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UI/UXデザイン外注の費用と進め方|上流設計から委託まで
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- UI設計とUXデザインは役割が異なり、外注できる工程の範囲と費用の考え方も変わります
- UXリサーチから情報設計・プロトタイプ・デザインシステムまで、上流から一括委託するケースと工程単位で切り出すケースで予算規模が大きく異なります
- 外注先の選定では、開発フェーズとの連携体制・ツール環境・契約形態の3点を確認することが費用対効果に直結します
目次
UI/UXデザイン外注とは何か — UX上流設計を委託する意味
UI/UXデザインの外注とは、アプリやWebサービスの設計段階において、ユーザー体験の設計(UX)と画面デザイン(UI)を専門のデザイン会社やフリーランスに委託する取り組みです。単なる見た目の制作にとどまらず、UXリサーチ(ユーザー調査)から情報設計、プロトタイプ検証、デザインシステム構築まで、開発の上流工程を外部パートナーに依頼することを指します。
近年、スマートフォンアプリやSaaSプロダクトにおいて、ユーザーが離脱する原因の多くは機能不足ではなく「使いにくさ」にあることが指摘されています。開発コストを抑えながら品質を確保するために、デザインの上流工程を外部に委託する企業が増えています。
UI設計とUXデザインの違い — 外注範囲を決める前に整理すること
外注の範囲を決める前に、UIとUXの役割の違いを整理しておくことが重要です。UI(User Interface)設計は、ボタンの配置・色・フォント・アイコンなど、画面上のビジュアル要素を設計する工程です。一方、UX(User Experience)デザインは、ユーザーがサービスを使い始めてから目的を達成するまでの体験全体を設計します。
UXデザインはUI設計の上流に位置します。ユーザーが誰で、どんな課題を持ち、どの順序で操作するかを設計しないまま画面デザインを進めると、完成後に「使いにくい」という問題が表面化します。そのため、外注する場合はUI制作だけを切り出すのではなく、UXリサーチや情報設計も含めた上流工程から委託する体制を検討することが大切です。
| 比較軸 | UI設計 | UXデザイン |
|---|---|---|
| 対象 | 画面上のビジュアル要素 (ボタン・色・フォント・レイアウト) |
ユーザーの体験全体 (目的達成までの流れ・感情・文脈) |
| 主な成果物 | デザインカンプ・コンポーネント仕様書 | ユーザーインタビュー結果・ペルソナ・ カスタマージャーニーマップ・ワイヤーフレーム |
| 工程上の位置 | UXデザイン完了後に着手 | 要件定義と並走または先行 |
| 内製しやすさ | デザインツール習熟で対応可能なケースあり | ユーザー調査設計・分析スキルが必要で内製難度が高い |
外注できる6つの工程と費用の考え方
UI/UXデザインの外注では、委託する工程によって費用の規模が大きく変わります。以下の6工程が主な委託対象です。それぞれの工程の特徴と費用感(市場参考値・一次資料ではありません)を整理します。
UXリサーチ — ユーザー調査で設計の土台を作る
UXリサーチは、ターゲットユーザーへのインタビュー・アンケート・行動観察を通じて、課題と需要を定量・定性的に把握する工程です。外注する場合は、調査設計・実施・分析・報告書の作成まで一括して委託するのが一般的です。
調査対象人数・手法の複雑さによって費用は変わりますが、ユーザーインタビュー5〜10名規模のリサーチ+レポートで数十万円〜100万円前後になるケースが市場では見られます(市場参考値・一次資料ではありません)。リサーチを省略して開発を進めると、リリース後に大規模な改修が必要になるリスクがあります。
情報設計(IA設計)— 画面遷移と構造を設計する
情報設計(IA:Information Architecture)は、コンテンツの分類・階層・画面遷移を設計する工程です。サイトマップや画面遷移図を成果物として納品するのが一般的です。
