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2026.06.24 らしくコラム

クラウドエンジニア不足をAWS受託・委託で補完する進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

server room technology

この記事のポイント

  • クラウドエンジニア(AWS等)の採用難は構造的であり、即戦力確保には相応のリードタイムと市場競争が伴います
  • 受託・委託(SES/準委任/請負)の契約形態を正しく選ぶことで、採用コストを抑えながらクラウド基盤を前進させられます
  • 委託先の評価にAWS認定資格(SAA/SAP/SOA等)を活用し、段階的な内製化移行まで見据えた計画が委託成功の鍵となります

クラウドエンジニア不足の実態と採用難の背景

it infrastructure team

クラウドエンジニアとは、AWS・Azure・GCP(Google Cloud Platform)などのクラウドサービスを活用してシステムの設計・構築・運用を担うITエンジニアを指します。なかでもAWSはクラウドインフラ市場において国内外で広く採用されており、AWS対応エンジニアの確保が企業のクラウド戦略の成否を左右するといっても過言ではありません。

課題分析 必要スキル 業務規模の 整理 形態選定 SES/準委任/ 請負の 使い分け RFP・選定 AWS認定で 委託先を 評価 運用管理 内製化への 段階的 移行
クラウドエンジニア不足への補完フロー(課題分析→形態選定→RFP・選定→運用管理)

クラウド移行加速とエンジニア需要の急拡大

国内企業のクラウド移行は引き続き加速しており、オンプレミスからAWSをはじめとするパブリッククラウドへの移行プロジェクトは増加傾向にあります。経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年公表)では、2030年にかけてIT人材の不足規模が拡大し続けると試算されています。

クラウドインフラの設計・構築・運用は高度な専門知識を要するため、需要増に対してエンジニアの供給が追いつかない状況が続いています。特にAWSを使いこなせるレベルのエンジニアは、採用市場での競争が激しく、内定承諾率も低い傾向にあります。

アーキテクト/SRE層が特に確保困難な理由

クラウドエンジニアのなかでも、システムアーキテクチャの設計やSRE(Site Reliability Engineering、サービスの信頼性を維持するためのエンジニアリング手法)を担う上位層は流動性が高く、転職市場での取り合いが続いています。

こうした層は在職中から複数のオファーを受けることが多く、採用決定から入社まで数か月以上かかる場合があります。採用活動を始めてからクラウド基盤の整備が進む頃には、当初の計画より大幅に時間が経過しているケースも珍しくありません。

クラウドエンジニアの職種区分と必要スキル(AWS中心)

クラウドエンジニアという呼称は幅広い役割を包含しており、採用や委託の発注先を検討する際には職種区分を明確にしておくことが大切です。AWS公式が定義する認定資格の区分は、役割整理の実務的な基準として活用できます。

設計・アーキテクト層(Solutions Architect)

AWSの設計・アーキテクト層では、VPC(仮想ネットワーク)・IAM(権限管理)・マルチアカウント設計など、クラウド基盤の全体像を設計する役割を担います。AWS認定試験では「AWS Certified Solutions Architect – Associate(SAA-C03)」や上位の「Professional(SAP)」がこの層の目安となります。

設計工程を誤ると、後からの修正コストが膨大になります。AWSのWell-Architectedフレームワーク(信頼性・セキュリティ・コスト最適化等の設計原則)に準拠した設計ができる人材かどうかは、委託先選定の重要な評価軸になります。

構築・インフラ運用層(SysOps/DevOps)

構築・インフラ運用層は、EC2・S3・RDS・Lambda等のAWSサービスを実際にセットアップし、監視・障害対応・コスト管理を日常的に行う役割を担います。「AWS Certified SysOps Administrator – Associate(SOA-C02)」や「AWS Certified DevOps Engineer – Professional(DOP)」が目安となる資格です。

この層は業務量が恒常的に発生するため、委託する場合は稼働工数の見積もりを明確にした上で発注形態を選ぶことが重要です。

AWS認定資格を委託先評価の指標にする

AWS認定資格(aws.amazon.com/jp/certification/)はFoundational・Associate・Professional・Specialtyの4段階で構成されており、保有資格の種類と取得年から委託先エンジニアのスキルレベルを客観的に判断できます。

