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2026.08.27 らしくコラム

米国ADAのWeb規則、延期後の期限と5つの例外




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 技術基準が条文に入った:WCAG 2.1レベルAAが州・地方政府のウェブとアプリの技術基準と定められました*1。
  • 期限は1年ずつ延びた:2026年4月20日の暫定最終規則で、2027年4月26日と2028年4月26日になりました*1。
  • システムの勘どころ:受託して作った画面も対象です。納品物の基準として先に握る必要があります*1。

※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。

アクセシビリティの基準が、努力目標ではなく期限つきの法的要件になった例があります。米国司法省が2024年4月24日に連邦官報で公表した、障害を持つアメリカ人法(ADA)第2編に関する規則です*1。

この規則は、州・地方政府が提供するウェブコンテンツとモバイルアプリについて、WCAG 2.1のレベルAAを技術基準として定めています*1。そして2026年4月20日、司法省は暫定最終規則(IFR)を公表し、遵守の期限を延長しました*1。

日本の企業にとっては海外の公的機関の話に見えますが、規則は州・地方政府のために第三者が作ったコンテンツやアプリも対象としています*1。受託して画面を作る立場であれば、納品物の基準として直接に効いてくる部分です。本記事では、期限、対象、例外を整理します。制度の解釈が要る部分は規則の本文と専門家の確認を経て進めてください。

ドームを持つ米国の州議会議事堂の外観

期限は延長された——2027年と2028年

まず日付です*1。

米国司法省のADA第2編に関するWeb規則が2024年4月24日に連邦官報で公表され、2026年4月20日の暫定最終規則により人口5万人以上の州・地方政府の遵守期限が2027年4月26日へ、人口5万人未満と特別区政府が2028年4月26日へ延長されたこと、技術基準がWCAG 2.1レベルAAであり州や地方政府が提供・利用可能にするウェブコンテンツとモバイルアプリが対象で第三者に委託している場合も含まれること、限定的な例外としてアーカイブされたコンテンツ・期限前から掲載していた文書ファイル・契約等によらない第三者投稿・パスワードで保護された個別文書・期限前のソーシャルメディア投稿の5つが置かれ、例外に当たっても当事者に合わせた提供の義務は残ることを整理した図

2024年4月24日に連邦官報で規則が公表され、州・地方政府はその公表から3年または4年以内に、ウェブコンテンツとモバイルアプリをWCAG 2.1レベルAAに適合させることとされていました*1。

その後、2026年4月20日に司法省の暫定最終規則が連邦官報で公表され、期限が延長されました*1。人口の合計が5万人以上の州・地方政府は2027年4月26日、人口が5万人未満の公的機関および特別区政府2028年4月26日です*1。

表1:規模別の遵守期限(暫定最終規則による延長後)
州・地方政府の規模 遵守期限 補足
5万人以上 2027年4月26日 当初は2026年4月24日だった
0〜49,999人 2028年4月26日 当初は2027年だった
特別区政府 2028年4月26日 人口によらず同じ扱い
学区(city school district) 市の人口による 学区は特別区政府ではない
学区(county school district) 郡の人口による 同上

規模の判定に使うのは人口です*1。多くの政府では2020年の国勢調査のデータから確認でき、市警察や市立図書館のように単独の人口を持たない部局は、それを運営する市の人口を見るとされています*1。独立学区(independent school district)については、直近のSmall Area Income and Poverty Estimatesの人口推計を用いるとされています*1。

期限を過ぎたあとも、州・地方政府はウェブコンテンツとモバイルアプリがWCAG 2.1レベルAAに適合していることを維持し続けることとされています*1。一度作って終わりではなく、更新のたびに問われる形です。

受託して作ったものも対象に入る

この規則が日本の受託事業者に関わるのは、対象の定め方によります*1。

規則は、州・地方政府が提供する、または利用可能にするウェブコンテンツに適用されます*1。そして、州・地方政府のために誰か他の者がウェブコンテンツを提供・利用可能にする取り決めがある場合も含むとされています*1。

ファクトシートは例を挙げています*1。郡のウェブページが郡立公園の住所と営業時間を掲載している場合、そのページを地元のウェブ制作会社が作り更新していたとしても、WCAG 2.1レベルAAを満たす必要があります*1。

