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OCS Inventoryの使い方|パソコン台帳を自動で作る方法
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- OCS Inventoryは、PCやサーバーのハードウェアとソフトウェアの情報を自動で集める無料のオープンソースです。
- 機器の中身を集める役目に強く、利用者のひもづけや問い合わせの管理はGLPIと組み合わせて補えます。
- 導入前に、GLPIとどちらの台帳を正とするかと、版の更新とバックアップの担当を決めておくことが大切です。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
社内のPCやサーバーに何のソフトが入っているのか、台帳を見ても最新の状態か分からない。手で直していた一覧表が実物と合わない——。機器の台数が増えた会社では、こうした食い違いが起こりがちです。OCS Inventory(オーシーエス・インベントリ)は、各機器に入れたエージェント(情報を集めて送る小さなプログラム)から、ハードウェアとソフトウェアの情報を自動で集めるオープンソースのソフトウェアです。
資産管理とヘルプデスクを扱うGLPIと組み合わせて使われることもあります。ただし万能ではなく、機器の貸し出しと返却の記録には別の仕組みのほうが向いています。本記事では、情報システムの担当者に向けて、OCS Inventoryでできること、GLPIやSnipe-ITとの違い、GLPIと組み合わせる構成、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
OCS Inventoryとは
IPA(情報処理推進機構)の中小企業向けガイドラインは、IT資産管理ツールを「パソコンやサーバーなどのハードウェアやソフトウェアの保有状況・構成情報を取りまとめて管理する技術」と説明しています。*1 OCS Inventoryはこの種類の道具で、名前は「Open Computers and Software Inventory」の略です。2001年から開発が続いています。*2
- 各機器に入れたエージェントが、ハードウェアとソフトウェアの構成を定期的にサーバーへ送ります
- エージェントを入れられないプリンタやネットワーク機器は、ネットワークの探索とSNMP(ネットワーク機器の情報を読み取る仕組み)で見つけます
- 中央のサーバーから、ソフトウェアの配布やコマンドの実行もできます
- 対応するOSはWindows、Linux、macOS、Androidなどです
- サーバーのライセンスはGPLv2(改変して配るときはソースコードの公開が条件になる、自由に使えるライセンス)です*7
開発の中心はフランスのFactorFX社で、企業向けに導入や保守の支援も案内しています。ソフトウェアは無料で手に入りますが、サーバーの構築や更新は使う側が受け持ちます。
GLPIやSnipe-ITとの違い
似た役目のオープンソースとの違いは「何を中心に扱うか」です。OCS Inventoryは機器の中身を自動で集めることに、GLPIは資産の台帳と社内の問い合わせ窓口をまとめることに、Snipe-ITは機器を人に貸し出して返却まで記録することに重心があります。
| 製品 | 中心の機能 | 情報の入り方 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| OCS Inventory | 機器の構成の自動収集、ソフトウェアの配布 | 各機器のエージェントが自動で送る | 台数が多く、中身を手で追いきれないとき |
| GLPI | 資産の台帳、問い合わせ(チケット)の管理 | 手入力のほか、エージェントや連携で取り込む | 資産と問い合わせ窓口を1つにまとめたいとき |
| Snipe-IT | 機器とライセンスの貸し出しと返却 | 担当者が登録し、貸し出しの処理をする | 誰が何を持っているかを記録したいとき |
OCS Inventoryは「その機器に何が入っているか」に、Snipe-ITは「その機器を誰が持っているか」に答える道具です。貸し出しの記録はSnipe-ITの仕組みと導入の進め方で、GLPIそのものの構築はGLPIでIT資産管理基盤を外注構築で扱っています。
情報を自動で集める仕組み
OCS Inventoryでは、エージェントの側からサーバーへ連絡し、サーバーは待ち受けるだけです。情報はXMLという形式でHTTPまたはHTTPSで送られ、ソフトウェアの配布とSNMPの探索はHTTPSに限られます。*3 管理サーバーは、次の4つの部品でできています。

- データベースサーバー:集めた情報を保存する(MySQL)
