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2026.10.16 採用支援コラム

ひとり情シスが退職するときの後任の確保と引き継ぎの進め方

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

空いた席の机に、付箋付きの開いたバインダー、閉じたノートPC、LANケーブルが挿さった白いルーター

この記事の結論

  • ひとり情シスの退職では、まず本人が受け持ってきた仕事と管理者のアカウントを書き出し、止まる仕事を見える形にします。
  • 後任は社内の兼務、社員の採用、業務委託の3つの道を並べて比べ、決まるまでの空白は別の道で埋めます。
  • 最終日までに後任の権限を確かめ、本人のアカウントを無効にして、管理者の権限を2人以上に分けます。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

ひとり情シスが辞めると言い出した。社内のパソコンやアカウントを誰が見るのか、見当がつかない——。情報システムの担当者が1人の会社では、こうした困りごとが起こりがちです。ひとり情シスの退職とは、社内のITを1人で受け持ってきた担当者が会社を離れ、その仕事の持ち主がいなくなることを指します。

止まる仕事を洗い出し、後任の道を比べ、最終日までの段取りを組んでおけば、ITが止まる期間を短くしやすくなります。ただし万能ではなく、最終日まで十分な日数が残っているとは限りません。本記事では、経営者や総務・人事の担当者に向けて、退職で止まる仕事、後任を確保する3つの道、最終日までの進め方、つまずきやすい点、外部に頼むときの確認点を整理します。

ひとり情シスの退職で止まる仕事

ひとり情シスの仕事は、目に見える作業だけではありません。IPA(情報処理推進機構)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版の付録5には、規程のサンプル(以下、ひな形)があり、システム管理者の役割を「社内の情報システムに必要な情報セキュリティ対策の検討・導入を行う」こととしています。*1

ひな形でシステム管理者が受け持つ仕事の例(IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版 付録5をもとに作成)
仕事 ひな形の定め
機器の管理 ファイアウォールやルーターの管理画面のパスワードを初期状態のまま使わず、変更する。セキュリティパッチを適用する
ログの確認 パソコンなどの認証ログを月1回以上の頻度で見直す
バックアップ 機器で処理するデータのバックアップを定期的に取る
弱点への対応 脆弱性(ソフトウェアの弱点)への対応状況の一覧を作り、月次で確認する
利用の許可 標準外のソフトウェアや私物の機器を業務で使うときに、システム管理者の許可を求める
連絡の窓口 ウイルス感染の疑いや機器の紛失があったときの緊急連絡先(夜間休日を問わない)が、システム管理者になっている

月1回や月次の作業は、担当者が辞めたあとも毎月やってきます。本人に一覧を書き出してもらい、自社で実際に行っている作業と照らし合わせます。

もう1つは、管理者の権限そのものです。ひな形は、特権アカウント(管理者の権限を持つアカウント)を持つ人を一覧にして正確に把握するとし、管理者が組織を退職した場合などは速やかに削除または無効化するとしています。*1 本人だけが持っていると、最終日に権限を渡す相手がいなくなります。

後任を確保する3つの道

使える日数には限りがあります。民法第627条第1項は、雇用の期間を決めなかったときは、各当事者がいつでも解約の申入れをすることができ、雇用は「解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定めています。*2 考えるべきは、後任が入社するまでの間、ITを誰が受け持つかです。

会議室の木目のテーブルに白い紙の束が3つ並び、奥に書類トレー、手前に白いカップ

人材の確保が簡単でないことは、調査にも表れています。IPAの「DX動向2025」は、DXに取り組む日本企業のうち、DXを推進する人材の量が「やや不足している」「大幅に不足している」と答えた割合を合計85.1%としています。*3 情シス担当者に限った数字ではありませんが、日本は米国・ドイツと比べて「募集しても応募が少ない」が突出しているともされ、募集してもすぐ後任が決まる状況ではなさそうです。

後任を確保する道は、大きく3つです。IPAの「中小企業のためのセキュリティ人材の確保・育成の実践ガイドブック」は、セキュリティ担当者について、社内の人を兼務で任命する場合と、社内の人手や知識が足りないときに外部の専門家を活用する場合を挙げています。*4 対象はセキュリティ担当者ですが、後任にも当てはめられます。次の表は、この2つに社員の採用を加えた比較です。

