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ERPNextとは?中小企業向けERPの機能と導入の流れを解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- ERPNextは会計から在庫・製造までを1つで扱えるオープンソースのERPで、全機能を無料で使えます。
- 日本向けの勘定科目のひな形は用意されておらず、科目と消費税の設定は自社の要件に合わせて組む必要があります。
- 導入では、更新とバックアップと作り込みの保守を、自社と委託先のどちらが受け持つかを最初に決めます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
会計ソフトと販売管理と在庫の表がばらばらで、同じ取引を何度も入力している。かといって大手のERPは費用が合わない——。業務ソフトを部門ごとに入れてきた中小企業では、こうした食い違いが起こりがちです。ERPNext(イーアールピーネクスト)は、会計・販売・在庫・製造などの基幹業務を1つにまとめる、無料で使えるオープンソースのERPです。
ソフトの利用料がかからず、自社の業務に合わせて画面や項目を変えられます。ただし万能ではなく、日本の会計や税制に合わせた設定と、入れた後の保守は自分たちで決める必要があります。本記事では、基幹システムの見直しを任された担当者に向けて、ERPNextでできること、日本で使うときの注意点、Odooなどとの違い、導入の流れ、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
ERPNextとは
ERPNextは、Frappe Technologiesが開発しているオープンソースのERPで、GitHubで公開されています。*1 開発元は、請求書の発行、在庫の管理、人の管理といった仕事ごとに別々のソフトを買う代わりに、これらを1つにまとめて無料で使えるようにすることを開発の動機に挙げています。
- ライセンスはGPL-3.0(改変して配るときはソースコードの公開が条件になるライセンス)です*1
- 土台はFrappe Frameworkという、PythonとJavaScriptで書かれたWebアプリの仕組みで、画面はWebブラウザで開きます
- 有料版だけの機能は無いと開発元は説明しており、ソースコードは2009年から公開されています*2
- 自社のサーバーに置けば利用料はかからず、開発元のクラウド(Frappe Cloud)で動かす有料の選択肢もあります
無料で使える一方で、開発元は費用の内訳を「置き場所(ホスティング)」と「導入作業」の2つと説明しています。*2 ソフトの代金がかからない分、サーバーと設定作業、入れた後の保守を誰が受け持つかが判断の中心になります。
主な機能と日本で使うときの注意点
ERPNextは、会計から販売、在庫、製造までを1つの仕組みで扱います。同じ取引を部門ごとに何度も入力している会社ほど、1か所で記録する効果が大きくなります。

| 分野 | 扱える主な業務 |
|---|---|
| 会計 | 総勘定元帳、売掛金と買掛金、財務諸表、固定資産、複数の会社や通貨の管理 |
| 購買・販売 | 発注、見積もり、受注、請求、支払い、承認の流れ |
| 在庫 | 品目の台帳、倉庫ごとの在庫、シリアル番号やロットの追跡 |
| 製造 | 部品表(BOM)、生産計画、作業指示、外注加工 |
| プロジェクト | タスクと作業時間の記録、経費の把握 |
日本で使うときに確かめておきたいのが、会計と税の設定です。公式リポジトリには国ごとの勘定科目のひな形が用意されていて、ドイツ、フランス、インド、シンガポール、台湾などが並びますが、2026年10月時点で日本向けのひな形は含まれていません。*4 その場合は、標準のひな形をもとに自社の科目を作るか、いまの科目表を取り込むことになります。
- 勘定科目:資産・負債・純資産・収益・費用の5つの区分で木の形に組み立てます*3
- 税:税のひな形で税率と、価格が税込みか税抜きかを設定し、見積もりや請求書で使います*3
- 日本の消費税やインボイス制度の要件を設定で満たせるかは、税理士や導入を支援する会社と確かめます
Odooや会計ソフトとの違い
中小企業がERPを検討するとき、候補はERPNextだけではありません。同じオープンソースのOdoo、商用のクラウドERP、会計ソフトとExcelを使い続ける形のどれが合うかは、業務の広さと社内の体制で変わります。
| 選択肢 | ライセンスと費用の考え方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| ERPNext | GPL-3.0で全機能を無料で使える。費用はサーバーと導入作業 | 会計から在庫・製造まで1つにまとめ、自社の業務に合わせて変えたいとき |
| Odoo | 無料のCommunity版(LGPLv3)と、専用ライセンスの有料版がある | 使いたい機能が有料版に含まれるかを比べて選びたいとき |
| 商用のクラウドERP | 利用料を払い、サーバーと更新は提供元が受け持つ | 社内にサーバーを運用する人がいないとき |
| 会計ソフトとExcel | いまの道具をそのまま使う | 取引の量が少なく、部門をまたぐ入力の重複が小さいとき |
OdooのCommunity版はLGPLv3、有料版は専用のライセンスで提供されています。*6 ERPNextは有料版を持たないので、機能で迷うことは少ない一方、社内で動かすなら保守の手間は自社か委託先が持つことになります。既存の基幹システムの置き換えを検討している場合は、Oracle EBS刷新とERP移行の選択肢も参考になります。
導入の流れ
公式ドキュメントは、すべての取引に関わる決めごとから先に設定し、そのあとで各業務の設定に進む順番を勧めています。*3 次の4つのステップで進めると、本番に入ってから科目や通貨を作り直す事態を避けやすくなります。
- ステップ1:会社、国、通貨、会計年度などの土台を決める
- ステップ2:勘定科目、税、銀行口座、倉庫を設定する
- ステップ3:品目・顧客・仕入先の台帳と、利用者ごとの権限を作る
- ステップ4:必要なデータだけを取り込み、販売から会計までを試しに一通り流す
つまずきやすいのはステップ4です。ドキュメントは、過去の取引を何年分も取り込まず、切り替え日から必要なデータだけを移し、昔の記録は旧システムで見られるようにしておくことを勧めています。*3 データの取り込みには、ひな形のExcelやCSVに入力して読み込む機能があり、誤りがあれば行と列の番号つきで警告が出ます。会社の通貨や科目の組み方は、取引が入った後に変えるのが難しいので、試しの取引で財務諸表まで確かめてから本番に入ります。
