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海外在住エンジニアとの業務委託契約|発注側のよくある質問10選
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 海外在住のエンジニアへの報酬は、国内で行った作業や国内業務に係る著作権の対価など、国内源泉所得に当たる部分が源泉徴収の対象です。
- 国外で行われた開発の役務は消費税の不課税で、租税条約の軽減を受けるには最初の支払日の前日までに届出書が要ります。
- 準拠法の選択、個人データを海外で扱わせる根拠、送金の報告の要否を、業務委託契約を結ぶ前に決めておきます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
海外に住んでいるエンジニアに、日本の会社から業務委託で開発に加わってもらう。リモートでの開発が広がり、こうした形を考える企業も増えています。ところが、いざ海外在住の人と業務委託契約を結ぼうとすると、報酬から源泉徴収をするのか、消費税はかかるのか、どこの国の法律で契約するのかと、国内の契約では考えなかった問いが次々に出てきます。
本記事では、発注する企業の担当者が迷いやすい10の問いを、国税庁と個人情報保護委員会の資料、法令をもとにQ&Aの形で整理します。各問いには、答えの要点と判断の根拠にした一次情報を添えています。
目次
海外在住者との業務委託契約で迷う点
海外在住のエンジニアとの業務委託契約は、国内の外注と同じ感覚で進めると、支払いの段階になって手続きの漏れに気づくことがあります。相手が日本に住んでいないだけで、税金の扱いも、契約の読み方も、データの渡し方も変わるからです。
迷う点は大きく、税金(源泉徴収と消費税)、契約の決め方、個人データの扱い、送金の4つに分かれます。まずは次の表で、自社の疑問がどの問いに当たるかを確かめてから、該当するQ&Aを読んでください。
| 問いの種類 | 主な疑問 | 答えの決め手 | Q&A |
|---|---|---|---|
| 居住者の区分 | 相手は日本の税法でいう非居住者か | 国内の住所と、1年以上の居所の有無 | Q1 |
| 源泉徴収 | 報酬から所得税を差し引くか | 作業した場所と、作業の対価か権利の対価か | Q2〜Q4 |
| 租税条約と支払い | 税率の軽減と、外貨で払うときの計算 | 届出書を出す時期と、円への換算 | Q5・Q6 |
| 消費税 | 報酬に日本の消費税がかかるか | 役務の提供が行われた場所 | Q7 |
| 契約 | どこの国の法律で契約を読むか | 準拠法を選んだかどうか | Q8 |
| 個人データ | 顧客のデータを海外で扱わせてよいか | 本人の同意か、相手の体制の整備か | Q9 |
| 送金 | 海外へ送金するときに国への報告が要るか | 1回の支払いの金額 | Q10 |
国内に住むエンジニアへの報酬の経理処理(外注費と給与の分け方、国内での源泉徴収、インボイス)は外部人材活用の経理処理で扱っています。本記事は、相手が海外に住んでいる場合に変わる点だけを取り上げます。答えは国の資料と法令で言える原則までにとどめているため、個別の契約の判断は税理士・弁護士に確かめてください。
居住者の区分と源泉徴収のQ&A
最初に確かめるのは、相手が日本の税法でいう非居住者かどうかです。非居住者への支払いは、日本国内で稼いだ「国内源泉所得」に当たる部分だけが課税の対象になります。*2 源泉徴収が要るかどうかも、この国内源泉所得に当たるかどうかで決まります。

Q1. 海外に住む日本人も非居住者になりますか
- 答えの要点:なります。所得税法では、国内に住所があるか、現在まで引き続き1年以上の居所がある人が居住者で、それ以外の人が非居住者です。住所は生活の本拠を指し、客観的な事実で判定します。
- 判断の根拠:国税庁 タックスアンサー No.2875「居住者と非居住者の区分」*1
Q2. 海外で作業した分の報酬から源泉徴収は要りますか
- 答えの要点:報酬のうち国内源泉所得に当たるのは、国内において行う人的役務の提供(人が手を動かして行う仕事)に基づくものです。作業がすべて国外で行われ、払うのが作業の対価だけなら、この区分には当たりません。
- 判断の根拠:国税庁 タックスアンサー No.2878「国内源泉所得の範囲」の(10)*2
Q3. 日本に一時帰国して作業した分はどうなりますか
- 答えの要点:国内で行った人的役務の提供に対する報酬は、源泉徴収の対象です。税率は所得税と復興特別所得税を合わせて20.42%で、租税条約によって軽減・免除されることがあります。作業した場所と日数が分かる記録を残してもらいます。
- 判断の根拠:国税庁 タックスアンサー No.2884「非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率」の(9)*3
Q4. プログラムの著作権を譲り受ける対価は対象ですか
- 答えの要点:国内で業務を行う者が払う著作権の使用料や譲渡の対価のうち、国内業務に係るものは国内源泉所得に当たり、源泉徴収の対象です(税率20.42%)。作業の対価と権利の対価を、契約と請求書でどう分けているかを確かめます。
- 判断の根拠:国税庁 タックスアンサー No.2878 の(9)と No.2884 の(8)*3
1つの契約の中に、国外での作業、一時帰国中の作業、権利の対価が混ざることもあります。払う報酬を中身で分けると、源泉徴収の要否は次の図のように整理できます。
租税条約と支払い・消費税のQ&A
