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2026.07.06 らしくコラム

ClickHouseで分析DBを外注導入する

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

分析ダッシュボードのイメージ

この記事のポイント

  • ClickHouseの列指向ストレージとMergeTreeエンジンが大規模集計を高速化する仕組みを整理します。
  • BigQueryやRedshiftなど既存のクラウドDWHとの役割分担・使い分けの考え方を示します。
  • セルフホストとClickHouse Cloudの違い、外注と内製をどう判断するかの軸を解説します。

ClickHouseとは何か 列指向ストレージの基本構造

データセンターのサーバー

ClickHouseとは、オープンソースの列指向(column-oriented)SQLデータベース管理システムで、OLAP(Online Analytical Processing、大規模データに対する集計・分析処理)向けに設計されたものを指します*1。行指向データベースが1行分のデータをまとめて保存するのに対し、ClickHouseは列ごとにデータを連続して保存する構造を持ちます*1

図
行指向データベースと列指向のClickHouseの保存構造の違い

分析クエリは数十億から数兆行を対象に、集計や文字列処理などの複雑な計算を1秒未満で返すことが求められます*1。列指向ストレージであれば、クエリに必要な列だけをディスクから読み込めるため、対象外の列を読み込む無駄が生じません*1。この特性が、ログ分析やイベントデータの集計といった用途でClickHouseが選ばれる背景になっています。もっとも、列指向構造は行全体の更新・単票取得には不向きであり、基幹システムの取引処理(OLTP)を置き換える設計ではない点は押さえておく必要があります。

MergeTreeエンジンとプライマリインデックスの仕組み

ClickHouseの中核を担うテーブルエンジンがMergeTreeです。データ挿入のたびに新しいデータパーツが作成され、バックグラウンドプロセスが既存のパーツと定期的にマージしていく構造を取ります*2。この仕組みにより、書き込みを都度整列し直すコストを抑えながら、ストレージ効率を保っています。

プライマリインデックス(primary index)も特徴的です。行単位ではなく、8192行程度で構成される「granule」というブロック単位でインデックスを持つため、膨大な行数を扱ってもインデックス自体がメインメモリに収まりやすくなります*2。各データパーツの先頭行のキー値だけを記録する疎な(sparse)インデックス構造のため、行指向RDBの密なB-treeインデックスとは設計思想が異なります*2

加えて、パーティション機能によって、クエリの条件に合致しないパーティションを読み取り対象から外すパーティションプルーニングが働きます*2。これらが組み合わさることで、大規模テーブルに対する範囲集計・絞り込みクエリの応答が速くなる設計になっています。

列指向がもたらす圧縮効率とディスクI/O削減

ClickHouseは列の値を列順(column-order)で書き込みます。同種の値が隣接して並ぶため、圧縮アルゴリズムが連続パターンを効率的に扱いやすくなり、行指向で保存した場合より圧縮率が高まりやすい構造です*3。圧縮効率を左右する要素として、公式ドキュメントはORDER BY句で指定する並び替えキー、列のデータ型、圧縮コーデックの3点を挙げています*3

公式のStack Overflowデータセットを用いた検証では、データ型の最適化と並び替えキーの調整を適用した結果、圧縮後サイズが50.16GiBから25.15GiBへおよそ半減した例が示されています*3。この数値は特定データセットでの検証結果であり、テーブル設計やデータ特性によって効果は変動する前提で参照する必要があります。圧縮率の向上はディスクI/Oの削減に直結し、結果としてクエリ実行速度にも影響します*3

大規模集計クエリを高速化するOLAP設計

OLAPとは、大規模データセットに対して集計・文字列処理・算術計算などを行うSQLクエリ全般を指す概念です*1。行指向のOLTP(オンライントランザクション処理)が少数行への高頻度な読み書きを担うのに対し、OLAPは広い範囲の行を横断して集計する処理を担います*1

公式ドキュメントでは、1億行を92ミリ秒で処理し、1秒あたり10億行超・約7GBのデータ転送に相当する処理能力を示した例が紹介されています*1。この数値も検証環境・データセットに依存する参考値であり、実運用のスループットはテーブル設計やクラスタ構成によって変わります。列指向ストレージとMergeTreeのインデックス設計、疎なインデックスによるパーティションプルーニングが組み合わさることで、こうした大規模集計の高速化が実現されています*1*2