外部に頼むときに確認しておきたい点
ERPNextの開発元は導入作業を自社では請け負わず、認定パートナーに任せています。*2 自社だけで設定するか、外部に頼むかに関わらず、まず決めておきたいのが導入と保守の分担です。

| 作業 | 自社のサーバー | Frappe Cloud |
|---|---|---|
| 版の更新 | 自社か委託先が手順を決めて行う | 画面から予定を組んで行える |
| バックアップ | 自社か委託先が仕組みを作る | 社外への保管を含めて自動で行われる |
| 不具合の修正 | 自社か委託先が調べて対応する | Product Warrantyで開発元の技術者が対応(業務の使い方の相談は含まない) |
Frappe CloudのProduct Warrantyは製品の不具合を直す支援で、業務の進め方の相談は含まれません。*5 置き場所をどちらにしても、業務に合わせた設定と社内への定着は、自社か委託先の仕事として残ります。外部に頼むときは、次の点を見積もりの前に確かめておきます。
- どこまで頼むか:サーバーの用意、科目と税の設定、台帳の移行、操作の説明のうち、どれを任せるか
- 日本の税制への合わせ方:消費税とインボイス制度の要件を、どの設定でどう満たすかの説明があるか
- 画面や帳票の変更:標準の設定で済ませる範囲と、作り込む範囲を分けているか
- 更新とバックアップ:新しい版への更新を誰がいつ行うか、作り込んだ部分を更新後にどう確かめるか
- 運用後の見直し:月次の締めや棚卸しの結果を見て、設定を直す場を設けるか
標準の外で作り込んだ部分が多いほど、新しい版に上げるときの確認の手間が増えます。ほかのシステムとのつなぎ方は会計システムの連携開発でも扱っています。
まとめ:ERPNextで確かめておきたい3つの点
ERPNextの導入を検討するうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、勘定科目と消費税の設定を、税理士や導入を支援する会社と一緒に自社の要件に合わせて組むこと。第二に、過去の取引をすべて移そうとせず、切り替え日から必要なデータだけを移して、試しの取引で財務諸表まで確かめること。第三に、版の更新・バックアップ・作り込んだ部分の保守を、自社と委託先のどちらが受け持つかを導入の前に決めることです。この3点を踏まえておけば、「無料だから入れてみたが、更新が止まったまま使い続けている」という事態を避けやすくなります。設定や移行の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
ERPNextは本当に無料で使えますか
自社のサーバーに入れて自分たちで動かす場合、開発元に支払う費用はかかりません。ただし、サーバーの費用と、設定・移行・更新にかかる人手は必要です。開発元のクラウドで動かす場合は、利用量に応じた月額の費用がかかります。
ERPNextの導入にはどのくらいの期間がかかりますか
使う業務の数、移すデータの量、作り込みの有無で大きく変わります。公式ドキュメントは、最初に使う業務に絞って設定と試験を済ませ、ほかの業務は段階を分けて加えることを勧めています。*3 まず会計と販売から始めるなど、範囲を絞ると期間の見通しを立てやすくなります。
Frappe Cloudを使えば保守は不要になりますか
版の更新やバックアップ、監視は開発元のクラウドに任せられます。*5 ただし、業務に合わせた設定、利用者の権限の見直し、作り込んだ部分が新しい版で動くかの確認は、引き続き自社か委託先の仕事として残ります。
ERPNextなど基幹システム導入のご相談
ERPNextの設定や台帳の移行から、更新とバックアップの運用まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:frappe/erpnext(GitHub)README・LICENSE(https://github.com/frappe/erpnext)。出典:開発の動機、主な機能、Frappe Framework(PythonとJavaScript)、ライセンス(GPL-3.0)を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:Frappe Technologies「ERPNext Pricing」(https://frappe.io/erpnext/pricing)。出典:費用がホスティングと導入作業の2つからなること、自社サーバーでの利用、有料機能が無いこと、2009年からのソース公開、導入は認定パートナーが担うことを参照(2026年10月確認)
- *3 参考:ERPNext Documentation(Introduction・Setting Up・Chart of Accounts・Sales Taxes and Charges Template・Data Import)(https://docs.frappe.io/erpnext/user/manual/en/introduction)。出典:設定の推奨順序、取り込むデータを絞る考え方、勘定科目の5つの区分、税のひな形、データ取り込みの手順と警告の記述を参照(2026年10月確認)
- *4 参考:frappe/erpnext(GitHub)勘定科目のひな形(chart_of_accounts の verified・unverified)(https://github.com/frappe/erpnext/tree/develop/erpnext/accounts/doctype/account/chart_of_accounts)。出典:国別に用意された勘定科目のひな形の一覧を参照(2026年10月20日確認)(2026年10月確認)
- *5 参考:Frappe Technologies「Frappe Cloud Pricing」(https://frappe.io/cloud/pricing)。出典:更新・バックアップ・監視の自動化、Product Warrantyの範囲(業務の相談は含まない)を参照(2026年10月確認)
- *6 参考:Odoo「Licenses」(Odoo 19.0 documentation)(https://www.odoo.com/documentation/19.0/legal/licenses.html)。出典:Community版がLGPLv3、Enterprise版が独自ライセンスであることを参照(2026年10月確認)