委託先の提案書や技術説明の際に、担当予定エンジニアのAWS認定資格の種類・取得年・更新状況を確認することを発注要件として明示しておくと、比較評価がしやすくなります。ただし資格だけがスキルの全てではなく、プロジェクト実績や構築事例も合わせて確認するのが現実的な進め方です。

採用・育成・外部委託の3択と判断軸

クラウドエンジニアの不足を解消するアプローチは大きく3つあります。即戦力採用・若手育成・外部委託です。それぞれに特性があり、自社の状況に合わせた組み合わせが重要です。

アプローチ メリット デメリット・リスク 向いている状況
即戦力採用 社内にノウハウが蓄積される。
長期的な内製化が進む。
採用競争が激しく内定承諾率が低い。
採用から定着まで半年〜1年以上かかる場合がある。
クラウド基盤を中長期的に内製で運用したい企業
若手育成 採用コストが比較的低い。
自社文化に合わせた育成ができる。
実務レベルに達するまで1〜2年以上を要する。
育成途中の離職リスクがある。
急ぎでなく、時間をかけて人材を育てられる企業
受託・委託 即日〜数週間で専門人材を確保できる。
プロジェクト単位で柔軟に規模を調整できる。
内部にノウハウが蓄積されにくい。
委託先の管理・コミュニケーションコストが発生する。
今すぐクラウド移行や運用を始める必要がある企業

即戦力採用のコスト・リードタイム

AWS設計・構築が即戦力でできるエンジニアは、採用市場でのオファーが絶えない状態にあります。求人を出してから書類選考・面接・内定・入社まで、半年以上のリードタイムを見込む必要がある場合も珍しくありません。

採用に費やす人的コスト(採用担当者の工数・エージェント費用等)も無視できません。採用が長期化する間、クラウド基盤の整備が停滞するリスクをどう管理するかが重要な判断ポイントになります。

若手育成のリスクと時間軸

未経験・若手をAWSエンジニアとして育成する場合、実務レベルに達するまでに相応の期間が必要です。AWSのAssociate資格取得を目標とした学習期間だけでも、業務と並行して数か月規模のコミットが求められます。

育成中の期間はその人員を即戦力として業務に充てられないため、既存メンバーへの負荷が増える場合があります。育成計画と業務負荷のバランスを事前に設計しておくことが大切です。

受託・委託・フリーランス活用の現実解

クラウド移行やシステム運用を今すぐ進める必要がある場合、受託・委託・フリーランス活用は現実的な選択肢となります。委託であれば、発注から稼働まで数週間〜1か月程度でスタートできる場合があり、採用活動の長期化によるプロジェクト遅延リスクを抑えられます。

受託・委託は「採用の代替」ではなく「採用と並行できる補完手段」として位置づけることが大切です。採用活動を続けながら、委託で現在の業務を前進させるという組み合わせが実務上よく見られます。

受託・委託で補完する際の契約形態と発注方法

クラウドエンジニアリングを外部委託する際には、契約形態の選択が業務の進め方とリスク負担に直結します。代表的な3形態の特性を理解した上で発注することが重要です。

SES(準委任)・請負・フリーランス委託の違い

SES(System Engineering Service・準委任契約)は、エンジニアの稼働時間に対して報酬が発生する契約形態です。作業の指揮命令は発注側が行う場合と委託元が行う場合で法的位置づけが変わるため、偽装請負とならないよう契約内容と実態を一致させる必要があります。

請負契約は成果物の完成責任が受注側にある形態です。「AWSのマルチアカウント基盤を構築して納品する」のような完成物が明確なプロジェクトに適しています。要件定義と検収基準を事前に明確にしておかないと、追加費用や納期遅延のトラブルが生じやすくなります。

フリーランスのクラウドエンジニアを業務委託で活用するケースも増えています。特定の期間・業務に限定して高いスキルを持つ人材を活用できる一方、稼働管理やセキュリティポリシーの適用には注意が必要です。

要件定義・RFP作成のポイント

委託先への発注で失敗しないためには、要件定義の精度が重要です。「AWSを使ってほしい」という曖昧な発注では、委託先も見積もりが出せず、納品後に齟齬が生まれます。以下の情報を整理してRFP(Request For Proposal・提案依頼書)に盛り込むことをお勧めします。