後任を確保する3つの道の比べ方(IPA「実践ガイドブック」の分け方に社員の採用を加えて作成)
道 向いている場面 先に確かめること
社内の人を兼務で任命する 最終日まで引き継ぐ時間が取れ、パソコンや業務システムに触れた経験のある人がいる 本業と両立できるか。権限を1人に集めず、複数名に分けられるか
社外から社員を採用する 常勤で任せたい仕事が多く、入社まで待てる 入社までの空白を、ほかの道でどう埋めるか
外部の専門人材に業務委託で頼む 後任が決まるまでの空白を埋めたい。社内に詳しい人がいない 任せる作業と期間、権限の範囲、承認する社内の人

3つの道は組み合わせられます。常勤の後任を採用で探しながら、入社までの空白は業務委託の人に必要な日数だけ入ってもらう形もあります。兼務だけで受けるか、外部を組み合わせるかは、最終日までの日数と仕事の量で決まります。

引き継ぎから最終日までの進め方

退職の申出から最終日までは、次の4つの段階に分けると組みやすくなります。

ひとり情シスの退職から最終日までの進め方を、左から右へ4つの箱で示した図。1つ目は仕事と権限の書き出しで、止まる仕事、管理者のアカウント、契約の名義と連絡先を本人に書き出してもらう。2つ目はつなぎの手配で、後任が決まるまでの担当を社内の兼務か業務委託で決める。3つ目は並走して引き継ぐことで、後任やつなぎの人が自分のアカウントで作業し、足りない権限を確かめる。4つ目は最終日の権限の整理で、本人の管理者アカウントを削除か無効にし、管理者の権限を2人以上に分ける。下の帯には、後任やつなぎの人が管理者として入れることを確かめてから、本人のアカウントを無効にすることが書かれている。IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版 付録5をもとに作成。

  • 書き出す:前の節の表をもとに、止まる仕事、管理者のアカウント、契約の名義と連絡先を本人に書き出してもらう
  • つなぎを手配する:後任が入るまでの担当を、社内の兼務か業務委託で決める
  • 並走して引き継ぐ:後任やつなぎの人が自分のアカウントで作業し、足りない権限を本人がいるうちに確かめる
  • 最終日に権限を整理する:本人の管理者アカウントを削除か無効にし、管理者の権限を2人以上に分ける

権限の動かし方には、ひな形に決まりがあります。アカウントは利用者1名につき1つ発行し、他の人との共有を禁止するとしています。*1 本人のアカウントを後任に使わせると、操作した人が分からなくなります。また、特定の情報資産へのアクセス権が同一人物に集中すると不正行為などが起こりうるため、複数名に分散して付与するともしています。*1 管理者の権限を2人以上に分けておくと、次の交代でも止まりにくくなります。

無効にする順番も大切です。後任やつなぎの人が管理画面に入れることを確かめる前に本人の権限を止めると、誰も設定を変えられなくなるおそれがあります。確かめたうえで、速やかに削除または無効にします。

つまずきやすい点

一つめは、後任が決まるまで何もしないことです。期間を決めずに雇われている場合は申入れから2週間で終わることもあり、*2 採用が決まってから引き継ぎを考えると間に合いません。書き出しとつなぎの手配は、後任探しと同時に始めます。

壁際の棚の白いネットワークスイッチに青と白のLANケーブルが挿さり、無地のタグが付いている

  • 本人しか知らない契約を見落とす:ひな形は、クラウドサービスなど社外が提供し自社が使っている情報システムの一覧を、システム管理者が作って管理するとしています。*1 一覧がなければ、本人に契約の名義と連絡先を書き出してもらいます
  • 兼務の担当者に仕事が集まる:ガイドブックは、業務量が増えるのに応じて担当者も増やす必要が出てくるとしています。*4 兼務でも、最初から1人に全部を任せず複数名で分けます
  • 緊急連絡先を書き換え忘れる:ひな形では、感染の疑いや紛失のときの連絡先がシステム管理者です。最終日までに後任へ書き換え、従業員に知らせます

