LASSIC Media らしくメディア
DFARS FOCI開示案、500万ドル超の再委託に及ぶリスク
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 対象は500万ドル超の全階層:再委託先にも同じ条項を流し込みます*1。
- NISSで「適格」でないと契約できない:締結・変更・オプション行使が止まります*1。
- 期限は3営業日・10営業日・90日:変化の報告と是正で数え方が異なります*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
取引先の資本構成が変わったことを、いつ知るか。株主が入れ替わっても契約書は変わらないため、気づかないまま履行が続くのが普通です。米国の防衛調達は、そこに報告の期限を入れようとしています。
米国国防総省(DoD)は2026年5月7日、外国の所有・支配・影響(FOCI)に関するリスクを軽減するためのDFARS改正案を連邦官報に掲載しました*1。DFARS Case 2021-D011(RIN 0750-AL30)で、意見の締切は2026年7月6日でした*1。
防衛調達の話ですが、資本関係の把握をどう契約条項に落とすかという点で、一般の委託管理にも読み替えが利きます。誰が対象なのか、何を出すのか、いつまでに動くのかを一次情報から整理します。
目次
2本の国防授権法をDFARSに落とす提案
まず根拠からです*1。
この規則案が実装するのは2020年度国防授権法(NDAA)第847条の(b)(2)(A)、(b)(2)(C)、(c)(1)と2021年度NDAA第819条の(c)(2)です*1。第847条(b)(2)(A)は対象となる受託者と再委託先が、実質的支配者と、自らが外国の所有・支配・影響(FOCI)の下にあるかどうかを国防防諜保安庁(DCSA)へ開示し、変更があれば更新することを求め、FOCI下にあると判断された場合は、実質的支配者である外国所有者それぞれの連絡先を開示することも求めます*1。
第847条(b)(2)(C)は契約または再委託の履行中に生じたFOCIまたは実質的支配者の変更に関する開示を定め、これを執行する契約条項と、契約または再委託の全期間を通じたFOCIリスクの実効的な軽減を求めています*1。第847条(c)(1)は指定された国防総省の上級職員が、機微なデータ、システム、またはプロセスがあることを理由に、その契約が国家安全保障上のリスクまたはその可能性を伴うと判断した場合には、商用品・商用役務の契約にも開示とリスク軽減の要件を適用しうるとしました*1。
DFARS側の受け皿として、新しい部が作られます*1。第240部「情報セキュリティおよびサプライチェーンセキュリティ」を新設し、その中に第240.27X節「実質的支配または外国の所有・支配・影響に関するリスクの軽減」を置く構成です*1。あわせてDoD訓令5205.87の要素も実装するとされ、この訓令は実質的支配者およびFOCI情報の開示と、FOCIリスクの軽減に関する手続きを定めるものと説明されています*1。
なお指定された国防総省の上級職員についてはまだ指定されていないと明記されており、規則案の中では仮の呼称として使われています*1。商用品の扱いを左右する判断者が未定のまま、枠だけが提示されている状態です*1。
適用の下限についても整理がついています*1。簡易調達基準(SAT)以下の契約への法令の適用は41 U.S.C. 1905が定めており、法令に刑事上または民事上の罰則が含まれる場合、または連邦調達規則審議会が、SAT以下の契約・再委託を適用除外とすることが連邦政府の利益に最も適うものではないと書面で判断した場合には適用されるという構造です*1。今回について国防総省は本規則案の要件は500万ドルを超える契約にのみ適用されるため、SAT以下の契約には適用しない意向であると述べました*1。一方で商用品(市販品を含む)および商用役務の調達については、定めるところに従って適用する意向とされています*1。
500万ドル超なら階層を問わず対象になる
範囲の切り方が要点です*1。
定義は簡潔です*1。対象受託者または対象再委託先とは、500万ドルを超える価額の契約について、階層を問わず国防総省の既存または見込みの受託者もしくは再委託先である会社をいうとされました*1。階層を問わず(at any tier)という一句により、元請と直接の取引がない下位の事業者も定義に入ります*1。
条項の挿入基準も金額で切られています*1。500万ドルを超える価額の入札公告および契約に、条項252.240-70YYを挿入するとされ、この条項を含む入札公告には、あわせて規定252.240-70XXを挿入します*1。商用品・商用役務については指定された上級職員が、機微なデータ、システム、またはプロセスがあることを理由に、その契約が国家安全保障上のリスクもしくはその可能性、または漏えいの可能性を伴うと判断した場合にのみ挿入する整理です*1。