ページ数や機能数によって費用は変わりますが、中規模のスマートフォンアプリ(画面30〜50画面程度)の場合、情報設計だけで数十万円規模になることがあります(市場参考値・一次資料ではありません)。この工程を省くと、後工程のワイヤーフレームや開発段階で手戻りが頻発します。
ワイヤーフレーム — 機能と配置の骨格を固める
ワイヤーフレームは、ページや画面ごとに要素の配置・機能の有無・テキスト量を骨格として表現したドキュメントです。デザインカンプではなく色彩を排した骨格レイアウト図として作成されます。
このフェーズはエンジニアとの認識合わせに直結するため、Figma(デザインツール)などを使ったインタラクティブな形式で作成される場合は、開発チームとの共有がスムーズになります。費用は画面数に比例する傾向があります(市場参考値・一次資料ではありません)。
プロトタイプ — 操作感を動かして検証する
プロトタイプは、実際のアプリと同様に操作できるインタラクティブなモックアップです。Figmaのプロトタイプ機能やInVision(インタラクションデザインツール)などを使って作成します。
プロトタイプを用いたユーザーテスト(実際のユーザーに操作させて課題を把握する検証手法)をセットで外注するケースが増えています。開発着手前に操作上の問題を発見できるため、開発費用の無駄な増加を抑えられます。
UIビジュアルデザイン — ブランドを画面に落とし込む
UIビジュアルデザインは、ワイヤーフレームをもとにカラー・タイポグラフィ(フォント設計)・アイコン・余白を整えた実際の画面デザインを作成する工程です。デザインカンプ(実寸の画面設計図)を成果物として、エンジニアへの仕様書(デザイン仕様書)とセットで納品するのが標準です。
この工程は外注のなかでも比較的分業しやすい部分です。ただし、開発フレームワーク(React、Flutter、Swiftなど)の制約をデザイナーが把握していないと、実装時に仕様通り再現できない問題が生じます。外注先がエンジニアとの連携経験を持つかどうかを確認することが大切です。
デザインシステム — 継続開発の基盤を整える
デザインシステムとは、ボタン・フォーム・カードなどのUIコンポーネント(再利用可能な画面部品)を体系化し、スタイルガイドとコンポーネントライブラリとして整備したものです。
初期構築の費用は他の工程より高くなる傾向がありますが、継続開発フェーズでの画面追加・修正コストを大幅に削減できます。中長期的なサービス運用を前提とするプロダクトでは、デザインシステムの外注構築を検討する価値があります(市場参考値・一次資料ではありません)。
人月単価vs成果物単価 — 契約形態と費用の算出方法
UI/UXデザインの外注費用は、主に「人月単価型(準委任・時間単価)」と「成果物単価型(請負)」の2つの契約形態で算出されます。それぞれの特徴を理解することで、自社のプロジェクト状況に合った契約形態を選べます。
人月単価型(準委任契約)— 要件が流動的なプロジェクト向け
準委任契約(SES形式)では、デザイナーが一定期間チームに参画し、発生した作業に対して人月単価で費用が発生します。要件が確定していない上流工程(UXリサーチ・情報設計)や、仕様が変化しやすいアジャイル開発との相性が良い契約形態です。
シニアUXデザイナーの市場参考単価は月100万円前後になるケースがある一方、ジュニアデザイナーでは月40〜60万円程度の事例も見られます(市場参考値・一次資料ではありません。デザイナーの経験年数・専門領域・地域によって異なります)。人月単価型の場合、スコープが不明確だと費用が青天井になるリスクがあるため、マイルストーン(中間成果物)ごとの確認ポイントを契約前に設定しておくことが重要です。
成果物単価型(請負契約)— 要件が明確なプロジェクト向け
請負契約では、「ワイヤーフレーム30画面分」「UIデザインカンプ全画面」のように成果物を定義して固定額で発注します。要件が明確でスコープが固まっている場合、費用を予算内に収めやすい契約形態です。
ただし、仕様変更が生じた場合は追加費用が発生します。要件定義フェーズでの詰めが甘いと、変更要件の都度見積もりが必要になり、結果として人月型より費用が増えるケースがあります。
| 契約形態 | 費用算出方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 人月単価型 (準委任契約) |
