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安い見積もりで後悔しない、SESパートナー選定の見積もり比較
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- SESパートナー選定の見積もり比較では、金額を見る前に、満たさなければ外す条件と評価項目の配点を決めます。
- 国の総合評価は価格点と技術点を1:1で足すのが基本で、技術点を重くするのは仕事が複雑な場合に限っています。
- 価格の点は予算の上限との差でつけ、目立って安い見積もりは金額の理由と要員の状況を聞いてから評価します。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
複数のSESパートナーから見積もりと提案を集めたものの、金額の安い会社と、提案の中身がよさそうな会社が分かれてしまい、どちらに決めればよいのか社内で説明できない——。SESパートナー選定の見積もり比較とは、候補の会社から出てきた見積もりと提案を、あらかじめ決めた条件と配点で並べ、契約の相手を決める作業を指します。
比べ方を先に決めておけば、見積もりが届いてから基準を後付けせずに済みます。本記事では、国が情報システムを調達するときに使う総合評価の仕組みを手がかりに、満たさなければ外す条件、評価項目と配点、価格の点のつけ方という3つの決めごとと、安すぎる見積もりや同点の扱いを整理します。料金や単価の相場は扱いません。
目次
SESパートナーの見積もり比較とは
SESパートナーの見積もりには、金額のほかに、加わる人数と期間、求める経験に合う要員の体制、稼働の時間帯や場所、担当者が交代するときの手順といった提案の中身がついてきます。見積もり比較は、この金額と中身の両方を、候補の会社どうしで同じ物差しに当てる作業です。
比べる前の下ごしらえは、別の記事で扱っています。見積もりの内訳と前提のそろえ方は「SESパートナーの開発見積もり、ベンダーコントロールで確かめる」、頼む範囲のすり合わせは「SESパートナー選定の対応範囲、役割分担表の16項目で線を引く」、実績の裏づけの取り方は「SESパートナー選定の実績確認、公開情報で裏づけを取る手順」です。本記事は、そうしてそろえた見積もりと提案を、どう点数にして1社に絞るかを扱います。
手がかりにするのは、デジタル庁の「デジタル庁調達手続マニュアル」(2026年9月16日更新)です。調達に初めて携わる職員向けの資料で、情報システムの調達で使う総合評価落札方式の考え方と計算方法が載っています。*1 民間企業がこのとおりにする決まりはありませんが、比べ方の型として借りられます。
金額だけで比べると起きること
いちばん安い見積もりを選ぶやり方は分かりやすいものです。国の調達でも、価格だけで落札者を決める最低価格落札方式が原則とされています。ただ、SESパートナーの選定でこれをそのまま使うと、いくつかの問題が出てきます。
1つ目は、求める経験を持つ要員をそろえられない会社でも、金額が安ければ選ばれてしまうことです。2つ目は、提案の中身の差を説明する手段がないことです。中身がよいと感じた会社を選んでも、理由が担当者の印象としてしか残らず、社内の承認で問われたときに答えにくくなります。3つ目は、見積もりが届いてから基準を考えると、選びたい会社に有利な基準を後から作れてしまうことです。
国の調達で総合評価落札方式が使われるのは、価格だけでは決められない調達があるからです。マニュアルは総合評価落札方式を、「価格」と「価格以外の要素(技術力、創意工夫等)」を総合的に評価して落札者を決める方式と説明しています。*1 評価の項目と配点を先に決めて示し、それに沿って点をつけるので、決めた理由を数字で説明できます。
国の総合評価の仕組み
情報システム等の調達では、3つの段階で落札者を決めます。まず、入札価格が予定価格(発注する側があらかじめ決めた上限の金額)の範囲内であることを前提にします。次に、最低限の要求要件を満たさない提案を不合格にします。そのうえで評価値を計算し、最も高いものを落札者とします。*1
評価値の計算には2つの方式があります。除算方式は技術点を入札価格で割り、加算方式は技術点と価格点を足します。マニュアルは、情報システム等の調達では、特別な理由がない限り「過剰な低入札価格の影響を受けにくい加算方式」を採用することが多いとしています。*1 割り算では価格が下がるほど評価値が大きくなるので、極端に安い提案の影響が出やすくなります。
SESパートナー選定の見積もり比較に置き換えると、予定価格は自社が出せる予算の上限、最低限の要求要件は満たさなければ外す条件、技術点は提案の中身の点数、価格点は見積もり金額の点数に当たります。
満たさなければ外す条件を決める
マニュアルは、評価の対象とする技術的要件について評価項目を設定し、必須とする項目とそれ以外の項目に分けるとしています。必須とする項目には最低限の要求要件を示し、満たさないものは不合格にします。要求要件以上の部分と、必須以外の項目には、評価に応じて得点を与えます。*1
