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AWS Public IPv4課金・Elastic IP棚卸しでコスト削減する外注の進め方
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- AWSは2024年2月からすべてのPublic IPv4アドレスに課金を開始しており、Elastic IPはアイドル状態でも対象となります。
- Public IP Insightsを活用した棚卸しと、IPv6移行・PrivateLink・NAT集約による削減施策を組み合わせることが、コスト圧縮の鍵になります。
- 棚卸し作業には広範囲なAWS知識と本番影響の見極めが必要で、外注することでリスクを抑えながら着実に進められます。
目次
- AWS Public IPv4課金とは—2024年2月から全アドレスが課金対象に
- Elastic IPのアイドル課金—未使用でも月約$3.6の費用が発生
- 課金の影響範囲—EC2/RDS/EKS/ELBなど全サービスが対象
- Public IP Insightsで棚卸しを始める—可視化から解放まで4ステップ
- Public IPv4数を減らす削減施策—IPv6移行・PrivateLink・NAT集約
- 内製と外注の比較—必要スキルとリスク管理の違い
- 外注で進める場合の進め方—委託先選定から成果確認まで
- 注意点—本番停止リスクと作業前の確認事項
- まとめ—AWS Public IPv4コスト削減の3つの判断軸
AWS Public IPv4課金とは—2024年2月から全アドレスが課金対象に
AWS Public IPv4課金とは、Amazon Web Services(AWS)が2024年2月1日より開始した、すべてのPublic IPv4アドレスに対する使用料金の徴収制度を指します。サービスにアタッチされているかアイドル状態かを問わず、一律 $0.005/IP/時 が課金されます*1。
この課金変更は2023年7月28日にAWS公式ブログで発表されました*1。従来、Elastic IP(EIP)はアイドル状態(EC2等に割り当てていない未使用の状態)のみ課金されていましたが、2024年2月以降はアタッチ済みのアドレスも含め、すべてのPublic IPv4が課金対象となっています。
変更の背景には、IPv4アドレスの枯渇問題があります。AWSは発表の中で、グローバルなIPv4アドレスプールの確保にかかるコストが増加していることを理由として挙げており、利用者へのIPv6移行を促す意図も含まれています。
Elastic IPのアイドル課金—未使用でも月約$3.6の費用が発生
Elastic IP(EIP)とは、AWSが提供する静的なPublic IPv4アドレスです。EC2インスタンスやNATゲートウェイなどに割り当てて使用しますが、割り当てを解除したまま確保(リザーブ)しておくことも可能です。
2024年2月以前は、EIPはアイドル状態(未使用・未割り当て)の場合のみ課金されていました。しかし現在は、使用中・アイドルを問わずすべてのEIPに $0.005/IP/時 が課金されます*1。1IPあたりに換算すると月額約$3.6(年間約$43.2)になります。
一見少額に見えますが、大規模な本番環境では数十〜数百個のPublic IPv4が稼働しているケースも珍しくありません。100IPであれば月約$360(年間約$4,320)となり、無視できないコストになります。
なお、EC2インスタンス起動時のPublic IPv4については、無料枠として750時間/月が提供されています*2。ただしこの無料枠はEC2インスタンスに直接アタッチされたIPに限定されており、EIPや他サービスのIPは対象外です。
課金の影響範囲—EC2/RDS/EKS/ELBなど全サービスが対象
2024年2月からの課金は、AWSのすべてのサービスが管理するPublic IPv4アドレスを対象としています。具体的には以下のサービスが含まれます*1。
- EC2インスタンス:インスタンスに直接割り当てられたPublic IPv4
- RDS(Relational Database Service):パブリックアクセスが有効なDBインスタンスのIP
- EKSノード(Elastic Kubernetes Service):ワーカーノードに割り当てられたIP
- インターネット向けELB(Elastic Load Balancing):Application/Network Load BalancerのIP
- NAT Gateway:NATゲートウェイに割り当てられたEIP
- Global Accelerator:アクセラレーター用のIP
- Elastic IP(EIP):使用中・アイドルを問わずすべて対象
一方で、BYOIP(Bring Your Own IP、自社が所有するIPアドレスをAWSに持ち込む仕組み)で持ち込んだIPアドレスは本課金の対象外です*1。大量のPublic IPv4を使用している企業は、BYOIP活用も選択肢の一つになります。
