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ゲーム開発エンジニア不足をUnity受託・委託で補完する進め方
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- Unity・Unreal EngineのゲームエンジニアはXR・産業シミュレーション需要が重なり、採用市場での競争が厳しくなっています
- 受託スタジオを選ぶ際は「ジャンル実績・プラットフォーム対応・描画最適化力・CI/CD体制・ドキュメント品質」の5軸で評価することが有効です
- RFP段階でXR転用の可能性を盛り込むことで、将来的な建築・医療・製造シミュレーションへの応用コストを抑えられます
目次
ゲーム開発エンジニアの採用難——Unity/Unreal需要とIT人材不足の背景
ゲーム開発エンジニア不足とは、Unity(ユニティ)やUnreal Engine(アンリアルエンジン)などのゲームエンジンを使ったリアルタイム3D・インタラクティブ開発に習熟したエンジニアが、企業の採用需要に対して十分に供給されていない状態を指します。経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年)では、IT人材全体の不足数が2030年には約79万人規模に達すると推計されており*1、ゲーム・XR開発のような高度専門領域ではその傾向がさらに強く出ています。
Unity・Unreal Engineの需要がゲームを超えてXR・産業分野に拡大している
かつてUnityやUnreal Engineはゲーム制作専用のツールと見られていました。しかし現在は、VR/AR(バーチャルリアリティ/拡張現実)を使ったトレーニングシステム、建築・不動産向けインタラクティブ内覧、医療シミュレーター、製造ラインのデジタルツイン、メタバース上のバーチャルオフィスなど、非ゲーム領域でのリアルタイム3Dエンジンの需要が広がっています。
こうした需要の拡大により、ゲーム業界だけでなく、製造・医療・建設・不動産・教育など幅広い業種がUnity・Unreal Engineエンジニアの獲得を求めるようになっています。求人競合が多業種に及ぶため、ゲーム開発専業の企業でも採用が従来より難しくなっています。
採用市場でゲーム系エンジニアが不足する理由
ゲーム開発エンジニアの採用が難しい背景には、複数の要因があります。まず、ゲームエンジンに特有のリアルタイム描画・物理演算・マルチスレッド処理の知識は、一般的なWebやバックエンドの開発経験とは異なるため、未経験者からの転換が容易ではありません。
次に、プラットフォームごとの最適化知識(iOS・Android・コンソール・PCそれぞれのグラフィックスAPI対応)が必要で、習熟に時間がかかります。また、XR分野の台頭でゲームエンジニアのキャリアパスが広がった分、ゲーム開発専業に留まるエンジニアの絶対数が限られるようになっています。
ゲーム開発エンジニアを内製で採るリスクと外注で補完する考え方
ゲーム・リアルタイム3D開発のエンジニアを自社で採用しようとすると、求人から内定・入社・戦力化まで相当のリードタイムを要します。採用に成功した場合でも、プロジェクトのピーク時だけ人員が必要な開発体制では、繁閑の波に対して固定コストが膨らむ課題があります。
受託スタジオや業務委託への外注は、こうした課題を回避する手段として有効です。プロジェクト単位で必要な専門技術を調達でき、採用・教育コストを抑えながら開発を進められます。ただし、コミュニケーションコストや知識転移の設計が不十分だと、完成物の品質や保守性に影響が出るため、委託先の評価と契約設計が重要になります。
内製採用に伴うリードタイムとミスマッチリスク
ゲーム系エンジニアの採用では、職種の特殊性から母集団形成に時間がかかります。選考・内定・入社後の業務習熟まで含めると、即戦力として稼働するまでに半年から1年規模のリードタイムを見込む必要があります。
また、ゲームエンジンの経験があっても、自社が開発するジャンル(2D横スクロール・3Dアクション・マルチプレイ・XRシミュレーター等)との相性が合わない場合、期待通りの成果につながらないこともあります。ミスマッチによる採用コストの浪費は、スタートアップや中小企業にとって特に大きな打撃となります。
受託スタジオ・フリーランス・SES——補完手段の選び方
