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SaaSスプロールの重複契約を棚卸しコスト削減
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- SaaSスプロール(部門ごとの無秩序なSaaS乱立)は、重複契約・利用率ゼロのライセンス・解約漏れという形で見えにくいコストを生みます。
- 対策の起点は「全契約の棚卸しによる可視化」で、そこから機能が重複するツールの統廃合と、新規契約を野放しにしないガバナンスへつなげます。
- 棚卸し・統廃合の作業負荷とSaaS管理基盤(SMP)の運用を外注する場合は、可視化の範囲・統廃合の実行責任・継続運用の体制を契約前に確認することが大切です。
目次
SaaSスプロールとは—部門ごとに乱立したSaaSが生む見えにくいコスト
SaaSスプロール(SaaS Sprawl)とは、各部門・各チームがIT部門の関与なく個別にSaaS(Software as a Service)を契約・導入していった結果、全社で利用するSaaSが無秩序に増え、誰が・何を・いくらで使っているかを把握できなくなる状態を指します。クレジットカード決済やフリーミアム登録で手軽に始められるSaaSの特性が、こうした乱立を後押しします。
本稿は、すでに乱立してしまったSaaSの「重複契約・利用率ゼロのライセンス・解約漏れ」を可視化し、機能が重複するツールを統廃合してコストを抑える取り組みに焦点を当てます。なお、SaaS全般の管理体制やライセンス棚卸しの基本手順・SMPツールの選定そのものは別記事で扱っており、本稿は乱立(スプロール)の解消=重複の発見と統廃合に絞って解説します。SaaS管理体制づくりやライセンス棚卸しの基本手順・SMPツールの選定そのものはSaaS管理・ライセンス棚卸しを外注する手順と費用感で解説しています。
なぜSaaSは部門ごとに乱立するのか
SaaSは、サーバー構築や社内稟議を経なくても、担当者個人がブラウザ上で申し込み、月額課金で即座に使い始められます。この導入の手軽さが、現場の業務効率化に貢献してきた一方で、IT部門を経由しない契約(シャドーIT)を増やす要因にもなっています。
部門ごとに最適なツールを選ぶ動きが積み重なると、全社では同じ用途のツールが複数併存したり、契約情報がIT部門に集約されないまま個別に更新され続けたりします。事業の拡大・組織再編・M&Aなどで管理主体が移り変わると、把握できないSaaSはさらに増えていきます。
スプロールが生む3つの無駄—重複契約・利用率ゼロ・解約漏れ
SaaSスプロールが問題視されるのは、見えにくい形でコストとリスクを積み上げるためです。特に整理したいのが次の3つの無駄です。
無駄1:機能が重複するツールの重複契約
営業部はあるオンラインストレージ、開発部は別のストレージ、管理部はさらに別のファイル共有サービス——というように、同じ用途のツールが部門ごとに別契約で存在するケースです。チャット・タスク管理・Web会議・電子契約など、後発のSaaSが多い領域ほど機能の重なりが起きやすくなります。重複している分は、契約を集約すれば削減の余地があります。
無駄2:利用率ゼロ・低利用のライセンス
導入時にまとめて購入したライセンスのうち、実際にはログインされていない席(シート)が残り続けることがあります。試験導入したまま定着しなかったツールや、特定プロジェクトのために契約して終了後も解約されていないサービスも、利用率ゼロのまま課金が続きます。誰がどのSaaSに何回ログインしているかを把握しないと、こうした無駄は表面化しません。
無駄3:退職者・異動者分の解約漏れ
従業員の退職・異動時に、付与していたSaaSアカウントを停止・解約する運用(オフボーディング)が徹底されていないと、使われないアカウント分の課金が続きます。これは単なるコストの問題にとどまらず、退職者のアカウントが有効なまま残ること自体が情報セキュリティ上のリスクにもなります*1。
これら3つは、いずれも「全社のSaaS契約と利用実態を一覧で把握できていない」ことが共通の根本原因です。したがって対策は、まず棚卸しによる可視化から始まります。
ソフトウェアに限らずハードウェアを含むIT資産全体の棚卸しは、IT資産の棚卸しを外注する進め方もあわせてご覧ください。
棚卸しによる可視化—全契約を洗い出す3つの情報源
統廃合を進める前提として、自社が契約しているSaaSを漏れなく洗い出す必要があります。スプロールの厄介な点は、IT部門が管理する一覧だけでは全体像が見えないことです。次の3つの情報源を突き合わせると、把握できていなかったSaaSが浮かび上がります。
情報源1:経費・請求データ(支出からの逆引き)
経費精算データやクレジットカードの利用明細、請求書を確認すると、IT部門が把握していないSaaSへの支払いが見つかることがあります。月額・年額の定期課金は、支出データから契約の存在を逆引きする有力な手がかりになります。
情報源2:認証ログ・SSO連携(実利用からの把握)
シングルサインオン(SSO)やIDプロバイダーの認証ログを確認すると、従業員が実際にどのSaaSへログインしているかが分かります。支出データに表れないフリーミアム(無料枠)利用のツールも、認証ログからは検出できる場合があります。
