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2026.07.10 らしくコラム

AI開発を外注する際の契約・著作権・データ利用の留意点

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

契約のイメージ

この記事のポイント

  • 本稿はAI開発を外部委託する際に契約で確認したい著作権・データ利用の留意点を、文化庁や経済産業省などの公的資料をもとに整理したものです。法的助言を目的とするものではなく、個別の判断は弁護士等の専門家にご確認いただくことをおすすめします。
  • 学習用データの利用は著作権法第30条の4、生成物の著作権侵害リスクは文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)が判断の枠組みを示しています。
  • 経済産業省は学習済みモデルなどの権利帰属を契約で個別に定める考え方を示しており、個人情報を扱う場合は委託先の監督義務も別途生じます。

AI開発の外注で契約時に著作権・データ利用を確認する理由

データ保護のイメージ

生成AIや機械学習を用いたシステムの開発を外部のパートナーに委託する企業が増えています。AI開発の外注契約では、通常のシステム開発委託と同様に検収基準や責任分担を定めるだけでなく、学習用データの権利処理や生成物の著作権など、AI特有の論点をあらかじめ確認しておく必要があります。

図
図:AI開発の外注契約で確認したい5つの段階(要件定義→データ確認→開発・学習→検収→運用開始)

本稿では、成果物の権利帰属、学習用データの扱い、生成物の著作権侵害リスク、秘密保持、個人情報・個人データのガバナンス、契約類型と検収・責任分担という6つの視点を、文化庁や経済産業省、個人情報保護委員会が公表している資料に基づいて整理します。あくまで一般的な留意点の整理であり、法的助言を目的としたものではない点にご留意ください。個別の契約内容や取引の実情に応じた判断は、弁護士等の専門家にご確認いただくことをおすすめします。

成果物の権利帰属——プログラムと学習済みモデルは誰のものか

AI開発を外注する契約でまず論点になるのは、開発されたプログラムや学習済みモデルの権利が発注者・受注者のどちらに帰属するかという点です。経済産業省が公表している「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」(AI編)は、学習用データセット、学習用プログラム、学習済みモデル(推論プログラムとパラメータの組み合わせ)、そこから派生する再利用モデルという要素ごとに、権利や利用条件の取り決めが必要になるという考え方を示しています*3

学習済みモデルは、通常のソフトウェア開発における著作物のように創作性の有無を一様に判断しにくい面があります。同ガイドラインは、開発プロセスをアセスメント・PoC(概念実証)・開発・追加学習という段階に分け、段階ごとに検収の可否や利用範囲を確認しながら契約を組み立てる考え方を提示しています*3。段階を追って契約条件を確定していく方式は、成果物の性能をあらかじめ保証しにくいというAI開発の特性を踏まえたものといえます。

2025年2月に経済産業省が公表した「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」は、生成AIサービスを利用する側が確認すべき項目として、ベンダーが提供するアウトプット(生成物)の知的財産権の帰属や第三者への提供可否などを挙げています*4。委託する側としては、成果物のうちどの部分を自社が独占的に利用でき、どの部分をベンダーが他のプロジェクトでも再利用できるのかを、契約書上で切り分けて確認しておくことが実務上のポイントになります。

学習用データの権利・ライセンスと第三者データの扱い

AI開発を外注する場面では、発注者が保有するデータをベンダーに提供して学習させる場合や、ベンダー側が別途収集したデータを利用する場合など、複数の主体のデータが混在することがあります。データの種類によって確認すべき論点は異なります。

データの種類 主な論点 契約で確認したい点
自社が権利を持つデータ 提供範囲を超えた目的外利用 利用目的・保存期間・返還や消去の方法
第三者から許諾を得たデータ ライセンス条件との不整合 再委託先への提供可否、ライセンス範囲との突合
公開されているデータ 著作権法30条の4の適用範囲 情報解析以外の用途で使っていないか
個人情報を含むデータ 委託先の監督義務 委託先選定基準・監督方法・再委託時の扱い

著作権法第30条の4は、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず著作物を利用できると定めています*2。多数の著作物その他の大量の情報から言語・音・影像などの要素に係る情報を抽出し、比較・分類等の解析を行う「情報解析」の用に供する場合は、この規定の対象となる場合の一つとして条文に挙げられています*2。ただし、著作物の種類・用途や利用の態様に照らして著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでないとするただし書きが置かれています*2

文化庁が2024年3月15日に公表した「AIと著作権に関する考え方について」では、この享受目的の有無をどう考えるかについて、学習に用いる情報から個々の著作物の創作的表現を出力させることを目的とするような、享受目的が併存する行為は、同条の適用対象とならない場合があるという考え方が示されています*1。第三者のデータを学習に用いる際は、権利者からの許諾が必要な範囲かどうかをベンダーとともに整理し、再配布や再委託の可否といったライセンス条件を契約書に反映しておくことが望まれます。

