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プリセールス人材が足りない──セールスエンジニアを外部で補う選択肢
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- セールスエンジニア(プリセールス)は営業と技術の橋渡し役で、クラウド化・業務変革投資の拡大によって需要が高まっており、採用競争が激化しています
- 日系企業では専任職として設置されていないケースが多く、案件ごとにエンジニアや PMが都度対応する属人的な運用に依存しがちです
- 業務委託・提案支援委託・デモ構築支援などの外部活用を組み合わせることで、採用が間に合わない期間でも提案品質を維持できます
目次
セールスエンジニア/プリセールスとは:営業と技術の橋渡しで受注を支える役割
セールスエンジニア(プリセールス)とは、顧客の課題を技術的な視点で分析し、自社製品・サービスによる解決策を提案する役割を指します。営業担当者と連携して技術的な質問に答えたり、デモンストレーションや概念実証(PoC)を主導したりすることで、受注に向けた信頼形成を担います。
職種の呼称は企業によって異なります。「セールスエンジニア(SE)」「プリセールス」「テクニカルセールス」「ソリューションコンサルタント」など、ほぼ同義で使われているケースが大半です。いずれも共通するのは、製品・サービスの技術的な優位性を顧客の業務課題と結びつける役割という点です。
セールスエンジニアに求められる3つのスキル:技術力・提案力・ビジネス視点
セールスエンジニアには、エンジニアリング知識だけでなく3つのスキル領域が求められます。第一は技術的な知識で、自社製品の仕様・アーキテクチャ・連携可能な周辺技術を理解し、顧客環境に合わせた構成を提案できる力です。
第二は提案力・プレゼンテーション力で、技術的な説明を経営層や非エンジニアの担当者にも伝わる言葉に変換する能力です。第三はビジネス視点で、顧客のROIや導入効果を定量的に示し、競合製品との差別化を論理的に組み立てる力が挙げられます。この3つが揃う人材は希少で、採用市場での評価も高い傾向があります。
需要が高まる背景:クラウド化・業務変革投資がプリセールスを必要とする理由
クラウド型サービスやSaaSの普及により、ITの購買意思決定はエンジニアだけでなく経営企画・財務・現場部門が関与するケースが増えています。製品の機能よりも「自社の課題をどう解決するか」という観点が重視されるようになり、その架け橋となるセールスエンジニアの存在感が増しています。
SaaS・クラウドベンダーで採用が活発化している背景
特にSaaS企業やクラウドベンダーにおいては、複数のモジュールや連携オプションを持つ製品を顧客環境に最適な形で提案する必要があります。競合との差別化が技術的な深さに依存するため、セールスエンジニアの採用を強化する動きが続いています。
IT投資の目的が「システムの整備」から「業務変革・収益向上」へとシフトしていることも背景にあります。顧客は自社の業務フローをベースに具体的な改善効果を求めるため、提案側は技術的な実装可能性と業務への影響を同時に語れる人材を必要としています。
IT人材不足が市場価値の高騰を加速させる
経済産業省が2019年に公表した「IT人材需給に関する調査」*1では、2030年に約79万人(上限の試算)のIT人材が不足すると推計されています。希少性の高いセールスエンジニアを採用しようとする企業は、他のIT職種と同様に採用競争の激化に直面しています。
需要の高まりと供給の限界が重なることで、セールスエンジニアの市場価値は高い水準を維持しています。内製採用だけで体制を整えようとすると、採用のリードタイムとコストの両面で課題が生じやすい状況です。
採用が難しい理由:技術×営業×提案力の複合スキルと職種未設置の現実
セールスエンジニアの採用が難しい理由は、求めるスキルの複合性と、日系企業における職種の認知度の低さにあります。技術スキルの高いエンジニアは開発職を選ぶ傾向があり、営業職出身者は技術的な深みを得るまでに時間がかかるため、両者の掛け合わせとなる人材の母集団は限られています。
「技術もわかる営業」「営業もできるエンジニア」という両立の難しさ
エンジニアとしてキャリアを積んだ人材がセールスエンジニアになるには、顧客との関係構築・提案文書の作成・競合比較の論理展開など、営業的な素養を習得する必要があります。一方、営業出身者が技術的な深みを身につけるには、製品のアーキテクチャや連携仕様への継続的なインプットが欠かせません。
