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2026.07.03 らしくコラム

DXのチェンジマネジメントと定着の進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

DX変革のチェンジマネジメントのイメージ

この記事のポイント

  • DXはツール導入だけでは進まず、現場の意識や業務のやり方を変えるチェンジマネジメントが欠かせません。
  • 変革が停滞する背景には、従来の文化・制度・慣習と、目的が共有されないまま進む現場の当事者意識の欠如があります。
  • 推進体制の構築とキーパーソンの巻き込み、経営の本気度の発信によって、変革は一時的な取り組みから定着した習慣へと変わります。

DXにチェンジマネジメントが必要な理由

現場定着・組織変革のイメージ

DXのチェンジマネジメントとは、新しいツールや仕組みの導入にとどまらず、業務の進め方・組織の役割・従業員の意識を段階的に変え、変革を組織に根づかせるための一連の活動を指します。経済産業省は、企業がDXを進めるにあたって参照すべき「デジタルガバナンス・コード」の中で、DXを製品・サービス・ビジネスモデルの変革だけでなく、業務そのものや組織・プロセス・企業文化・風土の変革を含む取り組みと位置づけています*1

図

DXのチェンジマネジメントを進める5つのステップ

多くの企業がクラウドサービスや業務システムの刷新に投資してきました。しかし、ツールを導入しただけでは業務は変わりません。なぜなら、実際に使うのは現場の従業員であり、従業員が新しい仕組みの必要性を理解し、行動を変えなければ変革は形骸化するからです。

経済産業省はDXレポートを通じて、老朽化した基幹システムがDXの足かせになる「2025年の崖」の問題意識を示し、産業界全体でのDX推進の必要性を訴えてきました*2。システムの刷新と同時に、それを使う組織側の変革が伴わなければ、投資の効果は限定的になってしまうのではないでしょうか。

チェンジマネジメントが必要とされる背景には、この「仕組みは変えたが人は変わらない」というギャップがあります。経営がDXを掲げても、現場の行動が変わらなければ変革は掛け声で終わるおそれがあります。

文化・制度・当事者意識 — 変革が進まない3つの要因

DXが計画通りに進まない企業には、いくつかの共通した要因が見られます。ここでは代表的な3つの要因を整理します。

従来の文化・制度・慣習が変革の重荷になる

デジタルガバナンス・コードは、従来の企業文化や制度、業務慣習がDXの阻害要因になり得ることを示しています*1。長年続いてきた承認フローや紙ベースの業務手順は、それ自体に合理性があった時期もあります。ただし環境が変わった後もそのまま残り続けると、新しいやり方を取り入れる際の摩擦になりがちです。

目的が共有されないまま施策だけが先行する

経営層や推進部門が新しいツールの導入を決めても、なぜそれが必要かという背景が現場に伝わっていないケースは少なくありません。目的が腹落ちしていない状態で「使ってください」と言われても、従業員にとっては業務が増えるだけの負担に感じられてしまいます。

現場の当事者意識が育たない進め方になっている

変革の設計を経営層や情報システム部門だけで完結させ、現場の意見を取り入れずに展開すると、従業員は「やらされている」という感覚を持ちやすくなります。当事者意識が育たないまま新しい仕組みを押しつけると、表面的な利用にとどまり、定着には至りにくいでしょう。

ビジョン共有と小さな成功 — チェンジマネジメントの基本の考え方

チェンジマネジメントの基本は、変革の目的を丁寧に共有し、小さな成功体験を積み重ねながら現場を巻き込んでいくことにあります。

変革の目的とゴールを具体的な言葉で示す

「DXを推進する」という抽象的なスローガンではなく、「この業務の入力作業を減らし、顧客対応に充てる時間を増やす」といった具体的なゴールを示すことが起点になります。目的が具体的であるほど、現場は自分の業務との関係を理解しやすくなります。

影響が小さい部署から始めて成功体験を作る

全社一斉に展開するのではなく、影響範囲が限定的な部署やチームから試験的に始める進め方が有効です。小さな範囲で成果を出し、その事例を社内で共有することで、他部署の抵抗感を和らげる効果が期待できます。