マニュアルに載っている評価項目の設定例では、必須項目に★、満たすと基礎点がつく基準に●、加点の対象になる基準に■の印をつけて区別しています。必須の基準を満たせば基礎点を得て合格し、それを超える提案には加点するという2段の作りです。
SESパートナーの選定でいえば、必須とする項目の候補は次のようなものです。求める技術の経験を持つ要員を、開始の時期までにそろえられること。稼働できる時間帯と場所が、自社の求める条件に合うこと。秘密保持や情報の扱いについての取り決めに応じられること。再委託をするかどうかと、その範囲を明らかにしていること。これらを満たさない会社は、金額がどれだけ安くても比べる対象から外します。
必須の条件を増やしすぎると、候補がほとんど残らなくなります。必須にするのは、満たさなければ仕事が始められない条件に限り、それ以外は加点の項目に回します。
評価項目と配点を先に決める
必須の条件を満たした会社どうしは、評価項目ごとの点数で比べます。マニュアルの設定例の注記は、評価項目と得点配分を調達上の必要性・重要性に基づいて設定し、必要な範囲を超えて評価する意味のないものは評価の対象から外すとしています。*1
注記はさらに、評価する内容をできる限り詳細かつ具体的に示し、数値で評価できるものは上限値などを明記すること、契約で内容を担保できるものに限り、担保できないものは評価項目にしないことを求めています。*1 SESパートナーの選定でいえば、「優秀な要員を出す」のような約束は、点をつけても契約で確かめようがありません。要員に求める経験の年数や、担当者が交代するときに引き継ぎに充てる期間なら、契約に書けるので評価項目にできます。
設定例には、体制とスケジュールにかかわる項目として、作業の体制、各要員に求める資格などの要件を満たしているか、具体的な保有スキル、体制を変えるときの手順が挙がっています。評価の基準は「具体的に記述されているか」という形で書かれ、何が書いてあれば点になるのかが提案する側にも分かります。*1 SESパートナーへの提案依頼でも、体制、要員の経験、交代の手順、進み具合の報告のしかたなどを項目にし、それぞれ何が書かれていれば何点かを決めておきます。
設定例の注記は、評価項目と得点配分を入札説明書で明らかにするとしています。SESパートナーにも、見積もりを頼む時点で評価項目を伝えておくと、各社の提案が同じ項目に沿って返ってくるので比べやすくなります。
価格と中身の配分を決める
次に、価格点と技術点の配分を決めます。情報システム等の加算方式では、配分は「1:1」が基本です。2002年7月に加算方式の協議が整って1:1とされ、2013年6月には、業務が複雑なものなど5つの要件をすべて満たす場合に、1:3以内まで技術点を重くできるようになりました。*1
2025年12月には要件が見直され、5つから3つになりました。業務の実施方法や内容が複雑かつ多岐にわたり高い機能設計能力が求められること、頻繁な機能改修が想定され高いシステム構造設計能力が求められること、連携・統合するシステムや関係組織が多く高いプロジェクト管理能力が求められることの3つです。すべて満たせば1:3以内、はじめの2つを満たせば1:2以内にできます。*1
読み取れるのは、技術点を重くするには理由が要るという考え方です。中身が同じくらいの会社が並ぶ仕事なら、価格の差で決めてよいので1:1に近づけます。設計の判断が多い仕事や、ほかのチームとの調整が多い仕事で、提案の中身の差が成果に直結するなら、技術点を重くします。SESパートナーの選定でも、配分をどうしたかとその理由を評価表と一緒に残しておくと、後から選んだ理由を説明しやすくなります。
価格の点のつけ方
加算方式の価格点は、「(1−入札価格/予定価格)×価格点の配分」で求めます。*1 予定価格ちょうどの入札は0点で、価格が低いほど点が増える計算です。
仮の数字で試してみます。価格点の配分を50点とし、予算の上限を100としたとき、90の見積もりの価格点は(1−0.9)×50で5点、80の見積もりは10点です。上限より1割安い見積もりと2割安い見積もりの差は5点にとどまり、技術点の配分の50点と比べると小さな差です。予算の上限に近い見積もりどうしでは、価格点の差がつきにくい作りです。前提(期間・人数・稼働時間の扱い)が違う見積もりは、式に当てる前にそろえて出し直してもらいます。
このため、価格点を使うときは、予算の上限をどこに置くかが結果に効きます。上限を低く置くほど、同じ金額の差でも価格点の差は大きくなります。予算の上限は見積もりを見る前に決めておき、見積もりが届いてから動かさないようにします。
安すぎる見積もりと同点の扱い
極端に安い見積もりは、価格点だけを見れば有利になります。デジタル庁は、一定の金額を超える請負契約で、入札価格が調査の基準に当たった場合に低入札価格調査を行うとしています。*2
