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2026.06.29 らしくコラム

データガバナンス人材不足を外注で補う進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

data analytics dashboard

この記事のポイント

  • データガバナンスはDMBOK(データマネジメント知識体系)が定める11領域の中核。CDO・データスチュワード・データアーキテクトといった専門人材が必要ですが、その確保は多くの企業で難題となっています。
  • デジタル庁が2025年6月に公表した「データガバナンス・ガイドライン」では、外部の専門家や有識者を活用しながら社内知見を育てる方針が明示されています。
  • ポリシー策定・体制設計・継続運用の3フェーズを外注で補完する際は、委託範囲の明文化とKPIの設定が成否を分けます。

データガバナンスとデータマネジメントの違い

business data management

データガバナンスとは、データ資産の管理に対して職務権限と意思決定ルールを通じて統制する仕組みを指します。DAMA International(国際データマネジメント協会)が発行する知識体系ガイド「DMBOK(Data Management Body of Knowledge)」では、データガバナンスをデータマネジメント全11知識領域の中核(ハブ)として位置づけています*1

ポリシー 策定 ルール整備 体制 組織設計 役割定義 データ 品質管理 メタデータ整備 継続 運用 改善サイクル データ 価値化・ 意思決定活用
データガバナンス推進の5ステップ:ポリシー策定→体制構築→品質管理→継続運用→データ価値化

データマネジメントは、人・プロセス・技術を組み合わせてデータを組織の資産として扱う、より広い概念です。データガバナンスはその中で「誰が・何を・どのように決めるか」という権限と責任を定める役割を担います。

わかりやすく整理すると、データマネジメントが「何をするか」の全体像であるのに対し、データガバナンスは「誰がどう決めるか」のルールと責任体制です。この2つは車の両輪であり、どちらが欠けても継続的な改善は難しくなります。

DMBOKが定める11知識領域とガバナンスの位置づけ

DAMA International が発行するDMBOK(第2版・2017年刊行、日本語版2024年改訂)は、データマネジメントを11の知識領域で体系化しています*1。データ品質、データセキュリティ、データアーキテクチャ、メタデータ管理などの各領域は、データガバナンスによる方向付けがなければ個別最適にとどまります。

デジタル庁も2025年6月20日に公表した「データガバナンス・ガイドライン」の中で、データを「人・モノ・金に並ぶ重要な経営資源」と定義しています*2。同ガイドラインはデータガバナンスを「経営ビジョンとDX戦略との連動」「経営者による説明責任」の観点から企業全体で推進すべき活動として位置づけています。

専門人材が希少な理由と人材不足の現状

データガバナンスを推進するには、主に3つの専門的な役割が必要です。CDO(Chief Data Officer、データ統括責任者)がデータ戦略全体を統括し、データスチュワードが各データ領域の品質・メタデータ管理を実務で担い、データアーキテクトが組織全体のデータ構造を設計します。

これらの役割は、データの技術的な理解だけでなく、業務フローへの精通とステークホルダーとの調整能力を同時に求めます。エンジニアリングとビジネスの両面を深く理解する人材は、労働市場で希少な存在です。

DX推進人材の不足:IPA「DX動向2025」が示す日本の現状

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2025年6月に公表した「DX動向2025」によると、DXを推進する人材が「やや不足している」「大幅に不足している」と回答した日本企業の割合は85.1%に上ります*3。米国(23.8%)・ドイツ(44.6%)と比較しても、日本の人材不足感は突出しています。

同調査では2022年度(83.5%)・2023年度(85.7%)からも大きな改善がみられておらず、構造的な課題であることが示されています。データガバナンスに特化した人材はDX人材の中でも希少性が高く、自力での採用・育成は多くの企業で数年単位の取り組みが必要です。

内製化の難しさ:スキルと工数の現実

データガバナンスを内製で立ち上げるには、少なくとも以下のスキルを持つ人材が必要です。

  • DMBOKやデータカタログ等のデータマネジメントフレームワーク知識
  • 個人情報保護法・GDPR等の法規制への対応経験
  • 業務部門と技術部門を横断する調整・ファシリテーション能力
  • データカタログ・データリネージツールの実装・運用経験

ポリシー策定フェーズだけでも、現状調査・ドラフト作成・関係者レビュー・承認プロセスを含めると、専任担当者が複数名で数か月規模の工数を要します。人員を他業務から割くコストも含めると、外部専門家の活用が現実的な選択肢として浮上します。

外注で補完できる3つの領域

デジタル庁の「データガバナンス・ガイドライン」(2025年6月)は、「外部の専門家や有識者を積極的に活用しながら社内の知見を育てること」を推奨しています*2。外注が有効な領域は主に3つあります。