源泉徴収が要る支払いでも、相手の住む国と日本の間に租税条約があれば、税率が軽減または免除されることがあります。ただし、そのための書類は支払いの前に出す決まりです。一方、消費税は所得税とは別の物差しで、取引が国内で行われたかどうかで判定します。
Q5. 租税条約の届出書はいつ誰が出しますか
- 答えの要点:届出書を作るのは支払いを受ける非居住者です。支払者ごとに作り、最初に支払いを受ける日の前日までに、支払者を経由して支払者の納税地の税務署長に出します。間に合わなければ国内法の税率で源泉徴収し、後から還付を請求する流れになります。
- 判断の根拠:国税庁 タックスアンサー No.2888「租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)」*4
Q6. 外貨で報酬を払うときの源泉徴収はどう計算しますか
- 答えの要点:外貨で払う場合は、円に換算してから源泉徴収します。換算は支払期日の電信買相場が原則で、支払いが著しく遅れていなければ、実際に払った日の電信買相場でも差し支えありません。
- 判断の根拠:国税庁 タックスアンサー No.2884 の「源泉徴収税額」*3
Q7. 報酬に日本の消費税はかかりますか
- 答えの要点:役務の提供は、原則としてその提供が行われた場所で国内取引かどうかを判定し、国外取引には消費税がかかりません(不課税)。成果物の受け取りや制作の指示をインターネットで行うソフトウェアの制作も、電気通信利用役務の提供には当たらないとされています。
- 判断の根拠:国税庁 タックスアンサー No.6210「国外取引」*5、国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A」問2-1*6
国内と国外の両方で作業する契約では、国内分と国外分の対価が契約で合理的に分けられていれば、その区分に従って判定されます。一時帰国して作業する予定があるなら、契約の段階で対価の分け方を決めておくと、源泉徴収と消費税の両方で迷わずに済みます。
契約と個人データ・送金のQ&A
税金のほかに迷いやすいのが、契約をどこの国の法律で読むか、顧客の個人データを海外で扱わせてよいか、送金に手続きがあるかの3つです。いずれも、業務委託契約を結ぶ前に決めておくと、後から慌てずに済みます。

Q8. 契約の準拠法はどこの国の法律になりますか
- 答えの要点:契約の成立と効力は、当事者が契約の当時に選んだ地の法によります。選んでいなければ、その契約に最も密接な関係がある地の法になり、特徴的な給付を一方だけが行う契約では、その当事者の常居所地法が最も密接な関係がある地の法と推定されます。
- 判断の根拠:法の適用に関する通則法 第7条・第8条*7
準拠法を選ばないままにすると、どの国の法になるかが条文の推定に委ねられます。準拠法の条項は、契約書をどの言語で作り、どの言語の版を正とするかと合わせて決めておくと、読み違いを防げます。
Q9. 顧客の個人データを海外在住の人に扱わせてよいですか
- 答えの要点:外国にある第三者に個人データを提供するときは、原則として、あらかじめ本人の同意が要ります。相手が規則で定める基準に適合する体制を整えている場合(委託なら契約・確認書・覚書などで措置を確保する方法)や、相手がEU・英国にいる場合は、この同意は要りません。
- 判断の根拠:個人情報保護法 第28条*8、個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編)」*9
- 体制の整備を根拠に提供したときは、相手がその措置を続けているかを確かめる措置をとり、本人に求められたらその内容を伝えます。
Q10. 海外への送金で国への報告は要りますか
- 答えの要点:日本から外国へ向けた支払いをしたときは、外為法(外国為替及び外国貿易法)の支払等の報告が求められますが、3,000万円に相当する額以下の支払いは報告が要りません。銀行を通じた送金なら、報告はその銀行を経由して出します。
- 判断の根拠:外国為替及び外国貿易法 第55条*10、外国為替の取引等の報告に関する省令 第1条*11
外部人材に頼むときに確認しておきたい点
海外在住のエンジニアと直接、業務委託契約を結ぶ場合は、ここまでの問いの多くを自社で判断し、契約書と支払いの手順に落とし込む必要があります。相談の前に、次の点を書き出しておくと話が早く進みます。
- 範囲:頼む開発の中身と、成果物の権利を譲り受けるか、使う許諾にとどめるか
- 期間と場所:契約の期間と、作業をする国。日本に一時帰国して作業する予定があるか
- 体制:社内で指示と受け入れを受け持つ人、連絡に使う言語と時間帯
- 費用の決まり方:報酬の通貨と支払いの時期、届出書や源泉徴収の手続きを社内の誰が受け持つか
- 引き継ぎ:個人データを渡すか、渡すならどの範囲か、契約の終わりにどう消してもらうか
個人データを渡す前の確認は業務委託エンジニアの情報セキュリティでも整理しています。海外在住の人と直接契約を結ぶか、国内に住む人材も含めて候補を比べるかは、頼みたい開発の範囲と期間を書き出してから決めても遅くありません。
まとめ:海外在住者との業務委託契約で確かめる点
海外在住のエンジニアと業務委託契約を結ぶときに確かめたい点は3つです。第一に、相手が非居住者かを住所と居所で確かめ、払う報酬のうち国内で行った作業や国内業務に係る著作権の対価など、国内源泉所得に当たる部分を見分けること。第二に、源泉徴収が要る支払いでは租税条約の届出書を最初の支払日の前日までにそろえ、外貨払いの換算と消費税の扱いを決めておくこと。第三に、準拠法と契約書の言語、個人データを海外で扱わせる根拠、送金の報告の要否を、契約を結ぶ前に決めておくことです。
よくある質問
海外在住の外国人エンジニアでも同じ扱いですか
