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2026.08.24 採用支援コラム

1人目のエンジニア採用で起きる4つの問題




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 規模で詰まる理由が違う:100人以下は「メリットがわからない」54.0%が最多、101〜300人は人材不足が課題の中心です*1。
  • 1人目には固有の条件がある:評価できる人がいない・孤立する・期待が過大になる・辞めるとゼロに戻る、の4つです。
  • 対処は要件と受け入れの側:求める役割を1つに絞り、記録を残すことを成果に含めると4つ目のリスクが下がります。

※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。

情報システム部門を持たない会社が、初めてエンジニアを雇う。あるいは情シスが1人だけの会社が、2人目としてDX側の人を採る。こうした「1人目」の採用には、他の採用にはない条件がつきます。社内に、その人の仕事を評価できる人がいないという条件です。

この状態は珍しくありません。IPAの「DX動向2026」でDXに取組んでいない理由を従業員規模別に見ると、101人以上300人以下の企業では「DXに取組むための知識や情報が不足している」「DXの戦略立案や統括を行う人材が不足している」「DXを現場で推進、実行する人材が不足している」がともに高く、取組む意欲はあるが担える人材がいないという課題が浮かび上がると整理されています*1。

本記事では、この局面で起きる4つの問題と、それぞれを要件と受け入れの設計でどう扱うかを整理します。採用の全体像はDX人材の採用、募集の前に決めておくこと、要件の書き方はエンジニア求人票の書き方と必須14項目で扱っています。

窓際に置かれた1人分のデスクに、デスクトップモニターとノートパソコン、観葉植物が並んでいる様子

規模別に見ると、詰まっている場所が違う

まず自社がどの局面にいるかを確認しましょう。IPAの調査は、DXに取組んでいない理由を従業員規模別に集計しており、規模によって課題の性質が大きく異なることがわかると述べています*1。

DXに取組んでいない理由を従業員規模別に見ると、100人以下の企業では「自社がDXに取組むメリットがわからない」が54.0パーセントで最も高く、101人以上300人以下の企業では「DXに取組むための知識や情報が不足している」「DXの戦略立案や統括を行う人材が不足している」「DXを現場で推進、実行する人材が不足している」がともに高いこと、および1人目のエンジニア採用に固有の4つの問題(評価できる人が社内にいない、孤立する、期待が過大になる、辞めるとゼロに戻る)を整理した図

「100人以下」の企業では「自社がDXに取組むメリットがわからない」が54.0%と最も高く、「101人以上300人以下」との差も大きいとされています*1。この層では、そもそも取り組む意義の合意が先にあります。人を採る前の段階です。

一方「101人以上300人以下」の企業では、前述の3つの人材関連の理由がともに高く、意欲はあるが担える人材がいないという課題が浮かび上がると整理されています*1。「1人目を採る」という問題がもっとも鋭く出るのは、この層だと読めます。なお従業員規模が300人を超える企業はn数が22であったため、この図表からは除外されています*1。

取組んでいる企業側の状況も見ておきましょう。DXを推進する人材の「量」の確保状況を従業員規模別に見ると、「やや不足している」「大幅に不足している」の合計は301人以上の企業で9割を超え、100人以下の企業でも6割を超えています*1。「質」については301人以上で9割超、100人以下でも7割超です*1。

ただし2024年度と比較すると、すべての規模で「大幅に不足している」の回答率が減少し「やや不足している」が増加しており、量・質ともに人材不足は一服感がみられるとされています*1。深刻な不足が緩んできた段階だからこそ、1人目を採る条件を整えておく価値があるとも読めるでしょう。

なお業種別では、「情報通信業」で55.4%が「全社戦略に基づき、全社的にDXに取組んでいる」と回答し、他業種を大きくリードしています*1。1人目を採ろうとしている非IT事業会社は、この層と同じ市場で候補者を探すことになります。

この点は募集条件を考えるときの前提になります。候補者から見れば、全社的にDXへ取組んでいる情報通信業の企業も選択肢に入っています。1人目を採る会社は、体制が整った組織と同じ土俵で比較されるということです。だからこそ、次節以降で扱う「1人目に固有の条件」を先に手当てしておくかどうかが、そのまま条件面の差になります。

