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バース予約システムの選び方|物流2024年問題と外注比較
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- 物流の2024年問題により、トラックドライバーの時間外労働は年960時間を上限とする規制が適用され、荷待ち・荷役にかかる長時間の拘束が改めて課題となっています。
- バース予約システムは、トラックの物流拠点への到着予定時刻を事前予約する仕組みで、国土交通省が公表した事例では平均待機時間が約70%削減されたと報告されています。
- TMS(配車・輸配送管理)やWMS(倉庫管理)とは対象範囲が異なる投資であり、内製と外注のどちらで進めるかは要件定義の段階から判断する必要があります。
目次
物流の2024年問題とは?時間外労働960時間規制と荷待ち・荷役の実態
2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働は年960時間を上限とする規制が適用されました。これが「物流の2024年問題」と呼ばれる状況の中心にある制度変更です*2。労働時間の上限が定められたことで、従来と同じ人員体制のままでは運べる荷物の量が減り、輸送能力の不足につながる懸念が指摘されています。
国土交通省が公表した「トラック輸送状況の実態調査」(令和2年)によると、荷待ち時間が発生する運行は全体の24%を占め、平均拘束時間は12時間26分と、荷待ちのない運行の10時間38分より長くなっていました*2。荷待ち時間そのものの平均は1時間34分で、1時間を超える運行が全体の50.1%、2時間を超える運行も17.7%にのぼります*2。荷待ちの発生は一部の現場に限った話ではなく、広く分布している実態がうかがえるでしょう。
何も対応を行わなかった場合、輸送能力は2024年度に約14%(4億トン相当)、2030年度には約34%(9億トン相当)不足する可能性があると試算されています*2。政府はこうした状況を受けて「物流革新に向けた政策パッケージ」等を策定し、荷待ち・荷役時間の削減を重点施策の一つに位置づけました*2。荷主企業・物流センター・運送事業者のいずれにとっても、荷待ち時間の可視化と削減は避けて通れない経営課題になりつつあります。
バース予約システムとは?TMS・WMSとの違いを整理
バース(着車場)とは、トラックが荷物の積み下ろしのために着車する物流拠点内のスペースを指します。バース予約システムとは、トラック事業者や運転者が物流施設への到着予定時刻を電子的な方法で事前に予約できる仕組みです*1。予約枠を分散させることで、順番待ちによる車両の集中と荷待ち時間の発生を抑える狙いがあります。
混同されやすいシステムに、TMS(輸配送管理システム)とWMS(倉庫管理システム)があります。TMSは配車計画や輸配送ルートの管理を担い、WMSは倉庫内の在庫・入出庫管理を担うシステムです。これに対しバース予約システムは、物流拠点の着車受付とトラックの荷待ち時間削減に特化した仕組みであり、両者とは対象範囲が異なります。導入を検討する際は、この境界を混同しないことが要件整理の出発点になるでしょう。
国土交通省・厚生労働省・全日本トラック協会がまとめたガイドラインでも、荷待ち時間短縮に向けた具体的な取り組みの一つとして、トラック予約受付システムの活用が掲げられています*5。荷主企業と運送事業者が協力して取り組む施策として位置づけられている点が特徴です。
バース予約システムの仕組みと物流総合効率化法の要件
予約から出発までの基本フロー
バース予約システムの標準的な流れは、次の5つの段階で構成されます*1。第一に、トラック事業者が提示された複数の予約可能時間枠から到着時刻を選択して予約する段階です。第二に、予約内容がシステム上に反映されます。第三に、予約時間に合わせて物流施設で受付を行う流れです。第四に、庫内の作業者はディスプレイ等で予約状況を確認しながら荷役を進めます。第五に、積卸作業の完了後、トラックは施設を出発するという構成です。
物流総合効率化法が定める4つの要件
国土交通省は物流総合効率化法において、認定対象となるトラック予約受付システムが満たすべき要件を次の4点に整理しています*1。
第一に、トラック事業者又はトラック運転手等が、到着予定時刻を電子的な方法により事前に予約できること。第二に、到着予定時刻に係る情報を、到着時刻表示装置を通じて施設内に表示するシステムであること。第三に、表示装置は映像面のサイズが38cm(15インチ)相当以上の表示器、または施設内の作業者が携帯する表示器であること。第四に、日常的に施設に出入りする主要なトラック会社が利用するものであることです*1。