再委託への流し込みも条項本文に書かれています*1。受託者は本条項の実質的な内容を、この段落(e)を含めて、500万ドルを超える再委託契約その他の契約文書に挿入しなければならないとされ、加えて500万ドルを超える再委託契約を受けたすべての再委託先と供給者が、再委託契約の締結前にNISSで適格の状態にあり、履行期間を通じてその状態を維持することを確認する義務も負います*1。委託先の管理を階層まで広げる考え方はCMMCとNIST SP 800-171で扱う枠組みと同じ発想です。
影響範囲について、国防総省自身の見積りも示されています*1。連邦調達データシステム(FPDS)のデータとして2022会計年度から2024会計年度における500万ドル超の受注者は、商用手続きのみによる調達を除き、年平均で3,774社で、そのうち2,148社(57%)が小規模事業者とされました*1。そのうえで1件あたり平均2社の応札者があり、受注した事業者は平均5社の再委託先を持つと仮定して、影響を受けうる事業者は合計37,740社、うち21,511社(57%)が小規模事業者と見積もっています*1。
更新の頻度についても仮定が置かれました*1。受託者の半数が履行中に情報の更新を要すると仮定し、3,774社に再委託先5社を掛けた18,870社の50%として9,435社が開示の更新を要すると見積もっています*1。さらにオプション行使や契約変更で開示の更新が必要になるのは、18,870社の10%にあたる1,887社と仮定されました*1。
入札時の表明にかかる手間も試算されています*1。応札の提出前に、7,548社が必要な情報の提出済みであることと、その情報が最新かつ正確で完全であることを確認すると見積もり、これらの応札者は表明を求める入札公告に対して年に2件の応札を行うと仮定しました*1。作業時間は1回あたり約10分、担当者は一般職俸給表グレード12ステップ5に相当する中堅職員(間接費36.25%を含めて時間あたり66.23ドル)とされ、確認に伴う年間費用は168,534ドルと算出されています*1。確認作業そのものは短くても、対象社数を掛けると無視できない量になるという整理です*1。
提出先はNISS、審査するのはDCSA
手続きの中心は一つのシステムです*1。
新設される入札公告規定252.240-70XX「実質的支配または外国の所有・支配・影響の開示——表明」は、応札者に対しDCSAがNISSで審査するために、外国利害関係証明書(SF 328)と裏付け資料を開示することを求めます*1。あわせて応札の提出をもって、SF 328と各実質的支配者の連絡先をNISSに提出済みであり、その情報が最新かつ正確で完全である旨を表明することも求められます*1。
この規定は、条件付きの義務を先に知らせる役割も持ちます*1。調達要求元が、DCSAの意見に基づき、FOCIまたは実質的支配の状況が国家安全保障への漏えいのリスクもしくはその可能性をもたらし、かつそれが軽減可能であると判断した場合、応札者は契約締結時に、締結から90日以内にリスク軽減策を実施することへ同意しなければならないという通知です*1。
契約担当官の側にも禁止規定が置かれます*1。契約担当官は、受託者または見込みの受託者が国家産業保安システム(NISS)において適格の状態にあるか、例外が適用される場合を除き、500万ドルを超える価額の契約、タスクオーダー、デリバリーオーダーについて、締結、変更、オプションの行使、その他の期間延長を行ってはならないという書き方です*1。契約前だけでなく、オプションの行使に先立って、契約担当官が受託者のNISS上の適格状態を確認しなければならないことも、DFARS第217.2小部の改正で明確化されます*1。
受託者側の契約条項252.240-70YYが求めるのは4点です*1。契約締結、オプション行使、契約変更、または契約締結後の変化の把握の時点で、NISSに示されたリスク軽減策に同意すること、それらの時点または履行中にリスクを把握した時点から90暦日以内に軽減策を実施すること、契約の変更または更新の前、および従前提供した情報に変更が生じたときに、SF 328と裏付け資料(各実質的支配者の連絡先を含む)をNISSで作成・更新し、内容が最新であることを確認すること、そして500万ドルを超える再委託先の適格状態を確認することです*1。
期限は3営業日・10営業日・90暦日で分かれる
数え方が三つあります*1。
| 期限 | 起点と、その期間内にすることとして書かれている内容 |
