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2026.06.24 らしくコラム

Amazon SageMakerの機械学習基盤コストを外注で最適化する進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

machine learning server

この記事のポイント

  • SageMakerのコストが想定を超えやすい原因と、推論・学習それぞれで使える公式の最適化手法を整理しています。
  • AWS公表の削減手法を活用するには設定・監視・継続改善の専門知識が必要で、外注が有効な場面を具体的に説明します。
  • 外注先を選ぶ際に確認すべき評価軸と、発注範囲の決め方についても解説します。

SageMakerのコストが膨らみやすい理由

ai data processing cloud

Amazon SageMaker(アマゾン セージメーカー)を使った機械学習基盤のコスト最適化を外注で進めるとは、推論エンドポイントや学習ジョブのクラウド利用料を削減するため、SageMakerの設定・アーキテクチャ見直し・継続監視を外部の専門パートナーに委託する取り組みです。

現状分析 コスト内訳 無駄リソース 特定 手法選定 推論/学習別 最適化オプション 選択 設定・実装 Savings Plans Auto Scaling等 導入 効果測定 CloudWatchで 削減額・稼働率 確認 継続改善 利用変化に応じ 設定を定期的 に見直し
SageMakerコスト最適化を外注で進める5ステップ

SageMakerのコストが計画を超えやすい背景には、インフラ利用の特性があります。推論エンドポイントはリアルタイム推論の場合、リクエストがゼロでもインスタンスが起動し続けるため、稼働させるだけでコストが発生し続けます。

学習ジョブは高性能なGPUインスタンス(ml.p3.2xlarge等)を使う場面が多く、1回のジョブで数万〜数十万円規模の費用が発生することがあります(市場参考値。インスタンスタイプ・リージョン・時間によって異なります)。

また、SageMakerは推論・学習・データ処理・ノートブックなど複数のサービスで課金が発生します。どのコンポーネントが費用の大部分を占めるかを把握しないまま運用を続けると、対処できない状態が続きます。コスト最適化の第一歩は、サービス別・エンドポイント別の内訳を可視化することです。

推論エンドポイントで使える4つのコスト削減手法

Savings Plans — 継続利用で料金を下げる

Amazon SageMaker Savings Plans(セービングスプラン)は、1年または3年のコミットメントと引き換えに、SageMakerの各種MLインスタンス利用料を割引する料金モデルです。AWSの公式ドキュメントでは「コストを64%削減できる」と公表されており*1、これはAWSによる表現であり本記事が効果を断定するものではありません。

Savings PlansはSageMaker Studio、処理ジョブ、学習ジョブ、リアルタイム推論、バッチ変換など複数のサービスに自動適用されます。インスタンスファミリー・サイズ・リージョンを変更しても割引が継続されるため、ワークロードが変化しやすい環境でも扱いやすい設計です。

ただし、コミットメント量の見誤りは逆効果になります。過少なコミットメントでは割引効果が薄れ、過剰なコミットメントでは未消費分を無駄に支払う結果になります。過去の利用傾向を分析してコミットメント量を適切に設定するには、AWSのコスト管理ツール(Cost Explorer)を用いた専門的な分析が必要です。

Serverless Inference — 未使用時ゼロスケール

Amazon SageMaker Serverless Inference(サーバーレス推論)は、推論リクエストがない時間帯にエンドポイントを自動的に0にスケールダウンし、インスタンスに対する課金を停止する推論オプションです*2

課金は推論リクエストの処理時間(ミリ秒単位)と処理データ量のみで発生します。トラフィックが断続的・不規則な推論ワークロードでは、常時インスタンスを起動し続けるリアルタイム推論と比べて費用を抑えやすくなります。

一方、コールドスタート(リクエストが来た際にコンピュートリソースを起動する時間)が発生するため、低レイテンシーが必要なワークロードには不向きです。Provisioned Concurrency(プロビジョニング済み同時実行)を設定することでコールドスタートを軽減できますが、その分のコストが追加されます。ワークロード特性に応じた選択が必要です。

Auto Scaling — トラフィックに応じたインスタンス数調整

リアルタイム推論エンドポイントにAuto Scaling(自動スケーリング)を設定すると、トラフィック量に応じてインスタンス数を自動増減できます*1。ピーク時に必要な台数を常時確保する代わりに、低負荷時にはインスタンスを削減してコストを抑えられます。

