LASSIC Media らしくメディア
警告ラベルの表示義務、SNSに10秒と30秒の2段階
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 表示は10秒と30秒の2段階:占める面積も25%と75%で違います*1。
- 2段目は押して進めない:迂回できない表示が求められます*1。
- 17歳超と判断できれば不要:判断できない利用者には出します*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
画面に出す通知の仕様を、法律が秒数と面積で書くことがあります。文言だけでなく、何秒間、画面の何割を占め、押して飛ばせるかどうかまで条文に並ぶと、実装の側は仕様書として読むことになります。
米国カリフォルニア州の議会法案56は、その形の法律です。2025年10月13日に知事の承認を受けて2025年法律第671号となり、健康・保安法典第20編に第25章「ソーシャルメディア警告法」(第28000条から第28002条)を新設しました*1。2027年1月1日から施行されます*1。
確かめたい点は3つです。どのサービスが対象になるのか、どんな表示を、いつ、どれだけ出すのか、守らなかったときにどうなるのか。法文から順に整理します。
目次
対象は「依存性のあるフィード」を備えるサービス
まず、対象の線引きです*1。
第28001条(a)は対象プラットフォームを、健康・保安法典第27000.5条(b)(1)に定義される依存性のあるインターネットベースのサービスまたはアプリケーションと同じ意味だとしました*1。この定義は2024年の別の法律で置かれたもので、事業・専門職法典第22675条に定義されるソーシャルメディアプラットフォームを含むが、これに限らず、依存性のあるフィードを、当該サービスが提供するものの重要な一部として利用者に提供するものを指します*1。
その依存性のあるフィードの定義が、実装の判断に直結します*1。利用者によって生成または共有された複数の媒体が、同時にまたは順次、利用者が提供した情報、または利用者もしくは利用者の機器に関連づけられたその他の情報に、全部もしくは一部を基づいて、表示のために推奨され、選択され、または優先されるものという書き方です*1。
そのうえで、この定義から外れる条件も列挙されています*1。その情報が利用者または機器に持続的に関連づけられておらず、他者が生成または共有した媒体との過去のやりとりにも関わらない場合、その情報が、持続的に関連づけられていない検索語である場合、利用者が選んだプライバシーまたはアクセシビリティの設定、機器の技術情報、利用者が未成年かどうかに関する機器の通信や信号である場合などです*1。
閲覧履歴に基づく推薦を持つかどうかが、事実上の分かれ目になります*1。検索語だけで並べ替える一覧や、利用者が明示的に指定した投稿を順に見せる仕組みは、条件に当たれば外れる方向に動きます*1。利用者間の私的な通信だけで構成される媒体や、同一の作成者による既存の並びの次の媒体を続けて出す仕組みも、外れる条件として挙げられました*1。
さらに第28001条(b)が、主たる機能で6つを除きました*1。物品または役務の販売、クラウドストレージ、電子メール、送信者と意図された受信者だけが閲覧でき、公開の内容の拡散、相互作用またはアクセスを許さない個別送信、組織内部の連絡、そして組織の外部の一般公衆または消費者に提供されない、組織内部の協働のサービスです*1。
業務用の社内ツールが明示的に外されている点は、実務では大きい整理です*1。社内向けの情報共有基盤にタイムライン風の一覧を置いても、外部の消費者に提供していなければ除外の側に入ります*1。年齢を軸にした他国の規律との違いは豪州のSNS最低年齢で扱う枠組みと並べると分かりやすくなります。
初回は10秒・25%、3時間後は30秒・75%
表示の仕様は、2段階に分かれています*1。
1段目は初回のアクセスです*1。第28002条(a)(1)(A)は利用者が対象プラットフォームを使用する各暦日について、対象プラットフォームは、利用者が当該プラットフォームに最初にアクセスしたときに、(b)に定める黒枠の警告を表示するものとすると定めます*1。
そして同(B)が、細かい条件を並べました*1。この項が求める黒枠の警告は、利用者が目立つ「X」のアイコンをクリックして積極的に消さない限り、少なくとも10秒間、明瞭かつ継続して表示されなければならない。当該警告は、利用者が当該プラットフォームにアクセスするために使用している画面または窓の少なくとも25パーセントを占める方法で表示されなければならないという条文です*1。
