LASSIC Media らしくメディア

2026.08.10 らしくコラム

配送ルート最適化AIの仕組み|制約下での配車設計

「どのトラックに、どの荷物を積み、どの順で回れば効率がよいか」——配送を手がける現場では、日々この問いに向き合っています。配送先が数十か所を超え、時間指定や車両の積載量といった条件が絡むと、経験豊富な担当者でも組み合わせを詰めきるのは容易ではありません。ドライバー不足や2024年問題を背景に、限られた人員と車両でどう効率を上げるかは、いっそう切実な課題です。そこで検討されるのが、制約を踏まえて配送の順路と割当をはじき出す配送ルート最適化AIです。

ただ、配送ルート最適化は「配送管理システム(TMS)」としばしば同じものとして語られますが、担う役割は別物です。混同したまま要件を固めると、必要な機能が抜けたり、逆に過剰になったりしかねません。本記事では、発注担当者やプロジェクト責任者に向けて、配送ルート最適化AIの考え方・配送管理との違い・扱うデータ・進め方の勘所を整理します。

配送トラックと物流のイメージ

配送ルート最適化AIとは——配送管理(TMS)との違い

配送ルート最適化AIとは、配送先や積む荷物、車両や時間の制約をもとに、総走行距離やコストが小さくなる順路と車両への割当を計算する仕組みを指します。似た文脈で語られる配送管理システムと並べると、役割の違いがはっきりします。

配送管理システム(TMS)は、配車の指示や配送の進捗、実績を管理・記録するための仕組みです。いわば配送業務の運行を回す「管理」の役割を担います。これに対して配送ルート最適化は、その中で「どの順で回り、どの車両に割り当てるか」という計画そのものを計算する部分を受け持ちます。TMSが配送の状況を扱う仕組みだとすれば、ルート最適化は配送の段取りを決める頭脳にあたる、と捉えると分かりやすいでしょう。

なお、同じように制約の中で組み合わせを決める仕組みとしては、人員の配置を扱うシフト・要員最適化AIもあります。扱う対象が車両と順路か、人と勤務かという違いはありますが、限られた資源を制約下で割り当てるという発想は共通です。自社が最適化したいのが「配送の順路」なのか「人の配置」なのかを見極めておくと、要件を絞り込みやすくなります。

この記事のポイント

  • 配送ルート最適化は、配送管理(TMS)が扱う運行の記録とは別に、順路と割当の計画を計算する部分を担います。
  • 配送先と制約の組み合わせは膨大になるため、現実的な時間で良い解を導くところに機械の使いどころがあります。
  • 現場の制約をどこまで反映できるかが成否を分け、最後は担当者が確認・補正する運用が前提です。

なぜ配送ルートの最適化は難しいのか

配送ルートの最適化が難しい第一の理由は、組み合わせの数が配送先の増加とともに爆発的に膨らむ点にあります。数か所であれば手作業でも見当がつきますが、数十か所ともなると、回る順番の組み合わせは天文学的な数にのぼります。ほぼ無数といってよい規模です。すべてを調べ尽くして一つに決めるのは現実的でないため、限られた時間の中で十分に良い順路を導く工夫が要ります。

第二に、現場には数多くの制約が重なります。車両ごとの積載量、届け先の時間指定(午前中まで、などの時間枠)、ドライバーの拘束時間や休憩、通行できる道路の条件——これらを満たしながら順路を組む必要があります。第三に、状況が刻々と変わる点です。急な追加注文、渋滞や事故、車両の故障といった出来事に対して、当初の計画を組み直す場面も出てきます。人の経験だけでこれらを同時にさばくのは負担が大きく、計算を機械に任せる意義が生まれます。

何を最適化するのか——考え方

配送ルート最適化は、古くから研究されてきた「配送計画問題」という枠組みで捉えられます。一台の車両で複数地点を回る最短の順路を求める問題を土台に、複数の車両や積載量、時間枠といった制約を加えて広げたものです。何を「良い」とするかの目標は、目的によって変わります。代表的な目標と制約を次の表に整理しました。

観点 内容
最小化したい目標 何を小さくすると効率がよいか 総走行距離・使用する車両台数・配送にかかるコスト・所要時間
満たすべき制約 守らなければならない条件 積載量の上限・時間指定の枠・ドライバーの拘束時間
考慮したい事情 できれば反映したい現場の都合 担当エリアの固定・特定ドライバーの得意先・車両の種類

これらは新しい概念ではなく、以前から数理最適化の分野で扱われてきた考え方です。AIが寄与するのは、膨大な組み合わせの中から現実的な時間で良い順路を導き、過去の配送実績から所要時間の傾向を学んで見積もりの精度を高められる点にあります。担当者が地図とにらめっこして組んでいた計画を、多数の配送先と制約を反映して素早く更新できるようになる、と捉えると分かりやすいでしょう。処理の流れを図にすると次のとおりです。

配送ルート最適化AIの基本的な流れの図

導入で扱うデータと前提

配送ルート最適化AIの精度は、モデルの巧拙より、入力するデータと制約の整い方に大きく左右されます。着手前に、次のようなデータや情報がどこまで揃っているかを確認しておくと見通しが立てやすくなります。

基本となるのは、配送先の住所や位置、届ける量、時間指定の有無です。加えて、使える車両の台数や積載量、ドライバーの勤務時間や拘束時間の上限、地点間の移動にかかる所要時間の情報(地図データや過去の実績)が判断の土台になります。これらが正確でないと、計算上は問題なくても現場で回らない計画になりがちです。とくに移動時間は、地図上の距離だけでなく、時間帯による混雑を織り込めるかで実用性が変わります。逆に、現場の暗黙のルール(この地区はこの順で、など)が計画に反映されていないと、担当者が結局作り直すことになりがちです。前提となる制約を洗い出して言葉にしておくことが、導入の出発点になります。

