LASSIC Media らしくメディア

2026.07.06 らしくコラム

Matomoで自前アクセス解析を外注構築

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

アクセス解析のイメージ

この記事のポイント

  • Matomoはオープンソースのアクセス解析ツールで、セルフホスト(自社サーバーでの運用)が選べます。
  • GA4のようなSaaS型解析とは異なり、計測データの保管場所と管理権限を自社側に置ける点が特徴です。
  • 構築・運用には技術要件が伴うため、内製と外注のどちらが自社に合うかを事前に見極める必要があります。

Matomoセルフホストとは何か

プライバシー保護のイメージ

Matomo(マトモ)セルフホスト(自社サーバーへの構築)とは、オープンソースのアクセス解析ツールMatomoを、自社が管理するサーバーやクラウド環境に導入し、計測データを自社側で保持する運用形態を指します。Matomoは公式に「オンプレミス」と「クラウド」の2つの提供形態を用意しており*1、セルフホストはこのオンプレミス版を自社インフラで動かす選択にあたります。

Matomo自体はGoogle Analytics(以下GA4)と同様にページビューや流入経路、コンバージョンなどを計測できるWebアクセス解析ソフトウェアです。ただし決定的な違いは、計測ソフトウェアのライセンス形態とデータの置き場所にあります。MatomoのコアはGNU General Public License v3(GPL v3)で公開されたオープンソースソフトウェアであり*2、ソースコードを確認しながら自社サーバー上で稼働させることが可能です。

図
Matomoセルフホスト構築の基本ステップ

GA4などSaaS型解析との違い

GA4に代表されるSaaS型のアクセス解析は、計測データがGoogleなどベンダーのクラウド上で処理・保管される仕組みです。設定さえ済ませればサーバー管理は不要で、機械学習を使った予測指標なども提供されます。一方でデータの保管先や処理方法はベンダーの仕様に依存し、自社側で完全に制御することはできません。

Matomoセルフホストは対照的に、計測データの保管場所を自社が選べる点が特徴です。Matomo公式は「データ保存国を自ら指定できる」と説明しており*1、銀行・保険・行政機関のように厳格なデータ管理要件を持つ業種でも採用されていると述べています*1。またMatomo公式はサンプリングされていない生データ(unsampled data)へのアクセスやデータウェアハウス連携についても言及しています*1

両者の違いを整理すると、GA4は運用負荷が低く導入が容易な反面データの取り扱いをベンダーに委ねる形態、Matomoセルフホストは運用負荷を自社が引き受ける代わりにデータの管理権限を自社に残す形態と言えます。どちらが適切かは、業種の規制要件や社内のITリソースによって変わってきます。

データを自社で持つ意義(プライバシーとデータ主権)

Matomo公式は「Matomoはあなたのウェブサイトデータを自社で保有・管理できる。収集したデータはMatomo自身の目的には利用されない」と明記しています*3。これはSaaS型解析でしばしば懸念される「計測データがベンダー側の別サービスに利用されるのではないか」という不安に対する明確な回答です。

プライバシー対応の面でも特有の位置づけがあります。Matomo公式によれば、データ匿名化の設定を行うことでCookie同意画面を出さずに訪問者データを収集する運用が可能とされ、フランスのデータ保護当局CNILからも同意なしでデータ収集できる数少ないWeb解析ツールの一つとして認められたと説明されています*4。GDPR(EU一般データ保護規則)マネージャー機能も搭載し、個人を特定しうる情報の取り扱いを設定で制御できます*1

クラウド版とオンプレミス版でもデータの扱いは異なります。Matomo公式は、クラウド版はEU域内にデータを保存し米国への転送は行わない一方、オンプレミス版では保存先の国を自社で選べると説明しています*4。法人が個人情報保護方針やセキュリティ基準を自社ポリシーに合わせて設計したい場合、この選択肢の広さが意味を持ちます。

構築の流れ―サーバー要件からトラッキングタグ導入まで

Matomoとは、Webサイトへのアクセス状況をオープンソースのソフトウェアで計測・分析する仕組みを指します。セルフホストで構築する場合、まずサーバー環境がMatomo公式の要件を満たしているかを確認します。

Matomo公式が示す必須要件は、Webサーバー(Apache・Nginx・IIS等)、PHP 7.2.5以上(PHP 8系を推奨)、MySQL 5.5以上またはMariaDBです*5。推奨構成としてはPHP 8系の最新版とMySQL 8以降が挙げられています*5。想定アクセス規模別のサーバースペックも公式に示されており、月間10万アクセス以下では2CPU・2GBメモリ・50GB SSD程度、月間100万アクセス以下では4CPU・8GBメモリ・250GB SSD程度が目安とされています*5。アクセス規模が大きくなるほどアプリサーバーとデータベースサーバーを分離する構成が推奨される点も公式ドキュメントに記載があります*5