調査で提出を求める資料は6つです。その価格で入札した理由(必要に応じて下見積書との比較)、入札価格の積算根拠(単価、工数等)、契約の履行・品質管理体制と従事する要員の状況、契約期間中のほかの契約の請負状況、直近5か年に請け負った類似の契約案件名と発注者、経営内容です。提出や説明に応じない場合や不十分な場合は、「契約の内容に適合した履行がされないおそれがある」として落札者としない場合があるとしています。*2
この調査は請負契約を対象にしたもので、SESパートナーとの契約にそのまま当てはまるわけではありません。ほかの候補と比べて目立って安い見積もりが来たら、その金額にした理由、人数と期間の積み上げ、加わる要員がほかの案件と掛け持ちしていないかを聞きます。答えが得られなければ、安さを価格点に入れる前に、必須の条件を満たしているかを確かめ直します。
同点の扱いも先に決めておきます。国の調達では、総合評価の数値が最も高い者が2人以上いるときはくじで決めます。*1 民間の選定なら、必須項目の加点が多い方を選ぶ、両社にもう一度話を聞くなど、自社で決めた順番を評価表に書いておきます。
まとめ:見積もり比較で決めておきたい3つの点
SESパートナー選定の見積もり比較で、金額を見る前に決めておきたいことは3つに整理できます。第一に、満たさなければ外す条件を、仕事が始められるかどうかに直結するものに絞って決めること。第二に、評価項目と配点を、契約で確かめられる中身に限って決め、価格と中身の配分とその理由を残すこと。第三に、予算の上限を見積もりを見る前に決め、価格の点を同じ式でつけることです。この3点を先に決めておけば、見積もりが届いてから基準を後付けせずに済み、選んだ理由も数字で説明できます。比べ方の組み立てに迷うときは、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
見積もりが1社からしか取れないときは、どう比べればよいですか
比べる相手がいなくても、満たさなければ外す条件と評価項目は使えます。必須の条件を満たしているかを確かめ、評価項目ごとに何が書かれていたかを記録しておきます。金額が妥当かどうかは、見積もりの内訳と前提を確かめる形で判断します。
価格と中身の配分は、どのくらいにすればよいですか
国の情報システムの調達では1:1が基本で、業務の複雑さなどの要件を満たす場合に限り、技術点を価格点の2倍または3倍まで重くできます。自社の選定でも1:1を出発点にし、中身の差が成果に直結する仕事だけ技術点を重くして、その理由を残しておくのがおすすめです。
評価項目は、見積もりを頼む前に候補の会社へ伝えるべきですか
伝えておくのがおすすめです。国の調達では、評価項目と得点配分を入札説明書で明らかにします。項目が分かっていれば、各社が同じ項目に沿って提案を書くので、比べやすくなります。
点数が同じになったら、どう決めますか
国の調達ではくじで決めますが、民間の選定では、必須項目の加点が多い方を選ぶ、もう一度話を聞くなど、自社で順番を決めておきます。決め方は評価表を作る段階で書いておき、結果を見てから変えないようにします。
SESパートナーの選び方を相談したいとき
任せる仕事の切り分けから、見積もりを比べる評価項目の整理までご相談いただけます。
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出典
- *1 参考:デジタル庁「デジタル庁調達手続マニュアル」(2026年9月16日更新)(PDF)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/883b9dc1-3155-4a26-a0cc-c2b5fb0d41d1/9aa88c21/20260916_procurement_manual_01.pdf)。出典:同マニュアルの一般競争の落札方式の整理(最低価格落札方式が原則)、15(2)総合評価落札方式とは、16 総合評価落札方式(情報システム等の調達)の(1)除算方式・(2)加算方式(落札条件、総合評価の方法、計算方法、令和7年12月の要件の見直し)、開発・構築業務における評価項目及び評価基準の設定例とその注記を参照。掲載ページは https://www.digital.go.jp/procurement/manual(2026年10月確認)
- *2 参考:デジタル庁「デジタル庁における低入札価格調査の実施について(事前周知)」(PDF)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/883b9dc1-3155-4a26-a0cc-c2b5fb0d41d1/3f945e08/20260108_procurement_outline_01.pdf)。出典:1 低入札価格調査の対象案件、2 調査基準に該当した場合に提出を求める資料、3 提出された書類への疑義対応等を参照(2026年10月確認)