生成物の著作権侵害リスク——文化庁が示す類似性・依拠性の判断枠組み

学習段階の論点とは別に、AIが生成した文章・画像・プログラムなどが既存の著作物と似ている場合に、著作権侵害に当たらないかという論点があります。文化庁「AIと著作権に関する考え方について」は、AI生成物についても、既存の著作物との類似性(表現が似ていること)と依拠性(既存の著作物を基にしたと認められること)の両方が認められる場合に、通常の著作権侵害と同様の基準で判断されるという考え方を整理しています*1

同資料では、特定のクリエイターの作風や画風そのものは著作物として保護される対象ではないため、作風が似ているだけでは著作権侵害には直ちに当たらないという考え方も示されています*1。一方で、既存の著作物を強く意識させる指示を生成AIに与えるなど、依拠性が認められやすい使い方をした場合は、侵害リスクが相対的に高まるとも整理されています*1

外注契約においては、生成物が第三者の権利を侵害した場合の責任分担をどう定めるかが実務上の課題になります。経済産業省の契約チェックリストは、生成AIの利用者側がアウトプットを利用する際に、第三者の権利侵害が判明した場合の対応や責任の分配について確認する項目を設けています*4。契約書に損害賠償の範囲や免責の考え方を明記しておくことに加え、個別のリスク評価については弁護士等の専門家へ相談することをおすすめします。

秘密保持とデータの目的外利用・再利用の可否

知的財産のイメージ

AI開発の委託では、発注者の営業秘密や技術情報、顧客データなどをベンダーに開示する場面が少なくありません。これらの情報が学習データとして蓄積され、他社向けのモデル開発や汎用的なサービス改善に転用されると、意図しない形で情報が外部に共有される懸念があります。

経済産業省の契約チェックリストは、ベンダーに提供したデータがどの範囲まで利用されるか、他の顧客向けの学習に転用されないかを確認する項目を、インプット関連の確認事項として挙げています*4。秘密保持条項では、開示情報の利用目的を当該プロジェクトに限定する旨や、契約終了後の情報の消去・返還、再委託先への開示範囲などを具体的に定めておくことが望まれます。

あわせて、学習に用いたデータや中間生成物をベンダーが自社の技術資産として保持・再利用できるかどうかも、契約前に整理しておきたい点です。経済産業省の契約ガイドラインは、学習用データセットや学習用プログラムについて、提供したデータそのものの利用範囲と、そこから得られた知見・ノウハウの利用範囲を分けて考える必要があるという考え方を示しています*3

個人情報・個人データのガバナンス——委託先管理で確認する点

学習データや業務データに個人情報が含まれる場合は、個人情報保護法上の委託先管理も論点になります。個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)は、個人データの取扱いを委託する事業者に対し、委託先において委託元と同等の措置が講じられるよう、委託先を監督する義務を求めています*5。具体的には、委託先の選定基準を満たしているかの事前確認、委託契約における取扱状況の把握条項の設定、定期的な監査等による実施状況の確認という観点が挙げられています*5

個人情報保護委員会は2023年6月2日、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しました*6。この中では、質問や作業指示(プロンプト)に個人情報を含めて生成AIサービスへ入力する場合、その利用が本来の利用目的の範囲内にとどまっているかを確認する必要があるとされています*6。また、入力した情報が生成AIサービス側の機械学習に用いられる可能性がある点にも注意を促しています*6。AI開発を外注し、開発・検証環境で実データを使う場合は、個人情報を含むデータの提供方法や、委託先での取扱範囲についてあらためて確認しておくことが望まれます。

契約類型(準委任・請負)とAI開発特有の検収・責任分担

システム開発の委託契約は、成果物の完成を約束する請負契約と、業務の遂行そのものを約束する準委任契約に大別されます。AI開発では、学習を重ねても目標とする精度や性能に達するとは限らないという特性があるため、契約類型の選び方や検収基準の設計に、通常のシステム開発とは異なる配慮が求められます。

経済産業省の契約ガイドラインは、この特性を踏まえ、開発プロセスをアセスメント・PoC・開発・追加学習の段階に分け、各段階の目的や成果物の性質に応じて請負・準委任を組み合わせて設計する考え方を提示しています*3。PoCの段階では性能の実現可能性を検証する業務そのものを委託範囲とし、開発段階に進む際にあらためて成果物の仕様や検収基準を合意し直すという、多段階の契約設計が想定されています*3