スケールイン・スケールアウトのポリシー設定には、Amazon CloudWatchのメトリクス(InvocationsPerInstance等)を基にしたターゲット追跡スケーリングを用います。適切なターゲット値の設定が重要で、高すぎると過負荷、低すぎると過剰なインスタンス稼働につながります。

Multi-Model Endpoint — 複数モデルを1エンドポイントに集約

Multi-Model Endpoint(マルチモデルエンドポイント)を使うと、複数の機械学習モデルを単一のエンドポイントに配置してインスタンスを共有できます*1。各モデルに個別のエンドポイントを立てていた場合と比べて、インスタンスコストを集約できます。

モデルごとに呼び出し頻度が異なる場合や、複数の小〜中規模モデルを並行して運用している環境で特に効果があります。ただし、GPUが必要なモデルや超低レイテンシー要件がある場合は適用できないケースもあります。

学習ジョブで使える2つのコスト削減手法

Managed Spot Training — スポットインスタンスで学習費用を削減

Amazon SageMakerのManaged Spot Training(マネージドスポットトレーニング)は、EC2スポットインスタンスを使って学習ジョブを実行する機能です。AWSの公式ドキュメントでは「オンデマンドインスタンスと比べてコストを90%まで最適化できる」と公表されており*3、これはAWSによる表現です。実際の削減幅はワークロードやインスタンスタイプによって異なります。

スポットインスタンスは中断される可能性があるため、チェックポイント機能(学習の途中状態をAmazon S3に保存し、再開時に続きから再スタートする仕組み)との組み合わせが推奨されます。中断が許容できる学習ジョブ(大規模な定期バッチ学習等)に適しています。

設定には `EnableManagedSpotTraining` を有効化し、`MaxWaitTimeInSeconds` を `MaxRuntimeInSeconds` より大きく設定する必要があります。チェックポイントのS3パス設定も必要で、初期設定には相応のAWSの知識が求められます。

Managed Warm Pool — 学習ジョブ間のコールドスタートを短縮

Managed Warm Pool(マネージドウォームプール)は、学習ジョブ完了後のインスタンスを一定時間プールとして保持し、次のジョブ起動を高速化する機能です。繰り返し学習ジョブを実行する環境では、インスタンスの起動待ち時間を削減できます。

プールで保持する時間分のインスタンス費用は発生しますが、短時間で複数の学習ジョブを連続して実行するケースでは、全体の合計費用を抑えながら開発サイクルを短縮できます。利用状況に合わせて保持時間を設定することが重要です。

内製対応の難しさ — 専門知識・工数・継続監視の壁

SageMakerのコスト最適化手法はAWS公式ドキュメントに整理されていますが、それを実際に適用して効果を出すには複数の専門スキルが必要です。

推論エンドポイントの最適化では、Auto Scalingのポリシー設計・CloudWatchメトリクスの読み取り・Serverless InferenceとリアルタイムInferenceの使い分け判断・Savings Plansのコミットメント量計算などを組み合わせて対応します。学習側ではスポットトレーニングのチェックポイント実装・ハイパーパラメータチューニングのインスタンス設計が加わります。

これらを担当できるのは、AWSのML系サービスに精通したMLOps(機械学習基盤の運用自動化)エンジニアかクラウドコストエンジニアです。ML開発担当者がコスト最適化まで兼務するのは、専門性と工数の両面で負荷が高い状態です。

また、一度設定して終わりではありません。モデル更新・学習頻度の変化・推論トラフィックの変動に合わせて設定を見直す継続監視が必要です。人材が確保できても、継続的な監視・改善まで担う余力がない組織は少なくありません。

対応項目 必要なスキル 内製時の課題
Savings Plansの設定 Cost ExplorerによるSageMaker利用傾向の分析
コミットメント量の試算
過少・過剰コミットによる費用ロスが発生しやすい
Auto Scalingポリシー設計 CloudWatchメトリクスの理解
ターゲット追跡スケーリングの設計
設定誤りによる過負荷またはコスト増加のリスク
Serverless Inferenceへの移行 ワークロード特性の判断
コールドスタート許容範囲の設計
SLAに合わないオプションを選ぶと品質影響が出る
Managed Spot Trainingの設定 チェックポイント実装(S3連携)
MaxWaitTime設計
中断時の再スタート設計を誤ると学習が無効化される
継続監視・定期見直し CloudWatch Dashboardの設計
コスト変動の原因分析
モデル更新・トラフィック変化への追随が難しい