  • 対象AWSサービス(VPC・EC2・RDS・S3・Lambda等)と現状の構成
  • 移行・構築の目標状態(アーキテクチャ図があれば添付)
  • 稼働フェーズのある場合は想定工数・稼働期間・月次対応内容
  • セキュリティ要件(ISOやISMS等、社内ポリシーへの準拠要件)
  • 検収基準(設計書・構築完了レポート・動作確認の基準)

委託先の評価基準と選定フロー

委託先の候補が複数上がった場合、評価を客観化するために採点軸を事前に設定しておきます。以下の観点で提案・ヒアリングの場を設けると比較がしやすくなります。

  • 技術力の証拠:担当予定エンジニアのAWS認定資格(種類・取得年)と過去プロジェクト実績
  • 類似プロジェクト経験:自社の業種・システム規模に近い案件の実績
  • 体制の継続性:担当エンジニアの途中交代リスクと代替要員の有無
  • セキュリティ対応:情報セキュリティマネジメント認証(ISMS等)の取得状況
  • コミュニケーション体制:進捗報告のタイミング・形式・窓口担当の明確さ

選定フローとしては、複数社へのRFP配布→提案ヒアリング→評価シートによるスコアリング→絞り込み後の技術確認(デモ・実績詳細)→契約という順が実務上の標準的な進め方です。

委託時に失敗しないための管理体制

委託先が優れたクラウドエンジニアを有していても、発注側の管理体制が整っていなければプロジェクトは順調に進みません。委託開始後の管理が成否を左右します。

社内の連携役(ブリッジ担当)を置く重要性

クラウドエンジニアリングを外部委託する際、発注側の社内に「ブリッジ担当」を置くことが重要です。ブリッジ担当は委託先との日常的なコミュニケーション窓口となり、要件変更・仕様確認・進捗確認を担います。

ブリッジ担当が不在のまま委託を進めると、委託先からの質問が滞留して作業が止まったり、仕様解釈の齟齬が後工程で発覚して手戻りが発生したりするリスクがあります。技術的な深い知識は不要ですが、自社のシステム要件とビジネス要件を理解し、委託先との橋渡しができる人材が適任です。

ブリッジ担当の育成自体が難しい場合は、ブリッジSE(Bridge System Engineer)の外部委託という選択肢もあります。

セキュリティ・権限管理の留意点

AWSアカウントの管理権限を委託先に付与する際は、必要最低限の権限のみ付与するIAMポリシー設計が欠かせません。広範な権限(AdministratorAccess等)を委託先に渡したままにすると、万が一の情報漏洩や誤操作時のリスクが高まります。

具体的には、作業ロール別のIAMポリシーを発注側で設計し、委託先には業務に必要な権限のみ付与することを推奨します。また委託期間終了時には速やかに認証情報を無効化することも重要な管理項目です。

委託先との間でNDA(秘密保持契約)と情報セキュリティに関する特約条項を契約に盛り込むことも、リスク管理の基本となります。

内製化への段階的移行計画

受託・委託はあくまでも補完手段であり、長期的には内製化を進めることが多くの企業にとって目標です。委託開始時から「どの業務・どのタイミングで内製化するか」のロードマップを描いておくと、委託期間中に自社社員がスキルを習得しやすい構造を作れます。

例えば、最初の6か月は委託先エンジニアが主導して基盤を構築し、その後6か月は自社社員が副担当として参加してナレッジを移転、最終的に自社主導で運用できる体制に移行するといったフェーズ設計が有効です。委託先にナレッジ移転を契約要件に含めておくと、より実効性が高まります。

まとめ:クラウドエンジニア不足を受託・委託で補う3つの判断軸

本稿では、クラウドエンジニア(AWS等)の採用難という現実的な課題に対し、受託・委託による補完の進め方を整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。

第一に、職種区分の明確化です。クラウドエンジニアといっても設計(アーキテクト)・構築(SysOps)・運用(DevOps/SRE)で求められるスキルは異なります。自社に何が不足しているかを明確にした上で、AWS認定資格を客観的な評価指標として活用することが委託成功の前提となります。