2段目が、利用時間に応じた表示です*1。同(a)(2)(A)は各暦日について、累計の能動的な利用が3時間に達した後、およびその後は累計の能動的な利用の1時間ごとに少なくとも1回、黒枠の警告を表示するものとするとします*1。
条件はより強くなります*1。少なくとも30秒間、明瞭かつ継続して表示され、当該警告を迂回すること、または押して進むことができないようにし、画面または窓の少なくとも75パーセントを占める方法で表示されなければならないという書き方です*1。
| 項目 | 初回アクセス時 | 累計3時間後・以後は毎時 |
|---|---|---|
| 最短の表示時間 | 10秒間 | 30秒間 |
| 占める面積 | 画面または窓の25パーセント以上 | 画面または窓の75パーセント以上 |
| 消せるかどうか | 目立つ「X」のクリックで消せます | 迂回も、押して進むこともできません |
| 出さなくてよい場合 | 17歳を超えると合理的に判断した利用者 | 17歳を超えると合理的に判断した利用者 |
文言も条文で固定されました*1。第28002条(b)は白地に黒の文字で、明瞭に、目立つように、かつ読みやすく表示されることを求め、内容は一部の若年の利用者にとってソーシャルメディアに利点がありうる一方で、ソーシャルメディアは精神の健康に対する重大な害と関連しており、若年の利用者にとって害がないことは証明されていない、と公衆衛生局長官は警告していますという趣旨の一文です*1。
年齢の扱いは、義務の免除として書かれています*1。同(a)(1)(C)および(a)(2)(C)はいずれも利用者が17歳を超えると合理的に判断した場合には、この項が求める黒枠の警告を表示することを要しないとしました*1。年齢の確認を義務づける条文ではなく、判断できた場合に出さなくてよいという向きです*1。判断できない利用者には表示することになります*1。年齢の確かめ方そのものを扱う規律は英国オンライン安全法で扱う枠組みと対になります。
私訴の根拠にはならず、他の請求も妨げない
効果の側は、抑えた書き方になっています*1。
第28002条(d)はこの章のいかなる規定も、この章その他いかなる法律に基づく私的訴権の根拠となるものと解してはならないと定めました*1。表示しなかったことを理由に、利用者が直接この章で訴えを起こす道は置かれていません*1。
一方で、逆向きの確認も入っています*1。同(c)はこの条が求める通知を提供したこと、または利用者が積極的に通知を消したことは、この条の違反を前提とする請求以外の、警告を怠ったことを前提とする請求を含むいかなる請求についても、これを放棄させ、免除し、その他制限し、または抗弁として機能するものではないとしています*1。
読み替えると、こうなります*1。警告を出したという事実は、別の訴訟で「警告した」という抗弁には使えません*1。利用者が「X」を押して消したことも同じです*1。表示の義務と、製品としての説明責任は別に扱う、という整理です*1。
加えて同(e)が分離条項を置きました*1。この章の規定は可分である。ある規定またはその適用が無効とされた場合であっても、その無効は、無効とされた規定または適用がなくとも効力を与えうる他の規定または適用に影響を及ぼさないという条文です*1。オンラインの表示を義務づける法律には訴訟が起こりやすいため、一部が止まっても残りが動くように書かれています*1。
施行日は同(f)に置かれています*1。この章は2027年1月1日から効力を生ずるという一文です*1。他のカリフォルニア州の法律は承認の翌年の初日から動き出しますが、この章には1年余りの準備期間が取られました*1。
立法の背景も第1条に書かれています*1。未成年の10代のおよそ95パーセントが少なくとも1つのソーシャルメディアを使っていると答えており、3分の1を超える者がほぼ常時使っていると報告しているという記述に始まり、1日に少なくとも3時間使用する子どもおよび青少年では、精神の健康の悪い結果が生じる危険が2倍になると結論づけた研究が挙げられました*1。2段目の表示が累計3時間に置かれた理由が、ここに現れています*1。
あわせて、公衆衛生局長官の勧告からプッシュ通知、自動再生、無限スクロール、人気を数値化して表示すること、および利用者のデータを用いて内容の推薦を行うアルゴリズムが、関与をできる限り高める機能の例として引かれています*1。条文の対象がフィードの推薦に置かれた理由も、この認定と対応しています*1。
実装で先に決めることは「時間の数え方」
この法律を仕様として読むと、いちばん難しいのは秒数でも面積でもありません*1。
条文が使う語は累計の能動的な利用です*1。3時間という数字は、この語をどう実装するかで意味が変わります*1。アプリを開いたままにした時間なのか、画面が前面にある時間なのか、操作があった時間なのか。条文はここを定義していません*1。