外注による補完手段は大きく3つあります。受託スタジオへの開発委託、ゲーム系フリーランスエンジニアへの業務委託、そしてSES(システムエンジニアリングサービス)によるエンジニア派遣です。
| 補完手段 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 受託スタジオへの委託 | 機能単位・タイトル単位で開発をまとめて任せたい場合。 プロジェクト管理もスタジオ側に持たせたい場合。 |
スタジオの過去ジャンル実績との整合確認が必要。 成果物の知的財産権・ソースコード帰属を契約で明確化する。 |
| フリーランス業務委託 | 特定技術(シェーダー最適化・マルチプレイ基盤等)の専門家を短期で活用したい場合。 | 単価は市場水準で変動する。 長期プロジェクトでは依存リスクが生じるため、複数名体制が望ましい。 |
| SES(エンジニア派遣型) | 自社チームに加わって共同開発したい場合。 技術知識の内製化も同時に進めたい場合。 |
指揮命令は発注側が持つため、タスク設計・進捗管理を自社で行う体制が必要。 偽装請負に該当しないよう契約形態に注意する。 |
Unity/Unreal受託先を評価する5つの軸
Unity・Unreal Engineを扱う受託スタジオや委託先を選ぶ際、汎用的なシステム開発の評価指標では不十分です。ゲーム・リアルタイム3D開発に固有の技術要件を軸に評価することが、品質リスクを低減するうえで重要です。
軸1:ジャンル実績(2D/3D/マルチプレイ/最適化)とポートフォリオの深さ
ゲームエンジンを使った開発経験があると言っても、2Dカジュアルゲームと3Dアクション、リアルタイムマルチプレイ、物理シミュレーションではまったく異なる技術スタックが必要です。自社が開発しようとするジャンルと近い実績を持つスタジオを選ぶことが前提となります。
ポートフォリオを確認する際は、「リリース済みか・プロトタイプ止まりか」「フレームレートの目標値と達成結果」「最適化施策の具体的な内容」まで掘り下げて確認します。過去案件のゲームエンジンバージョン・対象プラットフォームも合わせて確認しておくと、現行バージョンへの対応力が把握できます。
軸2:対象プラットフォーム対応力(モバイル/コンソール/PC/XR)
モバイル(iOS/Android)向けは省電力・低メモリ環境でのパフォーマンスチューニングが求められます。コンソール(PlayStation・Nintendo Switch等)はプラットフォームホルダーの審査基準への対応が必要です。PC向けはグラフィックス設定の幅広いサポート、XR(VR/AR/MR)向けは90fps以上の安定フレームレートとレイテンシ管理が課題になります。
自社の配信プラットフォームが確定している場合は、そのプラットフォームでのリリース実績を確認することを推奨します。将来のXR展開も視野に入れるなら、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)対応の開発経験があるかも評価項目に加えましょう。
軸3:描画・パフォーマンス最適化力
リアルタイム3Dの品質を決める重要な技術が描画パイプラインの最適化です。Unityでは URP(ユニバーサルレンダーパイプライン)やHDRP(高精細レンダーパイプライン)の使い分け、シェーダーのGPU負荷管理、バッチングによるドローコール削減が問われます。Unreal Engineではナナイト(Nanite)やルーメン(Lumen)の活用と適切なLOD(レベルオブディテール)設定が開発効率と品質に直結します。
評価の際は「Profilerを使ったボトルネック特定の手順を説明できるか」「過去案件でのフレームドロップ解消事例を持っているか」を実際に確認することを推奨します。説明が曖昧な場合、パフォーマンス問題が後工程で浮上するリスクがあります。
軸4:アセット管理・CI/CD運用体制
ゲーム開発ではモデル・テクスチャ・サウンド・スクリプトなど大量のアセットを継続的に管理する必要があります。GitやPerforceを使ったバージョン管理、アセットバンドルの命名規則・フォルダ構造の標準化が整っていないと、チームが大きくなるほど作業衝突や資産消失のリスクが高まります。
また、継続的インテグレーション・継続的デリバリー(CI/CD)の整備状況も重要です。Unity Cloud Build・GitHub Actions・Jenkins等を活用した自動ビルド・自動テスト体制があれば、リリース品質の安定と工数削減につながります。体制の有無と運用実績を具体的に確認しましょう。
