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2026.06.18 らしくコラム

SESエンジニアを外注・委託する方法|契約・費用・依頼先選びの実務ガイド

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

エンジニアの作業環境

この記事のポイント

  • SESエンジニアの外注は「準委任契約」が基本で、指揮命令権の扱いが派遣と大きく異なります
  • 費用は経験・スキルによって幅があり、コスト構造を理解した上で依頼先を選ぶことが重要です
  • 要件定義・会社選定・契約確認・稼働後管理の5ステップを踏むことで、トラブルを避けられます

SESエンジニア外注とは:準委任型契約で人材を活用する仕組み

開発業務のイメージ

SESエンジニアの外注(委託)とは、SES(システムエンジニアリングサービス)という準委任型の契約形態を通じて、専門スキルを持つITエンジニアを外部から調達し、自社の開発・運用・保守業務に従事させる人材活用手法です。

SES(準委任) 指揮命令:委託先SES会社 成果責任:なし(稼働提供) 費用形態:月額単価×稼働月数 向くシーン:スキル補完・繁忙期 要件が流動的な継続案件 偽装請負:指揮命令に要注意 VS 労働者派遣 指揮命令:自社(発注元) 成果責任:なし(労働提供) 費用形態:時給×時間数 向くシーン:常駐管理・育成 業務を細かく指示したい場合 派遣法の遵守が必要
SES(準委任)と労働者派遣の主な違い

SES(準委任)・派遣・請負の3形態の違いを整理

ITエンジニアの外部調達には、主に3つの契約形態があります。SES(準委任契約)は、エンジニアが業務に従事する「役務提供」を目的とした契約で、成果物の完成責任は負いません。労働者派遣は、派遣会社が送り出したエンジニアを発注側企業が直接指揮命令する形態です。請負は完成物の引き渡しを目的とした契約で、成果責任が受託側に帰属します。

SES(システムエンジニアリングサービス)という言葉は業界慣行上で広く使われますが、法律上は準委任契約(民法第656条)に該当します。要件が流動的な開発・保守・運用業務で特に採用されやすい形態です。

指揮命令権はSES会社側に残る:「働きかけ」と「指揮」の境界線

SES(準委任)で最も注意が必要なのが、指揮命令権の扱いです。準委任契約では、エンジニアへの業務指示はSES会社が行います。発注側企業が直接エンジニアに作業内容・手順・時間管理を指示すると、実態として「派遣」とみなされ、偽装請負と判断されるリスクがあります*1

厚生労働省の「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」では、業務の遂行方法・工程管理・作業時間の指定を受注者以外が行う場合は労働者派遣に該当すると定められています*1。SESを活用する際は、業務の仕様・成果物の方向性について「協議・調整」することは可能ですが、「命令・指示」にならないよう業務設計が必要です。

SESエンジニア外注の費用構造:単価と総コストの考え方

エンジニア単価の市場参考値と費用に含まれる要素

SESエンジニアの費用は、主に月額単価(エンジニアの稼働に対して支払う月額)で設定されます。以下は市場参考値であり、一次公的統計資料による確認値ではありません。SES各社の公開資料・採用情報等を参考にした目安です。

経験年数の目安 スキル感 月額単価の参考レンジ(※市場参考値)
1〜2年(ジュニア) 基本的な開発・テスト補助が可能 30〜50万円程度
3〜5年(ミドル) 設計から実装・レビューまで対応 50〜80万円程度
6年以上(シニア・スペシャリスト) アーキテクチャ設計・技術リード 80〜120万円以上

※上記は市場参考値です。単価は技術スタック(クラウド・AI・セキュリティ等)・対応可能な業務範囲・稼働形態(常駐/リモート)・SES会社の管理費水準によって異なります。実際の費用は個別見積もりで確認してください。

月額単価に含まれる費用要素

SESの月額単価には、エンジニアの稼働費だけでなく、SES会社側の管理費・営業費・社会保険相当分・利益が含まれます。請求額のうちエンジニア本人の報酬が占める割合は会社によって異なりますが、厚生労働省「令和5年度労働者派遣事業の事業報告の集計結果」では労働者派遣での派遣料金に占める賃金の割合が約64%と公表されています*2。SESはこれと仕組みが異なりますが、「単価≠エンジニア報酬」という点は共通です。