この両立を実現できる人材は採用市場でも少なく、内製で育成しようとすると育成期間が長期化しやすいという課題があります。技術知識と提案力を同時に評価できる採用基準の設計も容易ではなく、採用担当者の負荷も高い傾向があります。
日系企業では専任職として設置されていないケースが多い
欧米ではセールスエンジニア・プリセールスが独立した職種として確立されているのに対し、日系企業ではこの職種を明示的に設置していないケースが多くあります。代わりに、プロダクトマネージャーやエンジニアが案件ごとに提案工程に入り込み、本来の開発・運用業務と兼任する形が一般的です。
この兼任運用では、提案精度が担当者のスキルに依存しやすく、重要案件への対応が属人化する問題が発生します。エンジニアが提案対応に時間を割くことで、開発業務に支障が出るという副作用も生じやすい状況です。専任の確保・育成が求められる一方、採用難がそれを阻んでいるという循環的な課題が続いています。
外部活用で補完する4つの選択肢:業務委託/フリーランス/提案支援/デモ構築支援
採用難の状況でもプリセールス機能を維持・強化するには、外部の人材・組織を活用する選択肢が有効です。補完の形態は大きく4つに整理できます。
業務委託・準委任型:特定案件または月次稼働で提案工程を補佐する
セールスエンジニア経験を持つ個人または小規模パートナーと業務委託契約を結び、提案工程に参画させる形態です。月次の稼働時間を定めた準委任契約や、案件ベースの請負に近い形など、取引形態は柔軟に設計できます。
契約後すぐに参画できる点が利点で、採用リードタイムの問題を回避できます。一方、複数案件を並行して担当することがあるため、参画可能な稼働枠の事前確認が重要です。社内の製品知識をキャッチアップする時間を冒頭に設けることで、提案精度が安定しやすくなります。
フリーランス活用型:プリセールス専門のフリーランスに単発・継続で依頼する
フリーランス向けマッチングプラットフォームや専門エージェントを通じて、プリセールス経験を持つフリーランスを調達する方法です。業務委託に近い形ですが、個人との直接契約になるため、特定のプロダクト領域や業種に強みを持つ人材を柔軟に起用できます。
稼働量が少ない段階でも試用できるため、初期のコストを抑えながら体制を確認できる点が特徴です。ただし、個人との契約では事業継続のリスク管理や秘密保持の対応を慎重に行う必要があります。
提案支援委託型:SIer・ITパートナーに提案フェーズの技術支援を委託する
SIer(システムインテグレーター)や技術コンサルティング会社に対して、特定案件の提案フェーズにおける技術的な裏付け作業を委託する形態です。RFP(提案依頼書)の技術回答・システム構成案の策定・費用見積もりの根拠作成などを依頼します。
組織として対応するため品質が安定しやすく、対応できる技術領域が広い点が利点です。一方、案件ごとの理解をゼロから共有する必要があり、ブリーフィングに一定の準備時間がかかります。継続的な関係を築くほど連携の効率が上がる傾向があります。
デモ構築支援型:製品デモ・PoC環境の構築を専門組織に依頼する
顧客への提案で用いるデモ環境や概念実証(PoC)環境の構築を、外部の技術チームに委託する形態です。セールスエンジニアが提案の構成を決定し、環境の構築・設定・テストデータの投入を専門チームが担います。
提案品質を維持しながら、社内エンジニアの工数を削減できるのが特徴です。受注確度が高い案件に絞ってデモ構築支援を活用することで、投資対効果を管理しやすくなります。
補完を進める4ステップ:課題整理→役割定義→外部人材アサイン→ノウハウ蓄積
外部活用でプリセールス機能を補完するには、自社の課題と外部に任せる範囲を明確にしてから動くことが大切です。以下の4ステップで進めることで、外部活用の効果を高めやすくなります。
ステップ1:提案プロセスのボトルネックを課題整理する
最初に「どの工程でプリセールスが足りていないか」を可視化します。よくあるボトルネックは、技術的なRFP回答の遅れ・デモ準備の工数不足・競合比較の資料作成・PoCの環境構築の4点です。どこに最も負荷が集中しているかを確認することで、外部に任せる優先度が定まります。
この段階で、案件ごとの提案工数・失注した案件の敗因・エンジニアが提案対応に費やしている時間などを整理しておくと、外部活用の効果測定にも役立ちます。
ステップ2:外部人材に任せる役割とKPIを定義する
外部への依頼範囲があいまいなまま委託を開始すると、提案の質にばらつきが生じやすくなります。「RFPの技術回答作成」「デモシナリオの設計と実施」「PoCスコープの定義と環境構築」など、依頼するアウトプットを具体的に定義します。