情報源3:現場へのヒアリング(運用実態の確認)
データだけでは用途や重要度までは判断できません。各部門の担当者へ「何のために、どの業務で使っているか」をヒアリングし、データで見つけたSaaSの利用実態を補完します。統廃合の判断には、この定性的な情報が欠かせません。
| 情報源 | 分かること | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 経費・請求データ | 課金が発生している契約の存在・金額 | 無料枠で使っているツールは表れない |
| 認証ログ・SSO連携 | 誰が・どのSaaSへ・どの程度ログインしているか | SSOを経由しない直接ログインは捕捉しにくい |
| 現場ヒアリング | 用途・業務上の重要度・代替可否 | 申告漏れや主観が混じる場合がある |
3つの情報源は単独では穴が残るため、突き合わせて補完し合うことが可視化の精度を高めます。
統廃合の進め方—機能が重複するツールを集約する判断軸
可視化できたら、重複・低利用のSaaSをどう整理するかを判断します。やみくもに本数を減らすのではなく、業務影響を見極めながら集約することが大切です。
判断軸1:機能の重複度と代替可能性
同じ用途のSaaSが複数ある場合、機能・連携・操作性を比較し、どれか1つに集約できないかを検討します。すでに全社的に広く使われているツールや、他システムとの連携が確立しているツールを軸にすると、移行の負荷を抑えやすくなります。一方で、特定業務に不可欠な専用機能を持つツールは、無理に集約せず残す判断も必要です。
判断軸2:利用率とライセンス数の適正化
利用率ゼロ・低利用のライセンスは、解約またはプラン・席数のダウングレードを検討します。年間契約で即時解約が難しい場合は、更新タイミングに合わせて見直すスケジュールを立てます。利用実態に合わせて席数を調整するだけでも、支出を抑えられる余地があります。
判断軸3:契約・更新タイミングの管理
SaaSは自動更新の契約が多く、見直しのタイミングを逃すと1年分の支出が固定されます。各契約の更新日・解約予告期限を一覧化し、更新前に「継続・統合・解約」を判断する運用に組み込むことで、惰性での更新を防げます。
統廃合の実行ステップ
④の移行・解約では、集約元のデータを集約先へ移すデータ移行と、解約後のデータ削除・アカウント退会の確認が必要です。解約予告期限を過ぎると次期分が課金される契約もあるため、スケジュール管理が重要になります。
SaaS管理基盤(SMP)とガバナンスで再発を抑える
一度統廃合しても、ガバナンスがないままだと再び乱立します。継続的に抑えるには、可視化を仕組み化するSaaS管理基盤と、新規契約の統制ルールの両輪が求められます。
SaaS管理基盤(SMP)の役割
SaaS管理プラットフォーム(SMP:SaaS Management Platform)は、社内で利用されているSaaSの一覧・ライセンス数・利用状況・コストを継続的に可視化するツールです。SSOやSaaS各社のAPIと連携し、新たに使われ始めたSaaSの検出や、利用率の低いアカウントの抽出を自動化できます。棚卸しを一度きりの作業で終わらせず、継続的なモニタリングへ移行する基盤になります。
SMPの導入・選定の詳細は別記事で扱っているため、本稿では「統廃合後の再発防止に役立つ可視化基盤」という位置づけで触れます(SMP選定の詳細はSaaS管理・ライセンス棚卸しを外注する手順と費用感を参照)。
新規契約のガバナンス(増殖を止めるルール)
スプロールの再発を抑えるには、新規SaaSを契約する際の承認フローを定めることが効果的です。たとえば「一定金額以上のSaaS契約はIT部門・情報システム部門の確認を経る」「同種ツールが既にある場合は既存ツールの利用を優先する」といったルールです。現場の利便性を過度に損なわないバランスを取りながら、無秩序な増殖を抑える統制を設計します。
オフボーディング運用の整備
退職・異動時にSaaSアカウントを漏れなく停止・解約する運用を、人事プロセスと連動させて整備します。SMPやSSOと組み合わせると、対象者のアカウント棚卸しを抜け漏れなく進めやすくなります。これは解約漏れによるコストとセキュリティリスクの両面に効きます。
棚卸し・統廃合を外注する形態と費用に影響する要素
SaaSの棚卸しと統廃合は、可視化・部門調整・データ移行・継続運用と工数の幅が広く、社内リソースだけでは進みにくい場合があります。外注する際の主な形態を整理します。
スポット型:棚卸し・可視化の診断
現状のSaaS契約を洗い出し、重複・低利用・解約漏れを一覧化して削減の優先順位を提示する形態です。まず全体像を把握したい段階に適しています。費用は対象SaaSの本数・組織規模・情報源の整備状況によって異なります(市場参考値。一次資料による裏付けはありません)。
プロジェクト型:統廃合の実行支援
統廃合の対象選定から、移行先への切り替え・データ移行・解約手続きの支援までを伴走する形態です。部門との調整や移行作業の負荷が大きい統廃合では、実行まで含めた支援が選ばれます。費用は統廃合の対象範囲・移行の難易度によって変動します(市場参考値。一次資料なし)。
継続運用型:SMP運用・ガバナンスの委託