現場のキーパーソンを早い段階から巻き込む

各部署で影響力を持つ従業員を早期に巻き込み、変革の設計段階から意見を聞く姿勢が大切です。現場の実情を踏まえた設計にすることで、実際の運用に即した仕組みになりやすく、後工程での手戻りも抑えられます。

抵抗は変革の自然な一部 — 現場の不安に向き合う進め方

新しい仕組みに対する現場の抵抗は、変革につきものの自然な反応として捉える必要があります。デジタルガバナンス・コードも、変革への抵抗に向き合い、従業員の不安や懸念を解消していくことの重要性に触れています*1。抵抗を排除すべき障害ではなく、対話の入り口として扱う姿勢が求められます。

抵抗の背景には「仕事が奪われるのではないか」「新しい操作を覚えられるか不安だ」といった具体的な懸念が潜んでいることが多くあります。抵抗そのものを頭ごなしに否定すると、現場は本音を言わなくなり、表面上は従いながら実際には旧来のやり方を続けるという状態に陥りかねません。

有効な対処法は、まず不安や懸念を丁寧に聞き取る場を設けることです。そのうえで、変わらない部分と変わる部分を明確に伝え、教育・サポート体制を用意することで、不安を段階的に解消していきます。抵抗を力で抑え込むのではなく、対話を通じて理解を積み重ねる進め方のほうが、結果として定着までの時間を短縮できるのではないでしょうか。

推進体制・キーパーソン・評価 — 定着の4つの仕掛け

経営主導のDX推進体制のイメージ

変革を一過性の取り組みで終わらせず組織に根づかせるには、推進体制・キーパーソン・教育・評価という4つの仕掛けを組み合わせる必要があります。

仕掛け1:経営直轄の推進体制を置く

DX推進の責任者と体制を明確にし、部門横断の意思決定ができる立場に位置づけます。特定の部署だけの取り組みとして扱われると、他部署の協力を得にくくなり、全社展開の段階で行き詰まりやすくなります。

仕掛け2:現場キーパーソンをつなぎ役に据える

各部署のキーパーソンを推進体制と現場の橋渡し役として位置づけます。現場の疑問や懸念を吸い上げ、推進体制側の意図を現場の言葉で伝える役割を担ってもらうことで、情報の断絶を防げます。

仕掛け3:継続的な教育とサポートを用意する

導入時の一度きりの研修で終わらせず、運用開始後も問い合わせ窓口やフォローアップ研修を継続して用意します。操作に慣れるまでの期間は従業員によって差があるため、継続的な支援が定着の後押しになります。

仕掛け4:評価・インセンティブに新しい行動を組み込む

新しい仕組みを積極的に活用した従業員や部署を評価する仕組みを整えます。従来の評価基準のまま変革だけを求めても、従業員にとっては行動を変える動機が弱いままです。評価という制度面から後押しすることで、新しい行動が習慣として根づきやすくなります。

経営が担う3つの役割 — 発信・予算・失敗の許容

チェンジマネジメントは現場任せでは進みません。経営には、変革を後押しする固有の役割があります。

役割1:経営自身の本気度を継続的に発信する

経営がDXを重要課題として掲げるだけでなく、自らの言葉で繰り返し発信し続ける姿勢が現場に伝わります。経営層の発信が一度きりで終わると、現場は「一時的な号令だった」と受け止め、優先度を下げてしまいがちです。

役割2:変革に必要な時間と予算を確保する

チェンジマネジメントには、教育・体制構築・システム改修に一定の時間と予算がかかります。通常業務と並行して現場に変革を求める以上、経営が時間と予算の両面で裏付けを示すことが欠かせません。

役割3:試行錯誤の中での失敗を許容する

新しい取り組みには試行錯誤が伴い、想定通りに進まない場面も出てきます。失敗を厳しく追及する組織文化のままでは、現場は挑戦を避け、変革は表面的なものにとどまるでしょう。小さな失敗を許容し、そこから学ぶ姿勢を経営が示すことで、現場も前向きに新しいやり方に取り組めます。

