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Knativeでサーバーレスコンテナ導入を外注
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- Knativeは、Kubernetes上でコンテナをリクエストに応じて自動スケール・ゼロスケールさせるための拡張基盤です。
- Knative Serving(自動スケール・リビジョン管理・トラフィック分割)とKnative Eventing(CloudEventsベースのイベント配信)という2つの領域で構成されます。
- 導入にはKubernetes運用の前提知識が必要なため、外注する場合は委託範囲の切り分けと発注前の要件整理が成果を左右します。
目次
常時起動のムダとトラフィック変動 — Knativeを検討する背景
Knativeとは、Kubernetes上でコンテナ化されたアプリケーションをサーバーレス的に稼働させるためのミドルウェア群である*1。公式ドキュメントは「Kubernetesベースのプラットフォームであり、モダンなサーバーレスワークロードを構築・デプロイ・管理するための一連のミドルウェアコンポーネントを提供する」と定義している*1。Kubernetes Custom Resource Definitions(CRD、Kubernetesを拡張するために追加で定義するリソースの仕組み)として実装されており、既存のKubernetesクラスタに追加する形で導入する。
Knativeを検討する背景には、Kubernetesクラスタ上でコンテナを常時起動し続けることのムダがある。トラフィックが少ない時間帯やバッチ的な処理でも、通常のKubernetes Deploymentはリクエストの有無にかかわらずPod(コンテナの実行単位)を稼働させ続ける構成が基本となる。Knative Servingは「トラフィックの増減に応じてリビジョンを自動的にスケールアップ・ダウンできる」機能を持ち*2、アイドル時にはゼロまでスケールダウンする*1。
もう一つの背景は、関数型サーバーレス(FaaS)やマネージドサーバーレスサービスをKubernetes上で自前運用したいという要望である。パブリッククラウドのマネージドサーバーレスは運用負荷が小さい一方、特定クラウドの実行環境に強く依存する。Knativeは「任意のKubernetesクラスタ上で稼働し、ベンダーロックインを避ける」ポータビリティを備える設計になっており*1、オンプレミスや複数クラウドにまたがる基盤でも同じ仕組みを使い回せる点が検討動機になる。
Serving・Eventing — Knativeを構成する2つの柱
Knativeは大きくKnative ServingとKnative Eventingという2つの領域で構成される*1。両者は独立したコンポーネントであり、必要な機能だけを選んで導入できる構成になっている。
Knative Serving:自動スケールとリビジョン管理
Knative Servingは、Service・Route・Configuration・Revisionという4つの主要リソースを扱う*1。設定(Configuration)を変更するたびに新しいRevision(特定時点のコードと設定のスナップショット)が生成される仕組みで、公式ドキュメントは「Revisionはイミュータブル(変更不可)なオブジェクトであり、有用な間は保持できる」と説明している*2。
トラフィック管理の面では、Route(ルーティング)リソースによって「ブルーグリーンデプロイメント・カナリアリリース・複数リビジョン間でのトラフィック分割」に対応する*1。旧バージョンと新バージョンのコンテナに任意の比率でリクエストを振り分けられるため、段階的なリリースの制御に使える。
Knative Eventing:CloudEventsベースのイベント配信
Knative Eventingは、イベント駆動アーキテクチャ(何らかの出来事をきっかけに処理を実行する設計)をアプリケーションに組み込むためのAPI群である*3。イベントの送受信には標準的なHTTP POSTリクエストを使い、CloudEvents仕様(イベントの形式を業界で標準化した仕様)に準拠する*3。
構成要素はSource(イベントを生成する送信元)・Broker(イベントを受け取り振り分ける中核コンポーネント)・Trigger(イベント属性に基づくフィルタリング)・Sink(イベントを受け取る消費側)の4つである*3。これらは「疎結合であり、独立して開発・デプロイできる」設計になっている*3。
FaaS・マネージドサーバーレスとの違い
