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AI外観検査(画像認識)システムの開発を外注
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- AI外観検査(画像認識)は、カメラで撮影した画像をAIが解析し、傷や汚れ、欠品、寸法異常などの欠陥を検出する検査方式です。
- 検出方式には、良品・不良品の両方を学習する教師あり分類と、良品画像を中心に学習する異常検知があり、工程に応じて選び分けます。
- クラウド各社の検査専用サービスは提供終了や仕様変更が起こりやすいため、開発を外注する際は長期運用を見据えた選定が欠かせません。
目次
AI外観検査(画像認識)とは、カメラ画像をAIが欠陥を判定する検査方式
AI外観検査(画像認識)とは、生産ラインで撮影した製品画像をAIモデルで解析し、傷や汚れ、欠品、寸法異常などの欠陥を自動で判定する検査方式を指します。Microsoftは、生産ラインから出てくる全数を人手でレビューできない場合に、画像認識モデルで検査範囲を広げる用途を挙げています*4。
撮像から判定までは、画像取得・AI判定・良否判定・ライン連携という4段階に分けて設計します。カメラが撮影した画像をAIモデルに入力し、欠陥の有無を数値のスコアとして出力する仕組みです。
判定結果は合格・要確認などに振り分けられ、生産設備側へ送信されます。次章では、検出できる欠陥の種類と、教師あり分類・異常検知という2つの代表的な検出方式の違いを整理します。
傷・汚れ・欠品・寸法——AI外観検査が検出する欠陥と2つの検出方式
AI外観検査で検出する欠陥は製品によって異なりますが、代表的なものは傷・汚れ・欠品・寸法異常の4つです。傷は表面のキズや割れ、汚れは付着物や色ムラ、欠品は部品の未装着、寸法異常は加工後のばらつきを指します。
検出方式は大きく2つに分かれます。1つは教師あり画像分類で、良品・不良品の両方にラベルを付けた画像でモデルを学習させる方式です*6。もう1つは異常検知(教師なし学習の一種で、正常な画像のみを学習し、そこから外れるものを異常として検出する手法)で、不良品サンプルが集めにくい工程に向いています*3。
Azure AI Custom Visionは、画像分類と物体検出という2つの機能を提供しています*4。画像分類は画像全体にラベルを付ける機能、物体検出は欠陥の位置まで特定する機能で、検査対象に応じて選択します*4。
AWSは2024年5月10日、Amazon Titan Multimodal Embeddings(画像を数値のベクトルに変換する生成AIモデル)を使い、良品・不良品それぞれ40枚の画像から特徴量を抽出して判定する検証結果を公開しました*3。この検証では、テスト画像40枚に対して正解率90%という結果に加え、不良品はすべて検出できたことが示されています*3。
教師あり分類と異常検知は、優劣というより工程との適合で選びます。両者の違いを整理すると次の通りです。
| 項目 | 教師あり画像分類 | 異常検知 |
|---|---|---|
| 学習に使う画像 | 良品・不良品の両方にラベル付け*6 | 良品画像が中心*3 |
| 検出できる欠陥 | 事前に定義した欠陥タイプ*4 | 未知のパターンを含む外れ値 |
| 不良品画像の必要枚数 | 欠陥タイプごとに複数枚*6 | 少数でも学習を始めやすい |
| 代表的な実装例 | Azure AI Custom VisionのClassification*4 | 特徴量抽出による類似度判定*3 |
学習データの収集とアノテーション——良品・不良品画像をどう集めるか
学習データの収集は、AI外観検査の精度を左右する工程です。AWSが2023年8月30日に公開したブログでは、永久磁石タイルの検査モデルを構築する際に1,266枚の画像データセットを使い、全体精度97.7%を達成した例が紹介されています*6。
この事例では、S3(Amazon Simple Storage Service、AWSのオブジェクトストレージ)のフォルダーを欠陥タイプごとに分け、画像をアップロードするだけでフォルダー名に基づく自動ラベル付けができる仕組みを使っています*6。手作業のアノテーションを最小限に抑える工夫です。
良品画像を格納するフォルダーと、欠陥タイプ別のフォルダーを並列に用意し、単一のラベル付き画像分類モデルで判定する構成です*6。欠陥ごとの画像枚数が極端に少ないと、判定精度が欠陥タイプ間で偏りやすくなります。
実運用では、生産ラインの撮影条件に合わせて画像を追加収集し、モデルを継続的に再学習する体制も必要です。学習データの整備は開発時だけでなく運用後も続く作業だと考えておくとよいでしょう。
照明とカメラ——撮像環境の設計が検出精度を左右する
AI外観検査の精度は、AIモデルの性能だけでなく撮像環境にも左右されます。照明の当て方が変わると、同じ製品でも画像内の陰影や反射が変化し、モデルが誤って欠陥と判定する場合があります。
金属製品のように表面が反射しやすい対象では、拡散照明(光を均一に散らして当てる照明)を使い、照り込みを抑える設計が求められます。カメラの解像度や焦点距離も、検出したい欠陥の大きさに合わせて選ぶ必要があります。
