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モデル更新を事前に認める計画、FDAが求める記録
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 変更を先に計画として出す:設計の検証の対象になります*1。
- 危険管理にも変更が入る:計画された変更ごとに評価します*1。
- 版の履歴は表示の要件:知らせ方まで書かせます*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
学習済みモデルを載せた製品では、公開後の更新をどう扱うかが設計の分かれ目になります。精度を上げる再学習は望ましい一方、承認や契約の前提が変わってしまうと、そのたびに手続きをやり直す話になりがちです。この行き止まりに、規制の側から別の道を用意した例があります。
米国の食品医薬品局は2026年6月17日、機械学習を用いる放射線画像の定量ソフトウェアを、事前確定変更管理計画を伴う機器の型として、連邦規則集第21編に第892.2055条を追加しました*1。特別管理を付したクラスIIへの分類で、命令の発効は同日、分類の適用は2023年2月24日です*1。
確かめたい点は4つあります。何が新しい型として置かれたのか、計画はどこで審査に入るのか、表示に何を書かせるのか、手続きは軽くなるのか。規則本文から順に見ていきます。
目次
新しい型として、変更の計画ごと分類された
まず、何が置かれたのかです*1。
第892.2055条(a)は、この型を放射線画像に機械学習のアルゴリズムを用いて定量的な画像の出力を提供する、ソフトウェアのみの機器と識別します*1。ビューの選択、領域の分割、目印付けのような出力を支える機能を含むとされ、続く一文が要点です*1。設計仕様には、確立された事前確定変更管理計画に沿って当該機器に加えられる、計画された変更が含まれる*1。
つまり、将来の変更が設計仕様の一部として扱われています*1。更新のたびに設計の外側で判断するのではなく、あらかじめ計画として設計に織り込む建て方です*1。型の名前そのものに事前確定変更管理計画を伴うという条件が入っている点も、この構造を示しています*1。
分類の経路はDe Novoと呼ばれる手続きです*1。連邦食品・医薬品・化粧品法の第513条(f)(2)による分類で、1976年5月28日より前に商業的に流通していなかった機器は、危険の程度にかかわらず法の働きにより自動でクラスIIIに置かれ、市販前承認が必要になります*1。局が分類または再分類の措置を採るまでその状態が続きます*1。
De Novo分類には2つの手続きがあります*1。1つは、まだ分類されていない機器について第510条(k)の市販前届出を出し、第513条(f)(1)によりクラスIIIへ分類する命令を受けたあとで、第513条(f)(2)による分類を請求する流れです*1。もう1つは、実質的同等性の判断の基礎となる合法的に市販された機器が存在しないと当事者が判断した場合に、届出を経ずに直接分類を請求する流れです*1。前者は1997年の食品医薬品局近代化法(公法第105-115号)第207条、後者は公法第112-144号の第607条で加わったもので、申請者はいずれかを選べます*1。
局は、一般管理だけでは有効性及び安全性の合理的な保証が得られないが、特別管理を確立できる十分な情報がある場合に、クラスIIへ分類します*1。今回の請求は2022年9月28日にキャプション・ヘルス社からキャプション・インタープリテーション・オートメイテッド・イジェクション・フラクション・ソフトウェアという機器について出され、審査を経て2023年2月24日に請求者へクラスIIへ分類する命令が出されました*1。今回の最終命令は、その分類を規則集の条文として編入するものです*1。De Novo分類は、いずれの手続きでも請求から120日以内に書面の命令で行うとされています*1。
分類が置かれると、同じ型の後続の機器はこの機器を先行機器として使えます*1。他の申請者はDe Novoの請求や市販前承認の申請をせずに、第510条(k)の市販前届出の手続きを使えるようになります*1。ただし今回、局は第510条(m)による届出の免除の判断は行っていないため、この型は第510条(k)の届出の対象のままです*1。
計画は設計の検証と危険管理の両方に入る
特別管理の中身が、実装の作業に直結します*1。
第892.2055条(b)(1)は、設計の検証と妥当性確認に4つを含めることを求めます*1。1つ目は画像の後処理のアルゴリズムの詳細な記述で、アルゴリズムの入力と出力、主要な各構成要素またはブロック、およびアルゴリズムの限界の詳細な記述を含むとされます*1。
