LASSIC Media らしくメディア
Microsoft 365導入支援で決めておく5つのポイント
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- Microsoft 365導入支援は、テナント・ID・管理者の権限・メールとファイルの移行・アプリの配布を一緒に整える支援です。
- テナント名やMXレコードの切り替えなど、後から直しにくい5つのポイントは社員に配る前に決めておきます。
- 支援会社には管理者の権限を役割と期間で絞って渡し、引き渡し後の運用を誰が受け持つかを決めます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
Microsoft 365の契約は済んだものの、管理センターを開いても何から設定すればよいのか分からない。今のメールを業務を止めずにどう移すのかも見当がつかない——。初めて全社で使い始める会社では、こうした戸惑いが起こりがちです。Microsoft 365導入支援は、テナント(会社ごとの契約と管理の単位)の初期設定から、社員のアカウント、メールやファイルの移行、アプリの配布までを外部の専門家と進める支援です。
最初の設定を整えておけば、ドメインや管理者の権限を後から作り直す手間を減らせます。ただし万能ではなく、任せきりにすると運用に入ってから社内で判断できなくなることもあります。本記事では、Microsoft 365を導入する会社の情報システムの担当者に向けて、支援の中身、導入で決めておく5つのポイント、メール移行の方法の違い、導入の進め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
Microsoft 365導入支援とは
法人向けのMicrosoft 365は、WordやExcelなどのアプリに加えて、メール、ファイルの保存と共同作業、会議などのオンラインサービスをまとめたサブスクリプションです。大企業向けのプランには、端末を管理するMicrosoft Intuneも含まれます。*1
- テナントとドメイン:自社のメールアドレスの「@」より後ろのドメインをMicrosoft 365に登録し、持ち主であることを確かめます
- ユーザーID:社員のアカウントをクラウドだけで持つか、社内のActive Directory(社員のアカウントを管理する仕組み)と同期するかを決めます
- 管理者の権限:Microsoft 365管理センターで、誰にどの管理者の役割を割り当てるかを決めます
- メールとファイルの移行:今のメールサーバーやファイルサーバーのデータを移します
- アプリと更新:Microsoft 365 Apps(WordやExcelなどのアプリ)の配り方と、更新の受け取り方を決めます
社員のアカウントと毎日のメールにかかわるため、切り替えの日に業務を止めない段取りが支援の中心です。Office 2021からの移行はOffice 2021サポート終了とMicrosoft 365への移行で扱っています。
導入で決めておく5つのポイント
Microsoft 365には、使い始めた後では変えにくい設定があります。次の5つは、社員に配る前に決めておくと作り直しを避けられます。

| ポイント | 決めること | 先に決めておく理由 |
|---|---|---|
| 1. テナント名 | 契約時に作られる「onmicrosoft.com」のドメイン名をどうするか | 最初のonmicrosoft.comドメインは名前の変更も削除もできず、SharePointのアドレスにも使われる |
| 2. ユーザーID | クラウドだけのIDにするか、社内のActive Directoryと同期するハイブリッドIDにするか | 同期する場合は、Microsoft Entra Connect(同期の仕組み)を社内のサーバーで動かし続ける*2 |
| 3. 管理者の権限 | グローバル管理者を誰に、何人割り当てるか | グローバル管理者は組織の設定とほとんどのデータにほぼ無制限にアクセスできる |
| 4. メールの切り替え | MXレコード(メールの届け先を示すDNSの設定)をいつ切り替えるか | 切り替えた時点で、そのドメイン宛てのメールはすべてMicrosoft 365に届く*4 |
| 5. アプリの配り方と更新 | アプリをどこから配るか。更新をどの周期で受け取るか | 社員が使い始めた後に変えると、配り直しや社内の問い合わせが増える |
1つ目のテナント名について、Microsoftは最初のonmicrosoft.comドメインの名前は変更も削除もできないと説明しています。*4 管理者については、グローバル管理者をできるだけ少なくし、そのパスワードを戻せる特権認証管理者も用意しておくよう勧めています。*3
メール移行の方法の違い
メールの移行は、今のメールの仕組みとメールボックスの数で方法が変わります。社内のExchange Server(Microsoftのメールサーバー)からは3つの方法、それ以外の仕組みからはIMAP(メールを受け取る方式の一つ)で移す方法があります。
| 方法 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 一括移行 | メールボックスが少なく、一度に切り替えたいとき | 2,000個まで移せるが、Microsoftは150ユーザー以下のほうが現実的としている*6 |
| 段階的な移行 | 古いExchange Serverで、メールボックスが2,000個を超えるとき | 何回かに分けて移すため、新旧が並ぶ期間がある |