外注でSageMakerコスト最適化を進める手順

ステップ1:コスト内訳の可視化 — どこで費用が発生しているか把握する

最初にAWS Cost ExplorerでSageMaker内のサービス別・エンドポイント別の費用内訳を確認します。推論エンドポイントが全体の何割を占めるか、学習ジョブのGPUコストはどれくらいかを数値で把握します。

外注先に依頼する際も、この内訳データを提供することで分析の精度が上がります。コスト可視化の段階から外注先に入ってもらい、ツール設定・レポート設計まで一括で委託するケースもあります。

ステップ2:ワークロード特性の整理 — 推論トラフィックと学習頻度を確認する

推論エンドポイントの最適化手法はトラフィックパターンによって変わります。24時間均一なトラフィックであればSavings PlansとAuto Scalingの組み合わせが基本です。断続的なトラフィックならServerless Inferenceへの切り替えを検討します。

学習ジョブは実行頻度・モデルサイズ・中断許容度を整理します。週次・月次で実行する大規模学習ならManaged Spot Trainingの効果が出やすく、1日に何度も繰り返す実験的な学習ならWarm Poolが有効です。

ステップ3:外注先への要件定義 — 何を委託するか明確にする

外注範囲は「一時的な最適化設定のみ」か「継続的な監視・改善まで含む」かで契約形態が変わります。一時対応(スポット委託)は初期費用を抑えられますが、モデル更新や利用変化に対応する体制は自社に残ります。継続委託(保守運用型)は追加費用が発生する代わりに、専門チームが継続的に改善を担います。

要件定義書には、現在のSageMaker利用状況・最適化の優先度(推論コスト削減か学習コスト削減か)・品質要件(推論レイテンシーSLA等)・対応範囲(設定のみかコード修正も含むか)を明記します。

ステップ4:設定・移行の実施 — 段階的に適用して影響を確認する

本番環境への変更はステージング環境での検証後、段階的に適用します。特にServerless Inferenceへの移行やAuto Scalingポリシーの変更は、推論品質(レイテンシー・エラー率)への影響を確認しながら進めます。

外注先がAWSの変更を直接行う場合は、IAMロール(IAM=AWS Identity and Access Management、アクセス権限管理サービス)の権限設計を適切に行い、最小権限の原則に従ったアクセス付与が必要です。

ステップ5:継続監視と定期レビュー — コスト変動を追い続ける

SageMakerのコスト最適化は一度設定すれば終わりではありません。CloudWatch Dashboardでインスタンス稼働率・推論リクエスト数・コスト推移を定期的に確認し、変動の原因を分析します。月次または四半期ごとにSavings Plansのコミットメント量を見直すサイクルも設けます。

委託先の評価ポイントと発注範囲の決め方

SageMaker固有の実績を持つかどうかを確認する

AWSのコスト最適化全般を扱うパートナーでも、SageMakerのML系サービスに精通しているかは別問題です。推論エンドポイントの設計・学習ジョブのチェックポイント実装・MLOps(機械学習システムの運用自動化の仕組み)パイプラインへの組み込みなど、ML基盤固有の知識が必要な場面があります。

委託先の選定では、SageMaker Savings PlansやServerless Inferenceの設定実績・AWS ML認定資格の保有状況・類似案件の対応事例を確認します。AWSパートナーネットワーク(APN)のティア・取得コンピテンシーも参考になります。

発注範囲:スポット委託か継続委託かを判断する

発注範囲を決める際の基準として、自社のMLエンジニアがSageMakerの日常的な設定変更を担えるかどうかがポイントになります。担えるのであれば、初期の最適化設定と移行作業のみをスポットで委託する方法が合理的です。

一方、MLエンジニアがモデル開発に専念しており、インフラ・コスト管理を兼務する余力がない場合は、継続的な保守運用として外注するほうが長期的なコスト管理の精度を維持しやすくなります。

費用レンジの目安(市場参考値)

SageMakerコスト最適化の外注費用は、対応範囲・企業規模・契約形態によって異なります。初期診断・設定変更のみのスポット対応であれば数十万〜百数十万円規模、月次の継続保守を含む場合は月額数十万円前後の契約になるケースがあります(これらは市場参考値であり、一次資料に基づく数値ではありません)。