サーバー準備後はMatomo本体をインストールし、管理画面から計測対象サイトを登録します。登録すると発行されるJavaScriptトラッキングコードを、計測したいページの開始タグ直後、または内に設置します*6。Matomo公式のトラッキングコードは初期状態でクリック計測やダウンロード計測を有効にしており*7、必要に応じてイベント計測やカスタムディメンションなどを追加できます*6。Matomo Tag Managerを使ってタグを配信する手段も選択できます*7

タグ設置が完了したら、Cookie同意やIPアノニマイズ(IPアドレスの匿名化)などのプライバシー設定を行います。ここまでを終えると、計測データがMatomo管理画面に蓄積される状態になります。

レポート機能でわかること

Matomoの管理画面では、訪問者数・ページビュー・流入チャネル・行動フローといった基本指標に加え、ヒートマップやセッションリプレイに類する行動分析機能を持つプラグインも提供されています。GA4と同様にコンバージョン(目標)設定を行うことで、フォーム送信や資料ダウンロードといった行動を計測対象にできます。

セルフホストの利点は、標準機能で提供される生データをそのまま抽出し、社内のBIツールやデータウェアハウスと連携できることです。Matomo公式もこの生データアクセスとデータウェアハウス連携を特徴として挙げています*1。サンプリングされていないデータを長期間保持できるため、期間をまたいだ詳細な行動分析を行いたい法人にとっては、レポートの再現性という点で利点になります。

既存GAからの移行の考え方

データ保護サーバーのイメージ

既存でGA4を利用している場合、Matomoへの移行はデータインポートという形で進められます。Matomo公式は「Google Analytics Importer」というプラグインを用いた移行手順を案内しており*8、クラウド版では管理画面から「Google Analytics Import」を選択しOAuth連携するだけでインポートを開始できるとしています*8。オンプレミス版では同プラグインを追加したうえでインポート設定とスケジュール実行を行う流れになります*8

移行時の注意点として、Matomo公式は「インポートは既存のWebサイトにマージすることができない」ため新規のサイトとして作成する必要があると明記しています*8。また同じサイトに新規のトラッキングコードを追加する前にインポートを先に実行するよう推奨しています*8。インポート処理自体は数日規模の時間を要するとされているため*8、移行スケジュールには相応の余裕を持たせる必要があります。

移行の判断軸としては、過去データの資産性(比較分析にどれだけ過去データを使うか)と、移行作業に割ける社内リソースの両方を見る必要があります。GA4のタグを残したままMatomoを並行稼働させ、データの整合性を確認してから段階的に切り替える進め方も選択肢になります。

運用で発生する作業と必要スキル

Matomoセルフホストの運用フェーズでは、GA4にはない作業が発生します。第一に、Matomo本体・PHP・データベースのバージョンアップとセキュリティパッチの適用です。ソフトウェアの脆弱性対応を自社の責任で行う必要があり、これを怠るとサーバー自体への攻撃リスクにつながります。第二に、アクセス増加に応じたサーバースペックの見直しと、データベースのパフォーマンスチューニングです。

これらの作業に必要なスキルは、Linuxサーバー運用・PHP実行環境の管理・MySQLまたはMariaDBのチューニング・Webサーバー(Apache/Nginx)の設定に及びます。社内に専任の運用担当を置けない企業がこれらを兼務で担うと、本来のマーケティング業務や分析業務に充てる時間が圧迫されるという実務上の課題が生じます。

専門パートナーに運用を委ねる場合との違いは、この保守作業を委託先の体制で吸収できる点です。内製では担当者の異動や退職によって運用ノウハウが失われるリスクもありますが、外部委託では体制として保守が継続される前提を契約に組み込めます。

内製と外注、どちらを選ぶか

内製と外注の判断は、社内のインフラ運用体制と、データ主権を重視する事業要件のバランスで決まります。社内にサーバー運用チームがあり、PHP・MySQLの保守経験を持つ人材が確保できている企業では、内製での構築・運用が現実的な選択肢になります。

一方、IT部門の人員が限られる企業や、複数サイト・複数ブランドでMatomoを横断運用したい企業では、構築時の要件定義からサーバー設計、タグ実装、継続的なバージョン管理までを外部パートナーに委託する方が、社内リソースを本来の分析・活用業務に振り分けやすくなります。プライバシー要件が厳格な業種ほど、構築段階での設定ミスが情報漏えいや法令違反につながるリスクも大きいため、要件定義の精度が問われます。

LASSICでは、システムの元請(プライムベンダー)としてサーバー基盤の構築から保守・運用までを受託する体制を整えています。Matomoのようなセルフホスト型ソフトウェアの導入では、サーバー要件の設計・タグ実装・プライバシー設定・継続的な保守を一体で任せられるパートナーの有無が、導入後の運用品質を左右します。