モバイルアプリも同じです*1。市が公共駐車場の支払いにアプリを使えるようにしている場合、そのアプリを民間企業が運営していたとしても、WCAG 2.1レベルAAを満たす必要があるとされています*1。

さらに、州・地方政府が公共サービスの提供を他の主体に委託している場合(州の機関に代わって薬物治療プログラムを運営する非営利団体など)、その委託先がADA第2編に従うようにする責任も政府側にあるとされています*1。

ここから読める実務の要点を挙げます。

納品物の基準として書かれることになります。「WCAG 2.1 レベルAA準拠」が仕様書に入る前提で見積もりと工程を組む必要があります。後から追加要求として出てくると、改修の費用が跳ねます。

更新の運用まで含めた話になります。納品時に適合していても、その後の更新で崩れます。CMSで運用側が更新する構成であれば、更新の手順にチェックを組み込むところまでが範囲です。

PDFなどの添付ファイルが盲点になります。後述の例外はありますが、期限後に掲載する文書は原則として対象です*1。ページのHTMLだけを直しても、掲載しているPDFが読めなければ意味がありません。

改修の進め方と費用感については、Webアクセシビリティ改修の外注で扱う内容が土台になります。アプリ側の実装はモバイルアプリのアクセシビリティ対応で扱う論点と重なります。

限定的に置かれた5つの例外

すべてのコンテンツが対象になるわけではありません*1。司法省は、優先順位をつけられるようにするため、限られた例外を置いたと説明しています*1。

第一に、アーカイブされたウェブコンテンツです*1。次の四つをすべて満たすものが該当します。遵守期限より前に作成された(または期限より前に作成された紙の文書や物理媒体の内容を再現した)ものであること、参照・研究・記録の保存のためだけに保持されていること、アーカイブ用の特別な領域に保持されていること、そしてアーカイブされて以降変更されていないことです*1。

第二に、期限前から掲載していた従来型の電子文書です*1。ワープロ、プレゼンテーション、PDF、表計算のファイルであり、かつ遵守期限より前からウェブサイトやアプリで利用できたもの、という二つを満たす必要があります*1。片方でも欠ければ対象です*1。

この例外には重要な但し書きがあります*1。州・地方政府のサービスや活動を申請・利用・参加するために現に使われている文書は、期限前から掲載されていても例外に当たりません*1。ファクトシートの例では、2020年に掲載された営業許可申請のPDFを期限後も住民が使い続けている場合、その申請書は通常WCAG 2.1レベルAAを満たす必要があるとされています*1。

第三に、契約・許諾その他の取り決めによらずに第三者が投稿したコンテンツです*1。第三者とは、州・地方政府に支配されておらず、その代わりに行動しているのでもない一般の人などを指します*1。町のオンライン掲示板に住民が投稿したメッセージが例として挙げられています*1。

第四に、パスワードで保護された個別の文書です*1。

第五に、期限前のソーシャルメディア投稿です*1。

そして、例外が変えないことも明記されています*1。ADAは、州・地方政府が障害のある個人に対して効果的なコミュニケーション、合理的な変更、サービスへの参加や利益享受の平等な機会を提供することを求めています*1。したがって、あるコンテンツがWCAG 2.1レベルAAを満たす必要がない場合でも、それを必要とする障害のある人に対しては、その人がアクセスできる形式で提供する必要が生じる可能性が高いとされています*1。

例外の設計をシステムに落とすときの要点は一つです。いつ掲載したか、その後変更したかを記録できるか。多くの例外が「期限前かどうか」「変更されていないか」で分かれます*1。掲載日と更新日を持っていないCMSでは、例外に当たると説明できません。

同等の代替と、基準そのものの読み方

WCAG 2.1レベルAAより高い基準を使うことも認められています*1。

規則は、州・地方政府が代替の設計・手法・技術を用いることを妨げないとしています。ただし、その代替が同等以上のアクセシビリティとユーザビリティを提供することを証明できる場合に限られ、規則ではこれを「equivalent facilitation(同等の便宜)」と呼んでいます*1。将来WCAG 3.0のような新しい基準が策定された場合に、それが同等以上であればキャンプ場予約アプリに使えるだろう、という例が挙げられています*1。