領域 外注で補完できる主な業務 内製が難しい理由
ポリシー策定 データ管理ポリシーの起草・レビュー、法規制(個人情報保護法・GDPRなど)対応の要件整理、全社データ分類基準の設計 業法・法規制の解釈には専門的な知識が必要で、社内法務だけでは対応が難しいケースがあります。
体制構築 ガバナンス委員会の設計・会議体の運営支援、データスチュワードの役割定義・教育、CDO機能の代行または支援 ゼロから組織設計を行う経験を持つ人材が社内にいない場合、フレームワーク知識を持つ外部専門家が設計をリードする方が立ち上がりが速くなります。
継続運用 データカタログ(データの定義・所在を管理するツール)の構築・運用、データ品質モニタリング、コンプライアンス監査の補助 データカタログツールの実装・保守には継続的な技術スキルが必要で、専任者の確保が難しいケースが多くあります。

なお、データカタログやガバナンス基盤そのものの整備・運用を外注する具体的な手順は、データカタログ・ガバナンス整備を外注する進め方で解説しています。本記事は「専門人材の不足を外注・委託で補う」という観点に絞って整理しています。

外注を活用する際のリスクも把握しておく

外注には固有のリスクもあります。委託範囲が曖昧なまま進めると、社内に知見が蓄積されない「依存状態」に陥る懸念があります。また、社内データの取り扱いに関わるため、情報管理ルールや契約上の機密保持条項を事前に整備することが求められます。

外注の目的を「社内の人材が担えるまでのブリッジ」と位置づけ、終了時点での知識移転(ナレッジトランスファー)を契約に明記することが大切です。

外注を成功させる5ステップ

外注によるデータガバナンス補完を機能させるには、着手前の準備段階から終了後の自走設計まで、段階的な進め方が有効です。

  1. ステップ1:現状調査とスコープ設定
    保有データの棚卸し、コンプライアンスリスクの洗い出し、業務部門ごとのデータ利用実態を把握します。スコープが広すぎると費用と期間が膨らむため、最初のプロジェクトは「特定の重要データ領域」に限定して進めます。
  2. ステップ2:委託範囲の文書化(RFP作成)
    対象データの範囲・環境、成果物の定義、SLA(サービスレベル合意)、エスカレーション手順をRFP(提案依頼書)に明記します。委託範囲を文書化することで、複数の委託先を同一基準で比較できます。
  3. ステップ3:委託先の選定と契約
    技術力に加えて「業務要件をデータ設計に落とし込むコンサルティング力」を評価基準に加えます。複数社から提案を受け、担当チームの経験・費用の透明性・実績を多面的に比較します。契約には知識移転の条件と機密保持条項を含めます。
  4. ステップ4:段階的な実装とモニタリング
    フェーズを「現状分析・要件定義」→「設計・構築」→「運用・改善」の3段階に分け、各フェーズで成果物と指標(KPI)を確認します。データ品質スコアやポリシー違反件数など、測定可能な指標を設定することが継続改善につながります。
  5. ステップ5:内製化への段階的移行
    委託期間中に社内担当者が積極的に参加・学習する機会を設けます。プロジェクト終了時に、ドキュメント・ツール設定・運用手順書が社内に移転されていることをマイルストーンとして設定します。

委託先選定で確認すべき4つの評価軸

data server room

データガバナンスの委託先を選ぶ際に、価格だけで判断するとミスマッチが生じやすくなります。以下の4軸で評価することが実務上の判断基準として有効です。

評価軸1:フレームワークへの準拠実績

DMBOKや国際標準(ISO 8000など)に準拠した支援実績があるかを確認します。独自手法のみの場合、他社事例との比較や将来的な方法論の更新が難しくなる場合があります。

評価軸2:法規制対応の専門性

個人情報保護法改正・GDPR(EU一般データ保護規則)・EU AI Actなど、データに関わる法規制への対応実績があるかを確認します。デジタル庁のガイドラインでもデータセキュリティと越境データ対応を主要な柱として挙げており*2、規制動向を把握している委託先を選ぶことが重要です。

評価軸3:業種・規模の類似事例

同業種または同規模の組織でのデータガバナンス構築経験があると、業務フローや規制環境の前提知識を共有しやすくなります。架空の実績ではなく、公開された事例や参考先企業を確認できる委託先が望ましいです。

評価軸4:ツール依存度と中立性

特定のデータカタログツールやプラットフォームに強く依存した提案の場合、将来のツール変更コストが高まる懸念があります。ツール選定の理由を明確に説明できる委託先かどうかを確認します。

内製化への移行:外注を出口戦略と組み合わせる

外注は人材不足を解消する手段ではなく、社内体制を整えるまでの「橋渡し」として機能させることが重要です。外注期間中に並行して進めるべき社内の取り組みを整理します。

データスチュワード候補を早期に特定する

データスチュワードは業務部門の担当者から任命されるため、外注プロジェクトの開始前に候補者を特定します。委託先の専門家が実務を進める過程に候補者が参加することで、ノウハウが自然に移転されます。

