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スタートアップのエンジニア業務委託の選び方|社員との使い分け
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 創業期は形を選ぶ前に、任せたい仕事を書き出して役割ごとに分けます。
- 技術の方針を決めて知識を残す役割は社員、範囲を決めて任せられる開発は業務委託が基本です。
- 副業は相性を確かめたい人や短い時間で足りる仕事に向き、業務をプロジェクトの単位にして頼みます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
会社を立ち上げたばかりで、プロダクトを作るエンジニアがいない。社員を雇うか、業務委託で頼むか、副業で手伝ってもらうか決められない——。創業期のスタートアップでは、こうした迷いが起こりがちです。最初の数人をどの形で迎えるかで、かかる費用の払い方や、会社に残る知識が変わります。
どの形にも向き不向きがあり、1つの形だけで最初の数人をそろえる必要はありません。本記事では、創業期のスタートアップでエンジニアの確保を担う経営者や開発の責任者に向けて、社員・業務委託・副業の違いを比較表で示し、役割ごとの組み合わせ方、会社の段階による違い、外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
創業期のエンジニア確保で迷う理由
創業したばかりの会社は、作りたいプロダクトはあっても、作る人がそろっていないことがほとんどです。経済産業省の予算で行われた調査の報告書(2022年3月)は、シード期(事業を立ち上げる前後の段階)の課題を「人材・スキル不足」と整理しています。*1 一方で、社員を何人も雇う余裕はまだなく、外部の力を借りようにも何を頼めばよいかがはっきりしません。報告書は、同じ時期の会社が抱えやすい問題として次の点を挙げています。*1
- 立ち上げ期は定型の業務がなく、仕事を切り出しにくい
- 副業・兼業・業務委託で、どれくらいの対価を払えばよいかが明確になっていない
- 採用担当がおらず、忙しい経営陣が採用を担うため、選考が長引く
- 社内に詳しい人がいない専門分野では、採用の基準が分からない
つまり創業期の迷いは、「どの形がよいか」より先に、「どの仕事を誰に任せるか」が決まっていないことから生まれます。形を選ぶ前に、任せたい仕事を書き出すところから始めます。
社員・業務委託・副業の違い
最初の数人を迎える形は、主に社員・業務委託・副業の3つです。副業は働き方の呼び名で、契約は雇用の場合も業務委託の場合もあります。まず違いを表で確かめます。

| 見るところ | 社員 | 業務委託 | 副業 |
|---|---|---|---|
| 契約 | 雇用契約 | 業務委託契約 | 雇用契約か業務委託契約のどちらか |
| 費用の払い方 | 毎月の給与に加えて社会保険料の会社負担 | 契約で決めた報酬(月額・成果物ごとなど) | 契約の形に合わせて給与か報酬 |
| 期間 | 期間を定めず長く働いてもらう前提 | 契約ごとに期間と範囲を決める | 本業の空き時間で続けるため使える時間が限られる |
| 仕事の頼み方 | 会社が日々の仕事を指示する | 範囲と成果物を決め、進め方は本人に任せる | 切り出した仕事を期限つきで頼む |
| 向いている場面 | 技術の方針を決め、会社に知識を残す役割 | 範囲を決めて任せられる機能の開発や専門分野 | 相性を確かめたい人や、週に数時間で足りる仕事 |
費用の面では、社員には給与のほかに社会保険料の会社負担がかかります。たとえば厚生年金保険料の率は18.3%で固定されており*4、この保険料は会社と本人が半分ずつ負担します。*5 業務委託では、報酬の額と支払期日を契約で決めて本人に払います。
副業で雇用契約を結ぶ場合は、本業の会社との労働時間の通算(2社の労働時間を合わせて数えること)が必要になります。厚生労働省のガイドラインは、フリーランスや顧問のように労働基準法が適用されない形であれば、その時間は通算されないとしています。*2 どちらの契約で迎えるかは、本人の本業の事情も含めて先に話し合います。
最初の数人の組み合わせ方
組み合わせは、役割ごとに形を選ぶと決めやすくなります。報告書には、形を選ぶ手がかりになる指摘がいくつか載っています。*1
- CXO(技術や事業の責任者)は業務の切り出しが難しく、正社員でないままCXOの役割を果たすのは非現実的とされている
- マーケティングやプログラミングのように切り出しやすい業務は副業・兼業に向き、事業企画は業務内容を定義しづらい
- 社内に詳しい人がいない専門分野は、採用の基準が分からないため、まず副業や業務委託で加わってほしいという声がある
- 副業で頼むときは業務内容が曖昧だと受け入れ側の負担が大きくなるため、業務をプロジェクトの単位にすることが望ましい
これを開発チームに当てはめると、技術の方針を決めて知識を会社に残す役割は社員、機能の開発のように範囲を決めて任せられる仕事は業務委託、相性を確かめたい人や週に数時間で足りる仕事は副業、という組み合わせが基本になります。技術の責任者が決まるまでの間は、創業者が方針を決め、実装を業務委託に任せる形もとれます。
社員として迎える1人目の採用で起きやすい問題は1人目のエンジニア採用で起きる4つの問題で扱っています。
会社の段階で変わる選び方
どの形が合うかは、会社の段階によっても変わります。報告書は、資金調達の段階や会社の規模によって、外部人材の使い方が違うことを示しています。*1

- シード・アーリー期(事業を立ち上げて間もない段階)は、業務の切り出しが難しく、雇用契約のない無償の手伝い(プロボノ)を求める声もある