- 通信サーバー:エージェントとのやり取りを受け持つ
- 管理コンソール:担当者がブラウザで情報を検索する画面
- 配布サーバー:ソフトウェアの配布の設定を置く
Windowsのエージェントは決めた間隔ごとに動き、初期値は10時間です。全台が同時に連絡しないよう待ち時間はばらして決まります。*4 エージェントを入れられない機器は、エージェントが動いているPCに同じネットワークの中を探させる「IPディスカバー」という機能で見つけます。プリンタやスイッチ、ルーターを台帳から漏らさないためです。*5
GLPIと組み合わせる構成
集めた情報に利用者をひもづけたり、問い合わせの対応を記録したりするのは、GLPIが得意とする分野です。OCS Inventoryの公式ドキュメントも、連携できるソフトウェアの最初にGLPIを挙げています。*3 情報は次の流れで動きます。
- ステップ1:各PCとサーバーにエージェントを入れ、OCS Inventoryのサーバーに情報を集める
- ステップ2:GLPIにOCS Inventory用のプラグイン(ocsinventoryng)を入れ、OCS Inventoryのデータベースとつなぐ
- ステップ3:取り込みの処理を定期的に動かし、機器の情報をGLPIへ取り込んで更新する
- ステップ4:GLPIの側で、機器に利用者や問い合わせの記録をひもづける
このプラグインは以前のGLPI本体にあった連携機能を置き換えるもので、取り込みと更新を自動で行うスクリプトと実行状況の画面を備えています。*8 一方でGLPIは、10以降の版ならGLPI Agentを使って本体だけで情報を集められます。*9 OCS Inventoryの蓄積があればプラグインでつなぎ、これから始めるならGLPI Agentで足りるかを先に比べると迷いません。
外部に頼むときに確認しておきたい点
OCS Inventoryのサーバーは、Apache、Perl、PHP、MySQLまたはMariaDBを組み合わせて動かします。*6 Linuxサーバーの運用に慣れた担当者が社内にいれば自社で入れられますが、いなければ構築と更新を外部に頼むのが現実的です。頼む前に、次の点を確かめておきます。

- どこまで頼むか:サーバーの構築、エージェントの配布、GLPIとの連携、操作の説明のうち、どれを任せるか
- エージェントの配り方:全台にどう入れるか。社外に持ち出すノートPCの情報をどう集めるか
- 通信の守り方:HTTPSにそろえるか。通信サーバーをどのネットワークに置くか
- GLPIとの役割分担:どちらの台帳の値を正とするか。手で直した項目を取り込みでどう扱うか
- 更新とバックアップ:サーバーとプラグインの版の更新を、誰がいつ行うか
特にGLPIとの役割分担は決めないまま運用に入りやすく、取り込むたびに台帳の値が入れ替わるおそれがあります。棚卸しの進め方全体はIT資産の棚卸しを外注する進め方にまとめています。
まとめ:OCS Inventoryで確かめておきたい3つの点
OCS Inventoryを使い始めるうえで、確かめておきたい点は3つです。第一に、機器の中身を集める道具として、貸し出しの記録とは分けて考えること。第二に、GLPIと組み合わせるなら、プラグインでつなぐか、GLPI Agentだけで足りるかを先に比べること。第三に、どちらの台帳の値を正とするかと、版の更新とバックアップの担当を導入前に決めることです。この3点を踏まえておけば、「入れてはみたが、結局手作業の台帳に戻ってしまった」という事態を避けやすくなります。構築や連携の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
OCS Inventoryは無料で使えますか
ソフトウェアはGPLv2のライセンスで公開されており、無料で手に入ります。*7 ただし、サーバーの費用や、構築・更新・バックアップの手間は自社で持つことになります。
新しい3.0の版はすぐに使えますか
2026年8月に公開された3.0.0-rc2は試験用の版(リリース候補)で、開発元は本番環境に入れないよう案内しています。*2 いま本番で使うなら2系の版を選び、3.0の正式版が出てから移行の計画を立てるのが無難です。
エージェントを全台に一斉に配る方法はありますか
Windowsの環境向けに、グループポリシー(GPO)やログオンスクリプトで配る道具と、遠隔でまとめて入れる道具が用意されています。*3 社外に持ち出す機器が多いなら、サーバーへの通信経路も先に決めておくと進めやすくなります。
IT資産の情報を自動で集める仕組みづくりのご相談