比較で見るセルフホスト解析とSaaS解析

Matomoセルフホストと、GA4のようなSaaS型解析の主な違いを比較表にまとめます。

比較項目 Matomoセルフホスト SaaS型解析(GA4等)
データ保管場所 自社が選定したサーバー・国*1 ベンダー側のクラウド環境
データの利用目的 自社のみ。Matomo自身の目的には利用されないと公式が説明*3 ベンダーの利用規約に依存
サーバー運用負荷 自社または委託先が負う*5 ベンダー側が負う
Cookie同意への対応 匿名化設定により同意画面なしでの計測が可能とされる*4 計測前の同意取得が前提となる場合が多い
初期コスト構造 ソフトウェアはGPL v3で無償*2。サーバー費・構築費が発生 利用料に運用コストが含まれる

まとめ:Matomoセルフホスト導入の3つの判断軸

本稿ではMatomoセルフホストの仕組みとGA4との違い、構築の流れ、内製と外注の判断軸を整理しました。要点を3つに集約すると、第一にMatomoはオープンソースのアクセス解析ツールであり、セルフホストによってデータの保管場所と利用目的を自社側で管理できる点が特徴です。第二に構築にはサーバー要件を満たすインフラ準備とトラッキングタグの実装、プライバシー設定が必要になります。第三に運用フェーズではサーバー保守が継続的に発生するため、社内のITリソースとデータ主権の必要性を踏まえて内製・外注を選ぶことが欠かせません。

LASSICに相談するメリット

LASSICはシステムの元請(プライムベンダー)としてサーバー基盤の構築から保守・運用までを一括で受託する体制を整えています。Matomoのようなセルフホスト型ソフトウェアの導入では、要件定義からサーバー設計、タグ実装、プライバシー設定、継続的な保守までを窓口を一本化して依頼できる点が実務上の負担軽減につながります。

よくある質問

Matomoの利用にライセンス費用はかかりますか。

MatomoのコアソフトウェアはGNU General Public License v3(GPL v3)で公開されたオープンソースであり、ライセンス費用は発生しません*2。ただしセルフホストで運用する場合はサーバー費用や構築・保守にかかる費用が別途必要になります。

MatomoクラウドとMatomoセルフホストはどちらを選ぶべきですか。

データの保存先や運用体制の要件で選び方が変わります。Matomo公式によれば、クラウド版はEU域内にデータを保存し米国への転送を行わない一方、オンプレミス版では保存先の国を自社で選べます*4。サーバー運用を自社または委託先で担える体制がある場合はセルフホストが選択肢になり、運用負荷を避けたい場合はクラウド版が適します。

既存のGA4データはMatomoに引き継げますか。

Matomo公式が提供する「Google Analytics Importer」プラグインを使うことでデータをインポートできます*8。ただし既存のMatomo上のWebサイトにマージすることはできず、新規サイトとして作成する必要がある点に注意が必要です*8

Matomoセルフホストの構築にはどの程度のサーバースペックが必要ですか。

Matomo公式は月間アクセス数に応じた目安を示しており、月間10万アクセス以下であれば2CPU・2GBメモリ・50GB SSD程度、月間100万アクセス以下であれば4CPU・8GBメモリ・250GB SSD程度を挙げています*5。アクセス規模が大きくなるほどアプリサーバーとデータベースサーバーの分離が推奨されます*5

Matomoを導入すればCookie同意バナーは不要になりますか。

データの匿名化設定を行うことで同意画面なしでの計測が可能とされ、フランスのCNILからもその運用が認められたとMatomo公式は説明しています*4。ただし自社が対象とする国・地域の法令や個人情報保護方針によって要否の判断は変わるため、自社の法務確認と合わせて設定内容を決める必要があります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


ITアウトソーシング・システム開発のご相談はLASSICへ

元請として、貴社の課題に合わせた体制構築・開発支援をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

無料相談はこちら

ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。

  1. *1 出典:Matomo「Matomo On-Premise」(https://matomo.org/on-premise/
  2. *2 出典:Matomo「Matomo Analytics Licences for Core, Tracker, and Plugins」(https://matomo.org/faq/general/matomo-analytics-licences-for-core-tracker-and-plugins/
  3. *3 出典:Matomo「Matomo On-Premise」データ所有権に関する記述(https://matomo.org/on-premise/
  4. *4 出典:Matomo「GDPR Compliance for Analytics」(https://matomo.org/gdpr-analytics/
  5. *5 出典:Matomo「Requirements for Matomo On-Premise」(https://matomo.org/faq/on-premise/matomo-requirements/
  6. *6 出典:Matomo Developer Docs「JavaScript Tracking Client: Integrate」(https://developer.matomo.org/guides/tracking-javascript-guide
  7. *7 出典:Matomo「How do I install the Matomo Analytics tracking code on an HTML website?」(https://matomo.org/faq/how-to/how-do-i-install-the-matomo-analytics-tracking-code-on-an-html-website/
  8. *8 出典:Matomo「Migrate from Google Analytics to Matomo: Import GA data」(https://matomo.org/faq/how-to/faq_102/


View