所得税法の居住者と非居住者の区分は、国内の住所と1年以上の居所で決まり、この定義に国籍は入っていません。外国籍の人でも、海外に住んで国外で作業するなら、本記事のQ&Aと同じ順番で確かめます。
個人ではなく海外の会社と契約するときはどうなりますか
相手が外国法人でも、国内源泉所得に当たる支払いを源泉徴収の対象とする考え方は同じです。法人が外国法人かどうかは、本店または主たる事務所の所在地で判定します。
契約の途中で相手が日本に戻って住むことになったらどうなりますか
国内に住所を持てば居住者になり、非居住者としての扱いから国内に住む人と同じ扱いに変わります。住所は生活の本拠で判定するため、帰国の予定は早めに知らせてもらい、切り替わる時期の報酬の扱いを確かめます。
海外在住の人材も含めて開発に加わる専門人材を探す
頼みたい開発の範囲と期間が決まっていれば、そのままご相談いただけます。海外在住の人に頼むか、国内の人材も含めて比べるかを決めきれていない段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:国税庁 タックスアンサー No.2875「居住者と非居住者の区分」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2875.htm)。出典:国内法による取扱い(居住者・非居住者の定義、住所・居所の考え方、法人の本店所在地主義)を参照(確認日2026年10月24日)(2026年10月確認)
- *2 参考:国税庁 タックスアンサー No.2878「国内源泉所得の範囲」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2878.htm)。出典:概要と国内源泉所得の範囲の(9)(10)を参照(確認日2026年10月24日)(2026年10月確認)
- *3 参考:国税庁 タックスアンサー No.2884「非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2884.htm)。出典:源泉徴収税額(外貨払いの円換算)、源泉徴収の対象となる国内源泉所得とその税率の(8)(9)、租税条約の規定による税率の軽減または免除を参照(確認日2026年10月24日)(2026年10月確認)
- *4 参考:国税庁 タックスアンサー No.2888「租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2888.htm)。出典:共通事項(届出書の作成と提出の時期・経路、未提出の場合の源泉徴収と還付請求)を参照(確認日2026年10月24日)(2026年10月確認)
- *5 参考:国税庁 タックスアンサー No.6210「国外取引」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6210.htm)。出典:国外取引(不課税)、役務の提供の内外判定、国内および国外にわたって行われる役務の提供を参照(確認日2026年10月24日)(2026年10月確認)
- *6 参考:国税庁消費税室「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A」(平成27年5月・令和8年6月改訂・PDF)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/cross-QA.pdf)。出典:問2-1「電気通信利用役務の提供」の範囲(ソフトウエアの制作等は該当しない)を参照(確認日2026年10月24日)(2026年10月確認)
- *7 参考:e-Gov法令検索「法の適用に関する通則法」(平成18年法律第78号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000078)。出典:第7条(当事者による準拠法の選択)、第8条(当事者による準拠法の選択がない場合)を参照(確認日2026年10月24日)(2026年10月確認)
- *8 参考:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057)。出典:第28条(外国にある第三者への提供の制限)を参照(確認日2026年10月24日)(2026年10月確認)
- *9 参考:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編)」(https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_offshore/)。出典:2(外国にある第三者への提供の制限の原則)、3(EU及び英国)、4-1(適切かつ合理的な方法)、6(相当措置の継続的な実施を確保するために必要な措置)を参照(確認日2026年10月24日)(2026年10月確認)
- *10 参考:e-Gov法令検索「外国為替及び外国貿易法」(昭和24年法律第228号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000228)。出典:第55条(支払等の報告)を参照(確認日2026年10月24日)(2026年10月確認)
- *11 参考:e-Gov法令検索「外国為替の取引等の報告に関する省令」(平成10年大蔵省令第29号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/410M50000040029)。出典:第1条(報告を要しない支払等の範囲)を参照(確認日2026年10月24日)(2026年10月確認)