見積もりを依頼する際は、SageMakerの月額利用費・対象エンドポイント数・学習ジョブ頻度を事前に整理しておくと、比較見積もりの精度が上がります。

まとめ:SageMakerコスト最適化を外注で進める3つの判断軸

本稿では、Amazon SageMakerの機械学習基盤でコストが膨らみやすい原因と、推論・学習それぞれで使える最適化手法、外注で進める際の手順と委託先評価のポイントを整理しました。要点を3つにまとめると次の通りです。

第一に、推論エンドポイントはSavings Plans・Serverless Inference・Auto Scaling・Multi-Model Endpointの4手法を、ワークロード特性に合わせて組み合わせることが基本です。どれか一つで解決できるわけではなく、トラフィックパターン・レイテンシー要件・モデル数を踏まえた設計が必要です。

第二に、学習ジョブはManaged Spot TrainingとManaged Warm Poolの適切な適用が費用削減の中心です。特にスポットトレーニングはチェックポイント実装と組み合わせることで、中断リスクを管理しながら費用を抑えられます。

第三に、外注を有効活用するには「何を委託するか」の要件定義が先決です。スポット委託か継続保守かの判断は、自社のMLエンジニアがインフラ管理を兼務できるかどうかを基準にすると決めやすくなります。

よくある質問

SageMaker Savings Plansはどのサービスに適用されますか?

SageMaker Savings Plansは、SageMaker Studio、処理ジョブ(Processing)、Data Wrangler、学習ジョブ(Training)、リアルタイム推論(Real-Time Inference)、バッチ変換(Batch Transform)に自動適用されます*1。インスタンスファミリー・サイズ・リージョンを変更しても割引が継続されるため、構成変更が多い環境でも適用しやすい設計です。1年または3年のコミットメント量をドル毎時($/hour)単位で設定します。

Serverless InferenceはすべてのモデルタイプにR対応していますか?

SageMaker Serverless Inferenceは、GPUが必要なモデル・プライベートDockerレジストリを使うコンテナ・Multi-Model Endpoint・VPC設定・Model Monitorなど一部の機能には対応していません*2。CPUで動作する軽量モデルや、呼び出し頻度が低く間欠的なトラフィックのワークロードに向いています。レイテンシー要件が厳しい場合は、コールドスタートの影響を事前にベンチマークで確認することをお勧めします。

Managed Spot Trainingで学習が中断された場合、どうなりますか?

スポットインスタンスが中断された場合、チェックポイント機能を設定していると最後に保存したチェックポイントから学習を再スタートできます*3。チェックポイントはAmazon S3に保存されるため、インスタンスが変わっても継続できます。チェックポイントを設定していない場合は学習が最初からやり直しになります。AWSは長時間の学習ジョブにはチェックポイントとの組み合わせを推奨しています。

SageMakerのコスト最適化外注はどのくらいの期間で効果が出ますか?

初期の設定変更(Savings Plansの適用・Auto Scalingの導入等)は数週間で完了するケースが多く、設定完了後の翌月請求から費用変化を確認できます。継続的な最適化(モデル更新に合わせたポリシー見直し・Serverless Inferenceへの段階移行等)は3〜6か月かけて積み重ねる性質があります。外注先と開始前に「対応範囲」「効果確認のKPI」「レポート頻度」を合意しておくと、進捗の評価がしやすくなります。

SageMakerコスト最適化とAWSコスト最適化全般の外注は別に考えるべきですか?

EC2やS3などの汎用AWSサービスのコスト最適化(リザーブドインスタンス・Savings Plans全般)と、SageMakerのML基盤固有の最適化は、必要な専門知識が異なります。汎用AWSコスト最適化の外注先がSageMakerのMLOps・推論エンドポイント設計にも精通しているとは限りません。SageMaker固有の対応を依頼する場合は、ML系サービスの実績と担当エンジニアのスキルセットを確認することをお勧めします。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

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  1. *1 出典:Amazon Web Services「Inference cost optimization best practices — Amazon SageMaker AI」(2024年)
  2. *2 出典:Amazon Web Services「Deploy models with Amazon SageMaker Serverless Inference」(2024年)
  3. *3 出典:Amazon Web Services「Managed Spot Training in Amazon SageMaker AI」(2024年)


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