1人目に固有の4つの問題

2人目以降の採用と何が違うのかを整理します。ここを言葉にしておくと、要件の設計で先に手を打てます。

表1:1人目のエンジニア採用に固有の問題と、現れ方
問題 現れ方 放置した場合
① 評価できる人が社内にいない 選考で技術の判断ができない。入社後も成果の妥当性を測れない 人柄と印象で採用し、実務との距離が入社後に判明する
② 孤立する 相談相手もレビューを頼む相手も社内にいない 判断を1人で抱え、品質のばらつきと本人の負担が増える
③ 期待が過大になる 戦略立案から実装・運用まで1人に載せる要件になりやすい 候補者から見て像が結ばず応募が来ない。採れても消耗する
④ 辞めるとゼロに戻る 判断の理由や運用の手順が本人の中にしか残らない 退職と同時に振り出しに戻り、次の採用も同じ条件から始まる

4つのうち、①と③は要件の設計で、②と④は受け入れの設計で扱います。順に見ていきましょう。

先に共通の原則を1つ置きます。1人目の採用では、「できる人を採ってから何をするか決める」という順序が特に危険です。評価できる人がいない状態で人を採り、その人に何をするかも決めさせると、成果の判定基準が本人の申告しかなくなります。順序としては、やることを1つ決めてから人を探すほうが安全側です。

2人目以降との違いも押さえておきましょう。2人目を採るときには、比較の対象と教える相手が社内にいます。選考でも「今いる人と比べてどうか」という判断ができ、入社後もレビューを頼めます。1人目にはこの土台がありません。つまり1人目の採用は、採用の難易度が高いというより、判断の材料が社内にない状態で進める採用だと捉えたほうが対策が具体化します。材料をどこから調達するかが論点になるためです。

①③への対処——「作る人」より「決められる人」から

期待が過大になる問題(③)は、要件を1つに絞ることで解けます。ここで多くの会社が迷うのが、実装ができる人を採るのか、決められる人を採るのかという選択です。

1人目については、決められる人を先に置くほうが機能しやすいでしょう。理由は単純で、実装だけを任せると「何を作るか」の判断が空いたままになるからです。要件を決める人が社内にいないなら、実装が速く進んでも方向が定まりません。

逆に、決められる人を1人目に置くと、実装は外部に出す選択が取れます。設計と判断が社内にあれば、外に出した成果物の妥当性を確認できます。この順序なら、社内に判断の軸が残ります。

どの役割を求めるかを言葉にするときは、デジタルスキル標準の類型が共通言語として使えます。詳しくはDX人材の採用、募集の前に決めておくことで扱いましたが、1人目に限って言えば、目的と業務プロセスを設計する役割から入る形が多くの非IT事業会社に合います。

①の評価できない問題については、3つの補い方があります。

  • 外部の物差しを1つ持つ。情報処理技術者試験の区分は知識・技能の水準で階層化されているため、社内で水準を語る共通語として使えます。ただし資格の有無は実務経験の代わりにはなりません。
  • 説明の構造で見る。技術の正解を判定せず、答え方から確認できることがあります。質問の型は技術面接で人事が見極める5つの質問で整理しました。
  • 技術判断の相談相手を一時的に確保する。選考の最終段階だけ、外部の技術者に同席してもらう形もあります。

3つ目については、業務委託で技術者に入ってもらい、その人と一緒に要件を固めてから採用に進む順序も現実的です。ただし委託先に採用要件そのものを丸投げすると、社内に判断の軸が残りません。決めるのは自社、材料をそろえるのを手伝ってもらうという切り分けが要ります。

②への対処——孤立させない体制を先に作る

入社した1人目が孤立する問題は、受け入れ側の準備で大きく変わります。技術的な相談相手が社内にいないこと自体は変えられませんが、代わりを置くことはできます。

表2:孤立を防ぐために先に決めておくこと
決めること 中身
業務側の相手 技術ではなく業務の質問に答える人を1人決める。「誰に聞けばよいか」を探す時間をなくす
技術的な相談先 社外の技術者や委託先を、月に数回でも相談できる形で確保しておく
判断の権限範囲 どこまでを本人が決めてよいか、どこから相談が必要かを明文化する
相談の宛先を複数にする 上司だけに集中させない。3か月経っても上司1人にしか相談していない状態はサイン

3行目の権限範囲は特に重要です。1人目は、技術的な判断を止められる人が社内にいないという点で、権限が曖昧になりやすい立場にあります。何でも決めてよいのか、逐一報告が必要なのか。ここが不明確だと、本人は安全側に寄って動かなくなるか、逆に想定外の範囲まで決めてしまいます。

2行目の社外の相談先について、実務的な形を挙げておきます。月1回・1時間程度で設計方針を相談できる技術者を確保しておく、という程度でも機能します。常時の支援を契約する必要はありません。重要なのは、本人が「これは相談したほうがよい」と感じたときに宛先があることです。宛先がない状態では、判断を先延ばしにするか、1人で決めて後から問題になるかのどちらかに寄ります。入社前にこの枠を用意しておくと、選考の場でも体制として説明できます。