外部の伴走を組み込むという選択肢

チェンジマネジメントを内製だけで進めようとすると、変革の設計・現場との対話・システム改修という複数の専門領域を同時に担う必要があります。推進担当者がこれらすべてを兼務するのは、通常業務と並行する形になり負荷が大きくなりがちです。

内製で対応する場合、組織変革の設計に詳しい人材、現場教育を担う人材、システム開発を担う人材をそれぞれ確保・育成する必要があります。育成には相応の期間を要するため、変革のスピードが遅れる要因にもなりかねません。

変革の伴走支援や研修設計、推進体制の運営を支えるPMO(プロジェクトマネジメントオフィス。プロジェクト全体の進捗・課題を横断的に管理する機能)の役割を外部パートナーに委ねると、自社で体制を一から整えるのに比べて、複数の変革プロジェクトで蓄積されたノウハウをすぐに活用できる利点があります。

特にシステム開発そのものを外部に委託すれば、情報システム部門や推進担当者は現場との対話やキーパーソンとの調整に時間を割きやすくなります。LASSICのように受託開発・運用保守を担う事業者では、新しいシステムを現場に定着させる工程まで見据えた開発支援に取り組むケースがあります。チェンジマネジメントを検討する際は、システム開発・運用の負荷を外部に委ねる選択肢も体制設計に組み込んでおくとよいでしょう。

まとめ:DXのチェンジマネジメントを進める3つの判断軸

本稿では、DXにおけるチェンジマネジメントと定着の進め方を経営視点で整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、DXはツール導入だけでは進まず、業務・組織・企業文化の変革を含むチェンジマネジメントが不可欠です。第二に、変革が停滞する背景には従来の文化・制度・慣習と、目的が共有されないままの現場の当事者意識の欠如があります。第三に、推進体制の構築とキーパーソンの巻き込み、評価制度の見直し、そして経営自身の本気度の発信が、変革を一過性の取り組みから定着した習慣へと変える鍵になります。

LASSICに相談するメリット

LASSICは元請としてシステムの受託開発・運用保守を担う立場から、新しい仕組みを現場に定着させるまでを見据えた開発支援に取り組んでいます。DXのチェンジマネジメントに伴うシステム改修や運用負荷の軽減について、貴社の状況に合わせて相談を承ります。まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

チェンジマネジメントはどのタイミングから始めればよいですか。

システムやツールの選定と並行して、企画の初期段階から始めることをおすすめします。導入が決まってから現場への説明を始めると、準備期間が不足し、現場の不安を解消しきれないまま展開することになりがちです。企画段階でキーパーソンを巻き込んでおくと、後の展開がスムーズになります。

現場の抵抗が強い場合はどう対応しますか。

抵抗を否定せず、まず不安や懸念の内容を具体的に聞き取ることが出発点になります。仕事内容が変わることへの不安なのか、操作を覚える負担への懸念なのかによって、必要な対処は異なります。聞き取った内容に応じて教育やサポート体制を調整すると、抵抗が徐々に和らぐ傾向があります。

定着までにはどの程度の期間を見込めばよいですか。

組織の規模や変革の範囲によって幅があり、一律の期間を示すことは難しいのが実情です。小さな部署から始めて成功体験を積み重ね、段階的に対象を広げる進め方であれば、社内の理解も比例して深まりやすくなります。焦って全社一斉に進めるより、無理のない範囲で拡大するほうが結果的に定着しやすいでしょう。

経営層の関与が薄いとどのような問題が起きますか。

現場は「一時的な取り組みだ」と受け止め、優先度を下げてしまう傾向があります。予算や時間の裏付けがないまま現場に変革を求めても、通常業務との両立が難しく、形骸化しやすくなります。経営自身が継続的に発信し、時間と予算を確保する姿勢が変革の推進力になります。

システム開発を外部に委託すると社内にノウハウが残りませんか。

委託範囲と社内に残すべき知見を切り分けて設計すれば、この懸念は軽減できます。システムの開発・保守は外部パートナーに委ね、現場との対話やキーパーソンとの調整といった変革推進の中核は社内に残すという役割分担が一般的な考え方です。委託先との連携方法を事前にすり合わせておくとよいでしょう。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html
  2. *2 出典:経済産業省「デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html


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