- 30人前後の規模になると、大型の資金調達やIPO(株式の上場)に向けた課題がはっきりし、どの業務を切り出せばよいかが分かってくる
- 事業の中にベテランにしか分からない領域があれば、必要なときに高いスキルを持つ人を業務委託などで迎える関係が望ましい
報告書は、資金調達の額と採用できる人数の関係までは示していません。調達の前後で形を切り替えるときは、金額ではなく、切り出せる仕事が増えたかどうかを目安にします。
どちらの形がよいかは場面で分かれます。プロダクトの方向がまだ定まらず、作りながら仕様が変わる時期は、方針を決める人を社員として置き、業務委託には範囲を区切った仕事を頼むほうが進めやすくなります。仕様が固まり、作る機能を一覧にできる段階になれば、業務委託や副業に任せられる仕事が増えます。資金調達のあとに増員の順番を決める考え方は資金調達後のエンジニア採用の増員計画にまとめています。
外部に頼むときに確認しておきたい点
業務委託や副業で加わってもらう前に、次の点を書き出しておくと、そのまま相談の準備になります。
- 範囲:作る機能、触ってよいシステム、成果物の形
- 期間:始める月と、いったん区切る月。続けるかを決める時期
- 体制:方針を決める社内の担当者と、質問を受ける窓口
- 費用の決まり方:月額か成果物ごとか、稼働時間の上限をどう決めるか
- 引き継ぎ:設計の記録や手順書を残すこと、終わったときに渡すもの
フリーランス・事業者間取引適正化等法では、個人に業務委託をした場合、直ちに給付の内容、報酬の額、支払期日などを書面かメールなどで明示しなければなりません。*3 従業員を雇っている会社などが頼む場合、報酬の支払期日は成果物を受け取った日などから60日以内で定めます。*3 契約の細かな判断は専門家に確かめます。
報告書は、技術などの機微な情報が正社員以外から漏れることへの懸念も挙げています。*1 見せる資料の範囲と秘密保持の取り決めを、仕事を始める前に契約で決めておきます。副業のエンジニアと確かめる事項は副業エンジニアと契約する前に本人と確かめる5つのことで扱っています。
まとめ:創業期の組み合わせで確かめたい3つの点
創業期のスタートアップがエンジニアを迎える形を決めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、形を選ぶ前に任せたい仕事を書き出し、役割ごとに分けること。第二に、技術の方針を決めて知識を会社に残す役割は社員、範囲を決めて任せられる開発は業務委託、相性を確かめたい人や短い時間で足りる仕事は副業と、役割に合わせて形を組み合わせること。第三に、外部に頼む前に範囲・期間・体制・費用の決まり方・引き継ぎを書き出しておくことです。この3点を踏まえておけば、「業務委託で頼んだのに何を作ってもらうか決まらない」という事態を避けやすくなります。組み合わせに迷うときは、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
創業メンバーのエンジニアを業務委託で迎えてもよいですか
迎えることはできますが、技術の責任者のように会社の方針を決める役割は、業務委託で長く任せるのは難しい面があります。最初は業務委託で加わってもらい、相性を確かめてから社員になってもらう順も考えられます。
業務委託のエンジニアに社内の会議に出てもらってもよいですか
情報を共有するために出てもらうことはできます。ただし、会議で作業の順番や方法を細かく指示する使い方は避け、依頼や変更は契約で決めた窓口と範囲の中で伝えます。
副業のエンジニアに頼むとき最初に決めることは何ですか
頼む仕事の範囲と期限、週に使える時間です。本業の会社の就業規則で副業が制限されていることもあるため、加わってもらえる条件を本人に確かめてから仕事の量を決めます。
創業期のエンジニアの迎え方に迷うとき
任せたい仕事と期間の書き出しからご相談いただけます。社員か業務委託かが決まっていない段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:経済産業省予算事業「スタートアップエコシステムの創出にむけた大企業人材の流動促進に関する調査」(PDF)(https://www.meti.go.jp/policy/tech_promotion/SUHRhokokusho.pdf)。出典:令和4年3月。経済産業省予算により一般社団法人社会実装推進センターが実施。スタートアップ課題から見えた施策の方向性(PDF25〜27ページ)、ビジネスモデル課題から見えた施策の方向性(PDF30ページ)を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000962665.pdf)。令和4年7月8日改定版。労働時間が通算されない場合(PDF9ページ)を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000025)。第3条(給付の内容・報酬の額・支払期日などの明示)、第4条(受領日から60日以内の支払期日)を参照。2026年10月20日に条文を確認(2026年10月確認)
- *4 参考:日本年金機構「厚生年金保険料額表」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/ryogaku/ryogakuhyo/index.html)。厚生年金保険料率が18.3%で固定されていることを参照。2026年10月20日に確認(2026年10月確認)
- *5 参考:厚生年金保険法(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115)。第82条(保険料の負担)を参照。2026年10月20日に条文を確認(2026年10月確認)