これらに加えて、トラックの待機時間(手待ち時間)の実績を計測する仕組みを構築することも必要とされています*1。予約枠を用意するだけでなく、実績を記録し改善につなげる運用設計まで求められる点は、導入検討時に見落とされがちなポイントです。
導入効果を国土交通省の事例で見る:待機時間70%削減の実績
国土交通省が平成29年4月に公表した事例集では、物流総合効率化法の認定事業者である川西倉庫株式会社(六甲物流センター、兵庫県神戸市東灘区)が、自社開発したクラウド型のトラック予約受付システムを導入しました。その結果、1台当たりの平均待機時間は83分から24分へ約70%削減され、倉庫の1時間当たり取扱貨物数は659個から833個へ約20%増加したと報告されています*1。
導入前は受付順で荷役が処理されるため、多くの車両が受付開始と同時に集中し、8割超の車両で待機時間が1時間を超えていたことも同資料で紹介されています*1。到着時刻を分散させる予約制へ切り替えたことで、待機時間1時間超の車両がほぼなくなったとされ、受付方法を変えるだけでも効果が見込める領域だとわかります。
同じ事例集では、参考事例として川崎陸送株式会社(関東営業所、埼玉県坂戸市)も紹介されています。同社では、乗務員がスマートフォンアプリから入場時刻を予約し、施設側は倉庫事務員が予約可能時間枠を生成・開示したうえで、翌日の庫内作業計画とシフト管理に反映する運用を行っています*1。入場受付にはQRコードによる予約番号提示も使えるようにしており、現場の負担軽減まで設計に組み込まれている点が特徴です*1。
既存のTMS・WMSやIoTゲートとの連携要件
到着時刻表示装置とゲート連携
物流総合効率化法の要件にあるとおり、到着時刻表示装置は庫内に設置するディスプレイに限らず、作業員が携帯する端末でも構いません*1。近年は入退場ゲートの開閉やナンバープレート認識と連動させ、予約情報と実際の入場実績を自動で突き合わせるIoT連携を選択肢に加える施設も増えています。
TMS・WMSとのデータ連携
バース予約システムは単体でも運用できますが、配車計画を担うTMSや在庫・入出庫を担うWMSと到着予定時刻のデータを連携させると、庫内の人員配置や入出荷スケジュールをより精緻に調整できるようになります。ただし連携範囲を広げるほど、要件定義とシステム間インターフェースの設計は複雑になります。既存のTMS・WMSがどのようなデータ形式で予約情報を受け渡せるかを事前に確認しておくことが、後戻りの少ない進め方につながるでしょう。
2025年4月施行の物流効率化法とバース予約システムの位置づけ
2025年4月1日には、物資の流通の効率化に関する法律(旧・流通業務総合効率化法)の改正規定が施行され、荷主・物流事業者に対して物流効率化のために取り組むべき措置についての努力義務が課されました*3。国はこの措置に関する判断基準を策定し、荷主・物流事業者の取組状況について指導・助言や調査・公表を行う枠組みが整備されています*4。
判断基準が示す取組例には、積合せや帰り荷確保のための時間確保に加えて、予約システムの導入や積込時間の共有による荷待ちの解消が挙げられています*4。一方で、荷待ちが5時間を超えて発生している現場が依然として存在するという調査結果も紹介されており*4、制度の趣旨と現場の実態には差があることがうかがえます。
さらに2026年4月1日には、一定規模以上の荷主・物流事業者を「特定事業者」として指定し、中長期計画の作成や定期報告等を義務付ける制度が施行される予定です*3。特定事業者に指定された荷主には、物流統括管理者の選任も義務付けられます*3。制度の運用細目は今後見直される可能性もあるため、最新の要件は国土交通省の公式情報で確認することが望まれます。
内製構築と外注委託のコスト構造比較
バース予約システムを自社で構築する場合と、外部パートナーに委託する場合とでは、必要な知識・体制の重心が異なります。以下の表に主な違いを整理しました。
| 比較項目 | 内製構築 | 外注委託 |
|---|---|---|
| 法令要件の確認 | 到着時刻表示装置の仕様等、物流総合効率化法の要件を自社で調査・確認します*1 | 法令要件の確認から仕様への落とし込みまで委託先が対応します |
| TMS・WMSとの連携開発 | 既存システムとのインターフェース設計・開発を自社の情報システム部門で担います | 複数拠点での連携実績を踏まえた設計を委託できます |
| 運用ルールの整備 | バース割当ロジックや荷主・運送会社への周知を自社で設計します | 現場運用の設計から荷主・運送会社向け説明資料の整備まで対応できます |
| 稼働後の保守・改善 | 荷待ち実績データの分析や機能改善を自社の体制で継続します | 保守・監視から実績データを踏まえた改善提案まで任せられます |
導入の進め方:要件定義から本稼働までの流れ
内製で進める場合に必要な知識