|---|---|
| 期限なし(都度) | 履行中にFOCIまたは実質的支配に変更が生じたとき、または階層を問わない再委託先や供給者からその旨の通知を受けたときは、更新したSF 328をNISSに提出して変更を報告します |
| 3営業日 | その変更により自社または階層を問わない再委託先がFOCI下に置かれる可能性があると判断した日、または通知を受けた日から。外国所有者または実質的支配者の氏名、その者に関する関連情報、および実施済みまたは推奨されるリスク軽減措置について直ちに入手可能な情報を報告します |
| 10営業日 | FOCIまたは実質的支配が国家安全保障への漏えいのリスクもしくはその可能性をもたらすとDCSAから通知を受けた日から。DCSAの勧告を実施する行動計画に着手し、追加情報を提出し、これまでのリスク軽減の取り組みを説明し、勧告に従う旨をNISSで確認します |
| 90暦日 | 契約締結、オプション行使、契約変更、または履行中のリスクの把握から。リスク軽減策を実施します |
FOCI下にあるかどうかの判定は、別の規則を参照する形です*1。条項は外国の所有・支配・影響は32 CFR第117.11部に定義されるとし、実質的支配者は17 CFR 240.13d-3に定義されるとしました*1。外国の利害関係は条項自身が定義しており、外国政府、外国政府の機関、外国政府の代表者、米国またはその属領以外の国の法に基づいて組織され、免許され、または設立されたあらゆる形態の事業体または法人、そして米国の市民または国民でないあらゆる者が含まれます*1。
判定の中身は、支配の実態に踏み込んでいます*1。施設クリアランスの有無で分岐したうえで、共通の要件として外国の利害関係が、直接または間接に、その権限が行使されているか米国会社の証券の保有を通じて行使可能かを問わず、次のいずれかの権限を持つ場合とされました*1。国家安全保障上のリスクもしくはその可能性、または機微なデータ、システム、プロセスの漏えいの可能性をもたらしうる形で、当該会社の経営または業務に影響する事項を指示し、または決定する権限と、契約または再委託を履行する能力に悪影響を及ぼしうる形で、受託者の事業または経営をその他の方法で支配し、または影響を与える権限です*1。
持株比率ではなく権限があるかどうかで見る書き方になっている点が、実務上は効いてきます*1。株式を持たなくても、契約や役員派遣を通じて経営に影響を及ぼせる関係は判定の対象に入りうる形です*1。データや処理そのものの越境管理については米国のデータセキュリティ規則が別系統の規制として並びます。
自社の委託先管理に置き換える
米国防衛調達の規則案ですが、資本関係の変化を検知して契約に反映する仕組みという意味では、一般の委託管理でも同じ形が使えます。
第一に、資本情報を契約書の付属ではなく台帳の項目として持つことです。規則案は、実質的支配者の連絡先までを提出物に含め、変更のたびに更新することを求めました*1。取引先マスタに「最終更新日」と「更新の契機」を持たせておかないと、いつの時点の情報かが分からなくなります。
第二に、更新の契機を契約行為に紐づけることです。この規則案では、契約の変更や更新の前、オプション行使の前という具体的な行為が更新の起点になっています*1。年1回の定期棚卸しだけにすると、契約が動くたびに古い情報で判断することになります。
第三に、報告の期限を「営業日」と「暦日」で書き分けることです。変化の報告が3営業日、DCSAの通知を受けてからの着手が10営業日、軽減策の実施が90暦日と、意図的に単位が変えられています*1。社内規程でも、初動と実施で単位を変えるほうが運用に合う場面があります。
第四に、下位の階層まで同じ条項を流すことです。条項はこの段落を含めて再委託契約に挿入せよと書いています*1。段落自体を含めさせる書き方にしないと、二次請けから三次請けへ条項が伝わりません。契約と実態のずれは偽装請負のリスク回避でも問題になる論点です。
第五に、判定結果を「状態」として一か所に置くことです。この規則案の要は、審査の結論をNISS上の適格という一つの状態に集約し、契約担当官はその状態だけを見て締結の可否を決められるようにした点にあります*1。審査の詳細を各担当者が読み解く運用にすると、判断が分かれます。社内でも、与信や反社チェックと同じ列に「資本情報の確認状態」を置き、購買システムがその値だけを参照する形にすると、判断の場所が一つに定まります。
誤解されやすいのは、これが確定した規則であるという読み方です。この文書は規則案であり、意見の締切は2026年7月6日でした*1。条項番号も252.240-70XXおよび252.240-70YYという仮の付番で、判断者となる上級職員も未指定です*1。米国の防衛調達に関わる立場であれば、最終規則の内容を確認したうえで手順に落としてください。