立ち上がりの観測点や最初の3か月の設計についてはなぜ中途エンジニアは早期に離職するのかで扱いました。1人目の場合、そこで挙げた「質問の量」「レビュー依頼の頻度」といった観測がさらに効きます。レビューを頼む相手が社内にいないため、依頼が途切れているかどうかが見えにくいからです。

④への対処——「記録を残すこと」を成果に含める

最後が、辞めたときにゼロに戻る問題です。ここは成果の定義に組み込むことで扱えます。

求人票に書く成果と、入社後の3か月の水準に、次の項目を明示的に入れておきます。

  • 設計判断の理由を残す。何を選び、何を選ばなかったか。制約は何だったか。この記録があれば、次の担当者が同じ検討を繰り返しません。
  • 運用手順を残す。障害時の対応、定期作業、外部サービスの管理情報の所在。属人化しやすい部分です。
  • 外部ベンダーとの経緯を残す。誰と何を合意したのか。1人目が窓口を1人で担っている場合、ここが完全に本人の中にしかない状態になりがちです。

この3つを「余裕があればやること」に置くと、まず残りません。評価される成果として明示するのが実務的な解決です。求人票の段階で書いておけば、候補者側も記録を残す仕事が含まれると理解して入社します。

もう1点、記録の相手を決めておくと定着します。書いたものを誰が読むのか。読み手がいない記録は続きません。業務側の担当者に月1回説明する場を置くだけでも、記録の質と継続性が変わります。

形式は軽いほうが続きます。整った設計書を求めると作業が重くなり、結局あとから書く仕事になります。判断のたびに数行を追記する形——日付、決めたこと、選ばなかった案、理由——であれば、業務の流れの中で残せます。ツールも社内で既に使っているもので構いません。大事なのは体裁ではなく、次の人が同じ検討を繰り返さずに済むかどうかです。

この設計は、社内に技能を残すという観点でも意味があります。1人目が去ったあとに何も残らない状態を避けることは、次の採用の条件を良くする作業でもあります。逆に記録が積み上がっていれば、2人目の立ち上がりは大きく速くなるでしょう。

条件面の現実と、「1人目」を伝える言葉

最後に募集条件です。1人目を採る会社は、規模の面で条件的に不利になりがちです。

賃金構造基本統計調査では、企業規模別の所定内給与額は大企業364.5千円、中企業323.1千円、小企業299.3千円で、この調査での小企業は常用労働者10〜99人と区分されています*2。規模で参照される水準が違うため、大企業と同じ額での勝負にはなりません。水準の考え方はエンジニアの年収レンジと公的統計の使い方で整理しました。

額で並べないなら、動かせるものを探します。1人目の採用では、実は伝えやすい材料が2つあります。

  • 裁量の範囲。技術選定から設計まで任される仕事は、大きな組織では簡単に得られません。ただし実際に任せられる範囲を超えて書くと、入社後に齟齬が出ます。
  • 勤務地・勤務形態の条件。技術要件を緩めずに母集団を広げられる打ち手です。ただし運用が決まっていないリモート可は条件として読まれません。決めておく項目はエンジニア採用の母集団形成、先に決める9つのことで整理しています。

そして避けたい書き方があります。「裁量が大きい」「何でもやれる」だけを訴求すると、③の期待過大と同じ問題が候補者側にも見えてしまいます。経験のある人であれば、「1人しかいない」ことのリスクを先に読みます。孤立させない体制(相談先の確保、権限範囲の明文化)を先に決めておき、それを募集で説明できる状態にしておくほうが、条件として強く働くでしょう。

採用までの期間に手が足りない場合は、業務委託を並走させる選択もあります。1人目の局面では、要件を固める段階で技術者の力を借りる使い方が特に有効です。ただし決めるのは自社であるという切り分けは崩さないでください。判断の軸が社内に残らなければ、1人目を採る目的そのものが失われます。