課金はすべてのリージョンで適用されます。マルチリージョン構成を取っている場合は、各リージョンのPublic IPv4が積算されるため、コストの全体像を把握するにはリージョンをまたいだ可視化が必要です。
Public IP Insightsで棚卸しを始める—可視化から解放まで4ステップ
棚卸しの第一歩は、AWSアカウント内のPublic IPv4の全量を把握することです。AWSはこのための専用ツールとして「Public IP Insights」を提供しています。これはVPC IPAM(IP Address Manager)の機能の一つで、アカウント内のすべてのPublic IPアドレスを一覧表示し、使用状況を可視化できます*1。
ステップ1:Public IP InsightsでPublic IPの全量を可視化する
AWSマネジメントコンソールの「VPC」メニューから「IP Address Manager(IPAM)」を開き、「Public IP Insights」を選択します。アカウント内のすべてのPublic IPv4が、サービス種別・リソースID・リージョンとともに一覧表示されます。
一覧では「アタッチ済み」「未アタッチ(アイドル)」の状態が確認できます。未アタッチのEIPは即時解放の候補です。アタッチ済みのIPについても、そのリソースが実際に稼働しているかを確認する必要があります。
ステップ2:不要なEIPと停止中リソースのIPを仕分ける
可視化した一覧をもとに、次の観点で仕分けを行います。
- 未アタッチのEIP:即時解放の対象
- 停止中EC2インスタンスに割り当てられたEIP:インスタンスを削除するか、EIPを解放
- 検証・開発環境のPublic IP:本番環境と分離し、不要時は停止または解放
- 用途不明のEIP:タグ管理の不備が原因で誰も把握していないケース。担当者に確認後に解放判断
ステップ3:未使用EIPを解放し、不要なPublic IPを削除する
仕分けが完了したら、解放対象のEIPをマネジメントコンソールまたはAWS CLIで解放します。解放操作は取り消せないため、事前にリソースとの関連性を確認することが大切です。特にEIPに紐づいているEC2インスタンスやNATゲートウェイが本番稼働中の場合、解放すると外部からの通信が遮断されます。
解放前には、該当EIPに依存しているシステム(外部公開URLや固定IPによるホワイトリスト設定など)を事前に調査してください。
ステップ4:Cost Explorerで削減効果を確認し、継続監視体制を整える
EIP解放後はAWS Cost Explorerで「EC2 Other」または「VPC」のコスト推移を確認し、Public IPv4の課金額が減少していることを確認します。新規のEIP発行が抑制されているかを定期的にチェックする体制(週次または月次のIP棚卸しレビュー)を整えることが、コスト増を防ぐうえで重要です。
Public IPv4数を減らす削減施策—IPv6移行・PrivateLink・NAT集約
未使用EIPの解放に加え、アーキテクチャを見直してPublic IPv4の総数を減らすアプローチが中長期的な削減につながります。主な施策を3つ紹介します。
IPv6移行—Public IPv4を不要にするアーキテクチャ転換
AWSはIPv6を追加コストなしでサポートしており、IPv6アドレスには本課金が適用されません*1。VPC・サブネット・EC2インスタンス・ELBなどでIPv6を有効化し、クライアントとの通信をIPv6に移行することで、Public IPv4への依存を減らせます。
ただしIPv6移行は、接続先のクライアントやオンプレミス環境がIPv6をサポートしているかの確認が必要です。既存のセキュリティグループ設定・ファイアウォールルールの見直しも伴うため、移行スコープの慎重な見極めが求められます。
PrivateLinkとVPCエンドポイント—インターネット経由の通信を内部化
AWS PrivateLink(VPCエンドポイント)を活用することで、S3・DynamoDB・各種AWSサービスへのアクセスをVPC内のプライベートネットワーク経由に切り替えられます。インターネット向けのNAT Gatewayを経由しないため、NAT GatewayのPublic IPv4が不要になる場合があります。
S3やDynamoDBへのアクセスが多いシステムでは、VPCエンドポイント(Gateway型)の導入がPublic IPv4削減と同時にデータ転送コストの削減にもつながります。
ロードバランサ集約とNAT Gateway集約
複数のApplication Load Balancerを1つに集約することで、ELBが保持するPublic IPv4の数を減らせます。同様に、各アベイラビリティゾーンに個別のNAT Gatewayを配置している構成を見直し、集約することも選択肢になります。