また、常駐案件では交通費・出張費が別途発生する場合があります。契約前に費用の内訳と追加費用の扱いを確認しておくことが大切です。

内製・派遣・SES外注のコスト比較の視点

SES外注のコストを「高い/安い」で単純に判断するのは難しい面があります。内製エンジニアを採用する場合、賃金に加えて採用コスト・研修費・社会保険・福利厚生が発生します。経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年)によれば、2030年には約79万人のIT人材不足が生じる見通しです(高位シナリオの試算上限)*3。採用難が続く中、即戦力を確保するためのSES活用は、採用リードタイムと機会費用を削減できる点でコストメリットがあります。

SESエンジニア外注の3つのメリットと3つの留意点

メリット①:採用よりリードタイムが短い即戦力調達

正社員採用では求人掲載・選考・内定・入社まで半年から1年規模のリードタイムを要することがあります。SES外注では、SES会社がすでに在籍するエンジニアを提案するため、スキルシート確認・面談・契約締結を経て数週間から1〜2か月程度で稼働を開始できます。緊急の開発体制補強や繁忙期対応に向いています。

メリット②:固定費をコントロールしやすい柔軟な期間設定

SESは契約期間単位で人材を活用するため、プロジェクトの規模・フェーズに応じて人数・期間を調整できます。社員採用と異なり、プロジェクト完了後に契約を終了することも可能です。スタートアップや繁忙期のある事業会社では、人件費の変動費化により固定費負担を抑えられます。

メリット③:幅広いスキルセットへのアクセス

クラウド・AI・セキュリティ・モバイルなど、自社に不在の専門スキルを持つエンジニアを必要な期間だけ活用できます。社内に育てる時間がない技術領域でも、SES外注によってプロジェクトを前進させられます。

留意点①:準委任の指揮命令ルールを遵守する必要がある

SES(準委任)では、エンジニアへの直接的な業務命令・作業指示は発注側から行えません。指揮命令権はSES会社側にあります。発注側が作業の優先順位・手順・時間管理を直接指定すると、偽装請負と判断されるリスクがあります。

この制約を事前に理解した上で業務範囲を設計しないと、稼働後に「思うように動いてもらえない」と感じるトラブルにつながります。業務の仕様・ゴールを明確にして協議する形で業務を進めることが重要です。

留意点②:技術の内部蓄積がされにくい

SES外注では、業務知識・技術ノウハウはエンジニアと共にSES会社側に帰属しやすくなります。長期間にわたって同じ領域をSESに依存し続けると、内部に技術が蓄積されず、委託先変更時の引き継ぎリスクが高まります。知識移転の設計(ドキュメント整備・社内担当者との協働体制)を契約前から組み込んでおくことが大切です。

留意点③:品質管理の仕組みが必要

成果物の完成責任がないSES(準委任)では、発注側が進捗・品質を確認できる仕組みを設けないと、品質問題が稼働後に発覚するリスクがあります。定期レビュー・KPI設定・コミュニケーション経路の明確化を稼働開始前に整備することで、委託先任せのリスクを低減できます。

SES外注に向くケースと向かないケース:判断軸

SESが向くシーンと向かないシーンを整理すると、「指揮命令の必要性」「成果物の明確度」「継続期間の読みやすさ」の3軸で判断できます。

判断軸 SES(準委任) 請負 労働者派遣
指揮命令の必要性 低い(委託先側が管理) 低い(委託先側が完遂) 高い(自社が直接管理)
成果物の明確度 中程度(要件が流動的でも可) 高い(仕様が確定している) 低い(業務が多岐にわたる)
契約期間の柔軟性 高い(月単位での更新が一般的) 低い(プロジェクト単位) 中程度(上限3年ルールあり)
費用の透明性 月額単価が明確 見積もりで確定(追加費用に注意) 時給×時間数(残業で変動あり)
向くシーン スキル補完・繁忙期対応・
要件が流動的な継続案件
仕様確定済みの開発案件・
完成物に責任が必要な場合
常駐管理・業務を直接指示したい・
スキル習得・育成目的

SESが向くケース

要件が途中で変わりやすい継続的な開発・保守業務、特定のクラウドやフレームワークなど自社に不在のスキルを補完したい場合、繁忙期に体制を一時的に増強したい場合が典型例です。月額単価が明確なため、費用の見通しが立てやすい点も利点です。