生産ラインの振動や搬送速度も、画像のブレに直結します。撮像タイミングを搬送装置の動きと同期させる設計が欠かせません。
撮像環境の調整は、AIモデルの学習前に固定しておくことが望ましい工程です。撮像条件を変えるたびにモデルの再学習が必要になり、開発の手戻りにつながります。
エッジ推論とPLC・MES連携——検査結果を生産ラインに反映する仕組み
AI外観検査をライン上で稼働させる場合、判定処理をどこで実行するかが設計の分かれ目になります。クラウド側で推論すると通信の遅延が生じやすく、ライン脇に設置したエッジ機器で推論する構成が選ばれることもあります。
判定結果は、PLC(Programmable Logic Controller、生産設備の動作を制御する装置)やMES(Manufacturing Execution System、生産現場の作業進捗や品質データを管理するシステム)に連携し、不良品の排除や記録に使う設計が一般的です。
エッジ向けの画像認識サービスは、提供期間が限られる場合があります。AWSは2025年5月20日、エッジ向けコンピュータービジョンサービスのAWS Panoramaについて新規受付を停止し、2026年5月31日にサポートを終了すると発表しました*2。既存アプリケーションは、ハードウェアの入れ替えとコードの移植が必要になります*2。
このように、エッジ機器と連携するサービスを選ぶ際は、提供終了時の移行負荷まで見込んでおく必要があります。汎用的なIoT基盤(AWS IoT Greengrassなど)の上に構築する方法も、サービス終了のリスクを抑える選択肢の一つです*2。
見逃しと過検出のトレードオフ——AI外観検査の精度評価
AI外観検査の精度評価では、見逃し(実際は不良品なのに合格と判定すること)と過検出(実際は良品なのに不良と判定すること)のバランスが論点になります。見逃しを減らそうとすると、過検出が増えやすい傾向があります。
AWSが公開した検証例では、テスト画像40枚に対して正解率90%、再現率(実際の不良品のうち検出できた割合)80%という結果が示されています*3。この検証では不良と判定した画像がすべて実際の不良品で、適合率(不良と判定した中で実際に不良だった割合)の面では誤判定がありませんでした*3。一方で再現率は80%にとどまり、見逃しが一定数残る水準だとわかります。
過検出が多いと、目視での再確認が増え、AI外観検査を導入した効果が薄れます。見逃しを許容すれば、不良品が後工程や出荷後に流出するリスクが生じます。
PoC(Proof of Concept、本番導入前の実証実験)の段階で、見逃しと過検出それぞれの許容水準を発注者側と開発側で事前に合意しておくことが、本番移行後のトラブルを避ける鍵になります。
AWS・Azure・GCPの画像認識サービス比較と内製・外注の判断軸
主要クラウド各社は、画像認識に関するサービスを提供しています。ただしサービスの入れ替わりが起きやすい領域でもあります。AWSは製造業向けの検査専用サービスであったAmazon Lookout for Visionについて、2024年10月10日に新規顧客の受け付けを停止し、2025年10月31日にサービスを終了しました*1。移行先として、Amazon SageMakerやAmazon Bedrockでの自前構築が案内されています*1。
Azure AI Custom Visionは、画像分類と物体検出の機能を継続して提供しています*4。Google Cloudは汎用的な画像解析を行うVision APIに加え、Vertex AI上でAutoMLやカスタムモデルによる画像分類・物体検出を構築する方法を用意しています*5。
比較すると次の通りです。
| 項目 | AWS | Azure | Google Cloud |
|---|---|---|---|
| 検査専用サービスの現状 | Lookout for Visionは2025年10月31日に終了*1 | Custom Visionを継続提供*4 | 専用モデルはVertex AIで構築*5 |
| 主な代替アプローチ | SageMakerでの自前構築、Bedrockの活用*1 | Classification/Object Detection*4 | AutoML・カスタムモデル*5 |
| 汎用的な画像解析 | 生成AIモデル(Titan Multimodal Embeddings)*3 | 専用サービスに機能を統合 | Vision APIによるラベル・物体検出*5 |
この作業を内製で担うには、機械学習モデルの学習・評価に加え、撮像環境の設計、PLC・MESとの連携、クラウドサービスの仕様変更への追随といった複数領域の知識が必要です*1*2。専任のエンジニアを一定期間確保できるかどうかが、内製の可否を左右します。
専門パートナーに外注する場合は、要件定義からPoC、本番実装、運用後の再学習までを一括して依頼できるかを確認します。加えて、採用するクラウドサービスが将来的に終了した場合の移行方針まで提案できるかどうかも、選定時の確認点になります*1*2。
。対象工程の数や検出したい欠陥の種類によって、必要な開発工数は変わってきます。現状の検査体制を診断したうえで、内製・外注の切り分けを検討することが実務的です。
まとめ:AI外観検査システム開発で押さえる3つの判断軸