検収の場面では、生成物の品質をどのような基準で確認し、基準に達しない場合にどちらが対応するのかをあらかじめ取り決めておくことも欠かせません。経済産業省の契約チェックリストは、AIサービスの提供者に完成義務があるかどうか、性能が想定に達しなかった場合の対応方法を確認する項目を設けています*4。契約類型の選定や検収条件の細部は取引ごとの事情によって異なるため、契約書の作成・レビューにあたっては弁護士等の専門家に相談することが望まれます。

まとめ:AI開発を外注する契約で確認したい留意点

本稿ではAI開発を外注する際に契約で確認しておきたい著作権・データ利用の留意点を、公的資料に基づいて整理しました。成果物の権利帰属は経済産業省の契約ガイドラインが示すように要素ごとに取り決める事項であり*3、学習用データの利用は著作権法第30条の4とそのただし書きの範囲を踏まえて検討する必要があります*2。生成物の著作権侵害リスクは類似性・依拠性という基準で判断されるという考え方が文化庁から示されており*1、個人情報を扱う場合は委託先の監督義務も別途生じます*5。契約類型や検収基準の設計にも、AI開発特有の不確実性を踏まえた配慮が求められます*3*4。これらはいずれも一般的な留意点の整理であり、実際の契約書作成にあたっては取引の実情に応じて弁護士等の専門家にご確認いただくことをおすすめします。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、AI・生成AIを活用したシステム開発の外部委託において、要件定義から開発体制の構築まで発注企業の実務担当者に寄り添って支援する体制を整えています。契約条件の論点整理をご相談いただいた場合は、著作権やデータ利用、個人情報の取扱いに関する確認ポイントの棚卸しをお手伝いします。契約書そのものの作成・レビューについては、必要に応じて弁護士等の専門家との連携もご案内しています。AI開発の外注を検討されている企業様は、要件整理の段階からご相談いただけます。

よくある質問

AI開発を外注する際、学習済みモデルの著作権は発注者と受注者のどちらに帰属しますか。

学習済みモデルなど成果物の権利帰属は、法律によって一律に定まるものではなく、契約で個別に取り決める事項とされています。経済産業省の契約ガイドラインは、学習用データセット・学習済みモデル・派生モデルといった要素ごとに帰属や利用条件を取り決める考え方を示しています*3。契約書の作成にあたっては、弁護士等の専門家にご確認いただくことをおすすめします。

委託先が学習に使うデータに著作権があるものが含まれる場合、無許諾で使えますか。

著作権法第30条の4は、著作物に表現された思想・感情の享受を目的としない情報解析等の利用について、著作権者の利益を不当に害しない限り許諾なく行えるとしています*2。ただし、特定の著作物の創作的表現を出力させることを目的とするなど享受目的が併存する場合は、この規定の対象外となり得るとされています*1。個別の利用形態については専門家への確認が望ましいです。

AIが生成した文章や画像が既存の著作物に似ている場合、どのように侵害の有無を判断しますか。

文化庁「AIと著作権に関する考え方について」では、AIを利用した生成物についても、既存の著作物との類似性と依拠性が認められる場合には、人が作成した場合と同様の基準で著作権侵害が判断されるという考え方が示されています*1。特定の作者の作風のみが似ている場合は、作風自体が著作物に当たらないため直ちに侵害とはならないと整理されていますが、個別の判断は専門家への相談が適切です。

業務委託先に個人情報を含むデータを渡してAI開発を依頼する場合、何を確認すればよいですか。

個人情報保護法は、委託先において委託元と同等の措置が講じられるよう、委託先の選定・契約内容・取扱状況の把握を委託元に求めています*5。生成AIサービスにプロンプトとして個人情報を入力する場合も、利用目的の範囲内かどうかや、第三者提供に該当しないかを確認する必要があるとされています*6

契約類型は請負と準委任のどちらを選ぶべきですか。

AI開発は学習結果の性能をあらかじめ保証しにくい特性があるため、経済産業省の契約ガイドラインはアセスメント・PoC・開発・追加学習といった段階を踏み、各段階の目的に応じて請負・準委任を組み合わせる考え方を紹介しています*3*4。検収基準や責任分担の設計は取引ごとの個別性が高いため、契約締結前に弁護士等の専門家へ相談することが推奨されます。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(文化審議会著作権分科会法制度小委員会、令和6年3月15日)(https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html
  2. *2 出典:著作権法第30条の4(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048
  3. *3 出典:経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」(AI編、2018年6月公表)
  4. *4 出典:経済産業省「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」(2025年2月公表)
  5. *5 出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
  6. *6 出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日)(https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/


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