SaaS管理基盤(SMP)の運用、定期的な利用状況レビュー、新規契約の統制やオフボーディングの運用までを継続的に委託する形態です。再発防止まで含めて体制を委ねる場合に選択されます。費用は対象範囲・レビュー頻度・運用体制によって異なります(市場参考値。一次資料なし)。
いずれの形態でも、可視化の範囲・統廃合の実行責任・継続運用の体制を契約前に明確化することが、成果につながるうえで大切です。
外注してもコストが下がらない失敗パターンと対策
外注しても支出が下がらないケースには共通のパターンがあります。事前に把握しておくことで回避しやすくなります。
失敗1:可視化レポートだけで統廃合が実行されない
詳細な棚卸しレポートが提出されても、重複ツールの集約や解約という実行アクションが伴わなければ支出は変わりません。契約時に「可視化のみ」か「統廃合の実行支援まで含む」かを定義し、実行まで含む場合は部門調整・データ移行・解約手続きの責任範囲を合意しておく必要があります。
失敗2:現場の反発で統廃合が進まない
使い慣れたツールを取り上げられると感じた現場が反発し、統廃合が頓挫することがあります。コスト削減だけを目的に進めず、業務影響をヒアリングしたうえで集約先を選び、移行支援やサポートを用意することが、定着には欠かせません。経営層を含めた合意形成も有効です。
失敗3:統廃合後にガバナンスがなく再び乱立する
一度整理しても、新規契約の統制やオフボーディング運用がないままだと、時間とともに再びSaaSが乱立します。棚卸し・統廃合を一過性のプロジェクトで終わらせず、SMPによる継続可視化と承認フローを仕組みとして残すことが、抑制を持続させる前提になります。
まとめ—SaaSスプロール解消の3つの判断軸
本稿では、部門ごとに乱立したSaaSが生む重複契約・利用率ゼロ・解約漏れを、棚卸し→統廃合→ガバナンスで抑える取り組みと、その外注について整理しました。要点は次の3つです。
第一に、対策の起点は全契約の棚卸しによる可視化です。経費・請求データ、認証ログ・SSO、現場ヒアリングの3つの情報源を突き合わせることで、把握できていなかったSaaSと無駄が浮かび上がります。
第二に、統廃合は本数削減ではなく業務影響を踏まえた集約です。機能の重複度・利用率・契約更新タイミングを判断軸に、集約先を見極めて移行と解約を進めます。
第三に、再発防止までを含めて設計することです。SaaS管理基盤(SMP)による継続可視化と、新規契約の承認フロー・オフボーディング運用を仕組みとして残すことで、乱立の再発を抑えられます。外注する場合は、可視化の範囲・統廃合の実行責任・継続運用の体制を契約前に確認することが大切です。
よくある質問
SaaSスプロールの解消と、一般的なSaaS管理・ライセンス棚卸しは何が違いますか?
SaaS管理・ライセンス棚卸しは、利用中のSaaSを継続的に管理する取り組み全般を指します。本稿が扱うSaaSスプロールの解消は、そのうち「無秩序に乱立してしまった状態」に着目し、機能が重複するツールの発見と統廃合、利用率ゼロ・解約漏れの整理に焦点を当てたものです。SaaS管理の基本手順やSMPツールの選定そのものは別記事で扱っています。
SaaSスプロールの棚卸しで、どのくらいコストを抑えられますか?
削減の余地は、重複契約の数・利用率ゼロのライセンス量・解約漏れの状況によって大きく異なるため、一律の数値を示すことは難しいです。まずは経費データ・認証ログ・現場ヒアリングを突き合わせて自社の無駄を可視化し、削減の優先順位を把握することが先決です。可視化の結果しだいで、抑えられる幅は変わります。
把握できていないSaaS(シャドーIT)はどうやって見つけますか?
経費精算・クレジットカード明細・請求書などの支出データから契約を逆引きする方法と、シングルサインオン(SSO)や認証ログから実際のログインを把握する方法を組み合わせます。さらにSaaS管理基盤(SMP)を導入すると、新たに使われ始めたSaaSの検出を継続的に行えます。データだけでは用途が分からないため、現場へのヒアリングで補完します。
統廃合で現場の反発を避けるにはどうすればよいですか?
コスト削減だけを理由に一方的にツールを停止すると、業務が滞り反発を招きます。各部門に用途・重要度をヒアリングしたうえで集約先を選び、移行作業の支援や操作サポートを用意することが大切です。あわせて、なぜ統廃合するのかを経営層を含めて共有し、合意形成を図ると進めやすくなります。
一度統廃合すれば、それで終わりですか?
終わりではありません。新規契約の統制ルールやオフボーディング運用がないままだと、時間とともに再びSaaSが乱立します。SaaS管理基盤(SMP)による継続的な可視化と、新規SaaS契約の承認フローを仕組みとして残すことで、再発を抑えやすくなります。棚卸し・統廃合を一過性で終わらせない設計が前提です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
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- *1 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2024」(2026年6月時点)