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2026.08.10 らしくコラム

シフト・要員最適化AIとは|需要予測と制約最適化

「今月もシフト表作りに丸一日かかった」「組めるのはベテランの1人だけで、休むと現場が止まる」——小売・物流・医療・コールセンターの現場では、シフト作成をめぐるこうした悩みがつきまといます。パート・アルバイトの比率が高く、時間帯ごとに必要な人数や資格・スキルの条件が変わる職場ほど、負担は重くなりがちです。

この負担に対する打ち手として広がっているのが、シフト・要員最適化AIです。過去の実績から必要な人数を予測し、労働時間や本人の希望といった制約を踏まえてシフト案を組み立てます。本記事では、発注担当者やプロジェクトマネージャーに向けて、仕組み・向いている業種・導入時の注意点を整理します。

シフト表と勤務予定のイメージ

シフト・要員最適化AIとは——需要予測と制約充足の組み合わせ

シフト・要員最適化AIとは、時間帯ごとに必要な人員数を予測し、労働時間や資格などの制約を満たすシフト案を自動で組み立てる仕組みです。従来のシフト作成は、担当者が経験と勘を頼りに、表計算ソフトへ手作業で人を割り当てるやり方が中心でした。この方法は担当者のノウハウに大きく依存し、その人が不在になると途端に作成が滞ってしまいます。

AIを使ったアプローチでは、処理を大きく二つに分けて考えます。ひとつは需要予測で、過去の来店・入電・出荷などの実績データをもとに、時間帯別の必要人数を見積もる工程です。もうひとつは制約充足の最適化で、労働時間の上限やスキル・資格、本人の希望シフトといった条件を満たしながら、予測された人数を満たす割り当てを計算します。この制約充足問題を解く手法は、配送計画や生産スケジューリングにも使われる数理最適化の技術で、Googleが公開しているOR-Toolsのようなツールキットにも、勤務スケジューリング向けの実装例が示されています*1

混同されやすいものに、空いている時間帯へ機械的に人を割り当てるだけの自動シフト作成ツールがあります。こうしたツールは希望や資格を条件式で扱う点は共通していますが、来店や入電の変動をあらかじめ予測したうえで必要人数そのものを見積もる工程を欠いているのが実情です。需要の予測を伴うかどうかが、単純な自動化とシフト・要員最適化AIを分ける境目になります。

この記事のポイント

  • シフト・要員最適化AIは、需要予測と制約充足の最適化を組み合わせ、シフト案を自動で組み立てる仕組みです。
  • 属人化の解消や欠員対応の速さで効果が出やすい一方、データ品質と現場の受容が導入の成否を分けます。
  • 既存の勤怠管理システムとは役割が異なるため、連携方法を導入前に整理しておく必要があります。

何を解決できるか——属人化・欠員対応・コンプライアンス

シフト・要員最適化AIが力を発揮しやすいのは、次のような場面です。

課題 AIによる対応
属人化 特定の担当者の経験に頼らず、条件を入力すればシフト案を再現できるようにする。
欠員・急な休みへの対応 欠員が出た時点で条件を組み直し、代替案を短時間で再計算する。
労務コンプライアンス 労働時間の上限や休憩の確保といった条件を、割り当ての段階で織り込む。
コストの適正化 必要な人数に近い形で配置し、過剰な人員配置や急な応援要請を減らす。

共通しているのは、「時間帯ごとに変わる需要」と「守るべき制約」を同時に扱う点です。逆に言えば、需要の変動が小さく制約もシンプルな職場では、導入の効果は限定的になりやすいと考えられます。一方で、複数の拠点を抱える企業では、拠点ごとにばらついていたシフト作成の質を、共通の仕組みで底上げできる利点も見込めます。

仕組み——需要予測から最適化計算までの流れ

シフト・要員最適化AIの処理は、おおむね次の流れで進みます。まず、来店実績や入電件数、季節性やイベント、天候といったデータをもとに、時間帯別の必要人数を予測します。需要予測には時系列データの分析が使われ、クラウド各社もマネージドサービスとしてこの領域のツールを提供しています*2。次に、予測された必要人数を満たすように、労働時間の上限、スキルや資格の有無、本人の希望シフトといった制約を反映しながら、割り当てを計算します。全体像は次の図のとおりです。

シフト・要員最適化AIの処理フロー図

図のように、需要予測と制約充足の最適化は役割が分かれています。前者が「何人必要か」を見積もり、後者が「誰をどこに置くか」を決める形です。欠員が急に発生した場合は、この後段の計算だけを組み直せばよいため、人手で一から調整するより短い時間で代替案を出せます。ただし、出てきた案をそのまま確定させるのではなく、現場の状況に応じて人が最終確認する運用が現実的です。

制約充足の計算方法にも幅があります。数理最適化の手法は条件の組み合わせを網羅的に検討して最良に近い解を求める一方、ヒューリスティックな手法は計算量を抑えるために近似的な手順で解を探すという違いです。従業員の人数やシフトのパターンが多いほど組み合わせは急激に増えるため、規模や更新の頻度に応じて手法を選ぶ必要があります。どちらの方式を採るかは提供元によって異なるため、外注や導入の検討時には確認しておきたい点です。

業種別の適用ポイント——小売・物流・医療・コールセンター

シフト・要員最適化AIが向いている業種には、いくつか共通の特徴があります。業種ごとの主な違いを整理すると、次のようになります。

業種 特有の制約 効果が出やすい場面
小売 パート・アルバイト比率が高く、時間帯で客足が大きく変わる。 セール期やイベント時の来店予測に合わせた人員配置。
物流・倉庫 フォークリフト等の資格保有者を特定の作業に割り当てる必要がある。 出荷量の繁閑差が大きい時期の人員調整。
医療・介護 夜勤の配置基準や、資格者の必要人数といった業界固有の条件がある。 夜勤明けの休息確保など、条件が複雑なシフトの組み立て。
コールセンター スキル別に対応できる問い合わせの種類が分かれている。 入電予測に合わせたスキルベースの人員配置。

