LASSIC Media らしくメディア

2026.06.19 らしくコラム

APIゲートウェイ/API管理基盤の構築を外注|費用・選定・運用設計のポイント

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

API基盤の構成

この記事のポイント

  • APIゲートウェイを中心とするAPI管理基盤は、認証・認可・流量制御・バージョニングを一元化する層で、個別API開発とは別に専門チームへの外注が検討されます。
  • OWASP API Security Top 10(2023年版)に示されるセキュリティリスクのうち、APIゲートウェイで対処できる項目と設計レベルで抑える項目を整理し、外注先への要件に落とし込む方法を説明します。
  • 主要製品(Amazon API Gateway・Azure API Management・Kong Gateway)の特徴と外注費用の市場参考値、元請(プライムベンダー)形態での発注が有効な理由を解説します。

API管理基盤とAPIゲートウェイの役割

クラウド基盤のダッシュボード

API管理基盤(API Management Platform)とは、組織内外に公開するAPIの認証・認可・流量制御・監視・バージョニングを一元的に担うソフトウェア基盤を指します。APIゲートウェイ(API Gateway)はその中核コンポーネントであり、クライアントからのすべてのリクエストを受け取ってバックエンドサービスへ転送する「フロントドア」として機能します*1

管理基盤なし API個別に認証を実装 流量制御がAPI毎にバラバラ バージョン管理が属人的 監視ログが分散 → API数増加で管理コスト急増 VS APIゲートウェイ導入後 認証・認可を一元集約 レート制限をポリシーで管理 バージョニングをステージで制御 監視・ログを統合ダッシュボードへ → ガバナンスとセキュリティを確立
図1:API管理基盤の有無による運用比較

APIゲートウェイが担う主な機能は「ルーティング・認証・スロットリング・キャッシュ・可観測性」です*2。Azure API Managementの公式ドキュメントによれば、ゲートウェイはバックエンドサービスのファサードとして機能し、APIキーやJWTなどの認証情報を検証し、使用量クォータとレート制限を適用します*2

「API管理基盤」と「個別API開発」は役割が異なります。個別API開発は業務ロジックをAPIとして実装する作業ですが、API管理基盤はその上に乗るインフラ層です。社内のAPI数が増えてきた段階で、管理基盤を先に整備することが、後続の開発コストとセキュリティリスクを抑える前提条件となります。

API管理基盤が必要になるタイミング

API数が数本程度のうちは個別管理で対応できます。しかし、社内外に公開するAPIが10本を超え、利用者やシステムが増えると、認証の一元化や流量制御の必要性が増してきます。外部パートナーや顧客向けにAPIを開放するB2B連携のケースでは、セキュリティポリシーの統一とアクセス制御が特に重要になります。

構築を外注すべき判断基準

API管理基盤の構築を内製で進める場合、必要なスキルセットは広範囲に及びます。APIゲートウェイ製品の設計・設定、IAM/OAuth2.0/OIDCなどの認証プロトコル、ネットワーク設計、CI/CDパイプラインの統合、監視基盤の構築を担える人材を複数名確保する必要があります。

加えて、OWASP API Security Top 10(後述)が示すセキュリティリスクに対応するためには、セキュアなAPI設計の知識と実装経験が求められます。これらを内製で賄うには、専任チームの採用と育成に相当の期間とコストが発生します。

内製 vs 外注:比較で見る判断軸

判断軸 内製 外注
初期コスト 採用・育成費用が発生。製品ライセンスは別途。 プロジェクト費用として一括または段階契約が可能。
スピード スキル習得・採用に期間が必要。 経験済みの専門チームが稼働。設計・構築を迅速に開始できます。
セキュリティ対応 OWASP API Security等の知識を社内で整備が必要。 セキュア設計の実績を持つパートナーに要件を明示して委託できます。
保守・運用継続 属人化リスク。担当者の離職で影響が出ます。 元請(プライムベンダー)形態で窓口一元化。担当変更にも対応可能。
向いているケース API管理が事業の中核で、専任チームを長期維持できる場合。 API管理は支援機能で、コア事業に集中したい場合。

API管理基盤は構築して終わりではなく、製品のバージョンアップ対応・セキュリティパッチ適用・ポリシー更新が継続的に発生します。内製チームの維持コストと比較した場合、外注による継続運用委託の方がトータルコストを抑えられるケースが多くあります。

主要APIゲートウェイ製品の特徴と比較

API管理基盤の構築を外注する際には、使用する製品の選定が設計・費用・運用のすべてに影響します。代表的な3製品の公式情報に基づく特徴を整理します。

Amazon API Gateway(AWS)

