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データドリブン経営の始め方と進め方
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- データドリブン経営とは、勘や経験だけに頼らず、データに基づいて経営判断を行う体制を指します。
- ツールの導入だけでは根づかず、目的設定・指標設計・組織文化の3点がそろって初めて意思決定に定着します。
- スモールスタートで成功体験を積み、外部の知見を活用しながら段階的に範囲を広げる進め方が実務的です。
目次
データドリブン経営とは何か、なぜ今必要とされるか
データドリブン経営とは、勘や経験だけに頼らず、収集・分析したデータを根拠にして経営判断を行う体制を指します。売上や顧客動向などの客観的な事実を意思決定の起点に据える点が特徴です。
IPAの「DX白書2023」は、経験や勘に頼らないデータドリブンな意思決定を実現するには、データの収集と品質管理という2つの仕組みの整備が不可欠だと指摘します*1。ツールを導入すれば自動的に実現するものではなく、仕組みと運用の両輪が必要という位置づけです。
データドリブン経営が改めて注目される背景には、DXの取り組み自体は日本企業にも広がってきた一方、それが経営の意思決定様式の変化にまで届いていないという課題認識があります。経済産業省のデジタルガバナンス・コード3.0は、DX経営に求められる視点の一つに「企業文化への定着」を挙げています*2。データ活用を一部門のツール運用にとどめず、経営判断の標準的な手続きとして根づかせる視点が求められているのです。
IPAの「DX白書2023」によれば、全社戦略に基づいてDXに取り組んでいる企業の割合は米国68.1%に対し日本は54.2%にとどまります*1。取り組み自体は増えても、全社の経営戦略と紐づいていない状態が残りやすい実態がうかがえます。データドリブン経営を目指すなら、部門単位の分析にとどめず、経営レベルの意思決定プロセスに組み込む視点が欠かせません。
最初に決めるべきは「何のためにデータを使うか」の目的
データドリブン経営の第一歩は、ツール選定でも人材採用でもなく、データを何の判断に使うのかという目的の明確化です。目的が曖昧なまま基盤整備を進めると、集めたデータが誰の意思決定にも使われない事態になりかねません。
経営課題からデータ活用の対象領域を絞り込む
売上の伸び悩み・顧客離反・在庫の過不足など、経営が向き合う課題を先に言語化します。そのうえで、どの課題にデータが答えを出せるのかを検討し、対象領域を絞り込む進め方が実務的です。あらゆる領域を同時に着手しようとすると、どの取り組みも中途半端になりがちです。
「誰が」「いつ」使う判断材料かを具体化する
データ活用の目的は、経営会議での投資判断なのか、現場の日次オペレーション改善なのかによって、必要なデータの粒度も更新頻度も変わります。利用者と利用場面を先に具体化すれば、後工程の指標設計やシステム要件が明確になるでしょう。
目的設定を怠るとツール導入が形骸化する
BI(ビジネスインテリジェンス。データを可視化・分析し意思決定を支援するツール群)ツールを導入したものの、ダッシュボードが閲覧されないまま放置される事例は珍しくありません。原因の多くは、誰の何の判断に使うかという目的設定を省略したまま、ツール導入を先行させたことにあります。目的の明文化こそが、後続の投資を無駄にしないための出発点です。
意思決定に使えるデータ基盤と指標設計
目的が定まったら、その判断に必要なデータをどこからどう集め、何の指標で測るかを設計する段階に入ります。基盤と指標は表裏一体で、片方だけを整えても機能しません。
散在するデータを意思決定に使える形へ統合する
販売管理・顧客管理・会計など、システムごとに分散したデータをそのまま経営判断には使えません。データを一箇所に集約し、部門横断で参照できる基盤を整える必要があります。既存システムの構成を把握しないまま基盤刷新に着手すると、後になって連携改修が発生し、二重の投資になりかねません。
経営目標に直結するKPIを設計する
IPAの「DX動向2025」は、日本企業における成果指標の設定状況が米国・ドイツの企業を下回っていると指摘します*3。売上・利益といった経営数値だけでなく、顧客満足度や市場シェアなど価値創出につながる指標の設計を強化する必要性が示されています*3。指標が経営目標と結びついていなければ、データを集めても判断材料にはなりません。
データ品質の管理体制を先に決めておく
入力ルールが統一されていないデータや、更新が止まったままのデータは、経営判断を誤らせる要因になります。データの収集ルール・更新頻度・責任者をあらかじめ定め、品質を継続的に管理する体制を基盤整備と同時に決めておくことが望ましいでしょう。
データを判断材料にする組織文化と人材の育て方
基盤と指標を整えても、経営層や現場がデータを見て判断する習慣がなければ、データドリブン経営は根づきません。文化と人材の育成は、基盤整備と並行して進める課題です。
経営会議でデータを判断根拠として扱う運用に変える
経営会議の議題を、担当者の報告や経験則ベースの議論から、あらかじめ用意した指標データを起点にした議論へ切り替える運用変更が起点になります。会議の進め方自体を変えなければ、どれだけ精緻な基盤を整えても意思決定の様式は変わりません。
経営とデータをつなぐ橋渡し人材を配置する
IPAの「DX動向2025」は、経営とIT部門・業務部門の間をつなぐ橋渡し人材の不足を課題として挙げています*3。経営層にデジタルの知見が不足していると、データ分析の結果を経営判断に翻訳する役割が不在になりがちです*3。データサイエンスの専門知識と経営課題の両方を理解する人材、またはその役割を担うチームの設置が実務上の対策になります。
データ活用の成果を測定し続ける仕組みを持つ