第二に、契約形態の適切な選択です。SES(準委任)・請負・フリーランス委託はそれぞれ責任分担と適用場面が異なります。プロジェクト型の構築案件には請負、継続的な運用業務にはSES、短期の特定作業にはフリーランス委託といった使い分けが実務上の基本です。

第三に、発注側の管理体制の整備です。優れた委託先を選んでも、社内にブリッジ担当がいなければプロジェクトは前進しません。セキュリティ(IAM権限管理・NDA)と内製化ロードマップをあわせて設計することで、委託を「一時的な補完」から「成長への投資」に転換できます。

よくある質問

クラウドエンジニアとインフラエンジニアは同じですか?

役割は重なる部分がありますが、厳密には異なります。クラウドエンジニアはAWS・Azure・GCPなどのクラウドサービスを専門とする一方、インフラエンジニアはオンプレミスのサーバー・ネットワーク・ストレージ等を含む広義のインフラ全般を扱います。クラウド移行プロジェクトでは両者の知識が必要になる場面も多く、委託先に発注する際は「何のインフラをどのクラウドで構築・運用してほしいか」を具体的に伝えることが重要です。

AWS認定資格のうち委託先評価で特に参考になるのはどれですか?

設計・アーキテクチャ全般を評価したい場合は「AWS Certified Solutions Architect – Associate(SAA)」または上位の「Professional(SAP)」が参考になります。インフラ運用・監視担当を評価する場合は「AWS Certified SysOps Administrator – Associate(SOA)」、CI/CD・自動化担当には「AWS Certified DevOps Engineer – Professional(DOP)」が目安となります。資格取得年が3年以上前の場合は更新(再受験)状況も確認すると、現在の知識水準の把握に役立ちます。

クラウドエンジニアの委託費用はどのくらいが目安ですか?

委託費用はエンジニアのスキルレベル・契約形態・稼働工数によって大きく異なります。市場参考値(一次資料ではありません)として、SES形態でのAWS中級エンジニアの月額費用は、稼働工数や契約条件によって相応の幅があります。正確な費用感は複数の委託先に対してRFPを出し、見積もりを取り寄せて比較することをお勧めします。LASSIC IT事業部では要件ヒアリングをもとに、体制規模に応じたご提案が可能です。

委託先へのAWSアカウント権限の付与はどのように管理すればよいですか?

IAM(AWS Identity and Access Management)を使い、委託先の業務内容に限定した権限ポリシーを作成して付与するのが基本です。管理者権限(AdministratorAccess)の全付与は避け、作業ロールごとに必要な権限のみを付与する最小権限の原則を守ることが大切です。また委託期間終了時にはIAMユーザー・ロールを無効化または削除する手順を契約前に取り決めておくとセキュリティ管理がしやすくなります。

クラウドエンジニアの委託から内製化への移行はどのように進めればよいですか?

段階的な移行を設計することが大切です。委託開始から半年程度は委託先主導で基盤構築・運用標準化を進め、並行して自社社員が副担当として参加してナレッジを吸収する期間を設けます。その後、徐々に自社側の担当比率を増やし、委託先がサポート役に回る体制を目指します。この過程でナレッジ移転を契約要件(設計書・手順書の整備等)に盛り込んでおくと、移行後の属人化リスクを抑えられます。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

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LASSICのIT事業部は、元請(プライムベンダー)としてAWSをはじめとするクラウドインフラの設計・構築・運用を受託してきた実績を持ちます。 SES・準委任・請負の各形態に対応しており、お客様の状況に合わせた体制をご提案します。内製化へのナレッジ移転支援も含めてお気軽にご相談ください。


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  1. *1 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年公表)— IT人材の需給ギャップに関する試算を収録。参照:経済産業省 IT人材政策ページ(アクセス時点で接続確認済み)
  2. *2 出典:IPA(情報処理推進機構)「DX白書2023」(2023年3月公表)— 第4部「デジタル時代の人材」にて企業のDX推進人材の確保・育成動向を分析。参照:IPA DX白書2023
  3. *3 出典:AWS公式「AWS認定」ページ — Foundational・Associate・Professional・Specialty の資格区分を掲載。参照:AWS認定(aws.amazon.com)


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