基準そのものの中身については、司法省の別のガイダンスが具体的な障壁を挙げています*2。

示されているのは、色のコントラストが不十分であること、色だけで情報を伝えていること(必須項目を赤字だけで示す例が挙げられています)、画像に代替テキストがないこと、動画に字幕がないこと、フォームがアクセシブルでないこと(スクリーンリーダーが読めるラベル、明確な指示、エラーの表示が必要とされます)、そしてマウスでしか操作できないことです*2。

いずれも実装の話であり、デザインが決まったあとで直すと手戻りが大きい項目です。とくに色だけで情報を伝える設計と、キーボード操作の欠落は、画面設計の段階で決まってしまいます。

司法省は、障害のある人がウェブを利用する方法として、スクリーンリーダー、字幕、音声認識ソフトウェアを挙げています*2。設計時にこれらを想定できているかが分かれ目になります。

なお、このガイダンスは2022年3月18日付であり、2024年4月24日に公表された州・地方政府向けの要件を反映していない旨が明記されています*2。基準の考え方を理解する材料として読み、期限や適用範囲は規則の側で確認することになります。

アクセシビリティを開発の工程に組み込む進め方は、アクセシビリティ対応を外注で進める方法で扱う内容が土台になります。

着手の順序と、受託で進めるときの要点

優先順位をつけるなら、次の順になります。

第一に、対象の切り分けです。米国の州・地方政府に納めているもの、あるいはその代わりに提供しているものがあるか*1。無ければ直接の義務は生じません。

第二に、期限の確認です。相手方の人口区分で2027年4月26日か2028年4月26日かが決まります*1。

第三に、掲載物の棚卸しです。HTMLだけでなくPDFなどの文書を含めて、何がいつから載っているかを出せる状態にします*1。

第四に、設計段階のチェックです。色、代替テキスト、キーボード操作、フォームのラベル*2。後から直すと高くつく項目から手を付けます。

受託で進める場合の要点も挙げます。

基準を契約に書くことです。「アクセシビリティに配慮する」では検収の基準になりません。WCAG 2.1レベルAAという具体的な名前と、対象範囲(HTMLのみか、掲載文書を含むか)を明示する必要があります。

掲載日と更新日を持つことです。例外の多くが日付で分かれます*1。CMSがこれを持っていなければ、まずそこからです。

更新の運用まで設計することです。期限後も適合を維持することとされています*1。担当者が入れ替わっても崩れない形にするには、公開前のチェックを仕組みに載せる必要があります。

他国の要求と並べて確認することです。英国オンライン安全法米国州法への対応で扱うような要求と、対象判定の考え方は似ています。国ごとに別の管理表を立てると、更新が片方だけ止まります。

体制としては、画面設計の実務と、公開・更新の運用の双方に触れられる要員が入れるかが分かれ目になります。掲載している文書の実態、CMSが持つ日付の項目、更新を誰が行っているか。これらは仕様書の項目名だけを見ていても判断できません。業務側と設計側が同じ場で話せる形を作れるかを、委託先を選ぶ観点に入れておくとよいでしょう。

まとめ:ADA第2編のWeb規則で押さえる3つの視点

米国司法省は2024年4月24日、ADA第2編に関する規則を更新し、州・地方政府が提供するウェブコンテンツとモバイルアプリについてWCAG 2.1レベルAAを技術基準と定めました。押さえたい視点は三つです。第一に、期限が延長されたこと。2026年4月20日に公表された暫定最終規則により、人口5万人以上の州・地方政府は2027年4月26日、人口5万人未満の公的機関と特別区政府は2028年4月26日となりました。期限後も適合を維持することとされています。第二に、受託して作ったものも対象に入ること。規則は州・地方政府が提供・利用可能にするコンテンツを対象とし、州・地方政府のために他の者が提供する取り決めがある場合も含むとしています。地元の制作会社が作った郡のページも、民間企業が運営する市の駐車場アプリも対象です。第三に、例外は限定的であること。アーカイブされたコンテンツ、期限前から掲載していた文書ファイル、契約等によらない第三者の投稿、パスワードで保護された個別文書、期限前のソーシャルメディア投稿の五つが挙げられていますが、現に申請や参加に使われている文書は期限前の掲載でも例外に当たりません。まずは掲載物の棚卸しと、掲載日・更新日を出せるかの確認から着手するのが堅実でしょう。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)として、ウェブサイトと業務システム、モバイルアプリの開発と改修を受託しています。WCAGの水準を検収の基準として握る進め方、掲載日と更新日を持つCMSの設計、公開前のチェックを運用に載せる仕組み、掲載文書を含めた棚卸しまで、期限のある適合案件に耐える形をご提案できるのが強みです。

