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2026.06.22 らしくコラム

IT人材不足はなぜ起きる?原因・2030年問題と企業がとるべき解決策

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

人材不足の職場

この記事のポイント

  • IT人材不足の根本は「需要の急膨張」「供給の伸び悩み」「スキルミスマッチ」という3つの構造要因が重なっていることにあります。
  • 2030年には高位シナリオで約79万人の不足が見込まれており、従来型人材の充足と先端IT人材の深刻な不足が同時進行しています。
  • 採用・育成・外部委託という解決策の選択肢ごとに自社のリソース状況を踏まえた優先順位の判断が、企業規模を問わず必要です。

IT人材不足の現状と規模

対策の検討会議

IT人材不足とは、企業がデジタル化・システム開発・運用保守に必要なIT専門人材を確保できない状態が社会全体で慢性化している状況を指します。

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が2025年6月に公表した「DX動向2025」では、日本企業の85.1%が「DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する人材が不足している」と回答しています(「やや不足」「大幅に不足」の合計。日米独3か国比較調査)*1

同調査では米国・ドイツとの比較も示されており、日本の人材不足率は両国を大きく上回っています。また、日本で最も不足している人材タイプは「ビジネスアーキテクト(業務とITを橋渡しできる人材)」であり、米独が「データサイエンティスト」と回答しているのと対照的です。

現状(Before) IT需要:急増 IT供給:伸び悩み スキルミスマッチ 採用競争の激化 DX推進停滞 解決後(After) 採用・育成の多様化 リスキリング推進 外部委託の活用 元請パートナー連携 DX推進体制の構築
図1:IT人材不足の現状から解決策へ — 課題と対処の全体像

経産省・IPAデータが示す不足の深刻度

経済産業省が2019年4月に公表した「IT人材需給に関する調査」(みずほ情報総研実施)では、2030年時点のIT人材需給ギャップが試算されています*2。高位シナリオで約79万人、中位シナリオで約45万人、低位シナリオで約16万人の不足が見込まれています。

この試算は需要の伸び率ごとに3つのシナリオを設定したもので、単一の数値として断定できないことに注意が必要です。ただし、いずれのシナリオでも相当規模の不足が生じることは共通しています。

また、総務省「令和3年版 情報通信白書」では、IT人材の量的不足を「大幅に不足している」または「やや不足している」と回答した企業が89.0%に達しています*3

先端IT人材 vs 従来型IT人材の質的ミスマッチ

経産省2019調査が指摘した重要なポイントは「量の不足だけでなく質のミスマッチ」です。同調査では、IT人材を「先端IT人材」と「従来型IT人材」に分類して分析しています。

「先端IT人材」とは、AIやビッグデータ、IoT(モノのインターネット)等の第4次産業革命に対応した新しいビジネスを担う人材を指します。こうした人材は慢性的に不足が続く一方、従来型の保守・運用に特化したIT人材は需要の伸びが鈍化し、将来的には余剰が生じる可能性も示唆されています。

つまりIT人材不足とは「すべてのIT人材が足りない」という単純な話ではなく、「高度なスキルを持つ人材が決定的に不足している」という質的な問題でもあります。

IT人材不足が起きる3つの構造的原因

IT人材不足が長期にわたって続いているのは、需要側の膨張・供給側の制約・スキルミスマッチという3つの要因が重なって作用しているからです。それぞれを順に整理します。

需要サイド — DX加速・クラウド化・AI活用がIT人材需要を押し上げる

2010年代以降、企業のデジタル化投資は業種を問わず拡大しています。クラウドサービスの普及、ECサイト・スマートフォンアプリの内製化、製造業・小売業のIoT活用、さらに近年の生成AI(ジェネレーティブAI)の実用化が、従来はIT企業だけが必要としていた人材を「すべての産業」で必要とする状況を生み出しています。

経産省がたびたび警鐘を鳴らしてきた「2025年の崖」問題(老朽化した基幹システムのレガシーマイグレーション遅延)も、運用保守・移行支援のIT人材需要をさらに押し上げる要因として機能しています。