2つ目は訓練データの詳細な記述です*1。詳細な注釈の方法、および重要なコホート(患者の属性で定義される部分集合、臨床的に関連する交絡因子、画像の取得の特性で定義される部分集合など)を含むと書かれています*1。どのデータで学習したかを、部分集合の切り口まで示す求めです*1。
3つ目が試験です*1。基礎となるアルゴリズムが意図どおりに機能することを示す性能試験の手順と結果で、評価は客観的な性能の指標にもとづくものとされ、誤差の指標、ブランド・オルトマン図、ダイス類似係数、ハウスドルフ距離、感度、特異度、予測値が例示されます*1。試験用のデータ集合には条件が付きました*1。訓練および開発に用いたデータから独立していることと、重要なコホートからの十分な数の事例を含み、それぞれの部分集合について機器の性能の推定値と信頼区間が、意図された使用の集団と画像機器について特徴づけられることです*1。4つ目はソフトウェアの検証、妥当性確認および危険分析です*1。
ここから先が、変更の計画に関する部分です*1。同(b)(2)は設計の検証と妥当性確認の活動の一部として、当該定量画像ソフトウェアの計画された変更と、計画中の性能要件に沿って行われる変更の開発、検証および妥当性確認に関する方法論を文書化しなければならないと定めます*1。
方法論を文書化させる点が要点です*1。個々の変更後の成果物ではなく、変更をどう作り、どう検証し、どう妥当性を確認するかという手続きを先に出させる構造です*1。同(b)(3)は危険管理の活動の一部として、計画された変更の危険を特定し評価し、対応する危険の低減策を特定しなければならないと続けます*1。
局は、この型に伴う健康上の危険と対応策を表で整理しています*1。
| 健康上の危険 | 対応策 |
|---|---|
| 機器の出力が正確でないことにより、患者が不完全または最適でない治療・診断を受ける | 特別管理(1)に挙げた設計の検証と妥当性確認の活動、および特別管理(4)の一部の表示の情報 |
| 認められた事前確定変更管理計画で合意した変更の実施により、アルゴリズムが正確でない出力を生じる(承認の時点の既存の仕様に関する性能、および計画された追加の機能と関連する仕様に関する性能) | 特別管理(2)から(3)まで、および(4)(vii)。あわせて特別管理(1)に挙げた一部の活動 |
| 計画にもとづき変更が実施される過程で、機器の入力の基準、出力の性能または設計の他の側面の変更が理解されず、誤った使用と誤った治療・診断につながる | 特別管理(2)から(3)まで、および(4)(vii)の表示の情報 |
危険の2つ目と3つ目が、どちらも変更の実施に関わる点は示唆的です*1。計画どおりに変更しても出力が悪くなる場合と、変更が使う側に伝わらない場合の2つに分けて手当てされています*1。モデルの更新を続ける運用そのものの作り方はMLモデルのドリフト監視と再学習で扱っており、基盤の側の整え方はMLOpsの構築で整理しています。
表示に7項目、うち1つが変更の履歴
使う側へ何を伝えるかも規則で決まっています*1。
第892.2055条(b)(4)は、表示に含める項目を7つ挙げます*1。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| (i) | 機器の妥当性を確認した患者の集団の詳細な記述 |
| (ii) | 想定される使用者と、機器を用いるために必要な専門性の記述 |
| (iii) | 機器の入力と出力の詳細な記述 |
| (iv) | 適合する画像のハードウェアと撮像の手順の詳細な記述 |
| (v) | 現在の性能の詳細な要旨と、それを支える性能試験の要旨(試験方法、データ集合の特性(属性を含む)、試験の環境、信頼区間つきの結果、関連する交絡因子で層別した事例の分布に関する副分析の要旨) |
| (vi) | 機器が失敗し得る、または期待される性能の水準で動作しないことがある場面の記述(画質が低い場合、特定の部分集団の場合など) |
| (vii) | 事前確定変更管理計画に関する表示 |
最後の(vii)が、さらに3つに分かれます*1。(A)は当該機器が計画を有する旨の記載、(B)は定量画像とそれを支えるアルゴリズムについて実施された変更の記述であって、現在の性能の要旨、関連する入力、妥当性確認の要件および関連する証拠を含むもの、そして(C)は版の履歴、機器の変更をどのように実施するかの記述、および計画に従って行われた機器の変更を利用者にどのように知らせるかの記述です*1。
(C)の3つの要素は、そのまま製品運用の要件に読み替えられます*1。版の履歴は、どの版がいつから使われているかを追える形の保持です*1。実施の方法は、配布と適用の手順です*1。利用者への知らせ方は、変更を能動的に伝える経路の設計です*1。いずれも、更新を静かに反映する運用とは相性が良くありません*1。