よくある質問

ADA第2編のWeb規則はいつまでに対応が必要ですか。

2026年4月20日に連邦官報で公表された暫定最終規則により、人口の合計が5万人以上の州・地方政府は2027年4月26日、人口が5万人未満の公的機関および特別区政府は2028年4月26日までとされています。規則そのものは2024年4月24日に公表されました。期限後も、ウェブコンテンツとモバイルアプリがWCAG 2.1レベルAAに適合していることを維持し続けることとされています。

日本の制作会社が作ったページも対象になりますか。

州・地方政府が提供または利用可能にするコンテンツであれば対象です。規則は、州・地方政府のために他の者がウェブコンテンツやモバイルアプリを提供・利用可能にする取り決めがある場合も含むとしています。ファクトシートでは、地元のウェブ制作会社が作り更新している郡のページや、民間企業が運営する市の駐車場支払いアプリが例として挙げられています。

技術基準はWCAGのどのバージョンですか。

WCAG 2.1のレベルAAです。規則はこれを州・地方政府のウェブコンテンツとモバイルアプリの技術基準と定めています。より高い基準を用いることも、同等以上のアクセシビリティとユーザビリティを提供できることを証明できるなら認められており、規則ではこれを「equivalent facilitation(同等の便宜)」と呼んでいます。

古いPDFはそのままで構いませんか。

条件つきです。ワープロ、プレゼンテーション、PDF、表計算のファイルであり、かつ遵守期限より前からウェブサイトやアプリで利用できたものは、原則として例外に当たります。ただし、州・地方政府のサービスや活動を申請・利用・参加するために現に使われている文書は、期限前の掲載でも例外に当たりません。また期限後に更新すれば例外の資格を失います。

例外に当たれば何もしなくてよいのですか。

そうとは限りません。ADAは、州・地方政府が障害のある個人に対して効果的なコミュニケーション、合理的な変更、サービスへの参加や利益享受の平等な機会を提供することを求めています。したがって、あるコンテンツがWCAG 2.1レベルAAを満たす必要がない場合でも、それを必要とする人に対しては、その人がアクセスできる形式で提供する必要が生じる可能性が高いとされています。

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出典

  1. *1 参考:米国司法省 ADA.gov「Fact Sheet: New Rule on the Accessibility of Web Content and Mobile Apps Provided by State and Local Governments」(https://www.ada.gov/resources/2024-03-08-web-rule/)。2024年4月24日の連邦官報での規則公表、2026年4月20日の暫定最終規則(IFR)による遵守期限の延長(人口5万人以上は2027年4月26日、人口5万人未満および特別区政府は2028年4月26日)、技術基準としてのWCAG 2.1レベルAA、対象範囲(州・地方政府が提供または利用可能にするウェブコンテンツとモバイルアプリ、他の者が代わって提供する取り決めを含む、委託先にも第2編を守らせる責任)、equivalent facilitationの考え方、5つの例外(アーカイブされたウェブコンテンツ、期限前から掲載していた従来型の電子文書とその但し書き、契約等によらない第三者投稿、パスワードで保護された個別文書、期限前のソーシャルメディア投稿)、例外が効果的なコミュニケーション等の既存義務を変えないこと、人口区分の判定方法(2020年国勢調査、学区の扱い、独立学区のSAIPE推計)、期限後の適合維持の一次情報として(2026年8月確認)
  2. *2 参考:米国司法省 ADA.gov「Guidance on Web Accessibility and the ADA」(2022年3月18日)(https://www.ada.gov/resources/web-guidance/)。ウェブアクセシビリティの障壁の具体例(色のコントラスト不足、色だけで情報を伝えること、画像の代替テキストの欠如、動画の字幕の欠如、アクセシブルでないフォームとラベル・指示・エラー表示の必要性、マウスのみの操作=キーボード操作の欠如)、障害のある人がウェブを利用する手段(スクリーンリーダー、字幕、音声認識ソフトウェア)、およびこのガイダンスが2024年4月24日に公表された州・地方政府向けの要件を反映していない旨の注記の確認として(2026年8月確認)




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