月額単価×参画期間 | 仕様変更に柔軟に対応できる。 アジャイル開発と相性が良い |
スコープが不明確だと費用が増大しやすい。 マイルストーン管理が必要 |
| 成果物単価型 (請負契約) |
成果物ごとの固定額 | 予算が読みやすい。 納品物が明確 |
仕様変更で追加費用が発生する。 要件定義の精度が重要 |
デザインツール費用も考慮する
外注費用とは別に、デザインデータの受け渡し・共同編集に使うツール費用も発生します。代表的なのはFigmaです。Figmaの公式サイト*1によると、Professionalプランはフルシート月16ドル、Organizationプランはフルシート月55ドルとなっています。外注先がツールライセンスを保有しているかどうか、自社での追加購入が必要かを事前に確認してください。
開発との連携で変わる外注範囲と費用リスク
UI/UXデザインの外注において、費用が想定外に膨らむ原因の多くは「デザインと開発の連携不足」です。デザイン工程を別会社に外注し、開発を別チームが担当する場合、デザイン仕様が実装できない形になっているという問題が起きやすくなります。
デザインと開発を分離する場合のリスク
デザイン外注先と開発チームが別組織の場合、デザイン仕様書の解釈ズレが発生しやすくなります。具体的には、「Figmaのデザインデータにエクスポートに関する情報が不足している」「デザイン仕様書がReactやFlutterのコンポーネント設計に対応していない」といった問題です。
このズレが発覚するのは開発着手後であることが多く、デザインの修正コストが追加で発生します。デザイン修正→再確認→開発修正のサイクルが繰り返されると、開発工期の遅延とコスト増加につながります。
デザインと開発を一括委託する場合のメリット
デザインと開発を同一の外注先に一括委託すると、デザイン仕様書の解釈ズレを起こりにくくできます。デザイナーとエンジニアが同じチームで対話しながら設計を進めるため、実装可能なデザインが出やすくなります。
一方、一括委託は委託先への依存度が高くなります。チームが解散した場合や、別会社への引き継ぎが必要になった場合に備えて、デザインシステムとデザインデータの引き渡し条件を契約に含めておくことが重要です。
開発フレームワークとデザインの整合性確認
外注先を選定する段階で、開発に使用するフレームワーク(React Native、Flutter、Swift UI、Jetpack Composeなど)をデザイナーに伝え、そのフレームワークのUIコンポーネントの制約を理解したデザインが可能かどうかを確認してください。これを確認しないまま発注すると、実装不可能なアニメーション仕様やカスタムコンポーネントの過剰設計が生じます。
外注先の選定で確認すべき3つの実務ポイント
UI/UXデザインの外注先を選ぶ際は、ポートフォリオの見た目だけで判断するのではなく、以下の3点を実務的に確認することが費用対効果に直結します。
確認ポイント1:上流工程(UXリサーチ・IA設計)の対応実績
「デザイン会社」を名乗る事業者のなかには、UIビジュアル制作が中心で、UXリサーチや情報設計は対応していないケースがあります。本記事で扱う「上流設計を含む外注」を検討する場合は、UXリサーチの設計・実施・分析まで対応した実績があるかどうかを確認してください。
確認方法としては、「過去にユーザーインタビューを設計から実施まで担当した案件の事例を見せてください」と直接依頼するのが有効です。事例を持っている場合、調査手法・対象ユーザー・発見した課題・設計への反映内容を具体的に説明できます。
確認ポイント2:開発チームとの連携経験と成果物の形式
デザインカンプを納品するだけでなく、エンジニアが実装に使えるデザイン仕様書(Figmaのデベロッパーモード対応・コンポーネント命名規則・余白の数値記載など)を作成できるかどうかを確認してください。
過去にデザインと開発を並走させた経験があるデザイナーや会社は、実装段階での手戻りを減らす仕様書の書き方を把握しています。提案段階で「エンジニアへの引き渡しまで含めたデザインプロセスを教えてください」と質問することで、実務経験の有無が分かります。
確認ポイント3:デザインデータの所有権と引き渡し条件
外注後に生成されたFigmaのデザインデータやデザインシステムの所有権が、発注者側に帰属するかどうかを契約書で確認してください。外注先に所有権が残ったまま契約が終了すると、デザインデータを引き継げず、別会社での改修時にゼロから作り直しが必要になります。