OCS InventoryやGLPIによるIT資産の自動収集の構築から運用まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」(https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html)。出典:本編の用語の説明「IT資産管理」(ハードウェアやソフトウェアの保有状況・構成情報を取りまとめて管理する技術、パッチ適用状況の把握)の記述を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:FactorFX「OCS Inventory」公式サイト(https://ocsinventory-ng.org/?lang=en)。出典:2001年からの開発、エージェントによる自動収集、SNMPの探索、ソフトウェアの配布、対応OS、FactorFX社の支援、3.0.0-rc2が試験用で本番に入れないよう案内している記述を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:OCS Inventory Documentation「Newbie documentation – What you should know」(https://wiki.ocsinventory-ng.org/02.Newbie-documentation/OCS-Inventory-NG-Basics/)。出典:管理サーバーの4つの部品、XMLとHTTP/HTTPSでのやり取り、配布とSNMPはHTTPSのみ、連携できるソフトウェア(GLPI等)、GPO・ログオンスクリプト・psexecによるエージェントの配布の記述を参照(2026年10月確認)
- *4 参考:OCS Inventory Documentation「Setting up the Windows Agent 2.x on client computers」(https://wiki.ocsinventory-ng.org/03.Basic-documentation/Setting-up-the-Windows-Agent-2.x-on-client-computers/)。出典:PROLOG_FREQ(送信間隔、初期値10時間)と待ち時間のばらし方の記述を参照(2026年10月確認)
- *5 参考:OCS Inventory Documentation「Using IP discovery feature」(https://wiki.ocsinventory-ng.org/06.Network-Discovery-with-OCS-Inventory-NG/Using-IP-discovery-feature/)。出典:エージェントが動くPCにサブネット内を探索させる仕組み、プリンタ・スイッチ・ルーター等の発見の記述を参照(2026年10月確認)
- *6 参考:OCS Inventory Documentation「Libraries and Modules versions」(https://wiki.ocsinventory-ng.org/01.Prerequisites/Libraries-version/)。出典:サーバーの要件(Apache、mod_perl、PHP、Perl、MySQLまたはMariaDB)の記述を参照(2026年10月確認)
- *7 参考:OCSInventory-ng/OCSInventory-Server(GitHub)(https://github.com/OCSInventory-ng/OCSInventory-Server)。出典:READMEの製品説明とライセンス(GPLv2)を参照(2026年10月確認)
- *8 参考:pluginsGLPI/ocsinventoryng(GitHub)(https://github.com/pluginsGLPI/ocsinventoryng)。出典:GLPIとOCS Inventoryを同期するプラグイン、GLPI本体の旧OCS連携の置き換え、取り込みと更新を自動化するスクリプトと実行状況の画面の記述を参照(2026年10月確認)
- *9 参考:GLPI Agent documentation(https://glpi-agent.readthedocs.io/en/latest/)。出典:GLPI Agentが自動インベントリを行うこと、サーバー側はGLPI 10以降なら本体のみで動くことの記述を参照(2026年10月確認)
- *10 参考:Snipe-IT Documentation「Overview」(https://snipe-it.readme.io/docs/overview)。出典:貸し出しと返却、二重の割り当ての防止の記述を参照(2026年10月確認)
- *11 参考:Teclib’「GLPI」公式サイト(https://glpi-project.org/)。出典:ヘルプデスク、資産管理、インベントリを1つの仕組みで扱う製品説明を参照(2026年10月確認)