もう1つが各暦日という区切りです*1。初回の表示も、3時間の累計も、暦日ごとに数え直します*1。どの時間帯を1日とするか、利用者の所在地の時間か、サーバの時間かによって、表示の回数が変わります*1。
面積の条件も、単純ではありません*1。画面または窓の少なくとも25パーセント、少なくとも75パーセントという指定は、機器の画面ではなく利用者がアクセスするために使用している画面または窓を基準にしています*1。ブラウザで小さな窓を開いている場合、基準はその窓になります*1。応答型の画面設計では、幅と高さの両方が変わるため、割合を保つ実装が要ります*1。
| 条文の語 | 決めておくこと |
|---|---|
| 累計の能動的な利用 | 計測の起点と停止の条件(前面か、操作の有無か、無操作での打ち切りは何分か) |
| 各暦日 | 1日の区切りに使う時間帯(利用者の所在地か、アカウントの設定か、サーバの標準時か) |
| 画面または窓の割合 | 面積の基準(表示領域の縦横をどう取るか、応答型で割合をどう保つか) |
迂回できない表示の作り方も、事前に決める部分です*1。30秒間、押して進めない全画面の表示を出すには、画面遷移の仕組みの側で割り込みを持つ必要があります*1。あとから重ねる形で作ると、戻る操作や別の画面への遷移で抜けられてしまいます*1。子ども向けの初期値や保護者向けの機能をどう置くかは保護者向け機能の設計で扱う判断と重なります。
権限や通知の許諾を求める画面と同じく、この警告も利用の流れを止める要素です*1。出す位置と回数の設計は権限リクエストの体験設計で扱う考え方が近く、ただしこちらは条文で秒数と面積が決まっている分、調整できる余地が狭いという違いがあります*1。
自社の製品に置き換える5つの確認
カリフォルニア州の法律ですが、確認の手順としては一般化できます。
第一に、自社の一覧が推薦を含むかを判定することです。対象は依存性のあるフィードを提供の重要な一部として備えるサービスです*1。時系列に並べているだけなのか、利用者に紐づく情報で並べ替えているのかを、機能単位で切り分けます。検索語だけを使う並べ替えや、利用者が明示的に指定した投稿の表示は、条件に当たれば定義から外れる方向です*1。
第二に、除外の6類型に自社が入るかを見ることです。物品または役務の販売、クラウドストレージ、電子メール、公開の拡散を伴わない個別送信、組織内部の連絡、外部に提供しない組織内部の協働が外れます*1。主たる機能で判定する書き方なので、副次的にフィードを持っていても、主たる機能が除外に当たるなら外れる側に読めます*1。
第三に、利用時間の計測を先に作ることです。3時間という条件は、計測の仕組みがなければ実装できません*1。表示そのものは後から足せますが、累計の利用時間を持つ仕組みは、セッションの設計に関わります。既存のログから遡って作れるかどうかを、早めに確かめておく必要があります。
第四に、年齢の判断結果を保持することです。17歳を超えると合理的に判断した場合は表示が不要です*1。判断の根拠と結果をどこに持つかが決まっていないと、毎回の表示可否を決められません。判断できていない利用者には表示する、という既定の側も併せて実装します*1。
第五に、表示の実行を記録に残すことです。この章に私的訴権は置かれていませんが、表示したこと自体は事実として示せる形にしておくほうが安全側です*1。ただし条文は、通知を提供したことが他の請求の抗弁にはならないと明記しています*1。記録は義務の履行を示すためのものであり、他の責任を打ち消す材料ではない、という区別が要ります*1。
誤解されやすいのは、未成年だけに出せばよいという読み方です。条文は未成年に限って表示を求める形ではなく、17歳を超えると合理的に判断した利用者について免除する形で書かれています*1。年齢が分からない利用者は表示の対象に残ります*1。子どもの個人情報の扱いを定める連邦の規則との重なりは改正COPPA規則で扱う枠組みと合わせて見ると整理しやすくなります。
まとめ:ソーシャルメディア警告法で押さえる3つの視点