内製で構築する場合、物流総合効率化法が定める到着時刻表示装置の仕様確認、TMS・WMSとの連携設計、ゲート機器等のIoT要件定義、荷待ち実績の計測・分析といった複数分野の知識が必要になります。特に既存の配車・倉庫システムとの接続部分は、拠点ごとの運用ルールに合わせた個別調整が発生しやすく、担当者の負荷が大きくなりがちです。
判断を先延ばしにしたまま見切り発車で導入を進めると、到着時刻表示装置の仕様確認が後回しになったり、荷主・運送会社への周知が不十分なまま稼働してしまったりする事態につながりかねません。要件定義の段階で、対象拠点の荷待ち実態を数値で押さえておくことが重要です。
外注委託した場合の違い
専門パートナーに委託すると、要件定義から到着時刻表示装置の選定、TMS・WMSとの連携開発、稼働後の運用サポートまで一連の工程を任せられます。複数の物流拠点でバース予約システムを構築してきた知見があれば、荷主・運送会社双方の運用実態を踏まえた設計がしやすく、稼働までの期間短縮にもつながりやすいでしょう。内製・外注のいずれを選ぶ場合でも、まずは自社拠点の荷待ち実態を可視化するところから着手するのが出発点になります。
まとめ:バース予約システム導入の3つの判断軸
本稿では、物流の2024年問題を背景に注目されるバース予約システムについて、国土交通省の公式資料に基づき整理しました。要点は次の3つに集約されるでしょう。第一に、2024年4月からの時間外労働960時間規制と、荷待ち時間平均1時間34分という実態が、荷待ち削減の必要性を高めています*2。第二に、バース予約システムは物流総合効率化法が定める要件を満たす仕組みであり、国交省の事例では待機時間の約70%削減という実績も報告されています*1。第三に、2025年4月施行の物流効率化法により荷主・物流事業者に努力義務が課され、判断基準にも予約システムの活用が位置づけられており*4、TMS・WMSとは異なる領域の投資として、内製・外注の両面から検討する価値があるといえます。
よくある質問
バース予約システムとTMS・WMSはどう違いますか。
TMSは配車計画や輸配送ルートの管理、WMSは倉庫内の在庫・入出庫管理を担うシステムです。バース予約システムは、物流拠点の着車受付とトラックの荷待ち時間削減に特化した仕組みで、対象範囲が異なります。
バース予約システムを導入すると荷待ち時間はどの程度削減できますか。
導入効果は拠点の運用状況により異なりますが、国土交通省が公表した事例では、1台当たりの平均待機時間が83分から24分へ約70%削減されたと報告されています*1。
物流総合効率化法上の要件を満たすにはどのような条件が必要ですか。
電子的な事前予約機能、到着時刻表示装置による施設内表示、映像面38cm(15インチ)以上等の表示器要件、日常的に出入りする主要なトラック会社が利用していることの4点が要件として整理されています*1。
2025年4月の法改正で何が変わりましたか。
物資の流通の効率化に関する法律の改正規定が施行され、荷主・物流事業者に物流効率化の取り組みについての努力義務が課されました。判断基準の取組例には予約システムの導入も含まれています*4。詳細は国土交通省の最新情報で確認することが望まれます。
内製と外注はどちらで進めるべきですか。
到着時刻表示装置の要件確認やTMS・WMSとの連携設計まで自社で担える体制があるかが判断軸になります。専門知識の確保が難しい場合は、要件定義の段階から外部パートナーに相談する進め方が有効です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:国土交通省物流審議官部門「『トラック予約受付システム』の導入事例」(平成29年4月)(https://www.mlit.go.jp/common/001182131.pdf)
- *2 出典:国土交通省 四国運輸局愛媛運輸支局「物流の『2024年問題』への対応について」(令和6年3月)(https://wwwtb.mlit.go.jp/shikoku/content/siryou2.pdf)
- *3 出典:国土交通省「物流・自動車:物流効率化法 関係政省令」(https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_mn1_000029.html)
- *4 出典:国土交通省「物流効率化法の施行内容の概要」(https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_mn1_000034.html)
- *5 出典:国土交通省「自動車:荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」(https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000107.html)