本稿ではAI外観検査(画像認識)システムの仕組みと開発の流れを、AWS・Microsoft・Googleの公式情報をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、検出方式は良品・不良品を学習する教師あり分類と、良品を中心に学習する異常検知に分かれ、工程に応じて選び分けます*4*3。第二に、精度は学習データの整備と撮像環境の設計に大きく依存し、見逃しと過検出のトレードオフを事前に合意しておく必要があります*3。第三に、クラウド各社の検査専用サービスは終了や仕様変更が起こり得るため、内製・外注いずれの場合も長期運用を見据えた選定が欠かせません*1*2。
よくある質問
AI外観検査は人による目視検査を完全に代替できますか。
現状のAI外観検査は、目視検査の一部を代替する位置づけであり、完全な代替を保証するものではありません。見逃しと過検出のトレードオフがあるため*3、境界的なケースの確認に人の目視を残す運用が実務的です。導入初期はAIと目視を併用し、精度を検証しながら自動化範囲を広げる進め方になります。
学習に必要な画像は何枚くらい用意すればよいですか。
必要枚数は欠陥の種類や検出方式によって変わります。AWSが公開した事例では、欠陥タイプ別に整理した1,266枚のデータセットで全体精度97.7%を達成しています*6。異常検知方式であれば、良品画像を中心に少数から学習を始めることも可能です*3。
既存のクラウド画像認識サービスを使う場合、どんな点に注意すればよいですか。
クラウド各社の検査専用サービスは、提供終了や仕様変更が起こり得る点に注意が必要です。AWSは製造業向けの検査専用サービスを2025年10月31日に終了し、エッジ向けサービスも2026年5月31日にサポートを終了すると発表しています*1*2。長期運用を前提に、移行のしやすさまで確認したうえで選ぶことが大切です。
エッジ機器での推論とクラウドでの推論はどちらを選ぶべきですか。
ライン上での判定速度を重視する場合は、エッジ機器での推論が向いています。モデルの更新や大量データの分析を重視する場合は、クラウド側での推論が適しています。通信環境や既存の生産設備との連携方法によっても、適した構成は変わってきます。
AI外観検査システムの開発を外注する場合、何を確認すればよいですか。
要件定義からPoC、本番実装、運用後の再学習までを一括して依頼できるかをまず確認します。採用するクラウドサービスやモデルが将来的に変更・終了した場合の対応方針まで、委託先とすり合わせておくことも大切です*1*2。契約前に検証環境での精度確認範囲を明確にしておくと、本番移行後のトラブルを抑えやすくなります。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:AWS Machine Learning Blog「Exploring alternatives and seamlessly migrating data from Amazon Lookout for Vision」(2024年10月10日)(https://aws.amazon.com/blogs/machine-learning/exploring-alternatives-and-seamlessly-migrating-data-from-amazon-lookout-for-vision/)
- *2 出典:AWS「AWS Panorama end of support」(AWS Panorama Developer Guide)(https://docs.aws.amazon.com/panorama/latest/dev/panorama-end-of-support.html)
- *3 出典:AWS「生成AIで外観検査をやってみた」(AWS Blog、2024年5月10日)(https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/visual-inspection-with-generative-ai/)
- *4 出典:Microsoft「Custom Vision の使用例」(Microsoft Learn)(https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/ai-foundry/responsible-ai/custom-vision/custom-vision-cvs-transparency-note)
- *5 出典:Google Cloud「Vision API documentation」(https://docs.cloud.google.com/vision/docs)
- *6 出典:AWS「ノーコード機械学習のAmazon SageMaker Canvas を使用して、画像から製造品質欠陥の検出を誰でも簡単に行う方法」(AWS Blog、2023年8月30日)(https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/democratize-computer-vision-defect-detection-for-manufacturing-quality-using-no-code-machine-learning-with-amazon-sagemaker-canvas/)