KPIの例としては、提案資料の完成リードタイム・顧客からの技術的な質問件数の変化・提案通過率(技術評価フェーズの通過率)などが参考になります。KPIを設定することで、外部人材とのフィードバックサイクルを回しやすくなります。
ステップ3:製品知識のキャッチアップを込みでアサインする
外部人材のアサイン時に見落とされやすいのが、自社製品への理解を深めるための時間確保です。どれほど経験豊富なプリセールス人材でも、新しい製品・サービスの仕様やポジショニングを把握するにはインプット期間が必要です。
製品資料・技術ドキュメント・競合比較シートの提供と、営業担当者との顔合わせセッションをオンボーディングに組み込むことで、最初の案件から一定の品質を確保しやすくなります。製品担当者がFAQをまとめた資料を用意しておくと、キャッチアップのスピードが上がります。
ステップ4:提案資料の型化・ノウハウ蓄積で内製移管を準備する
外部人材が作成した提案資料・デモシナリオ・技術回答のひな形を社内資産として蓄積することが、中長期的な内製移管の準備につながります。提案の「型」が社内に残ることで、将来的に内製のプリセールス担当者が着任したときの立ち上がりが速くなります。
蓄積した資産を定期的にレビューし、製品のバージョンアップや市場変化に合わせて更新する仕組みを設けることで、ナレッジの鮮度を維持できます。外部活用をただの人員補充にとどめず、組織の提案力を底上げする機会として活用することが有効です。
内製採用と外部活用の比較:コスト・スピード・知見移転の3軸で選ぶ
内製採用と外部活用は対立する選択肢ではなく、段階的に組み合わせて活用するものです。状況に応じた優先度を整理するために、主な比較軸を表にまとめます。
| 比較軸 | 内製採用 | 業務委託・フリーランス | 提案支援委託 | デモ構築支援 |
|---|---|---|---|---|
| 初動スピード | 採用リードタイムが発生する(数か月〜1年規模になるケースがある) | 契約後すぐに参画可能。 採用より早く動ける。 |
案件発生時に都度依頼できる。 パートナー関係があれば即応しやすい。 |
デモ要件確定後に着手。 環境構築に特化しているため効率的。 |
| 知見の内製化 | 採用成功後に社内にノウハウが蓄積される。 長期的な自立性が高い。 |
資料の型化・共有で社内に残しやすい。 移管設計が必要。 |
案件ごとの完結型になりやすい。 型化・ドキュメント化を契約に含めること。 |
デモシナリオを社内資産化すれば活用できる。 設計部分は社内で持つことが望ましい。 |
| コスト構造 | 採用費+人件費が固定コストになる。 長期では外部より低コストになりうる。 |
月次または案件ベースで変動費管理が可能。 採用コストは発生しない。 |
案件ごとの費用発生。 継続利用で単価交渉がしやすい。 |
構築規模に応じた費用が発生。 受注確度の高い案件に絞ると投資対効果が出やすい。 |
| 向いている状況 | 中長期でプリセールスチームを組織化したい場合 | 採用まで提案体制を維持したい。 特定領域の専門性が必要な場合。 |
大型案件・技術領域が広い提案が続く場合 | デモ工数の削減と提案品質の両立が優先される場合 |
実務上は「業務委託で提案体制を即時に確保しながら、内製採用と並走させる」組み合わせが機能しやすい形です。外部活用期間中に提案資料の型化と社内ノウハウの蓄積を進めることで、採用が成功したタイミングでスムーズに引き継げる体制を整えられます。
委託時の3つの注意点:製品知識キャッチアップ・属人化回避・営業連携
プリセールス機能の外部委託では、通常の開発委託と異なる観点が必要です。提案工程は顧客接点を含み、営業プロセスと密接に連動するため、委託先との連携設計に特有のポイントがあります。
注意点1:製品知識のキャッチアップが提案品質を左右する
外部のプリセールス人材がどれほど豊富な経験を持っていても、委託元の製品・サービスへの理解が浅いままでは顧客への訴求が弱くなります。製品のロードマップ・競合との差別化ポイント・過去の失注理由を共有する場を定期的に設けることが大切です。
製品のバージョンアップや新機能リリース時には、外部人材への情報共有を漏れなく行う仕組みが必要です。内部の情報共有フローに外部担当者を含める設計を委託開始時に決めておくと、情報の非対称性によって生じる提案ミスを防げます。
注意点2:提案ノウハウの属人化を避けてドキュメント化する
外部人材が担当した提案の内容・反応・結果が、その担当者の記憶の中だけに残る状態は属人化のリスクを生みます。提案後のブリーフィングを習慣化し、使用した資料・顧客の反応・改善点を標準フォーマットで記録する仕組みを設けることが有効です。