Amazon API Gatewayは「REST・HTTP・WebSocket APIを任意のスケールで作成・公開・管理・監視・保護するAWSマネージドサービス」です*1。トラフィック管理・認証・アクセス制御・スロットリング・監視・APIバージョン管理を処理します*1。IAMポリシー・Lambda認可関数・Amazon Cognitoユーザープールによる柔軟な認証機構を備え、AWS WAFとの統合によるWebアプリケーションの保護も公式機能として提供しています*3。料金は最小料金やセットアップコストなしの使用量ベースです*1

Azure API Management(Microsoft)

Azure API Managementは「あらゆる環境にわたるAPIのためのハイブリッドなマルチクラウド管理プラットフォーム」として公式に定義されています*2。ゲートウェイ・管理プレーン・開発者ポータルの3コンポーネントで構成され、APIキーやJWT・証明書の検証、使用量クォータとレート制限の適用、応答のキャッシュ、ログ・メトリクス・トレースの出力が公式機能として記載されています*2。Microsoft Entra ID(旧Azure AD)やAzure Key VaultとのネイティブなAzure統合が強みです*2

Kong Gateway

Kong GatewayはNGINXベースの高性能APIゲートウェイで、「ノードあたり50,000トランザクション/秒」の処理能力を公式に記載しています*4。クラウド・オンプレミス・Kubernetes・サーバーレスなど多様な環境での実行に対応し、プラグイン機構によって認証・レート制限・分析機能を拡張できます*4。宣言的な設定管理によるAPIOpsとKubernetes Ingress Controllerとの統合が特徴です*4

製品比較表

製品 主な認証方式 スロットリング バージョン管理 向いている環境
Amazon API Gateway IAM・Cognito・Lambda認可・OAuth2 スロットリングルール設定対応*1 ステージ管理・カナリアリリース*3 AWSネイティブ・サーバーレス中心
Azure API Management Microsoft Entra ID・JWT・APIキー・証明書*2 クォータ・レート制限ポリシー*2 バージョン・リビジョン管理*2 Azure中心・エンタープライズ統合
Kong Gateway プラグイン(JWT・OAuth2・LDAP等)*4 レート制限プラグイン*4 宣言的設定・APIOps*4 マルチクラウド・Kubernetesネイティブ

いずれの製品も「どのクラウドを主に使っているか」「既存の認証基盤との統合要件」「Kubernetesを中心とした運用体制かどうか」が選定の主軸となります。外注先と要件を整理する前に、自社のインフラ戦略と製品選定を先行して合意しておくことが重要です。

OWASP API Security Top 10から見た外注設計の要件

OWASP(Open Web Application Security Project)は2023年6月5日にOWASP API Security Top 10の最新版を公開しています*5。この規格はAPIに特有の脆弱性10カテゴリーを定義しており、API管理基盤の外注設計において重要な要件の根拠となります。

APIゲートウェイで対処できるリスク

OWASP API Security Top 10のうち、APIゲートウェイの機能設定で直接対処できるカテゴリーがあります。

API4:2023「Unrestricted Resource Consumption(リソース消費の無制限化)」は、APIリクエストの処理に必要なネットワーク帯域・CPU・メモリが無制限に消費されるリスクです*5。APIゲートウェイのレート制限・クォータ設定がこのリスクを直接緩和します。

API8:2023「Security Misconfiguration(セキュリティ設定ミス)」は、複雑な設定とセキュリティベストプラクティスの未準拠が攻撃の入口となるリスクです*5。APIゲートウェイを使った設定の一元管理と、定期的な設定レビューが対策となります。

API9:2023「Improper Inventory Management(不適切なインベントリ管理)」は、APIエンドポイントの適切な管理・文書化が不足しているリスクです*5。APIゲートウェイの開発者ポータル機能(Azure API Managementなど)が、APIカタログの整備を支援します。

設計レベルで対処が必要なリスク

API1:2023「Broken Object Level Authorization(オブジェクトレベル認可の欠陥)」とAPI2:2023「Broken Authentication(認証実装の欠陥)」は、APIゲートウェイだけでなくアプリケーション設計レベルでの対応が必要です*5。外注先に対してセキュアな設計レビューをスコープに含めることが、これらのリスク低減につながります。

外注発注時には「OWASP API Security Top 10(2023年版)への対応方針を提示すること」を要件書に明記することを推奨します。製品設定で対応できる項目と、設計変更が必要な項目を切り分けて、それぞれの対応責任を明確化しておくことが重要です。