「納品後にデザインデータの完全な引き渡しを受け、自社のFigmaアカウントで管理できる状態にすること」を契約条件に含めることを推奨します。これを確認しないまま発注すると、将来の改修コストが増大するリスクがあります。
まとめ:UI/UXデザイン外注を成功させる3つの判断軸
本稿では、UI/UXデザインの外注における工程範囲・費用の考え方・開発との連携・外注先の選定を整理しました。要点を3つにまとめると次の通りです。
第一に、UXリサーチ・IA設計・プロトタイプ・UIビジュアル・デザインシステムという6工程のどこから委託するかによって費用規模が変わります。上流工程をスキップして画面デザインだけを発注すると、後工程で手戻りが発生し、結果として総費用が増えるリスクがあります。
第二に、契約形態は「人月単価型(準委任契約)」と「成果物単価型(請負契約)」の2種類があり、要件の確定度によって向き不向きが異なります。要件が流動的な初期段階は人月型、要件が確定した工程は請負型と使い分けることで費用リスクを管理できます。
第三に、外注先の選定では「UXリサーチの対応実績」「開発チームへの引き渡し経験」「デザインデータの所有権条件」の3点を事前に確認することが、費用対効果を高める判断軸になります。
よくある質問
UI/UXデザインの外注費用はどのくらいが相場ですか?
費用は委託する工程と規模によって大きく異なります。UXリサーチ単体であれば数十万円〜100万円前後、情報設計+ワイヤーフレームは画面数によって数十万円〜数百万円規模になるケースがあります(市場参考値・一次資料ではありません)。UXリサーチからデザインシステム構築まで一括委託する場合は数百万円〜1,000万円以上になることもあります。いずれも外注先の規模・経験年数・地域によって異なるため、複数社への見積もりを比較することをお勧めします。
UXデザインとUIデザインは分けて外注できますか?
工程として分けて発注することは可能ですが、別々の会社に委託すると引き継ぎコストと認識ズレのリスクが高くなります。UXリサーチで発見した課題をIA設計に反映し、さらにUIビジュアルに一貫して落とし込む作業は、同一チームが担当した方がスムーズです。予算制約がある場合は、まずUXリサーチと情報設計を1社に依頼し、その成果物をもとにUIデザインを別で発注するという段階的な切り出し方も検討できます。
フリーランスとデザイン会社ではどちらが費用を抑えられますか?
短期・単一工程の案件ではフリーランスの方が費用を抑えやすい傾向があります。一方、UXリサーチ・情報設計・プロトタイプ・UIビジュアルを一貫して担当する場合や、長期の継続開発が必要な場合はデザイン会社の方が体制リスクを管理しやすくなります。フリーランスの場合は担当者の急な離脱リスクに備え、デザインデータや仕様書の管理場所と引き継ぎ条件を最初に取り決めておくことが重要です。
UI/UXデザインの外注は開発会社と別会社に頼んでも大丈夫ですか?
別会社に分けることは可能ですが、デザインと開発の認識ズレによる手戻りリスクを管理する体制が必要です。デザイン外注先と開発チームが直接コミュニケーションを取れる機会を設け、デザインカンプの受け渡し前にエンジニアによるレビューを挟む工程を設けることをお勧めします。また、デザイン仕様書がエンジニアが実装で参照できる形式(Figmaのデベロッパーモード対応など)になっているかを確認することが大切です。
デザインシステムの外注構築はどの段階から検討すべきですか?
新規プロダクトの初期リリース段階では、デザインシステムを完全に構築するより、コアコンポーネントを整理したスタイルガイド程度に留めるケースが多いです。サービスが成長し、画面数が増え、複数チームが並行してUI改修を行うようになった段階でデザインシステムへの投資対効果が高まります。継続開発を前提とするプロダクトであれば、初期段階からデザインシステム構築を外注スコープに含めることで、将来の改修コストを抑えられます。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:Figma「Figma Pricing」(2025年・公式料金ページ。本稿執筆時点での確認値)