SESより請負・派遣が向くケース

仕様が明確に固まったシステム開発の場合は、成果責任がある請負が向きます。エンジニアに直接業務を指揮命令して育成・管理したい場合や、社内の業務フローに深く組み込む場合は労働者派遣が向きます。

SES依頼先の選び方:SES会社・エージェントの5つの確認軸

①技術領域・業種専門性のマッチング

SES会社によって得意とする技術領域(クラウド・Web・組み込み・インフラ等)や対応業種が異なります。自社の開発・運用業務に近い実績を持つSES会社を選ぶことで、業務立ち上がりのリードタイムを短縮できます。

②スキルシートの粒度と面談機会の有無

スキルシートの記載が「Java 5年」など大まかなものと、「Java(Spring Boot)で3名のチームリードを2年担当、REST API設計・レビュー経験あり」など詳細なものでは、マッチング精度が大きく異なります。面談(技術確認の機会)が設定できるSES会社を選ぶと、スキルのミスマッチを防ぎやすくなります。

③契約形態・指揮命令に関するコンプライアンス対応

SES会社側が偽装請負リスクを十分に把握し、契約形態の適正化に取り組んでいるかを確認することが重要です。業務委託(準委任)契約書の内容・指揮命令ルールの説明・フリーランス新法(2024年11月施行)への対応状況を確認することで、コンプライアンスリスクを低減できます。

④単価の透明性と追加費用の取り決め

月額単価の内訳(エンジニア稼働費・管理費・交通費の扱い)と追加費用が発生しうる場面を事前に確認します。「月額単価は安いが交通費・残業が別途発生する」という構造になっていないか、見積書の段階で確認してください。

⑤元請(プライムベンダー)体制か多重下請け体制か

SES会社の中には、エンジニアを複数の下請け会社を介して調達している場合があります。多重下請け体制では、発注側とエンジニアの間に複数の中間会社が入るため、コミュニケーション・品質管理・契約責任の所在が不明確になりやすいリスクがあります。

元請(プライムベンダー)として直接エンジニアを管理できる体制のSES会社を選ぶと、問題発生時の対応速度や品質管理の観点で信頼性が高まります。

SESエンジニア外注の進め方:5ステップ

Step1 要件定義:必要スキル・期間・業務範囲を明確にする

SES外注で最も失敗が起きやすいのが、要件定義の曖昧さです。「エンジニアが欲しい」ではなく、「何のプロジェクトに・どのスキルで・何か月・どういう役割で」を明確にしてから依頼します。必要なスキル(言語・フレームワーク・クラウドサービス等)、経験年数の目安、稼働形態(常駐/リモート/ハイブリッド)、稼働開始希望日を整理してください。

業務範囲の定義はSES(準委任)の性質上、「担当する業務の内容と目的」レベルで設定します。「手順・工程を逐次指示する」形にならないよう、業務設計の段階から準委任の指揮命令ルールを意識します。

Step2 SES会社・エージェントの選定と提案依頼

前節の5つの確認軸をもとにSES会社を絞り込み、要件定義書をもとに提案を依頼します。複数社に打診して比較検討することで、単価と技術領域のバランスを確認できます。SES各社の提案スピードや対応の丁寧さもSES会社の実力を測る指標になります。

Step3 スキルシート確認と面談・マッチング

SES会社から提案されたエンジニアのスキルシートを確認し、疑問点を解消した上で面談を設定します。面談では技術の深さ・コミュニケーションスタイル・業務理解度を確認します。

SES(準委任)の面談は「選考」ではなく「確認の場」という位置づけです。ただし実務上、スキルのミスマッチを防ぐために詳細な技術確認を行うことが一般的になっています。

Step4 契約締結:業務委託(準委任)契約書の確認ポイント

契約書の確認では以下のポイントに注目します。業務の目的・範囲の記載が具体的か、指揮命令の所在が明確か、月額単価・稼働時間の上下限・追加費用の扱いが明記されているか、中途解約条件と手続きが定められているかを確認してください。

フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、業務委託の書面交付義務・報酬支払期日・ハラスメント防止等が規定されています(2024年11月施行)。発注側もこれらの規定を把握した上で契約書を作成することが求められます。