外注費用の市場参考値と内訳

API管理基盤の外注費用は、選定する製品・クラウド環境・要件の複雑さ・運用移行の範囲によって大きく変わります。以下の費用レンジは市場参考値であり、一次資料に基づく確定値ではありません。実際の費用は複数のベンダーから見積りを取得してください。

フェーズ別の費用内訳

フェーズ 主な作業内容 市場参考値(目安)
要件定義・設計 現状API棚卸し・製品選定・認証設計・ポリシー設計・ネットワーク設計 数十万〜百数十万円程度(規模・複雑さ依存)
構築・設定 APIゲートウェイのプロビジョニング・ポリシー設定・既存APIの移行・テスト 数百万〜数千万円程度(API数・製品・移行規模依存)
運用移行・ドキュメント整備 運用手順書作成・内部チームへの技術移管・監視アラート設定 数十万〜百数十万円程度
継続運用・保守 製品バージョンアップ対応・セキュリティパッチ・ポリシー変更・障害対応 月額数十万〜数百万円程度(SLA・対応範囲依存)

費用を左右する主な要因として、既存APIの数と複雑さ、マルチクラウド構成の有無、オンプレミスとのハイブリッド対応(Azure API Managementのセルフホステッドゲートウェイ等*2)、セキュリティ要件の高さ(金融・医療等の規制業種)が挙げられます。

製品ライセンス・クラウド利用料は構築費とは別途発生します。Amazon API GatewayはAPIコール数と転送量ベースの従量課金*1、Azure API ManagementはサービスレベルとAPI呼び出し数で料金が決まる階層型課金*2です。運用フェーズに入ってからのランニングコストも含めた総額を、発注前に試算することを推奨します。

外注先の選定ポイント:元請形態と技術要件

API管理基盤の外注先選定では、技術要件の充足と契約形態の両面を評価する必要があります。

技術面の評価基準

外注先の評価で確認すべき技術要件は以下の通りです。第一に、候補製品(Amazon API Gateway・Azure API Management・Kong Gatewayなど)の導入・運用実績が確認できるかどうかです。製品認定資格(AWS認定・Microsoft認定等)の保有状況も参考になります。

第二に、OWASP API Security Top 10への対応経験です。セキュリティ設計を提案できるかどうか、過去のプロジェクトで具体的なセキュリティ対応をどう実施したかを確認してください。

第三に、CI/CDパイプラインとの統合経験です。APIゲートウェイの設定をコードとして管理する「APIOps」の実装経験があると、変更管理・ロールバックのリスクを低減できます。

元請(プライムベンダー)形態での発注が有効な理由

API管理基盤の構築は、ネットワーク・セキュリティ・アプリケーション・クラウドインフラの各専門領域が連携する複合プロジェクトです。複数の専門会社を個別に発注すると、責任範囲の境界で「認証設定はアプリ担当か、ゲートウェイ担当か」のような調整コストが発生します。

元請(プライムベンダー)形態で一括委託すると、窓口の一元化・責任範囲の明確化・工程間の調整を発注者ではなく受注者が担う体制になります。

外注先を選定する際は「要件定義から運用移行まで一気通貫で対応できるか」「追加の専門委託先が発生した場合に元請として統括する体制があるか」を確認することを推奨します。

RFP(提案依頼書)に含めるべき要件

発注時のRFP(提案依頼書)には少なくとも以下の要件を明記することを推奨します。現状APIの棚卸し結果(API数・プロトコル・認証方式・利用者)、選定済み製品または候補製品、セキュリティ要件(OWASP API Security Top 10への対応方針)、SLA要件(可用性・応答時間・障害時対応時間)、運用移行後の保守スコープ(製品バージョンアップ対応を含むか)です。

まとめ:API管理基盤外注の3つの判断軸

本稿ではAPI管理基盤とAPIゲートウェイの役割から、外注の判断基準・製品比較・セキュリティ要件・費用・選定ポイントまでを整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。

第一に、API管理基盤は個別API開発とは別の「インフラ層」として設計する必要があります。APIゲートウェイは認証・レート制限・バージョニング・監視を一元化し、API数の増加に伴う管理コストとセキュリティリスクを抑える役割を担います。

第二に、OWASP API Security Top 10(2023年版)は外注設計の要件として活用できます。APIゲートウェイ設定で対処できるリスクと、アプリケーション設計レベルで対処すべきリスクを切り分け、外注先への要件書に明記することで責任範囲を明確にできます。

第三に、製品選定と契約形態の両面を外注先評価に組み込むことが重要です。Amazon API Gateway・Azure API Management・Kong Gatewayのいずれも公式機能で主要な管理機能をカバーしていますが、自社のクラウド環境・認証基盤・Kubernetes活用方針によって適切な選択は異なります。元請(プライムベンダー)形態で複合的な専門領域を一括委託することで、調整コストとリスクを低減できます。

よくある質問

APIゲートウェイとAPI管理基盤は何が違いますか?