| ハイブリッド | 社内のExchange Serverとクラウドを並べて使いながら、少しずつ移したいとき | 社内のサーバーとクラウドをつなぐ設定と、その運用が要る |
| IMAPでの移行 | Exchange以外のメールの仕組みから移すとき | 移るのは受信トレイなどのメールだけで、連絡先・予定表・タスクは移らない*6 |
ファイルは、Migration Manager(ファイルを移す機能)で社内のファイル共有やBox、Googleドライブ、Dropboxから移せます。*7 社内のExchange Serverの扱いはExchange Server 2016のサポート終了と移行で扱っています。
導入支援の進め方
Microsoft 365の導入は、次の4つの段階で進めると、ドメインや管理者の権限を後から作り直さずに済みます。
- ステップ1:テナントと管理者を整える。テナント名を決め、グローバル管理者を誰が何人持つかを決めます
- ステップ2:ドメインとIDを用意する。自社のドメインを登録し、クラウドだけのIDにするか同期するかを決めて、社員のアカウントを作ります
- ステップ3:メールとファイルを移す。少人数で試してから、残りの社員の分を移します
- ステップ4:アプリを配り、運用に移る。Microsoft 365 Appsを配り、更新の周期と社内の問い合わせ窓口を決めます
つまずきやすいのは、ステップ2からステップ3へ移る境目です。Microsoftは、MXレコードを切り替える前に社員のアカウントとメールボックスを作っておくよう案内しています。*5 順番を守れば、届け先が切り替わる間もメールが途切れずに届きます。
ステップ4では、アプリはクラウドから配る方法が勧められています。更新の周期は、新しい機能をすぐに受け取る「現在のチャネル」、月に1回決まった日に受け取る「月次エンタープライズチャネル」、1月と7月の半年ごとに受け取る「半期エンタープライズチャネル」から選べます。*8
外部に頼むときに確認しておきたい点
頼み先を探す手がかりには、Microsoftのパートナー制度があります。Microsoft 365の導入を支援する力を示す区分が「ソリューションパートナー(Modern Work)」で、パフォーマンス・スキル・顧客の成功の3つの分野で、100点中70点以上を取ることが条件です。*9 あわせて、次の点を見積もりの前に確かめておきます。

- 支援の範囲:テナント名、ID、管理者の権限、メールとファイルの移行、アプリの配布のうち、どこまでを任せるか
- 支援会社に渡す権限:作業に使う管理者の権限を、必要な役割と期間に絞れるか。パートナーにはGDAP(パートナーに渡す権限を細かく絞る仕組み)で、役割と期間を限った権限を渡せます*10
- 移行の確かめ方:少人数で試したうえで、移行の前と後でメールボックスやファイルの数をどう照らし合わせるか
- 運用後の見直し:退職者のアカウントの停止、ライセンスの割り当て、更新の周期の見直しを、引き渡しの後に誰が受け持つか
特に気をつけたいのは、支援会社に渡す権限です。グローバル管理者をそのまま渡さず、移行に要る役割だけを作業の期間に限って渡せば、誰が何を変えたのかを後から追えます。
まとめ:Microsoft 365導入支援で確かめておきたい3つの点
Microsoft 365導入支援を頼むうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、導入で決めておく5つのポイントを、社員に配る前に決めておくこと。第二に、今のメールの仕組みとメールボックスの数に合わせて移行の方法を選び、MXレコードを切り替える前にアカウントを作っておくこと。第三に、支援会社に渡す権限を役割と期間で絞り、引き渡し後の運用の担当を決めておくことです。この3点を踏まえておけば、「導入はしたものの、管理センターの設定を誰も触れない」という事態を避けやすくなります。テナントの設計や移行の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
Microsoft 365を契約すると、Microsoftから導入の支援を受けられますか
対象となる契約であれば、FastTrackというMicrosoftの支援を受けられます。展開やデータの移行を、手引きやエンジニアの支援で手伝う仕組みです。*11 自社の契約が対象かどうかは、Microsoftの担当者か管理センターで確かめます。
社内にActive Directoryがなくても導入できますか
導入できます。Microsoftは、社内にActive Directoryがない会社には、アカウントをMicrosoft 365側だけで持つクラウド専用IDが合うと説明しています。同期のためのサーバーや道具が要らないため、設定と運用を簡単にできます。
移行している間もメールは使えますか
MXレコードを切り替える前にアカウントとメールボックスを作っておけば、届け先が切り替わる間もメールを受け取れます。ただしIMAPで移す場合、移行の後に元のメールの仕組みへ届いたメールは移りません。*6
Microsoft 365の導入と移行のご相談