軸5:業務引き継ぎ・ドキュメント品質
委託開発の成果物が将来自社で保守・改修できる状態かどうかは、ドキュメントの質で大きく変わります。アーキテクチャ設計書、クラス図・シーン構成の説明、主要スクリプトのコメント密度、環境構築手順書の整備水準を確認します。
過去案件で「引き渡し後に第三者が修正できた実績」を持つスタジオは信頼性が高いといえます。引き渡し後のサポート期間・範囲も契約に明記することで、運用フェーズのリスクを抑えられます。
外注先の選定プロセス——RFPから試作・契約まで
委託先の評価軸が固まったら、選定プロセスを設計します。ゲーム・リアルタイム3D開発の外注では、試作(PoC:Proof of Concept)フェーズを設けることで、本開発前に技術適合性を確認できます。
要件定義と開発スコープの切り出し方
外注の失敗は、曖昧なスコープ定義から始まることが多いです。「ゲームを作ってほしい」ではなく、プラットフォーム・ジャンル・想定同時接続数・ターゲットフレームレート・対応端末スペック・リリーススケジュールを具体化します。
開発スコープは「コア機能(MVPと呼ばれる最小実証可能プロダクト)」と「追加機能」に分けて整理します。初回委託ではコア機能に絞ることで、受託スタジオの実力を確認しながら段階的に範囲を広げられます。
RFP(提案依頼書)に盛り込む評価項目
提案依頼書(RFP)には以下を含めることを推奨します。まず技術スタックの指定(使用エンジンバージョン・対応レンダーパイプライン・開発言語)です。次に品質基準(目標フレームレート・対応端末スペックレンジ・クラッシュ率の上限目安)です。さらに進捗管理の方式(週次レポート・デモビルド提出頻度)と成果物の帰属条件(ソースコード・アセットの著作権)も盛り込みます。
また、XR転用の可能性がある場合は「将来的にVR/ARへの拡張が生じた際の対応可否」を確認する項目を入れておきます。対応実績がなくても意向確認だけでも候補先の絞り込みに役立ちます。
試作(PoC)フェーズで確認すべき技術指標
本開発契約の前に小規模な試作フェーズを設けると、候補スタジオの実力を実装面で確認できます。試作フェーズでは「コア操作の実装(移動・カメラ制御・基本UI)」「目標フレームレートの達成状況」「コードの可読性・命名規則の一貫性」の3点を特に見ます。
試作の期間は案件規模にもよりますが、コア機能の核心部分が確認できる程度に絞ります。試作結果をもとに本開発のスコープ・工数見積もりを再調整することで、実態に即した契約が結べます。
XR・メタバース転用を見据えた外注活用のポイント
Unity・Unreal Engineで開発したゲームやインタラクティブアプリケーションは、VR/AR/MRへの転用が技術的に近い距離にあります。ゲーム開発の文脈で外注先を選定する際に、XR対応の可能性も視野に入れておくことで、将来的な追加開発コストを抑えられます。
建築・医療・製造シミュレーションへの応用領域
非ゲーム領域でのUnity/Unreal Engine活用として、建築・不動産向けのウォークスルーVR(設計段階で内装を体験できるシステム)、医療分野での手術トレーニングシミュレーター、製造・工場向けのデジタルツイン(設備の仮想モデルを使った点検訓練)などが実用化されています。
これらは「ゲーム開発」とは呼ばれませんが、シェーダー・物理演算・UI実装・VRコントローラー入力処理など、使用する技術要素はゲーム開発と大きく重なります。ゲーム系の受託スタジオがXR産業案件にも対応しているケースは増えており、一社で両方の案件を担当できる体制を持つパートナーを選ぶことで、プロジェクト切り替えのコストを下げられます。
外注先にXR対応力を問う際のチェックリスト
XR転用の可能性を踏まえてパートナーを選ぶ際は、以下の点を確認することが有効です。まず、Meta Quest・HTC Vive・Apple Vision Proなどの主要HMDでのビルド・デプロイ経験があるかです。次に、VR酔い(シミュレーター酔い)対策として視野角・フレームレート・移動表現をどう制御してきたかの実績です。
さらに、ARKit(iOS向けAR開発フレームワーク)やARCore(Android向けAR開発フレームワーク)との連携開発経験の有無、OpenXR(VR/AR/MRデバイスを横断的にサポートする業界標準仕様)への対応実績も聞いておきます。これらの確認を通じて、ゲーム開発の文脈を超えたXR案件への対応力が判断できます。