いずれの業種でも、条件が複雑であるほど手作業での調整コストが大きく、AIによる最適化の効果を実感しやすい傾向があります。逆に、条件がシンプルな小規模な職場では、既存のやり方のままでも大きな支障が出ないのが実情です。また、拠点や店舗の数が多い企業ほど、拠点ごとに担当者の経験値がばらついている状態を仕組みで平準化できる点も、導入を後押しする要因になりやすいと言えます。

よくある落とし穴——データ品質と現場の受容

シフト・要員最適化AIは便利な仕組みですが、導入前に押さえておきたい注意点もあります。

落とし穴 内容 備えの方向性
データ品質 過去の実績データが乏しかったり整っていなかったりすると、予測の精度が上がりにくい。 既存の勤怠・POSデータの整備状況を導入前に確認する。
現場の受容 AIが出した案をそのまま使えず、現場担当者による調整が毎回必要になる。 現場の意見を反映できる調整の余地を仕組みに残しておく。
突発的な事態への対応 災害や急病といった想定外の欠員には、アルゴリズムだけでは対応しきれない。 人による最終判断のプロセスを併存させておく。
法令遵守の確認 生成されたシフトが時間外労働の上限規制などを満たしているか、個別の確認が要る。 制約条件に労務規定を反映し、出力後も定期的に見直す*3

導入・外注時の確認点

シフト・要員最適化AIの導入を検討する際は、まず自社のデータがどこまで整っているかを把握するところから始めると、計画が立てやすくなります。POSレジや勤怠システムに蓄積された実績データが少ない場合は、予測の精度が上がるまで一定の期間を見込んでおくのが現実的です。

外部へ委託する場合は、次の点をすり合わせておくとよいでしょう。既存の勤怠管理システムや給与計算システムとどのように連携させるか、労働時間の上限や資格要件といった制約条件を誰が定義し更新していくか、現場担当者が出力結果を調整できる余地をどこまで残すか、そして導入後の運用や見直しの体制をどう組むか——このあたりを最初に整理しておくと、導入後の食い違いを防ぎやすくなります。

効果の測り方も事前に決めておきたい項目です。シフト作成にかかる時間、欠員発生時の代替案が出るまでの時間、人員の過不足といった指標を導入前後で比較できるようにしておくと、投資に見合う効果が出ているかを判断しやすくなります。指標を決めないまま導入すると、体感としては楽になったはずなのに、費用対効果を説明しづらいという状況に陥りがちです。

まとめ:シフト最適化AIで押さえる3つの判断軸

シフト・要員最適化AIは、需要予測と制約充足の最適化を組み合わせ、属人化した作成業務を仕組み化する打ち手です。導入を検討する際は、3つの軸で整理すると判断しやすくなります。第一に、課題が属人化・欠員対応・コンプライアンスのどこにあるかを見極めることです。第二に、予測の土台となる実績データがどれだけ整っているかを確認します。第三に、AIが出した案を現場でどう調整し、運用に落とし込むかを事前に設計することです。この3点を押さえれば、シフト・要員最適化AIは現場の負担を軽くする現実的な選択肢になります。データの整備状況や制約条件の整理に迷いがあれば、現状把握の段階から外部の知見を借りるのも一つの方法です。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)としてシステム開発とAI活用の企画から開発・運用までを一貫して受託しています。既存データの整備状況の棚卸しから、需要予測モデルの構築、制約条件の設計、勤怠システムとの連携まで、工程を分断せずに対応できるのが強みです。シフト作成の負担や属人化について、現状整理の段階からご相談いただけます。

よくある質問

既存の勤怠管理システムがあっても導入できますか。

多くの場合、既存の勤怠管理システムとは役割が異なるため併用できます。勤怠システムが実績の記録や給与計算を担うのに対し、シフト・要員最適化AIは事前のシフト案の作成を担います。データ連携の方法は導入前に確認しておくとよいでしょう。

過去のデータが少なくても導入できますか。

導入自体は可能ですが、実績データが少ないうちは予測の精度が上がりにくい傾向があります。データが蓄積されるにつれて精度が改善していくため、一定の期間を見込んで運用を始めるのが現実的です。

AIが出したシフト案をそのまま使う必要がありますか。

そのまま確定させる必要はありません。現場の事情に合わせて調整できる余地を残す運用が一般的です。突発的な欠員や個別の事情には、人による最終判断を組み合わせることが望まれます。

どの業種でも効果が出ますか。

時間帯ごとの需要変動が大きく、資格やスキルといった制約が複雑な職場ほど、効果を実感しやすい傾向があります。条件がシンプルな小規模な職場では、既存のやり方でも支障が少ない場合があります。

外注する場合、何を確認すればよいですか。

既存システムとの連携方法、制約条件を誰がどう定義・更新するか、現場での調整の余地、導入後の運用体制——この4点を最初に確認しておくと、認識のずれを防ぎやすくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

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ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。

  1. *1 出典:Google「Employee Scheduling」(OR-Tools Documentation)(https://developers.google.com/optimization/scheduling/employee_scheduling
  2. *2 出典:Amazon Web Services「What Is Amazon Forecast?」(Amazon Forecast Developer Guide)(https://docs.aws.amazon.com/forecast/latest/dg/what-is-forecast.html
  3. *3 出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制」(働き方改革特設サイト)(https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html


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