リアルタイム分析・イベント分析での活用場面

ClickHouseは、毎秒数百万行規模のデータ取り込みに対応できるリアルタイム分析データベースとして位置づけられています*4。公式サイトが挙げる用途には、不正検知や脅威防止といったセキュリティ領域、ユーザー向けダッシュボードやアプリケーションでの活用、ユーザー行動分析、広告・マーケティング分析、Eコマース最適化、サプライチェーン最適化、ゲーム分析などが含まれます*4

これらは共通して、Webサイトのアクセスログやアプリケーションのイベントログなど、時系列で発生し続けるイベントデータを大量に蓄積し、任意の切り口で集計・可視化する要件を持ちます。導入事例として、AhrefsやLangChain、Vimeoなどの企業名が公式サイトで紹介されています*4。自社サービスのイベント分析基盤を検討する際は、こうした用途との適合度を確認したうえで設計を進めることが望ましいといえます。

シャーディングとレプリケーションによる水平スケーリング

データベース技術のイメージ

単一サーバーの容量やスループットを超える規模になると、ClickHouseはシャーディング(sharding)による水平スケーリングに対応します。データを複数のシャードに分割して保持し、Distributedテーブルエンジンを介することで、複数シャードにまたがるクエリを1つのテーブルとして透過的に扱えます*5

レプリケーション(replication)はReplicatedMergeTreeテーブルエンジンによって実現します。同一データを複数ノードに複製することで、単一ノード障害時にもデータへのアクセスを継続できる構成を組めます*5。公式ドキュメントは、シャードのみの構成ではノード障害時にシステムが機能停止するリスクがあるとし、より高い可用性を求める場合はシャーディングとレプリケーションを組み合わせる必要があると説明しています*5

水平スケーリングの利点として、データが複数ホストに分散されることでノードあたりのストレージ使用量が減り、I/Oも分散される点が挙げられています*5。一方で、シャーディングキーの設計やクラスタ構成の管理は運用上の検討事項が多く、要件に応じた設計判断が必要になります。

行指向RDB・クラウドDWHとの使い分け

ClickHouseの列指向・OLAP設計は、MySQLやPostgreSQLのような行指向RDBとは異なる役割を担います。行指向RDBは、注文処理や会員管理のように少数行を高頻度に読み書きするOLTP用途に適しています*1。対してClickHouseは、多数の列を持つテーブルから一部の列だけを使い、大量データを集約するクエリに向いています*6

クラウドDWH(BigQuery、Redshiftなど)も列指向・分析用途を担う点ではClickHouseと重なりますが、提供形態や運用モデルが異なります。クラウドDWHはクエリ課金やストレージ課金を中心としたフルマネージド型のサービスとして提供されるケースが多く、ClickHouseはオープンソースソフトウェアとして自社インフラに構築することも、マネージドサービス(ClickHouse Cloud)として利用することも選べます*7。低レイテンシのリアルタイム分析やアプリケーション組み込み型の分析基盤を重視する場合はClickHouse、既存のクラウド基盤との統合やバッチ的な大規模分析を重視する場合はクラウドDWHという住み分けで検討されることが多いといえます。

観点 行指向RDB(OLTP) ClickHouse(OLAP)
データ保存の単位 行単位で全列をまとめて保存 列単位で連続して保存*1
得意な処理 少数行への高頻度な読み書き。
注文・会員情報などの更新処理
多数列から一部の列を使う大規模集計*6
インデックス構造 行単位の密なインデックスが中心 granule単位の疎なプライマリインデックス*2
典型ユースケース 基幹システムのトランザクション処理 イベント分析・ログ分析・ダッシュボード*4

セルフホストとClickHouse Cloud 外注と内製の判断軸

ClickHouseは、自社インフラにインストールして運用するセルフホスト(OSS版)と、開発元が提供するマネージドサービスのClickHouse Cloudのいずれかで利用します*7。ClickHouse Cloudでは、外部データソースを接続するClickPipes、クエリ実行や可視化を行うSQLコンソール、SSO・多要素認証・RBAC(ロールベースアクセス制御)などのセキュリティ機能、負荷に応じた自動スケーリング、バックアップ・復旧機能が提供されます*7。GDPRやHIPAA、SOC2といったコンプライアンス認証への対応も含まれます*7