運用ドキュメントの継続的な整備

外注中に作成されたポリシー文書・ワークフロー・データ辞書は、委託終了後も参照できる形で整備します。IIJなどのデータガバナンス支援サービスでは、Excel管理からシステマティックな管理への移行を成果物として提供する事例があります*4

KPIを社内で継続してモニタリングする

データ品質スコア・ポリシー違反の検出件数・データカタログの利用率など、測定可能な指標を委託先と一緒に設計します。外注終了後もこれらの指標を社内で追跡できるよう、ダッシュボードや報告体制を整備します。

まとめ:外注活用で人材不足を乗り越える3つの判断軸

本稿ではデータガバナンス人材不足の現状と、外注で補完するための進め方を整理しました。要点を3つに集約します。

第一に、スコープを絞ってスモールスタートする。最初から全領域の外注を試みると費用と調整工数が膨大になります。ポリシー策定・体制設計・運用の中から、自社の課題が最も深刻な1領域から着手することが現実的です。

第二に、委託範囲と知識移転の条件を契約に明記する。曖昧な委託は依存体質を生みます。成果物の定義・KPI・担当者の参加機会・終了時のドキュメント引き渡しを最初から合意に含めます。

第三に、委託先選定はフレームワーク準拠・法規制対応・中立性の3点で評価する。デジタル庁ガイドライン(2025年6月)はデータセキュリティと越境データ対応を重要課題として示しており、規制動向を把握している委託先かどうかが長期的な安定運用のカギになります。

よくある質問

データガバナンスとデータマネジメントはどう違いますか?

データガバナンスはデータに関する「意思決定の権限と責任を定める仕組み」で、データマネジメントはその仕組みを含む「データ資産管理の全体活動」です。DAMA InternationalのDMBOK(データマネジメント知識体系ガイド、2024年日本語改訂版)では、データガバナンスが11の知識領域すべての中核に位置づけられています*1。ガバナンスなしにマネジメント活動を進めると、部門ごとの個別最適にとどまり組織全体での一貫したデータ活用が難しくなります。

データガバナンスの立ち上げはどこから始めるのが現実的ですか?

デジタル庁の「データガバナンス・ガイドライン」(2025年6月20日公表)は、経営ビジョンとDX戦略の連動を出発点として挙げています*2。実務レベルでは、保有データの棚卸しと管理上のリスク洗い出しを先に行い、重要度と課題の大きな1〜2データ領域を特定することが最初のステップです。全領域を同時に整備しようとすると工数が膨大になるため、小さな領域での成功体験を積み重ねる進め方が定着しやすくなります。

データスチュワードとは何をする人ですか?

データスチュワードは、データオーナー(通常は業務部門の責任者)から任命され、データ品質基準の策定・維持やメタデータの管理など、日々のデータ管理実務を担う担当者です。データガバナンスを技術部門任せにせず、業務部門から担当者が関与することでビジネスルールとデータ定義の整合性を保つ役割を果たします。DAMA InternationalのDMBOKではエンタープライズデータモデルの共同開発・維持もデータスチュワードの重要な職務として位置づけられています*1

データガバナンスを外注する際に特に注意すべきリスクは何ですか?

特に注意すべきなのは「社内に知見が蓄積されない状態で外注依存が続くこと」です。委託期間が終了した後も自走できるよう、ポリシー文書・ツール設定・運用手順書の引き渡し(ナレッジトランスファー)を契約に明記することが大切です。また、社内のデータが委託先で適切に保護されるよう、機密保持条項や情報管理ルールを着手前に整備することも求められます。

デジタル庁のデータガバナンス・ガイドラインはどんな企業が対象ですか?

デジタル庁が2025年6月20日に公表した「データガバナンス・ガイドライン」は、企業経営者を主な対象として作成されています*2。業種・規模を問わず、データを経営資源として活用しDXを推進したい組織に向けた指針です。同ガイドラインは①越境データへの対応、②データセキュリティ、③データマチュリティ(成熟度)、④AIなど先端技術の利活用という4つの柱で構成されており、外部専門家の活用も推奨しています。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

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  1. *1 出典:DAMA International「Data Management Body of Knowledge (DAMA-DMBOK)」(第2版・2017年刊行、日本語改訂版2024年)
  2. *2 出典:デジタル庁「データガバナンス・ガイドライン」(2025年6月20日公表)
  3. *3 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」(2025年6月公表)。調査対象:日本・米国・ドイツの企業(DX推進人材の「量」確保状況に関する設問への回答結果)
  4. *4 出典:IIJ「IIJのデータガバナンス体制構築・運用支援サービス」(公式サイト)


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