APIゲートウェイはクライアントからのリクエストを受け取ってバックエンドへ転送するコンポーネントで、API管理基盤(API Management Platform)はAPIゲートウェイを含む管理・監視・開発者ポータル等の総体を指します。Azure API Managementの公式ドキュメントによれば、APIゲートウェイ・管理プレーン・開発者ポータルの3コンポーネントで構成される*2のがAPI管理基盤の典型的な構造です。一般的な会話ではAPIゲートウェイとAPI管理基盤を同義で使う場合もありますが、発注時には「どの機能コンポーネントまでスコープに含めるか」を明確にすることをお勧めします。

API管理基盤の構築期間はどれくらいが目安ですか?

構築期間は現状のAPI数・製品選定・既存システムとの統合複雑さによって変わります。公開APIが少なく単一クラウドへの新規導入であれば、要件定義から運用移行まで数ヶ月程度で進むケースがあります。一方、多数のAPIが稼働している既存環境の移行や、オンプレミスとクラウドのハイブリッド構成(Azure API Managementのセルフホステッドゲートウェイ等*2)が必要な場合は、期間と費用が増える見込みです。複数の外注先から見積りを取る際に、フェーズごとのスケジュール案を提示してもらうと比較しやすくなります。

OWASP API Security Top 10とは何ですか?また外注で活用する方法を教えてください。

OWASP API Security Top 10はOWASP(Open Web Application Security Project)が公開するAPIに特有の主要セキュリティリスク10カテゴリーの一覧です。2023年6月5日に最新版が公開されており、認証欠陥・過剰なリソース消費・設定ミス等がリスト化されています*5。外注発注時にはRFP(提案依頼書)に「OWASP API Security Top 10(2023年版)への対応方針を提示すること」と明記することで、外注先のセキュリティ設計能力を評価する基準として活用できます。各リスクへの対処をAPIゲートウェイ設定で行うか、アプリケーション設計で行うかの切り分けも、外注先から提案を求めると良いでしょう。

Amazon API Gateway・Azure API Management・Kong Gatewayはどのように選べばよいですか?

選定の主軸は「自社のメインクラウド環境」「既存の認証基盤」「Kubernetes活用方針」の3点です。AWSを主に利用している場合はAmazon API GatewayがIAM・Cognito・Lambda等とのネイティブ統合で優位です*1。Azure中心の環境ではAzure API ManagementがMicrosoft Entra IDや既存Azureサービスとの連携が容易です*2。マルチクラウドやKubernetesネイティブな環境ではKong GatewayのプラグインによるポータブルなAPIポリシー管理が選ばれることがあります*4。外注先と要件定義を行う前に、自社のインフラ戦略と候補製品を先に絞り込んでおくとスムーズです。

API管理基盤の外注後、自社で保守・変更できるようになりますか?

外注先との契約内容と、運用移行時の技術移管の範囲によります。元請(プライムベンダー)形態で委託する場合は、運用手順書・設定管理ドキュメントの整備と、社内担当者への技術移管を契約スコープに含めることをお勧めします。APIゲートウェイ製品はAWS・Azure・Kong Gatewayいずれも管理コンソールやAPI・CLIを通じた操作が可能で、適切な権限設定と手順書があれば、基本的なポリシー変更は社内でも対応できます。一方、製品の大型バージョンアップ対応や、セキュリティインシデント発生時の調査は専門知識が必要なため、保守契約の継続も検討してください。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

LASSICに相談するメリット

LASSICはAWS・Azure等の主要クラウドを活用したシステム開発・運用保守を元請(プライムベンダー)として受託しており、APIゲートウェイを含むインフラ層の設計から継続運用まで一気通貫で対応できる体制を整えています。要件定義・製品選定・セキュリティ要件整理から並走できますので、まずはご相談ください。


ITアウトソーシング・システム開発のご相談はLASSICへ

元請(プライムベンダー)として、貴社の課題に合わせた体制構築・開発支援をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

無料相談はこちら

ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。

  1. *1 出典:Amazon Web Services「Amazon API Gateway」(2024年)
  2. *2 出典:Microsoft「Azure API Management – 概要と主要な概念」(2025年)
  3. *3 出典:Amazon Web Services「What is Amazon API Gateway?」(2024年)
  4. *4 出典:Kong Inc.「Kong Gateway」(2024年)
  5. *5 出典:OWASP「OWASP API Security Project」(2023年6月5日公開)


View