージョンです。Ciliumの公式ドキュメントでは、機能をフルに使うためにLinuxカーネル5.10以上(RHELの場合は4.18相当でも対応)を推奨しており*4、IPv6のBIG TCP対応にはカーネル5.19以上、IPv4のBIG TCP対応には6.3以上が必要とされています*4。新しいカーネルほどeBPFの追加機能を利用できるため、対象システムのカーネルバージョンを事前に確認する工程が欠かせません*4

第二に、専門性の高さです。eBPFプログラムの開発にはC言語やLLVM/clangによるコンパイル、verifierが課す制約への理解が必要になります*1。カーネル内部の挙動に近い領域を扱うため、誤った実装は稼働中システムの安定性に影響しかねません。社内にカーネルレベルの知見を持つ人材を確保できない場合、学習コストと検証コストの両方が発生します。

第三に、運用の難所です。eBPFプログラムはカーネルアップデートのたびに互換性を確認する必要があり*4、Cilium・Falco・Tetragonのような周辺ツールもバージョン間の依存関係を管理する必要があります。Linuxカーネルの公式ドキュメントでも、BPFに関する文書は「作業中(work in progress)」と明記されており*5、情報が体系化しきっていない領域であることも運用上の留意点です。

委託範囲の切り分け eBPF活用を外注する進め方

eBPFの活用を内製だけで進める場合、カーネル・ネットワーク・コンテナ基盤(Kubernetes等)の知識を横断的に持つ人材を確保する必要があります。該当領域の求人・育成には一定のリードタイムを要するため、まず外部パートナーと役割分担を決めるところから始めるのが現実的です。

委託範囲を検討する際は、次の3つの単位に分けて整理すると発注の準備がしやすくなります。

  • 現状把握:既存の監視・トレーシング基盤で可視化できていない領域(ネットワーク経路、コンテナ間通信、システムコールレベルの挙動など)の棚卸し
  • ツール選定・PoC(概念実証):Cilium・Falco・Tetragon等の既存OSSを組み合わせるか、要件に合わせたeBPFプログラムを新規開発するかの技術選定と小規模検証
  • 本番導入・運用設計:対象システムのカーネルバージョン確認、監視ダッシュボードとの連携、カーネルアップデート時の互換性確認プロセスの整備

発注準備では、対象システムのLinuxディストリビューション・カーネルバージョン・既存の監視ツール構成を一覧にしておくと、委託先が要件を把握しやすくなります。また、eBPFは比較的新しい技術領域であるため、委託先候補には対応実績や検証体制について具体的に確認することが望ましいです。

LASSICでは、システム開発・運用保守を通じてLinux基盤やコンテナ環境の構築・保守を受託しています*6。eBPFのような専門性の高い技術領域についても、既存の監視基盤・トレーシング基盤との連携を含めた形で相談を受け付けています。

まとめ eBPF活用を外注で進める3つの判断軸

本稿では、eBPFの仕組みと使いどころ、導入の論点、外注の進め方を整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、eBPFはカーネル内でプログラムを隔離実行し、アプリケーション改変なしに通信・システムコールを観測・制御できる技術です*1。第二に、ネットワーク可観測性・セキュリティ監視・Kubernetesネットワーキングが主な使いどころで、既存のAPMや分散トレーシングとは補完関係にあります*2。第三に、カーネルバージョン依存と専門性の高さが導入のハードルになるため、現状把握・PoC・本番導入の単位で委託範囲を切り分けることが、外注を成功させる判断軸になります*4

よくある質問

eBPFを使うには専用のハードウェアが必要ですか。

専用ハードウェアは不要です。eBPFはLinuxカーネルの機能であるため、対応するカーネルバージョンを満たすLinux環境であれば動作します*1。ただしCiliumのように機能を拡張するツールを使う場合は、そのツールが要求するカーネルバージョンを個別に確認する必要があります*4

WindowsサーバーでもeBPFは使えますか。

eBPFはもともとLinuxカーネルの機能であり、公式サイトで紹介されている主要なプロジェクトの多くもLinux環境を前提としています*1*2。Windows環境での対応状況は個別プロジェクトによって異なるため、対象OSが決まっている場合は委託先に対応可否を確認することが望ましいです。

既存の監視ツールを入れ替える必要がありますか。

入れ替えは必須ではありません。eBPFはアプリケーション改変なしに動作するため、既存のAPMやログ基盤と並行して導入し、カーネルレベルで見えていなかった領域を補う形で使えます*1。まず現状の監視基盤で可視化できていない範囲を洗い出し、そこにeBPFを充てる進め方が現実的です。

導入までの期間はどれくらいを見ておくべきですか。

対象システムの規模や既存基盤の状況によって幅があるため、一律の期間は示せません。まずは小規模なPoC(概念実証)でOSSツールの動作確認を行い、その結果を踏まえて本番導入のスケジュールを個別に見積もる進め方が実務的です。

社内にLinuxカーネルの専門家がいなくても導入できますか。

社内に専門家がいない場合は、外部パートナーへの委託を検討する余地があります。eBPFはカーネル内部の知識を要する技術領域であるため*1、現状把握からPoC、本番導入・運用設計までの一部または全部を委託することで、専門人材の確保にかかる負担を抑えられます。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

LASSICに相談するメリット

LASSICは元請(プライムベンダー)としてシステムの保守・運用を受託し、Linux基盤やコンテナ環境の構築・保守に携わってきました*6。eBPFのような専門性の高い技術についても、既存の監視・トレーシング基盤との連携を含めて要件整理から相談を受け付けています。


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元請(プライムベンダー)として、貴社の課題に合わせた体制構築・開発支援をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

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  1. *1 出典:eBPF公式サイト「What is eBPF?」(ebpf.io、確認日2026年)https://ebpf.io/what-is-ebpf/
  2. *2 出典:eBPF公式サイト「eBPF Applications Landscape」(ebpf.io、確認日2026年)https://ebpf.io/applications/
  3. *3 出典:Cilium公式サイト「Cilium – Cloud Native, eBPF-based Networking, Observability, and Security」(cilium.io、確認日2026年)https://cilium.io/
  4. *4 出典:Cilium公式ドキュメント「System Requirements」(Cilium 1.19、docs.cilium.io、確認日2026年)https://docs.cilium.io/en/stable/operations/system_requirements/
  5. *5 出典:The Linux Kernel documentation「BPF Documentation」(kernel.org、確認日2026年)https://docs.kernel.org/bpf/index.html
  6. *6 出典:LASSIC公式サイト(lassic.co.jp)https://lassic.co.jp/


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