DX推進には、業務フローを理解しながらITシステムを設計・改善できるビジネスアーキテクトや、クラウドインフラを構築・管理できるエンジニアが欠かせません。これらの人材は採用市場での競争が特に激しく、大手企業でさえ確保に苦労しています。

供給サイド — 理工系教育の受け皿不足と離職率の高さ

日本の理工系大学・大学院における情報系定員は、IT需要の伸びに対して長年追いついていませんでした。文部科学省は近年、情報系学部の新設・定員増を推進していますが、即戦力として市場に出るまでには数年単位の時間がかかります。

また、IT業界の離職率の高さも供給制約の一因です。技術変化の速さや長時間労働文化が根強い企業では、スキルを積んだ人材が転職・フリーランス化してしまい、組織内に知識が蓄積されにくい構造があります。

さらに経産省2019調査では、IT人材の高齢化(50歳以上が全体の20%以上を占める)も指摘されています。今後10〜15年で大量に退職が見込まれる世代の知識・技術をどう継承するかが企業の課題となっています。

ミスマッチ — 求めるスキルと市場供給スキルの乖離

企業が求めるスキルセットと、求職者・在籍人材が持つスキルセットの乖離が拡大しています。特に、AIエンジニア・データサイエンティスト・クラウドアーキテクト・セキュリティエンジニアといった専門領域では、求人数に対して応募数が圧倒的に少ない状況が続いています。

この乖離は採用活動では解消しにくく、社内育成・リスキリング(Reskilling、既存社員のスキル転換)か、外部パートナーへの業務委託によって補完するアプローチが現実的です。

IPA「DX動向2025」が「最も不足しているのはビジネスアーキテクト」と示したように、技術スキルだけでなくビジネス要件をIT設計に変換できる人材の不足は特に深刻です。こうした人材は採用市場でも高倍率で、育成には実業務での継続的な経験が必要なため、短期間では補いにくい領域です*1

2030年に向けて加速するIT人材不足 — 経産省シナリオ分析

2030年に向けてIT人材不足がどの程度まで深刻化するかは、IT需要の伸び率によって大きく異なります。経産省2019調査が提示した3シナリオの枠組みを理解することは、自社の中長期的な人材戦略を立てる上で重要な基準になります。

高位・中位・低位の3シナリオが示す2030年の不足規模

経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年4月)は、需要の伸び率ごとに以下のシナリオを設定しています*2

シナリオ IT需要の伸び率の前提 2030年の不足規模(試算)
高位シナリオ IT需要が最も高い成長を続ける場合(年4.4%超の伸び) 約79万人
中位シナリオ IT需要が中程度の成長を続ける場合 約45万人
低位シナリオ IT需要の伸びが最も緩やかな場合 約16万人

いずれのシナリオでも相当規模の不足が見込まれており、「不足が起きるかどうか」ではなく「どの程度の規模になるか」という段階にあります。なお、この数値は試算値であり、実際の不足規模は政策対応・技術変化・教育投資の成果によって変動します。

現実には、AIや生成AIの急速な普及がIT需要をさらに押し上げているため、高位シナリオに近い展開が懸念されています。企業の人材戦略は少なくとも中位シナリオを念頭に置いて設計することが現実的です。

「2025年の崖」以降も続く構造問題

経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」で指摘された「2025年の崖」とは、老朽化した基幹システム(レガシーシステム)の刷新が遅れると、2025年以降に大規模なシステム障害やデータ活用の遅れが生じ、日本全体の競争力に影響が出るという警告でした。

2025年を過ぎた現在も、レガシーシステムの刷新が完了していない企業は少なくありません。刷新を担えるシステム開発・移行支援のIT人材は引き続き不足しており、「崖」の問題は形を変えながら継続しています。

加えて、生成AIの活用には自社データの整備・セキュリティ設計・AI倫理の観点からのガバナンスが必要となり、これらを担う人材ニーズが2020年代後半に向けて急速に高まっています。