(v)で求められる現在の性能という書き方も、変更が続く前提を反映しています*1。ある時点の評価結果を1回出して終わりではなく、いまの版の性能として示す構造です*1。あわせて、試験の環境とデータ集合の特性、層別の副分析まで含めるため、評価の記録を体系として持つ必要が出てきます*1。
この分野の機器の位置づけそのものはプログラム医療機器(SaMD)開発の要点で扱っており、画像を扱うAIの実装面は医療画像診断AIで整理しています。
この枠組みが医療以外にも読める理由
規則そのものは放射線画像の機器に向けたものです*1。ただ、構造は分野を選びません。
学習済みモデルを含む製品では、更新が3つの問題を同時に起こします。1つは性能で、更新後に一部の入力で悪化することがあります。2つは合意で、契約や仕様で示した性能の前提が動きます。3つは伝達で、使う側が変更を知らないまま結果の解釈を続けます。第892.2055条は、この3つに対して先に計画を出させる、変更ごとに危険を評価させる、版の履歴と知らせ方を書かせるという3点で応じています*1。
受託の現場に置き換えると、決めておく事項がはっきりします。何を変える可能性があるのかを、更新の種類として先に列挙します。再学習によるパラメータの更新、入力の前処理の変更、対応する機器や形式の追加、しきい値の調整。種類ごとに、変更後に確かめる指標と合格の条件を先に決めます*1。
次に、変更の記録の粒度を決めます。第892.2055条(b)(4)(vii)(C)は版の履歴を求めます*1。どの版で、どのデータで学習し、どの試験に通り、いつから配布したかを1つのレコードに集約しておくと、表示の更新も、後からの照会も同じ記録で足ります*1。
そして、利用者へ知らせる経路を先に作ります*1。製品の画面、リリースノート、契約上の通知のどれで伝えるかを決め、更新の適用と通知の順序を手順にします。医療分野のシステムでは、この種の手続きが導入の前提になる場面が多くあります。周辺の事情は医療分野のシステム開発で扱っています。
なお、規則が示すのは分類と特別管理であり、計画そのものの中身の良し悪しを一般に決めるものではありません*1。局は今回、一般管理だけでは合理的な保証が得られないが特別管理を確立できる情報があると判断してクラスIIへ分類しており、この分類に収まるためには最終命令が挙げた特別管理に適合することが条件だと述べています*1。
受託側が先に決めておくとよい4点
ここまでを設計と契約の作業に落とします。
1点目は、変更の種類の列挙です*1。設計仕様に計画された変更を含める建て方なので、あとから足す形は前提に合いません*1。再学習、前処理、対応形式、しきい値のどれを計画に入れるかを先に決め、入れないものは通常の変更手続きへ回すと切り分けておきます。
2点目は、試験データの独立性です*1。特別管理(1)(iii)は、試験用のデータ集合が訓練および開発に用いたデータから独立していることを求めます*1。データの由来を記録し、分割の方法と時期を残す仕組みにしておくと、後から独立性を説明できます。部分集合ごとに信頼区間まで出す求めがあるため、層別の設計も先に決めます*1。
3点目は、危険評価を変更の手順に組み込むことです*1。特別管理(3)は、計画された変更の危険の特定と評価、対応の特定を危険管理の活動の一部として求めます*1。変更の申請から適用までの流れの中に、危険の再評価の工程を1つ置き、評価の結果を記録として残す形にします。
4点目は、表示と通知の更新の連動です*1。特別管理(4)(v)は現在の性能を、同(vii)は版の履歴と知らせ方を求めます*1。性能の数値を更新したときに表示の文面と通知の文面が同時に更新される経路を、リリースの手順に組み込んでおくと、版と表示のずれが起きにくくなります。
この命令の発効は2026年6月17日、分類の適用は2023年2月24日です*1。市販前届出の免除の判断は行われていないため、第510条(k)の手続きは残ります*1。日本国内での取扱いは別の制度によるため、対象となる市場ごとに要件を並べて確認する形になります。
まとめ:事前確定変更管理計画で押さえる3つの視点
米国の食品医薬品局は2026年6月17日、機械学習を用いる放射線画像の定量ソフトウェアを、事前確定変更管理計画を伴う機器の型として連邦規則集第21編第892.2055条に分類しました。特別管理を付したクラスIIで、分類の適用は2023年2月24日、経路はDe Novo分類です。押さえたい視点は三つあります。第一に、変更が設計仕様の一部として扱われること。条文は、設計仕様には確立された計画に沿って加えられる計画された変更が含まれると書いています。第二に、計画が設計の検証と危険管理の両方に入ること。特別管理(2)は計画された変更と、その開発・検証・妥当性確認の方法論の文書化を求め、特別管理(3)は計画された変更の危険の特定と評価、対応の特定を危険管理の活動の一部として求めます。特別管理(1)は、アルゴリズムの入出力と限界、注釈の方法と重要なコホートを含む訓練データ、訓練から独立した試験データによる客観的な指標での性能試験、そしてソフトウェアの検証・妥当性確認・危険分析を挙げます。第三に、表示の要件。7項目のうち(v)は現在の性能と試験の要旨を、(vii)は計画がある旨、実施した変更の記述、版の履歴と実施方法と利用者への知らせ方を求めます。市販前届出の免除の判断は行われておらず、第510条(k)の手続きは残ります。