特に担当者が変わりやすいフリーランス活用では、この記録がなければ後任への引き継ぎが困難になります。提案ナレッジの蓄積場所(社内の共有フォルダやドキュメントツール)を決め、外部担当者がアクセス・書き込める環境を整えることが現実的な対策です。
注意点3:営業担当者との連携設計を最初に握る
プリセールスが外部人材の場合、社内の営業担当者との役割分担と連絡ルートが不明確になりやすい点に注意が必要です。「どの段階で外部のプリセールスが入るか」「顧客への連絡窓口は誰か」「営業とのミーティングの頻度はどうするか」を事前に取り決めておくことが欠かせません。
営業担当者が外部人材を「社外の協力者」と認識して情報共有を省略しやすいケースがあります。外部プリセールスを仮想的なチームメンバーとして扱い、案件情報へのアクセスと定例のコミュニケーションを確保することで、連携の摩擦を減らせます。
まとめ:プリセールス不足に対応する3つの判断軸
本稿では、セールスエンジニア・プリセールスの役割と採用難の背景・外部活用の選択肢と進め方・委託時の注意点までを整理しました。要点を3つに集約すると次のとおりです。
第一に、採用が間に合わない期間は外部活用で提案力を維持すること。クラウド化・業務変革投資の拡大でプリセールスの需要は高まる一方、採用競争は激化しています。業務委託・フリーランス・提案支援委託を活用することで、採用リードタイムを理由に提案品質を下げる状況を回避できます。
第二に、外部活用の形態はスピード・知見移転・コストの3軸で選ぶこと。業務委託は即応性が高く柔軟ですが知見移転の設計が必要です。提案支援委託は品質が安定しやすい一方、都度ブリーフィングが発生します。自社の案件頻度・マネジメント余力・内製化の優先度に合わせて選択することが、後の問題を防ぎます。
第三に、委託期間中から提案資料の型化とノウハウ蓄積を並走させること。外部活用を単なる人員補充にとどめず、提案の「型」を社内に残す仕組みを設けることで、将来の内製移管をスムーズにできます。製品知識の共有・属人化回避・営業連携の設計を委託開始時に決めておくことが、外部活用の効果を左右します。
よくある質問
セールスエンジニアとプリセールスは同じ役割ですか?
呼称は異なりますが、実態は同義で使われることが大半です。どちらも営業と連携して顧客の技術的な課題に応え、製品・サービスによる解決策を提案する役割を担います。企業によって「ソリューションコンサルタント」「テクニカルセールス」と呼ぶケースもあります。重要なのは肩書よりも、技術力・提案力・ビジネス視点の3つをバランスよく持つ役割である点です。
プリセールスを外部委託する場合、どこから探せばよいですか?
業務委託・フリーランスの場合は、ITエンジニア専門のフリーランスマッチングプラットフォームや、技術系の人材エージェントが活用できます。SIer・ITパートナーへの提案支援委託は、既存のシステム開発パートナーや技術コンサルティング会社に相談する形が現実的です。いずれの場合も、自社製品領域(SaaS・クラウド・業務システムなど)での提案経験を持つか確認することが、マッチング精度を高めるポイントになります。
プリセールスを内製するとどのくらいの期間・コストがかかりますか?
採用から現場対応が安定するまでの期間は、候補者のバックグラウンドや自社製品の複雑さによって大きく異なります。エンジニア出身者がプリセールスとして独り立ちするには、製品理解・提案スキル習得を含めて半年から1年規模の育成期間を見込むケースがあります。採用費・人件費・育成コストを含めると固定コストとして積み上がるため、案件頻度や中長期の体制計画と照らし合わせて判断することが重要です。
外部のプリセールスが顧客に接触することの懸念はありますか?
守秘義務契約(NDA)の締結と情報管理ルールの整備が前提です。外部人材が顧客情報・案件情報にアクセスする範囲を明確に定め、委託契約書に守秘条項を盛り込むことが基本となります。顧客への紹介方法(パートナーとして紹介するか、自社担当として紹介するか)を事前に営業と合意しておくことも、顧客との関係上のトラブルを防ぐうえで重要です。
プリセールスの外部活用はどのタイミングで内製に切り替えるべきですか?
内製への切り替えのタイミングは、専任担当者の採用が成功したとき・提案資料の型化が一定水準に達したとき・案件頻度が外部コストを上回ると判断されたときが目安になります。切り替えは一度に全工程を引き取るのではなく、外部人材が内製担当者に伴走しながらスコープを段階的に移管する形が、品質の継続性を保ちやすいやり方です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年公表)