中小企業が特に直面する困難

IT人材不足は企業規模を問わず影響していますが、中小企業は大手企業と比べてより多くの制約に直面しています。その主な要因を整理します。

採用競争で大手に負ける給与水準の壁

IT人材の市場価値は年々上昇しており、クラウドエンジニアやAIエンジニアへの大手IT企業・メガテックからの高水準なオファーが相次いでいます。中小企業は給与水準・福利厚生・キャリア展望のいずれの面でも大手と同等の条件を提示することが難しく、採用競争で後手に回りがちです。

また、リモートワークの普及によって地理的制約が緩和された分、地方の中小企業の人材が大都市・グローバル企業に流出しやすくなっています。「地元での就職」というアドバンテージが低下しているのも中小企業にとっての課題です。

育成コストを吸収できない体制の薄さ

IT人材の育成には時間と費用がかかります。スキルを持つ社員が育成担当を兼務しながら日常業務もこなすには、相当の余力が必要です。大手企業は専任の人材開発部門を置けますが、中小企業では1人のIT担当者が保守・開発・教育を兼任するケースが珍しくありません。

このような体制の薄さは、育成投資をしてもスキルアップした人材が転職してしまうリスクとも表裏一体です。育成コストを十分に回収できないまま人材が流出するサイクルに入ると、組織としてのIT能力が向上しにくくなります。

こうした状況を補う選択肢として、外部のIT人材サービスや元請(プライムベンダー)への業務委託が現実的な手段となります。自社の技術力を段階的に高めながら、不足部分を外部で補う「ハイブリッド型」の体制が多くの中小企業に求められています。

IT人材不足を解消する4つの選択肢

IT人材不足への対処方法は「採用」「育成」「外部委託」「パートナー連携」の4つの選択肢に整理できます。どれか1つで解決するというよりも、自社のIT戦略と予算・体制に応じて組み合わせることが現実的です。

採用強化(正社員・中途・多様人材)

IT人材採用の競争環境は厳しいですが、採用戦略を見直すことで成果が出やすくなる余地があります。具体的には、正社員採用一本槍ではなく業務委託・副業・フリーランス活用を組み合わせる方法、専門スキルを持つシニアIT人材や女性IT人材など多様なバックグラウンドを持つ候補者に目を向ける方法、リモートワーク前提の求人設計で地理的な制約を外す方法などがあります。

ただし、採用は内定から実際に戦力化するまでに半年〜1年程度のリードタイムを要します。急ぎの開発・保守案件がある場合、採用だけで解決しようとすることにはリスクがあります。

社内育成・リスキリング

既存社員にITスキルを身に着けさせるリスキリングは、外部採用より定着率が高く、業務ドメイン知識と組み合わせた即戦力化が期待できます。政府もDX推進のためのリスキリング支援制度(各種助成金・人材開発支援制度)を整備しています。

一方、育成には担当者の工数と一定の期間投資が必要です。また、最先端のAI・クラウド領域では、社内に指導できる人材がいないケースもあります。外部の研修機関やeラーニングプラットフォームを活用しながら、中長期の育成ロードマップを設計することが大切です。

外部委託・アウトソーシングの活用

開発・運用保守・インフラ管理・セキュリティ対応などのIT業務を外部のITベンダーや受託企業に委託する方法は、即時性という点で最も素早く動ける手段です。不足するスキルや工数を必要なタイミングで調達でき、繁閑に合わせた柔軟な体制構築が可能です。

外部委託を成功させるためには、委託先のスキルセット・実績・対応範囲をしっかり確認すること、業務要件を明確化した上で契約・仕様を固めること、そして委託先との定期的なコミュニケーション体制を整えることが重要です。

元請(プライムベンダー)パートナーシップで継続体制を構築

外部委託の中でも、単発のプロジェクト委託ではなく、元請(プライムベンダー)として継続的にシステムの保守・開発・運用を担うパートナーと長期契約を結ぶアプローチは、IT人材不足への対処として特に有効です。

元請(プライムベンダー)との連携では、発注先が複数のサブベンダーをマネジメントするため、発注企業はITの全領域を個別に管理する必要がなくなります。必要な専門性を持つ人材が案件ごとにアサインされるため、実質的に外部のIT組織を保有するのに近い体制を構築できます。