外部に委託するときに確認しておきたい点

後任が決まるまでの空白を外部人材で埋めるときは、頼む前に次の4つを決めておくと、話が早く進みます。

  • 任せる作業と期間:前の表のうち何を任せるかを、「月次のログの確認とバックアップの点検を3か月」のような形で決める
  • 権限の範囲と承認:外部人材のアカウントは1人に1つとし、管理者の権限を渡すかどうかを決める。渡すかどうかの承認は社内の人が行う
  • 書き出した一覧の更新:作業に一覧の更新を含め、次の担当に渡せる状態にしてもらう
  • 契約の形:業務委託か派遣かなどで指示の出し方が変わるため、契約の前に専門家や相手先に確かめる

業務委託で加わる人の受け入れ手続きは業務委託エンジニアの受け入れで決める5つの手続き、元社員を派遣で戻せない1年の決まりは外部人材活用で退職者を後任に戻すときの注意点、退職者から外部人材へのアカウントと資料の渡し方は外部人材活用で進める退職の引き継ぎにまとめました。

情シスの仕事そのものを代行サービスに外注する選択肢は、ひとり情シスの課題を外注(情シス代行)で解決する進め方で整理しています。

まとめ:退職で確かめておきたい3つの点

確かめておきたい点は3つです。第一に、本人が受け持ってきた仕事と管理者のアカウントを書き出すこと。第二に、兼務、採用、業務委託を並べ、後任が入るまでの空白をどの道で埋めるか決めること。第三に、後任の権限を確かめてから本人のアカウントを無効にし、管理者の権限を2人以上に分けることです。人の後任に迷うときは、外部の手を借りる道もあります。

LASSICに相談するメリット

止まる仕事の一覧と、最終日までの日数が見えたら、次は人を探す段階です。常勤の後任は社員の採用で探し、入社までの空白は必要な日数だけ業務委託の人に入ってもらう、というように分けて探すこともできます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

退職の申出から最終日まで、2週間しかないこともありますか

雇用の期間を決めていない場合は、民法第627条第1項により、解約の申入れの日から2週間で雇用が終了します。*2 就業規則との関係は、社会保険労務士などの専門家に確かめてください。

後任は、兼務の社員に任せればよいですか

兼務での任命は、ガイドブックが挙げる道の1つです。関連業務の経験がある人への配置転換や、希望者の社内公募による登用が示されています。*4 業務量が増えれば担当者も増やす必要があるため、1人に集中させず複数名で分けてください。

本人のアカウントは、いつ無効にしますか

後任やつなぎの人が管理者として入れることを確かめたあとの最終日です。ひな形は、管理者が組織を退職した場合などは速やかに削除または無効化するとしています。無効にする前に、後任の権限で設定の画面に入れることを確かめます。

後任が決まるまでの空白は相談

退職の最終日と、本人が受け持ってきた仕事の一覧が分かっていれば、そのままご相談いただけます。後任を社員で探すか、外部の人で埋めるかを決めきれていない段階でも構いません。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版 付録5「情報セキュリティ関連規程(サンプル)」(https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/ug65p90000019cbk-att/sme_guideline_v4.0_app_5.docx)。出典:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版 付録5。役割と責任(システム管理者)、アクセス制御(6.1)、利用者の認証(6.2.1)、特権アカウント(6.7)、IT基盤の運用(3.3)、ログの管理(3.8)、バックアップ(4)、脆弱性管理(6.6)、外部情報システム一覧、緊急連絡先の記載を参照(確認日2026年10月16日)(2026年10月確認)
  2. *2 参考:e-Gov法令検索「民法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)。出典:民法(明治29年法律第89号)第627条第1項(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)を参照。e-Gov法令APIで条文を取得(確認日2026年10月16日)(2026年10月確認)
  3. *3 参考:IPA「DX動向2025」(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2025.html)。出典:IPA「DX動向2025」(2025年7月9日 第2版)。図表3-1(DXを推進する人材の量の確保)と図表3-6(人材の獲得・確保の課題)を参照。調査はDXに取り組んでいる企業が対象で、情報システム担当者に限った数字ではない(確認日2026年10月16日)(2026年10月確認)
  4. *4 参考:IPA「中小企業のためのセキュリティ人材の確保・育成の実践ガイドブック」(第4.0版 付録1)(https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/ug65p90000019cbk-att/sme_guideline_v4.0_app_1.pdf)。出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版 付録1。STEP1の兼務での確保・配置転換・希望者の登用、STEP2の担当者の増員、社内の人手・知識が不足する場合の外部の専門家の活用を参照(確認日2026年10月16日)(2026年10月確認)




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