AWS LambdaのようなFaaS(Function as a Service、関数単位でコードを実行するサービス形態)は、クラウド事業者が実行基盤を完全に管理し、利用者は関数コードのみを用意する。これに対しKnativeは、コンテナイメージを実行単位とし、Kubernetesクラスタの管理は利用者側(または委託先)に残る。CNCFは2025年10月8日の卒業発表で、Knativeを「Kubernetes上のサーバーレス・イベント駆動アプリケーションプラットフォーム」と位置づけ、「オートスケーリング・ルーティング・イベント配信・コンテナ構築といったインフラストラクチャの複雑さを抽象化する」ものと説明している*4。関数だけでなくコンテナ単位で任意の言語・ランタイムを持ち込める点が、FaaSとの実務上の違いになる。
コールドスタート・運用前提 — 導入前に押さえる論点
Knative導入を検討する際に押さえておくべき論点がいくつかある。過度に単純化せず、事実に基づいて複雑さを正確に把握することが判断の前提になる。
ゼロスケール後のコールドスタート
ゼロスケールまでスケールダウンしたリビジョンは、次のリクエストが来た時点で新たにコンテナを起動する。この起動時間(コールドスタート)は、コンテナイメージのサイズやアプリケーションの初期化処理に依存する。応答速度が事業要件に直結するサービス(決済確認・ログイン認証など)にKnativeを適用する場合は、最小インスタンス数を1以上に設定してゼロスケールを避けるといった設計判断が必要になる。
Kubernetes運用が前提になる
KnativeはKubernetesクラスタの上に構築するミドルウェアであり*1、Kubernetesクラスタ自体の構築・ノード管理・ネットワーク設計・監視体制が前提として必要になる。Kubernetesクラスタの運用には、マニフェスト管理・リソース設計・障害対応など複数領域の知識が求められ、Knativeの導入だけを切り出しても土台となるクラスタ運用の負荷は残る。内製で完結させる場合は、Kubernetes運用とKnative固有のリソース(Service・Route・Broker・Trigger等)の両方に習熟した人員体制を確保する必要がある。
マネージドサーバーレスとの比較で生じるオーバーヘッド
マネージドサーバーレスサービスであれば事業者側がインフラの大部分を管理するのに対し、Knativeを自前のKubernetesクラスタで運用する場合はクラスタのアップグレード・セキュリティパッチ適用・監視基盤の整備といった運用オーバーヘッドが利用者側(または委託先)に発生する。ポータビリティやベンダーロックイン回避というメリットと、この運用負荷はトレードオフの関係にある。
適材適所の判断
すべてのワークロードをKnative化すべきではない。常時高トラフィックが続く基幹系サービスは、ゼロスケールの恩恵が小さくコールドスタートのリスクだけが残る場合がある。トラフィックが断続的な社内向けAPI・イベント処理・バッチ的な非同期処理など、負荷変動が大きいワークロードほどKnativeの自動スケール・ゼロスケールの効果を得やすい。
設計・構築・運用 — 外注できる委託範囲の切り分け
Knative導入を内製で行うには、Kubernetesクラスタ運用・Knative Serving/Eventingのリソース設計・CI/CDパイプラインとの統合・監視基盤の構築という複数領域の知識が必要になる。これらを兼ね備えた人員を自社だけで確保するのが難しい場合、外部パートナーへの委託を検討する選択肢がある。
委託範囲を工程で切り分ける
外注時は「どこまでを委託し、どこを自社に残すか」を工程単位で切り分けることが発注準備の起点になる。代表的な切り分け方は次の3パターンである。
| 委託範囲 | 主な作業内容 | 自社に残る役割 |
|---|---|---|
| 設計のみ委託 | Knativeリソース設計(Service/Route/Broker構成)。アーキテクチャ選定。 | 構築・運用・監視の実施主体。 |
| 設計+構築を委託 | 上記に加えクラスタ構築、Knativeインストール、CI/CD統合。 | 日常監視・障害一次対応・アプリ開発。 |
| 運用まで委託 | 設計・構築に加え、監視・アップグレード・障害対応を含む継続運用。 | アプリケーションコードの開発・要件定義。 |
発注前に準備する情報
発注準備を誤ると、委託先とのすり合わせに追加の期間を要し、着手が遅れる。最低限、次の情報を事前に整理しておくと発注後のやり取りがスムーズになる。
- 対象ワークロードのトラフィック特性(常時稼働か、断続的か、ピーク時の想定量)
- 既存Kubernetesクラスタの有無・バージョン・クラウド事業者(新規構築か既存クラスタへの追加か)
- コールドスタート許容時間(応答速度要件が厳しいAPIかどうか)
- 運用体制(自社で監視・障害対応を担うか、委託先に継続運用まで任せるか)