Step5 稼働開始後の管理:KPI設定・定例レビュー・契約更新の判断

稼働開始後は、月次または隔週の定例レビューを設定して進捗・課題を共有します。SES(準委任)の性質上、成果物の納品基準を事前に定めておくことは難しい場面もありますが、「何を確認すれば良い状態か」の判断基準を事前に合意しておくと、進捗管理がしやすくなります。

契約更新の判断基準(スキルの継続マッチ・チームとの協働状況・単価適正性)を最初の契約更新前に整理しておくことで、更新可否の判断をスムーズに行えます。

まとめ:SESエンジニア外注を成功させる3つの判断軸

本稿では、SESエンジニアの外注・委託について、契約形態の理解から費用感・メリット/留意点・依頼先の選び方・発注の進め方まで一通り整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。

第一に、SES(準委任)の指揮命令権はSES会社側にあるという点を前提に業務設計を行うことです。発注側が直接エンジニアに指示する仕組みにすると偽装請負リスクが生じるため、業務の目的・範囲を明確にして「協議する」形で進めます。

第二に、費用は月額単価×期間だけで判断せず、採用コストとの比較・知識移転コスト・品質管理コストを含めた総コスト視点で判断することです。単価が安くても業務設計が甘いと手戻りが発生し、結果的にコストが増える場合があります。

第三に、SES会社選びでは元請(プライムベンダー)体制・スキルシートの粒度・コンプライアンス対応の3点を確認軸にすることです。多重下請け体制を避け、直接エンジニアを管理できる体制のSES会社を選ぶことで、品質・コミュニケーション・トラブル対応の面での確実性が高まります。

よくある質問

SESエンジニアを外注・委託する費用の目安はどれくらいですか?

SESエンジニアの月額単価は、経験年数・スキル・稼働形態によって異なります。市場参考値(各社公開情報ベース)では、ジュニアクラスで月額30〜50万円程度、ミドルクラスで50〜80万円程度、シニア・スペシャリストクラスで80万円以上が目安とされています。ただしこれは公的統計資料による確認値ではなく、技術スタックや業務範囲によって変動します。正確な費用はSES会社への個別見積もりで確認することをお勧めします。

SES外注でエンジニアに業務を指示する際に注意することはありますか?

SES(準委任契約)では、エンジニアへの業務指示はSES会社側が行うのが原則です。発注側が作業手順・優先順位・時間管理を直接エンジニアに指示すると、実態として労働者派遣とみなされ偽装請負と判断されるリスクがあります(厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」)。発注側は業務の目的・仕様・成果の方向性についてSES会社と「協議・調整」する形で進めることが大切です。

SES外注と労働者派遣はどちらが自社に向いていますか?

エンジニアを直接指揮命令して細かく管理したい場合や、業務が多岐にわたる場合は労働者派遣が向きます。一方、要件が流動的な継続的な開発・保守業務や、特定の専門スキルを補完したい場合、月額コストを明確にしたい場合はSES(準委任)が向きます。どちらを選ぶかは「指揮命令の必要性」「成果物の明確度」「継続期間の柔軟性」の3軸で判断するのが実務的です。

SES会社を選ぶ際に最初に確認すべきことは何ですか?

まず確認すべき点は、①自社の技術領域・業種に近い実績があるか、②スキルシートが詳細で面談機会が設けられるか、③元請(プライムベンダー)として直接エンジニアを管理できる体制か、の3点です。多重下請け体制のSES会社では、問題発生時のコミュニケーションに時間がかかることがあります。また、契約形態(準委任)のコンプライアンス対応とフリーランス新法(2024年11月施行)への対応状況も確認することをお勧めします。

SESエンジニアの外注を始めるまでにどれくらいの期間がかかりますか?

一般的に、SES会社への依頼から稼働開始まで、要件定義・提案・スキルシート確認・面談・契約締結のステップを経て数週間から1〜2か月程度かかります。正社員採用と比較すると短期間での調達が可能ですが、要件定義が不明確だと提案が的外れになり期間が延びることがあります。稼働希望日から逆算して早めに動き始めることが大切です。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

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  1. *1 出典:厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」(最終更新2022年)
  2. *2 出典:厚生労働省「労働者派遣事業の事業報告の集計結果(令和5年度速報)」(2024年)
  3. *3 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年4月公表)— 高位シナリオで2030年に約79万人不足と試算(同調査の上限値)


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