Microsoft 365のテナントとIDの設計から、メールとファイルの移行、アプリの配布と運用の引き継ぎまで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:Microsoft Learn「Microsoft 365 for Enterprise の概要」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/enterprise/deploy-microsoft-365-enterprise)。出典:Microsoft 365 for Enterpriseの構成(Microsoft 365 Apps、メール、ファイル ストレージと共同作業、会議、Microsoft Intune)の記述を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:Microsoft Learn「手順 1. クラウド ID モデルを決定する」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/enterprise/about-microsoft-365-identity)。出典:クラウド専用IDとハイブリッドIDの違い、Microsoft Entra Connectによる同期の記述を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:Microsoft Learn「Microsoft 365 管理センターの管理者ロールについて」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/admin/add-users/about-admin-roles)。出典:グローバル管理者をできるだけ少なくすること、特権認証管理者を用意しておくことの記述を参照(2026年10月確認)
- *4 参考:Microsoft Learn「よく寄せられる質問のドメイン」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/admin/setup/domains-faq)。出典:onmicrosoft.comドメインの名前の変更・削除ができないこと、SharePointのドメイン名との関係、MXレコード更新後のメールの届け先の記述を参照(2026年10月確認)
- *5 参考:Microsoft Learn「Microsoft 365 にCustom Domainを追加する」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/admin/setup/add-domain)。出典:MXレコードを追加する前にユーザーを追加する手順の記述を参照(2026年10月確認)
- *6 参考:Microsoft Learn「複数のメール アカウントを Microsoft 365 または Office 365 に移行」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/exchange/mailbox-migration/mailbox-migration)。出典:一括移行・段階的な移行・ハイブリッド・IMAPの各方法、カットオーバー移行の2,000個と150ユーザー、IMAP移行で移らない項目の記述を参照(2026年10月確認)
- *7 参考:Microsoft Learn「Microsoft 365 に移行する」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/sharepointmigration/migrate-to-sharepoint-online)。出典:Migration Managerの移行元(ファイル共有・Box・Google ドライブ・Dropbox など)の記述を参照(2026年10月確認)
- *8 参考:Microsoft Learn「Microsoft 365 Appsのエンタープライズ展開を計画する」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365-apps/deploy/plan-microsoft-365-apps)。出典:クラウドからの展開の推奨、現在のチャネル・月次エンタープライズ チャネル・半期エンタープライズ チャネルの記述を参照(2026年10月確認)
- *9 参考:Microsoft Learn「モダン ワークのソリューション パートナー」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/partner-center/membership/solutions-partner-modern-work)。出典:パフォーマンス・スキル・顧客の成功の3カテゴリと、100ポイント中70ポイント以上の要件の記述を参照(2026年10月確認)
- *10 参考:Microsoft Learn「詳細な代理管理者特権 (GDAP) の紹介」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/partner-center/customers/gdap-introduction)。出典:パートナーに最小限の特権で時間を限ったアクセスを渡す仕組みの記述を参照(2026年10月確認)
- *11 参考:Microsoft Learn「FastTrack for Microsoft 365 特典」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/fasttrack/introduction)。出典:展開とデータ移行の支援、パートナーとのエンゲージメント、購入が対象かどうかの確認の記述を参照(2026年10月確認)