進め方と落とし穴

導入を成功させるには、現場の制約をどこまで正確に写し取れるかが鍵になります。よくある落とし穴が、計算上は効率的でも、現場の事情に合わない計画が出てくることです。担当者が経験的に守ってきた段取りや、荷主との慣行といった暗黙のルールは、明文化されていないことが多く、初期の計画では抜け落ちます。そのため、いきなり全面自動化を目指すより、まずは一部のエリアや車両で試し、出てきた計画を担当者が確認・補正しながら、抜けていた制約を洗い出して反映していく進め方が現実的でしょう。

もう一つ大切なのが、現場のドライバーや担当者の納得感です。理屈の上で効率的でも、慣れた回り方と大きく違う計画には抵抗が生じやすいものです。なぜその順路になるのかを説明できるようにし、現場の声を制約として取り込んでいくと、定着させやすくなります。導入後も、所要時間の見積もりと実績のずれや、遅延の発生を見ながら、制約や設定を定期的に見直していく運用が求められます。

外注時に確認しておきたい点

配送ルート最適化AIの開発や導入を外部に委託する場合は、次の点を事前にすり合わせておくと、認識のずれを防ぎやすくなります。まず、対象とする配送の範囲と目標。どのエリア・どの車両を対象にし、走行距離・台数・コストのどれを重視するのかを決めておきます。次に、反映すべき制約の洗い出し。時間指定や積載量に加えて、現場の暗黙のルールをどこまで取り込むかは、成果を大きく左右します。

さらに、既存の配送管理システムや地図・所要時間データとの連携方法、そして出てきた計画を担当者がどう確認・補正して現場に渡すかという運用の流れも、あらかじめ整理しておきたい点です。配送ルート最適化は一度組んで終わりではなく、実績を見ながら制約や設定を更新し続ける取り組みになります。単発の開発で区切るのか、運用や見直しまで含めて依頼するのかを明確にしておくと、導入後のつまずきを抑えやすくなります。

まとめ:配送ルート最適化AIで押さえる3つの視点

配送ルート最適化AIは、配送管理(TMS)とは役割の異なる「順路と割当の計算」を担う仕組みです。導入を検討するうえで押さえたい視点は3つに整理できます。第一に、配送管理・ルート最適化・人員の配置を切り分け、自社が最適化したいのがどれなのかを見極めること。第二に、走行距離・台数・コストのどれを重視するかという目標と、時間指定や拘束時間といった制約を、現場の暗黙のルールまで含めて洗い出すこと。第三に、一部の範囲から始め、担当者の確認と現場の納得を得ながら実績で見直す運用を組むこと。この3点を踏まえておけば、「計算上は最適でも現場で回らない」というつまずきを避けやすくなります。制約の整理や既存システムとの連携に不安があれば、要件整理の段階から外部の知見を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)としてシステム開発とデータ活用を一貫して受託しています。配送ルート最適化は、制約の洗い出しから最適化ロジックの設計、既存の配送管理システムや地図データとの連携、運用や見直しの仕組みづくりまで、工程を分断せずに対応できるのが強みです。どの配送をどこまで自動化したいのか、要件整理の段階からご相談いただけます。

よくある質問

配送ルート最適化AIと配送管理システム(TMS)は何が違うのですか。

配送管理システム(TMS)は、配車の指示や配送の進捗、実績を管理・記録するための仕組みです。配送ルート最適化AIは、その中で「どの順で回り、どの車両に割り当てるか」という計画を計算する部分を担います。運行を管理する仕組みと、段取りを決める部分という関係で、役割が分かれています。

なぜ人手ではなくAIで計算するのですか。

配送先が増えると回る順番の組み合わせは爆発的に膨らみ、積載量や時間指定、拘束時間といった制約も重なります。すべてを調べ尽くすのは現実的でないため、限られた時間で十分に良い順路を導く計算は機械が得意とするところです。担当者は最後の確認や現場事情の補正に集中できるようになります。

2024年問題への対策になりますか。

ドライバーの拘束時間を制約として組み込み、限られた人員と車両で効率よく配送を組む助けにはなります。ただしルート最適化だけで課題がすべて解けるわけではなく、荷待ちの削減や積載率の向上など、他の取り組みと合わせて考えることが現実的です。

現場の事情はどこまで反映できますか。

担当エリアの固定や特定ドライバーの得意先、車両の種類といった事情は、制約として計画に取り込めます。ただし現場の暗黙のルールは明文化されていないことが多く、初期の計画では抜けがちです。試験運用で担当者が補正しながら、抜けていた制約を洗い出して反映していく進め方が有効です。

外注する場合、どこまで依頼できますか。

対象範囲や目標の整理、制約の洗い出しといった上流から、最適化ロジックの設計、既存の配送管理システムや地図データとの連携、運用や見直しの仕組みづくりまで、範囲を分けて依頼できます。重視する目標と反映すべき制約をあらかじめすり合わせておくと進めやすくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

配送ルート最適化AIの導入・運用のご相談はLASSICへ

元請(プライムベンダー)として、制約の洗い出しから最適化ロジックの設計・既存システム連携・運用まで、貴社の課題に合わせてご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

無料相談はこちら

ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。

  1. *1 出典:国土交通省「物流の2024年問題」関連情報(https://www.mlit.go.jp/


View