まとめ:DFARSのFOCI開示案で押さえる3つの視点
米国国防総省は2026年5月7日、外国の所有・支配・影響(FOCI)に関するリスクを軽減するためのDFARS改正案(DFARS Case 2021-D011)を連邦官報に掲載しました。意見の締切は2026年7月6日でした。押さえたい視点は三つあります。第一に、対象範囲。500万ドルを超える契約について、階層を問わない受託者と再委託先が対象となり、条項の実質的な内容を500万ドル超の再委託契約へ挿入する義務も課されます。商用品と商用役務は、指定された上級職員が機微なデータ・システム・プロセスを理由に国家安全保障上のリスクを認めた場合を除いて対象外です。第二に、手続きの中心。外国利害関係証明書(SF 328)と裏付け資料、各実質的支配者の連絡先を国家産業保安システム(NISS)へ提出し、国防防諜保安庁(DCSA)が審査します。契約担当官は、NISSで適格の状態にない相手とは締結も変更もオプション行使も行えません。第三に、期限。FOCI下に置かれる可能性を把握してからの報告が3営業日、DCSAの通知を受けてからの是正計画への着手が10営業日、リスク軽減策の実施が90暦日と、単位を分けて定められています。
よくある質問
どんな規則案ですか。
米国国防総省が、外国の所有・支配・影響(FOCI)と実質的支配者の開示を防衛調達の契約条項として求めるために出したDFARSの改正案です。DFARS Case 2021-D011、RIN 0750-AL30として2026年5月7日に連邦官報へ掲載され、意見の締切は2026年7月6日でした。
いくらの契約から対象になりますか。
500万ドルを超える価額の契約です。対象受託者または対象再委託先は、500万ドルを超える価額の契約について階層を問わず国防総省の既存または見込みの受託者もしくは再委託先である会社と定義されています。簡易調達基準以下の契約には適用しない意向も示されています。
再委託先も開示する必要がありますか。
受託者は、条項の実質的な内容を500万ドルを超える再委託契約その他の契約文書へ挿入しなければならないとされています。また、500万ドルを超える再委託契約を受けた再委託先と供給者が、締結前にNISSで適格の状態にあり、履行期間を通じてその状態を維持することを確認する義務も負います。
FOCI下にあるかはどう判定するのですか。
条項は、外国の所有・支配・影響を32 CFR第117.11部の定義に、実質的支配者を17 CFR 240.13d-3の定義によるとしています。判定は持株比率だけでなく、外国の利害関係が直接または間接に、会社の経営や業務に影響する事項を指示・決定する権限を持つかどうかという観点で書かれています。
商用品を納入する場合も対象ですか。
原則として、開示とリスク軽減の要件は商用品と商用役務には適用されません。ただし、指定された国防総省の上級職員が、機微なデータ、システム、またはプロセスがあることを理由に、その契約が国家安全保障上のリスクもしくはその可能性、または漏えいの可能性を伴うと判断した場合は適用されます。この上級職員は規則案の時点でまだ指定されていません。
出典
- *1 参考:国防総省 国防調達規則システム「Defense Federal Acquisition Regulation Supplement: Mitigating Risks Related to Foreign Ownership, Control, or Influence (DFARS Case 2021-D011)」(連邦官報 2026年5月7日・規則案)(https://www.federalregister.gov/documents/2026/05/07/2026-09067/defense-federal-acquisition-regulation-supplement-mitigating-risks-related-to-foreign-ownership)。規則案の連邦官報掲載。2020年度NDAA第847条および2021年度NDAA第819条とDoD訓令5205.87という根拠、DFARS第240部と第240.27X節の新設、対象受託者・対象再委託先の定義と500万ドルの基準、規定252.240-70XXと条項252.240-70YYの内容、NISSでの適格状態と契約担当官への禁止規定、3営業日・10営業日・90暦日の期限、32 CFR 117.11および17 CFR 240.13d-3の参照とFOCI判定の要件、ならびに影響事業者数の見積りの一次情報として。確認日は2026年9月7日。(2026年9月確認)