まとめ:1人目の採用で押さえる3つの視点

第一に、自社がどの局面にいるかを確認するという点です。IPAの「DX動向2026」でDXに取組んでいない理由を従業員規模別に見ると、100人以下の企業では「自社がDXに取組むメリットがわからない」が54.0%で最も高く、101人以上300人以下の企業では「DXに取組むための知識や情報が不足している」「DXの戦略立案や統括を行う人材が不足している」「DXを現場で推進、実行する人材が不足している」がともに高く、意欲はあるが担える人材がいないという課題が浮かび上がると整理されています。1人目を採る問題がもっとも鋭いのは後者の層です。第二に、1人目には固有の4つの問題があるという点です。社内に評価できる人がいない、孤立する、期待が過大になる、辞めるとゼロに戻る。このうち評価と期待の問題は要件の設計で、孤立と知見の消失は受け入れの設計で扱います。1人目については実装ができる人より決められる人を先に置くほうが機能しやすく、実装は外に出す選択が取れます。第三に、「記録を残すこと」を成果に含めるという点です。設計判断の理由、運用手順、外部ベンダーとの経緯の3つを評価される成果として明示しておくと、退職時にゼロへ戻るリスクが下がり、2人目の立ち上がりも速くなります。条件面では規模による水準の差があるため、裁量の範囲と勤務形態が動かせる材料になりますが、「何でもやれる」だけの訴求は経験者にはリスクとして読まれます。孤立させない体制を先に決め、それを説明できる状態にしておいてください。

LASSICに相談するメリット

株式会社LASSICは、リモートワークを前提としたITプロ人材のサービスを運営しています。「この領域に詳しい人がほしい」という課題の状態からご相談いただくことが多く、担当が対話を重ねて必要な人材像を一緒に言語化するところから始められます。社内に技術を判断できる人がいない局面では、要件を固める段階から実務者の視点を入れる形も取れます。勤務地の条件に縛られず全国の実務経験者にあたれる体制も、規模の制約があるなかで候補を探したい場面でお役に立てるはずです。

よくある質問

1人目のエンジニアには、どんな人を採るべきですか。

実装ができる人より、決められる人を先に置くほうが機能しやすいでしょう。実装だけを任せると「何を作るか」の判断が空いたままになり、方向が定まりません。決められる人が社内にいれば、実装は外部に出す選択が取れ、成果物の妥当性も確認できます。非IT事業会社の場合、目的と業務プロセスを設計する役割から入る形が多くの状況に合います。

社内に技術を評価できる人がいない場合、どう選考すればよいですか。

3つの補い方があります。1つは外部の物差しを持つこと。情報処理技術者試験の区分は知識・技能の水準で階層化されているため、社内で水準を語る共通語として使えます。ただし資格の有無は実務経験の代わりにはなりません。2つ目は説明の構造で見ること。技術の正解を判定せず、答え方から確認できることがあります。3つ目は選考の最終段階だけ外部の技術者に同席してもらう形です。

1人目が孤立しないためには何を決めておけばよいですか。

業務の質問に答える相手を1人決めること、社外の技術者や委託先を月に数回でも相談できる形で確保すること、どこまでを本人が決めてよいかの権限範囲を明文化すること、相談の宛先を上司だけに集中させないことの4つです。特に権限範囲は重要で、ここが不明確だと本人は安全側に寄って動かなくなるか、逆に想定外の範囲まで決めてしまいます。

1人目が辞めたときに振り出しに戻らない方法はありますか。

「記録を残すこと」を評価される成果として明示しておくのが実務的な解決です。設計判断の理由(何を選び何を選ばなかったか、制約は何だったか)、運用手順(障害時の対応、定期作業、外部サービスの管理情報の所在)、外部ベンダーとの経緯(誰と何を合意したのか)の3つを、求人票の成果と入社後3か月の水準に入れておきます。余裕があればやることに置くと、まず残りません。

大企業と同じ年収は出せません。何を訴求できますか。

裁量の範囲と、勤務地・勤務形態の条件が動かせる材料です。技術選定から設計まで任される仕事は大きな組織では簡単に得られないため、経験者に響きます。ただし実際に任せられる範囲を超えて書くと入社後に齟齬が出ます。また「何でもやれる」だけの訴求は、経験のある人には「1人しかいない」リスクとして読まれます。孤立させない体制を先に決め、それを説明できる状態にしておくほうが条件として強く働きます。

1人目の体制づくりからご相談ください

どの役割を先に置くか、判断の相手をどう確保するか。決まりきっていない段階から、担当が一緒に整理します。

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出典

  1. *1 参考:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026」(2025年度調査。調査期間 2026年4月中旬〜6月中旬)(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/rcu1hd0000017uk8-att/dx-trend-2026.pdf)。DXに取組んでいない理由の従業員規模別の集計、DXを推進する人材の量・質の確保状況(従業員規模別)、業種別のDXへの取組状況の一次情報として(2026年8月確認)
  2. *2 参考:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概要 企業規模別にみた賃金」および「同 概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/dl/04.pdf)。大企業・中企業・小企業別の所定内給与額および企業規模の区分の定義の確認として(2026年8月確認)




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