IPAの「DX白書2023」では、データ利活用に取り組む日本企業でも、その成果を測定していない企業が少なくないと指摘されています*1。データを使った施策がどの程度の効果を生んだかを継続的に検証しなければ、活用が形だけのものにとどまり、経営層の関心も薄れやすくなります。成果測定を組織のルーチンに組み込む視点が欠かせません。
スモールスタートで成功体験を積む進め方
全社的な基盤整備を一度に進めようとすると、投資規模も調整すべき利害関係者も膨らみ、計画が停滞しやすくなります。特定の業務領域から始めるスモールスタートが現実的な進め方です。
効果を測定しやすい業務領域を最初に選ぶ
在庫最適化や顧客離反の予兆把握など、データと成果の因果関係を追いやすい業務領域から着手すると、投資対効果を早期に示しやすくなります。効果が見えにくい領域から始めると、経営層の支持を得る前に取り組みが尻すぼみになりかねません。
小さな成功を経営層への説明材料に変える
一つの業務領域で得られた成果を、具体的な数値とともに経営会議で共有すると、次の投資判断を得やすくなります。成功事例を横展開する前提として、最初の一歩で「データを使うと何が変わるのか」を可視化しておく価値があります。
失敗した場合の学びも次に生かす設計にする
スモールスタートの取り組みが期待した成果を出せない場合もあります。その際は、データの品質に問題があったのか、指標設計が経営課題とずれていたのかを検証し、次の領域選定に反映する仕組みを持つことが大切です。失敗を隠さず検証する姿勢自体が、データドリブンな文化の一部になります。
内製と外部活用の線引き — どこまで自社で担うか
データドリブン経営を進めるうえで、基盤構築・指標設計・分析実務のすべてを自社で完結させる必要はありません。どこまでを内製し、どこから外部の知見を借りるかを線引きする判断が実務上の課題になります。
データ基盤の構築を内製で行うには、データベース設計・ETL(データの抽出・変換・格納を行う処理)・セキュリティ設計など、複数領域の専門知識が必要です。経営判断に使う指標設計まで含めると、経営課題を理解した人材と技術者の両方が求められます。情シス部門の担当者数名だけでこれらを兼務するのは、負荷の大きい体制になりやすいのが実情です。
この負荷を軽減する選択肢として、データ基盤の構築・運用を外部パートナーに委託し、指標設計や経営会議での活用方法は自社が主導するという役割分担があります。基盤の保守・運用は元請として直接受託する体制のパートナーに任せ、自社は経営判断の主導権を持ち続けるという線引きが、現実的な進め方の一つです。
外部活用を検討する際は、委託範囲を「作って終わり」にしない契約設計が重要になります。基盤構築後の運用保守、指標の見直し、担当者への引き継ぎまでを含めて依頼範囲を決めておかなければ、外部への依存が続き、自社にノウハウが蓄積されない結果を招きかねません。
まとめ:データドリブン経営を根づかせる3つの判断軸
本稿では、データドリブン経営の始め方と進め方を整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、ツール導入の前に「何のためにデータを使うか」という目的を明確にすることが出発点になります。第二に、データ基盤・指標設計・組織文化と人材育成という3つの要素をそろえて初めて、データが経営判断に定着します。第三に、スモールスタートで成功体験を積みながら、内製と外部活用を適切に線引きすることで、無理のない範囲で取り組みを拡大できます。
よくある質問
データドリブン経営とデータ活用の違いは何ですか。
データ活用は分析やレポート作成といった個別の作業を指すことが多く、データドリブン経営はその結果を経営の意思決定プロセスそのものに組み込んだ状態を指します。分析結果が経営会議で判断根拠として扱われているかどうかが、両者を分ける実務上のポイントです。
データドリブン経営はどの部門から始めるのが現実的ですか。
在庫管理や顧客離反の予兆把握など、データと成果の因果関係を追いやすい業務領域から始めるのが現実的です。効果を数値で示しやすい領域を選ぶと、経営層への説明材料を早期に用意でき、次の投資判断につなげやすくなります。
経営層にデータ活用の重要性を理解してもらうにはどうすればよいですか。
抽象的な重要性を説くよりも、小さな業務領域で得られた具体的な成果を数値とともに共有する方法が効果的です。IPAの調査でも経営層のデジタル知見不足が課題として指摘されており*3、経営とデータをつなぐ橋渡し役を置くことも有効な対策になります。
データ基盤の構築を外部に依頼すると自社にノウハウが残りませんか。
委託範囲を事前に決めておけば懸念は軽減できます。基盤の技術的な実装・保守は外部に依頼しつつ、指標設計や経営判断への活用方法は自社が主導する役割分担にすれば、判断のノウハウは社内に蓄積されます。
データドリブン経営が根づいたかどうかはどう確認すればよいですか。
経営会議の議題が、経験則ベースの報告から指標データを起点にした議論へ切り替わっているかを確認する方法があります。あわせて、データ活用施策の成果を継続的に測定し記録できているかも、定着度を確認する目安になります。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX白書2023」https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108041.pdf(2023年)
- *2 出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~」https://www.meti.go.jp/press/2024/09/20240919001/20240919001.html(2024年)
- *3 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025 - 日米独比較で探る成果創出の方向性」https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2025.html(2025年)