まとめ——ゲーム開発エンジニア不足を補完する3つの判断軸
本稿では、Unity・Unreal Engineを使ったゲーム開発エンジニアの採用難の背景と、受託・委託による補完の考え方を整理しました。要点を3つに集約すると次のとおりです。
第一に、需要の広がりを把握することです。ゲーム向けエンジニアの不足は、XR・産業シミュレーション領域での需要拡大が採用競争を激化させている構図があります。経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年)が示す2030年のIT人材不足見通しの中でも、専門技術領域の人材ほど影響が先行して現れやすい状況です*1。
第二に、受託先の評価を5軸で行うことです。ジャンル実績・プラットフォーム対応力・描画最適化力・CI/CD体制・ドキュメント品質の5点は、一般的なソフトウェア開発の評価基準では見落とされがちなゲーム・XR固有の論点です。RFPと試作フェーズを通じて実力を確認してから本開発に進むことで、品質リスクを低減できます。
第三に、XR転用の可能性を初期から設計に組み込むことです。将来的に建築・医療・製造シミュレーションへの展開が見込まれる場合は、パートナー選定の段階からXR対応実績を確認することで、追加開発コストの抑制につながります。
よくある質問
ゲーム開発エンジニアの外注はどのような契約形態が適していますか?
機能単位でまとめて委託する場合は請負契約(成果物納品を対価とする契約形態)が向いています。自社チームと協働しながら開発を進める場合は準委任契約または業務委託が適しています。指揮命令を発注側が行う場合はSES(システムエンジニアリングサービス)契約になりますが、労働者派遣法との区別に注意が必要です。いずれの形態でも、ソースコード・アセットの著作権帰属を契約書に明記することを推奨します。
Unity開発の経験がある受託先はどうやって探せますか?
Unity公式のパートナーシッププログラムに認定されたスタジオ一覧、ゲーム開発者向けカンファレンス(CEDEC等)への出展実績、GitHubやUnity Asset Storeでの公開実績を参考に候補を絞るのが一般的です。また、IT系専門エージェントやフリーランスマッチングサービスにゲーム・XR開発を専門とするカテゴリが設けられていることもあります。候補が見つかったら、ポートフォリオと過去のリリース実績を確認のうえRFPを送付します。
受託開発でゲームのソースコードを自社に渡してもらえますか?
原則として、著作権の帰属は契約によって決まります。契約書に「成果物の著作権は発注者(自社)に帰属する」と明記し、受託側が同意することでソースコードを含む全成果物を自社資産にできます。一方、受託スタジオが汎用ライブラリや自社フレームワークを組み込んでいる場合は、その部分はライセンス扱いになるケースもあります。契約前にソースコードの帰属範囲を双方で確認しておくことが重要です。
ゲーム開発の外注でよくある失敗はどのようなものですか?
よく見られる失敗として、スコープ定義が曖昧なまま開発を開始して追加要求が増加するケースがあります。また、フレームレートの目標値を事前に合意していなかったために、リリース直前に大幅なパフォーマンス改修が発生した事例もあります。さらに、引き渡し後にドキュメントが不十分で第三者による保守が困難になるケースも報告されています。これらを防ぐために、要件定義の具体化・品質基準の契約明記・試作フェーズでの技術確認という3点が有効です。
Unity開発を外注する際、自社に最低限どのようなスキルが必要ですか?
技術的な実装スキルが自社になくても外注は可能ですが、要件定義と成果物評価のためにある程度の知識は持っておくことが望ましいです。具体的には、ゲームの動作確認に必要な基本操作(テスト端末でのビルドインストール、フレームレートの計測方法)、仕様変更の影響範囲を受託側と議論できる程度のゲームエンジンの基礎概念(シーン・プレハブ・コンポーネント等)の理解があると、コミュニケーションコストを抑えられます。プロジェクト管理担当者と技術サポート役の2名体制を社内で組めると理想的です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年)