米国カリフォルニア州の議会法案56は2025年10月13日に知事の承認を受けて2025年法律第671号となり、健康・保安法典第20編に第25章「ソーシャルメディア警告法」が新設されました。施行は2027年1月1日です。押さえたい視点は三つあります。第一に、対象の線引き。対象プラットフォームは、健康・保安法典第27000.5条(b)(1)にいう依存性のあるインターネットベースのサービスまたはアプリケーションと同じ意味で、依存性のあるフィードを提供の重要な一部として備えるものを指します。主たる機能が、物品または役務の販売、クラウドストレージ、電子メール、公開の拡散を伴わない個別送信、組織内部の連絡、外部に提供しない組織内部の協働のいずれかであるものは外れます。第二に、表示の仕様。各暦日の最初のアクセス時には、少なくとも10秒間、画面または窓の25パーセント以上を占める形で表示し、目立つ「X」のクリックで消せます。累計の能動的な利用が3時間に達した後と、その後の1時間ごとには、少なくとも30秒間、画面または窓の75パーセント以上を占め、迂回も押して進むこともできない形で表示します。いずれも、17歳を超えると合理的に判断した利用者には不要です。文言は白地に黒の文字で明瞭に表示し、公衆衛生局長官の警告を伝える内容が条文で定められています。第三に、効果の範囲。この章は私的訴権の根拠にはなりませんが、通知を提供したことや利用者が消したことは、警告を怠ったことを前提とする他の請求の抗弁にはなりません。規定は可分とされています。
よくある質問
いつから表示が必要になりますか。
第28002条(f)が、この章は2027年1月1日から効力を生ずると定めています。他の多くのカリフォルニア州の法律は承認の翌年の初日から動き出しますが、この章には1年余りの準備期間が置かれました。
社内向けの情報共有ツールも対象になりますか。
第28001条(b)は、主たる機能が組織内部の連絡であるもの、および組織の外部の一般公衆または消費者に提供されない組織内部の協働のサービスを、対象プラットフォームから除いています。タイムライン風の一覧を備えていても、外部の消費者に提供していないのであれば除外の側に入る書き方です。
成人の利用者にも表示する必要がありますか。
第28002条(a)(1)(C)と同(a)(2)(C)は、利用者が17歳を超えると合理的に判断した場合には表示を要しないと定めています。裏を返せば、年齢を判断できていない利用者は表示の対象に残ります。年齢の確認手段そのものを義務づける条文は、この章には置かれていません。
表示しなかった場合、利用者から訴えられますか。
第28002条(d)は、この章のいかなる規定も私的訴権の根拠となるものと解してはならないと定めています。ただし同(c)は、通知を提供したことや利用者が積極的に通知を消したことが、警告を怠ったことを前提とする請求を含む他の請求の抗弁にはならないとしています。表示したことをもって他の責任を免れる、という関係にはなっていません。
出典
- *1 参考:カリフォルニア州議会 議会法案56「Social media platforms: warnings.」(2025年法律第671号・2025年10月13日知事承認/州務長官提出・健康・保安法典第25章)(https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billTextClient.xhtml?bill_id=202520260AB56)。成立した法文の一次情報として。第1条の立法趣旨(10代の利用率、1日3時間以上の使用と精神の健康に関する研究、公衆衛生局長官の勧告が挙げるプッシュ通知・自動再生・無限スクロール・人気の数値化・推薦アルゴリズム)、第28000条の題名、第28001条の対象プラットフォームの定義と主たる機能による6つの除外、第28002条(a)の2段階の表示仕様(初回10秒・25パーセント・「X」で消去可、累計3時間後と以後毎時は30秒・75パーセント・迂回不可、いずれも17歳超と合理的に判断した利用者には不要)、同(b)の文言と表示方法、同(c)の他の請求への影響、同(d)の私的訴権の否定、同(e)の分離条項、同(f)の2027年1月1日からの施行を確認した。確認日は2026年9月7日。(2026年9月確認)
- *2 参考:カリフォルニア州法 健康・保安法典 第27000.5条(Protecting Our Kids from Social Media Addiction Act・2024年法律第321号により追加・2025年1月1日施行)(https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/codes_displaySection.xhtml?lawCode=HSC§ionNum=27000.5)。議会法案56が参照する定義の一次情報として。(a)項の依存性のあるフィードの定義と、定義から外れる各条件(持続的に関連づけられない情報、検索語、プライバシーやアクセシビリティの設定と機器の技術情報、利用者が明示的に要求した媒体、利用者間の私的な通信、同一の作成者による既存の並びの次の媒体など)、(b)(1)項の依存性のあるインターネットベースのサービスまたはアプリケーションの定義と(b)(2)項の適用除外、ならびに(c)項から(g)項までの媒体・未成年・運営者・親・利用者の定義を確認した。確認日は2026年9月7日。(2026年9月確認)