内製でセルフホスト運用を行う場合、クラスタ構成の設計、シャーディングキーの決定、レプリケーション構成、モニタリング、バージョンアップ対応など、専門知識を要する作業が継続的に発生します。MergeTreeのパーティション設計やプライマリキーの選定を誤ると、期待した集計速度が得られないまま運用を続けることになりかねません。こうした設計・運用の巧拙が分析基盤全体の使い勝手を左右するため、要件定義から運用設計までを外部の専門パートナーに委ねる選択肢が検討されます。

内製と外注のどちらを選ぶかは、社内にMergeTreeエンジンやクラスタ運用の知見を持つ人員を確保できるか、初期構築後の保守体制を継続的に維持できるかで判断が分かれます。専門パートナーに依頼する場合は、要件定義・テーブル設計・クラスタ構築・運用保守までを一貫して任せられる体制かどうかを確認することが、導入後の手戻りを防ぐ観点で重要になります。

まとめ:ClickHouse導入における3つの判断軸

本稿では、ClickHouseの列指向ストレージとMergeTreeエンジンの仕組み、OLAP集計・リアルタイム分析での活用場面、他のデータベース・DWHとの使い分けを整理しました。要点を3つに集約すると、第一に列指向構造とMergeTreeのインデックス設計が大規模集計を速くする技術的な土台になっている点、第二にイベント分析やダッシュボード用途では行指向RDBやクラウドDWHとは異なる役割を担う点、第三にセルフホストとClickHouse Cloudのどちらを選ぶか、内製と外注のどちらで運用体制を構築するかが導入成否を分ける点です。自社のデータ量・更新頻度・運用体制を踏まえて、これら3つの軸で検討を進めることが求められます。

LASSICに相談するメリット

LASSICは元請(プライムベンダー)としてシステム開発・保守運用を受託する体制を持ち、要件定義からインフラ構築・運用設計までを一貫して支援します。ClickHouseのようなOLAP基盤の導入では、テーブル設計やクラスタ構成の初期判断が後の運用効率を左右するため、設計段階からの技術支援が有効です。

よくある質問

ClickHouseはどのようなデータ規模から導入を検討すべきですか。

明確なしきい値は公式には示されていませんが、行指向RDBでの集計クエリが遅くなり始めた段階が検討の目安になります。ログやイベントデータが継続的に積み上がり、多数列の一部だけを使った集計を高頻度に実行する要件がある場合に適合しやすい設計です*6

セルフホストとClickHouse Cloud、どちらから始めるのが現実的ですか。

運用体制がまだ整っていない場合は、ClickHouse Cloudから始める選択肢があります。ClickPipesやSQLコンソール、自動スケーリングなどのマネージド機能が提供されるため、クラスタ構築・保守の負担を抑えられます*7。社内に運用知見を蓄積したい場合はセルフホストも選択肢になりますが、その場合は構成設計を担う人員の確保が前提になります。

既存のBigQueryやRedshiftと併用することはできますか。

併用は可能です。ClickHouseは低レイテンシのリアルタイム分析やアプリケーション組み込み型の用途で使われる一方、クラウドDWHは既存のクラウド基盤とのデータ統合やバッチ分析で使われることが多く、用途に応じて役割を分ける設計が検討されます*7。どちらか一方に統一する前提では考えなくてよい構成です。

シャーディングとレプリケーションはどちらも設定する必要がありますか。

データ量とサーバー1台あたりの容量次第では、シャーディングなしでも運用できます。ただし可用性を重視する場合、シャードのみの構成では単一ノード障害時にシステムが機能停止するリスクがあるため、レプリケーションと組み合わせる構成が公式ドキュメントで推奨されています*5

ClickHouseの導入を外注する場合、どの工程から依頼できますか。

要件定義・テーブル設計・クラスタ構築・運用保守のいずれの工程からでも依頼できます。特にMergeTreeのプライマリキー設計やパーティション設計は集計速度に直結するため、設計段階から専門パートナーに相談することで、導入後の手戻りを防ぎやすくなります*2

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:ClickHouse「What is ClickHouse?」(ClickHouse Docs)
  2. *2 出典:ClickHouse「MergeTree」(ClickHouse Docs)
  3. *3 出典:ClickHouse「ClickHouse Compression」(ClickHouse Docs)
  4. *4 出典:ClickHouse「Real-Time Analytics」(ClickHouse公式サイト)
  5. *5 出典:ClickHouse「Scaling out」(ClickHouse Docs)
  6. *6 出典:ClickHouse「What is a columnar database?」(ClickHouse Docs)
  7. *7 出典:ClickHouse「ClickHouse Cloud」(ClickHouse Docs)


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