ただしNAT Gateway集約はアベイラビリティゾーン間の冗長性に影響するため、可用性要件との兼ね合いを慎重に検討する必要があります。
内製と外注の比較—必要スキルとリスク管理の違い
棚卸しと削減施策を内製で進める場合と外注する場合では、必要なスキルセット・リスク・コストに大きな差があります。
| 比較軸 | 内製 | 外注 |
|---|---|---|
| 必要スキル | VPC/IAM/IPAM・AWS CLIの習熟、Cost Explorer操作、IPv6移行の設計知識が必要 | 社内は窓口担当者(スコープ承認・変更確認)のみで対応可能 |
| 作業リスク | 使用中EIPを誤解放すると本番通信が遮断される。 影響確認に専門知識が不可欠 |
委託先が影響調査・確認を担うため、誤操作リスクを軽減できる |
| 対応スピード | 担当者の学習・調査期間が必要で、着手まで時間を要する | AWS実績のある委託先なら棚卸し手順が確立しており、早期着手できる |
| 継続管理 | 社内にノウハウが蓄積され、定期棚卸しを自走できる | 継続監視を委託する場合、委託先依存になる。 内製化計画をセットで立てると良い |
| 向いているケース | AWS専任エンジニアが在籍し、環境の変更管理プロセスが整備されている | AWSの運用担当者が兼務・少人数、または本番への影響調査に不安がある |
内製で棚卸しを進める場合に必要なスキルと工数
内製で本格的に棚卸しを進めるには、VPC・IAM・IPAM(IP Address Manager)の操作スキル、AWS CLIによる一括確認コマンドの実行能力、そしてIPv6移行やPrivateLinkの設計知識が必要です。
作業工数の目安として、複数リージョン・複数サービスにまたがる環境では、調査・仕分け・解放作業だけで専任エンジニア1〜2名が数日から数週間規模の工数を要することが実務上見られます(市場参考値。一次資料による裏付けはありません)。IPv6移行を伴う場合はさらに設計・テスト工数が加わります。
棚卸し作業で最も危険なのは、用途を特定しないままEIPを解放してしまうことです。本番稼働中のサービスへの影響が生じると、外部からのアクセス不能や固定IP依存のシステム障害につながります。タグ管理が不十分な環境ほど、この確認作業に時間がかかります。
外注で進める場合の進め方—委託先選定から成果確認まで
AWSの運用管理を外注する場合、以下の流れで棚卸しと削減施策を進めると成果につながりやすくなります。
進め方1:現状のPublic IP数とコストをCost Explorerで事前確認する
委託先との初回打ち合わせ前に、AWSマネジメントコンソールのCost Explorerで「PublicIPv4:InUseAddress」の費用項目を確認し、月次コストの概算を把握しておくことをお勧めします。「どのリージョンに何個のPublic IPv4があるか」「直近3か月の費用推移はどうか」を整理しておくと、委託先との対話が具体的になります。
進め方2:棚卸しスコープと本番影響の確認範囲を事前合意する
委託先に丸投げするのではなく、「対象とするリージョン・AWSアカウント」「本番環境の変更承認プロセス」「除外するリソース(外部への固定IP公開が必要なシステムなど)」を事前に合意します。スコープが曖昧なまま進むと、本番影響の見落としや成果評価の困難につながります。
進め方3:AWSの実績と元請(プライムベンダー)体制を確認する
委託先がAWSパートナーネットワーク(APN)の認定を取得しているか、またはAWS環境の直接作業が可能な自社エンジニアを配置しているかを確認してください。作業が再委託(再々委託)される場合、情報管理上のリスクが高まり、責任の所在も不明確になります。
進め方4:変更承認フローを整備し、施策実行前に本番影響を確認する
委託先から提示された解放対象リストを社内で承認するフローを整備します。変更管理の担当者・承認基準・緊急時の対応手順をあらかじめ決めておくことで、施策の実行が滞るリスクを抑えられます。
進め方5:削減効果を月次で確認し、継続監視体制を構築する
解放・削減施策の実施後は、月次でCost Explorerを確認し、Public IPv4の課金項目が減少していることを確認します。委託先に定期的な棚卸しレポートを求め、新規EIPの発行状況をモニタリングする体制を維持することが長期的なコスト管理につながります。
注意点—本番停止リスクと作業前の確認事項
EIPや関連リソースの解放作業には、誤操作による本番影響というリスクが伴います。以下の確認事項を作業前に整備することが大切です。
固定IP依存のシステムを事前に洗い出す
社外のサービス・パートナーシステムが、自社のEIPをホワイトリストや接続許可リストに登録しているケースがあります。該当EIPを解放すると相手側の接続が遮断されるため、事前に依存関係を調査する必要があります。
確認方法として、EIPにタグ(例:Purpose=ExternalWhitelist)を付与して管理する習慣をつけることが有効です。タグが整備されていない環境では、担当者へのヒアリングやアーキテクチャ図との照合で依存関係を特定します。