よくある質問
事前確定変更管理計画があれば、更新のたびの手続きは要らなくなるのですか。
第892.2055条(a)は、設計仕様に、確立された事前確定変更管理計画に沿って加えられる計画された変更が含まれると定めています。計画に沿った変更を設計の枠内で扱う建て方です。ただし局は今回、連邦食品・医薬品・化粧品法第510条(m)による届出の免除の判断は行っていないと述べており、この型は第510条(k)の市販前届出の対象のままです。手続きが一律に不要になるという内容の命令ではありません。
特別管理(2)で文書化するのは、変更の内容ですか、それとも手順ですか。
第892.2055条(b)(2)は、計画された機器の変更と、計画中の性能要件に沿って行われる変更の開発、検証および妥当性確認に関する方法論を文書化しなければならないとしています。変更そのものと、それをどう作り確かめるかという方法論の両方が対象です。あわせて同(b)(3)は、危険管理の活動の一部として、計画された変更の危険を特定し評価し、対応する低減策を特定することを求めています。
試験に使うデータには、どのような条件が付いていますか。
第892.2055条(b)(1)(iii)は、試験用のデータ集合が訓練および開発に用いたデータから独立していること、そして重要なコホートからの十分な数の事例を含み、それぞれの部分集合について機器の性能の推定値と信頼区間が、意図された使用の集団と画像機器について特徴づけられることを求めています。評価は誤差の指標や感度・特異度などの客観的な性能の指標にもとづくものとされています。
利用者への周知は、どこまで求められていますか。
第892.2055条(b)(4)(vii)は、表示に、機器が計画を有する旨の記載、実施された変更の記述(現在の性能の要旨、関連する入力、妥当性確認の要件、関連する証拠を含む)、そして版の履歴、変更をどのように実施するかの記述、計画に従って行われた変更を利用者にどのように知らせるかの記述を含めることを求めています。知らせる内容だけでなく、知らせ方の記述も表示の要件に入っています。
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出典
- *1 参考:米国連邦官報 91 FR 36522「Medical Devices; Radiology Devices; Classification of the Radiological Machine Learning-Based Quantitative Imaging Software With Predetermined Change Control Plan」(FDA・ドケットFDA-2026-N-6535・最終改正/最終命令・2026年6月17日発効・連邦規則集第21編第892部第892.2055条を追加)(https://www.federalregister.gov/documents/2026/06/17/2026-12166/medical-devices-radiology-devices-classification-of-the-radiological-machine-learning-based)。規則の一次情報として。要旨と日付(命令の発効2026年6月17日、分類の適用2023年2月24日)、第I節のクラスIIIへの自動分類(1976年5月28日の基準)とDe Novo分類の2つの手続きおよび120日以内の書面の命令、先行機器としての利用と第510条(k)の関係、第II節の請求の受理(2022年9月28日)とクラスIIへの分類の命令、表1の3つの健康上の危険と対応策、第510条(m)による免除の判断が行われていない旨、ならびに第892.2055条(a)の識別と(b)の特別管理((1)(i)から(iv)まで、(2)、(3)、(4)(i)から(vii)までおよび(vii)(A)から(C)まで)の規則本文を確認した。全文テキスト(federalregister.gov の full_text/text/2026/06/17/2026-12166.txt)で照合した。確認日は2026年9月8日。(2026年9月確認)