設定変更のたびに新しいRevisionが生成される仕組み上*2、リリース頻度やロールバック方針(トラフィック分割によるカナリアリリースを使うか等)も事前にすり合わせておく論点になる。
内製と外注の工数差
Kubernetes運用の知識を持つ人員が社内に不在の場合、Knative固有の学習コストが追加でかかる。クラスタ設計・Knativeリソースの学習・既存CI/CDとの統合検証を並行して進める必要があり、専任担当者が他業務と兼務する体制では検証工程が長期化しやすい。外部パートナーに依頼した場合は、Kubernetes運用とKnativeの知見を持つ体制がすでにあるため、要件整理から構築までの工程を委託先の実績に基づいて進められる点が内製との違いになる。
まとめ:Knative導入外注の3つの判断軸
本稿では、Kubernetes上でコンテナをサーバーレス的に動かすKnativeの仕組みと導入論点、外注時の委託範囲を整理した。要点を3つに集約すると次の通りである。第一に、KnativeはServing(自動スケール・ゼロスケール・トラフィック分割)とEventing(CloudEventsベースのイベント配信)という2つの柱で構成され、FaaSと異なりコンテナ単位で運用する。第二に、コールドスタート・Kubernetes運用の前提・運用オーバーヘッドを踏まえ、すべてのワークロードに適用せず適材適所で判断する必要がある。第三に、外注する場合は設計・構築・運用のどこまでを委託するかを工程で切り分け、トラフィック特性や既存クラスタの状況を事前に整理してから発注することが、着手後の手戻りを防ぐ。
よくある質問
Knativeの導入にはKubernetesの運用経験が必須ですか。
Knativeは Kubernetesクラスタの上に構築するミドルウェアのため*1、クラスタ自体の構築・ノード管理・監視といったKubernetes運用の知識が前提になります。自社に経験者がいない場合は、設計・構築・運用のいずれかを外部パートナーに委託する方法があります。
KnativeとAWS LambdaなどのFaaSはどちらを選べばよいですか。
クラウド事業者が実行基盤を完全に管理する運用負荷の小ささを優先するならFaaSが向きます。特定クラウドへの依存を避けKubernetes上で自前運用したい場合や、関数単位ではなくコンテナ単位で任意のランタイムを使いたい場合はKnativeが選択肢になります*4。両者は前提が異なるため、優劣ではなく要件に応じた使い分けが基本です。
Knativeはどのくらい前から開発されているプロジェクトですか。
Knativeは2018年にGoogleで創設され、2021年にバージョン1.0がリリースされました。2022年にCNCF(Cloud Native Computing Foundation)のIncubatingプロジェクトとなり、2025年10月8日にCNCFのGraduated(卒業)ステータスへ昇格しています*4。
ゼロスケールにするとレスポンスが遅くなりますか。
ゼロスケール後の最初のリクエストでは、コンテナを新規に起動するコールドスタートが発生します。応答速度が重要なワークロードでは、最小インスタンス数を1以上に設定してゼロスケールを避ける設計が必要です。
Knative導入を外注する場合、運用まで任せることはできますか。
設計・構築だけでなく、監視やアップグレード対応を含む継続運用まで委託する契約形態も選べます。どこまでを委託するかは、自社の体制やトラフィック特性に応じて工程単位で切り分けて検討することが重要です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:Knative「What is Knative」(Knative公式ドキュメント)https://knative.dev/docs/
- *2 出典:Knative「Knative Serving overview」(Knative公式ドキュメント)https://knative.dev/docs/serving/
- *3 出典:Knative「Knative Eventing overview」(Knative公式ドキュメント)https://knative.dev/docs/eventing/
- *4 出典:Cloud Native Computing Foundation「Cloud Native Computing Foundation Announces Knative’s Graduation」(2025年10月8日)https://www.cncf.io/announcements/2025/10/08/cloud-native-computing-foundation-announces-knatives-graduation/