DNSレコードとEIPの紐づきを確認する
Route 53などのDNSでAレコードにEIPを直接登録している場合、EIPを解放するとDNS名で到達できなくなります。ELB・CloudFrontのDNS名(エイリアスレコード)でDNSを設定している場合はEIPへの直接依存が避けられますが、手動でAレコードを設定した環境では特に注意が必要です。
IPv6移行は段階的に進める
IPv6への移行は、一度に全システムを切り替えるのではなく、影響範囲の小さい開発環境・検証環境から段階的に進めることをお勧めします。クライアント側のIPv6対応状況、セキュリティグループのルール変更、監視ツールのIPv6対応も確認項目です。
本番環境への反映は、十分なテストと切り戻し手順の準備を整えたうえで行うことが、障害リスクを最小化するうえで大切です。
まとめ—AWS Public IPv4コスト削減の3つの判断軸
本稿では、2024年2月から始まったAWS Public IPv4課金の仕組みから、Elastic IPの棚卸し手順・削減施策・外注で進める場合の進め方・注意点を整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。
第一に、EIPのアイドル課金だけでなく、アタッチ済みのPublic IPv4もすべて課金対象です。EC2・RDS・EKS・ELB・NAT Gatewayなど広範囲に及ぶため、まずPublic IP Insightsで全量を可視化することが出発点になります。
第二に、削減施策は「即時解放(未使用EIP)」「中期対応(PrivateLink・NAT集約)」「長期対応(IPv6移行)」の3層で優先順位をつけて進めることが効果的です。段階的に取り組むことでリスクを分散できます。
第三に、本番影響の調査・確認が伴う棚卸し作業は、AWS実績のある外注先に委ねることでリスクと工数を抑えられます。外注時は元請(プライムベンダー)体制・変更承認フローの整備・定期的な棚卸しレポートの提供を条件とすることが大切です。
よくある質問
AWS Public IPv4の課金はいつから始まりましたか?また料金はいくらですか?
2024年2月1日から、すべてのPublic IPv4アドレスに対し$0.005/IP/時の課金が開始されています*1。月額換算で1IPあたり約$3.6(年間約$43.2)になります。EC2インスタンス起動時のPublic IPv4については、750時間/月の無料枠が設けられています*2。
Elastic IPをEC2に割り当てている場合も課金されますか?
はい、課金されます。2024年2月以降は、EIPがEC2インスタンス等に割り当て済み(使用中)であっても、アイドル状態(未割り当て)であっても、すべて$0.005/IP/時が課金されます*1。以前はアイドル状態のみ課金されていましたが、課金ルールが変更されています。
Public IP Insightsを使うには追加費用がかかりますか?
Public IP Insightsは、VPC IPAM(IP Address Manager)の機能として提供されています。AWSの公式情報によればPublic IP Insightsは追加料金なしで利用できますが、VPC IPAMの有料機能(Advanced Tier)を有効化している場合は別途費用が発生します。利用前にAWSの最新の料金ページでご確認ください。
未使用のEIPを解放する際に注意すべき点はありますか?
EIPの解放は取り消せないため、解放前に依存関係の確認が必要です。外部パートナーのホワイトリストにEIPが登録されている場合は接続が遮断されます。また、DNSのAレコードにEIPを直接設定している場合は名前解決できなくなります。タグ管理が不十分な環境では、担当者へのヒアリングとアーキテクチャ図との照合を経てから解放判断をすることをお勧めします。
IPv6移行でPublic IPv4課金をゼロにできますか?
すべての通信をIPv6に移行できれば、対応するPublic IPv4の課金をなくすことが理論上は可能です。ただし、クライアント側やオンプレミス環境がIPv6に対応していない場合は移行できません。また、セキュリティグループ・ファイアウォール・監視ツールのIPv6対応も確認が必要です。段階的な移行が現実的であり、まず開発環境から試験的に進めることをお勧めします。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:Amazon Web Services「New – AWS Public IPv4 Address Charge + Public IP Insights」(2023年7月28日発表)
- *2 出典:Amazon Web Services「AWS Free Tier now includes 750 hours of free public IPv4 addresses」(2024年2月)