自社にIT内製化を目指す中長期的な方針がある場合は、元請(プライムベンダー)からの技術移転・知識共有を契約に盛り込み、段階的に内製比率を高めていくロードマップを設計することも選択肢のひとつです。

まとめ:IT人材不足への対処 — 選択肢の地図と3つの判断軸

本稿では、IT人材不足の現状・原因・将来予測・解決策の全体像を整理してきました。要点を3つに集約すると次の通りです。

第一に、IT人材不足は需要側の急拡大・供給側の伸び悩み・スキルミスマッチという3つの構造要因が重なって生じており、特定の企業だけの問題ではなく社会全体の構造問題です。先端IT人材の不足は特に深刻であり、採用市場だけでは解消できません。

第二に、経産省「IT人材需給に関する調査」(2019年)のシナリオ分析が示すように、2030年に向けて不足規模は高位シナリオで約79万人に達する可能性があります。中位・低位シナリオでも相当の不足が見込まれており、今から人材戦略を立てておくことが必要です。

第三に、解決策は「採用・育成・外部委託・パートナー連携」の4つの軸に整理でき、自社のリソース・スピード感・中長期の方向性に応じた組み合わせが求められます。中小企業は特に外部リソースを活用しながら段階的に内製力を高めるアプローチが現実的です。

よくある質問

IT人材不足はいつ頃から問題になっていますか?

IT人材不足は2010年代初頭からすでに指摘されていましたが、2018年の経産省「DXレポート」でレガシーシステム問題と合わせて大きく注目されました。2019年4月に公表された「IT人材需給に関する調査」(みずほ情報総研実施)では、2030年に向けた中長期的な不足規模が試算され、社会的な議論が広まりました*2。その後もDX推進の加速・生成AIの普及が人材需要をさらに押し上げており、問題は解消されていません。

2030年に約79万人不足するとはどのような意味ですか?

この数値は経産省「IT人材需給に関する調査」(2019年)の高位シナリオにおける試算値です*2。IT需要が最も高い成長を続けた場合に、需要に対して供給が約79万人分不足するという予測であり、確定値ではありません。中位シナリオでは約45万人、低位シナリオでは約16万人という試算も示されています。自社の戦略立案には単一数値を断定的に使うのではなく、複数シナリオの幅として理解した上で活用することが大切です。

IT人材不足は中小企業でも深刻ですか?

中小企業においても深刻です。給与水準・育成リソース・ブランド認知のいずれの面でも大手企業と比べて採用競争において不利な状況にあります。リモートワークの普及で地理的制約が薄れた分、地域の優秀なIT人材が大都市・グローバル企業に流出しやすくなっています。自社での採用・育成が難しい場合は、外部の元請(プライムベンダー)へのアウトソーシングやSES(システムエンジニアリングサービス)の活用が現実的な対処となります。

IT人材の育成にはどれくらいの時間がかかりますか?

スキル領域によって大きく異なります。基礎的なプログラミングや既存システムの保守担当であれば数か月〜1年程度での一定水準到達が期待できます。一方、クラウドアーキテクトやAIエンジニア、ビジネスとITを橋渡しできるビジネスアーキテクトとして独り立ちするには、実業務での継続的な経験を含めて数年規模の投資が必要です。急ぎの案件については外部委託と並行しながら育成計画を進めるアプローチが現実的です。

IT人材不足に対して企業が今すぐできることはありますか?

すぐに着手できる対処として、まず自社のIT業務の「見える化」があります。どの業務がどれだけの工数を要しているかを整理することで、外部委託すべき領域と社内で担うべき領域が明確になります。並行して、既存社員を対象としたITリスキリング(スキル転換)の検討や、外部のITベンダー・元請(プライムベンダー)候補との情報収集を始めることが有効です。採用活動は内定から戦力化まで半年〜1年規模のリードタイムを要するため、並行して外部リソースを確保しておくことが現実的です。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

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  1. *1 出典:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「DX動向2025」(2025年6月公表)
  2. *2 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査 調査報告書」(2019年4月公表、みずほ情報総研実施)
  3. *3 出典:総務省「令和3年版 情報通信白書 — ICT人材の不足・偏在」(2021年公表)


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