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データ基盤構築を外注する費用と進め方【2025年版】
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- データ基盤はDWHを含む上位概念で、収集・変換・蓄積・活用・ガバナンスの5層から構成されます。外注前に自社の課題層を特定することが費用効率を高めます。
- クラウド型(BigQuery・Snowflake・Redshiftなど)は初期費用を抑えながら段階的に拡張できるため、中規模企業の外注案件で採用比率が高まっています。
- 外注費用は要件定義・設計・構築・移行・保守の工程別に構造が異なります。費用を抑えるには工程ごとの発注分割と内製範囲の明確化が有効です。
目次
データ基盤とは何か——DWHを含む上位概念の全体像
データ基盤構築の外注とは、社内外のデータを収集・変換・蓄積・提供・管理する仕組み全体を整備する作業を、専門パートナーに委託することを指します。単一のDWH(Data Warehouse、データウェアハウス)を構築するプロジェクトとは異なり、データ基盤はBI(Business Intelligence、経営分析)・機械学習・AIへの活用まで見据えた、より広い概念です。
DWH単体の構築コスト削減については別稿で詳しく解説しています。本記事では、DWHをひとつのコンポーネントとして含む「データ基盤全体の設計・構築・外注」に焦点を当てます。
データ基盤が注目される背景には、BI活用・AI開発・経営ダッシュボードの整備を推進する企業が増えた一方で、「データはあるが活用できない」「部門ごとにバラバラで統合できない」という課題が広がっていることがあります。データ基盤はこうした課題を構造的に解決するための土台です。
データ基盤の5つの構成要素と外注範囲の切り方
データ基盤を外注する際、「全部まとめてお任せ」では要件のすり合わせが難しく、費用も膨らみやすくなります。構成要素を理解したうえで、自社が担う層と外注する層を明確に切り分けることが、費用対効果を高める出発点です。
1. データ収集層——ソースシステムからの取り込み
基幹システム(ERP・CRM等)・SaaSツール・IoTセンサー・Webログなど、複数のデータソースからデータを引き出す工程です。API連携・バッチ転送・CDC(Change Data Capture、変更データキャプチャ)など接続方式の設計が外注の主な対象となります。
2. ETL/ELT層——変換・クレンジング・ロード
ETL(Extract / Transform / Load、抽出・変換・書き込み)またはELT(Extract / Load / Transform)でデータを整形し、分析に使える形に変換します。クレンジング・型変換・重複排除のロジック設計が技術的難度の高い工程です。データ品質の大半はここで決まります。
3. 蓄積層——データレイク・DWH・データマート
生データをそのまま格納するデータレイク(Data Lake)、分析用に整形済みデータを管理するDWH、部門別に絞り込んだデータマート(Data Mart)の3層で構成されます。クラウドサービスの選定はこの層が中心です。
4. 活用層——BI・レポーティング・ML連携
Tableau・Power BI・Looker Studio等のBIツールとの接続設定や、機械学習パイプラインへのデータ供給設計が含まれます。「データを整備しても誰も使わない」失敗を防ぐには、活用層の要件を蓄積層設計の前に確定しておく必要があります。
5. ガバナンス層——品質・カタログ・セキュリティ
データ品質管理・メタデータカタログ・アクセス権制御・データリネージ(来歴追跡)が含まれます。特に個人情報を扱う企業では、セキュリティ設計と監査ログの整備が法令遵守の観点から必須です。ガバナンスは後付けが難しく、設計段階からの組み込みが求められます。
クラウドDWH・データプラットフォームの選定観点——BigQuery・Snowflake・Redshift比較
クラウド型データプラットフォームはオンプレミスと比べて初期投資を大幅に抑えられ、ストレージとコンピューティングを独立してスケールさせられる点が特長です。外注先が提案するクラウドサービスを評価する際の基本的な観点を整理します。
| サービス | 提供元 | 課金モデル | 向いている用途・特徴 | 留意点 |
|---|---|---|---|---|
| BigQuery | Google Cloud | スキャンデータ量課金(オンデマンド)または定額スロット | 大規模アドホック分析・Google Workspaceとの親和性・ML連携(BigQuery ML) | スキャン量が多いクエリはコストが跳ね上がる。 クエリ最適化の設計力が問われる。 |
| Snowflake | Snowflake Inc. | クレジット消費(コンピューティング)+ストレージ従量 | マルチクラウド対応・データ共有(Data Sharing)・複数部門での同時利用 | コンピューティングを停止しないとクレジットが消費され続ける。 運用管理の習熟が必要。 |
| Amazon Redshift | AWS | プロビジョンド型(ノード時間課金)またはサーバーレス型 | AWS環境との統合・S3データレイクとの連携(Redshift Spectrum) | AWS他サービスとの連携が前提になると設計が複雑化しやすい。 運用チームのAWS知識が必要。 |
| Azure Synapse | Microsoft | 専用プール(DWU課金)またはサーバーレスSQL | Azure AD連携・Power BIとのシームレス統合・既存Azureインフラとの一体運用 | Power BIを主軸とする場合はコスト効率が高い。 Azure外からの移行は設計工数が増える。 |
上記の料金体系はいずれも公式ドキュメントに掲載されています(Amazon Redshiftはプロビジョンド型が時間あたり0.543 USDから*1、Snowflakeはオンデマンド契約でStandardエディション2.00 USD/クレジットから*2)。ただし実際の月額コストはクラスター構成・クエリ頻度・データ量・リージョンによって大きく変動するため、これらは市場参考値であり一次資料でない点にご注意ください。外注先への見積り依頼時は、想定データ量とクエリパターンを提示して試算を求めることが大切です。
クラウドサービスの選定は「どれが優れているか」ではなく「自社のデータ規模・既存クラウド環境・利用部門のスキル」の組み合わせで決まります。外注先がいずれかのサービスに偏った提案をする場合は、その根拠を確認しましょう。
データ基盤構築の進め方——要件定義から運用移管まで6ステップ
データ基盤構築プロジェクトの失敗の多くは、要件定義が曖昧なまま設計・開発に入ることで発生します。外注を成功させるには、発注企業側が各ステップで果たすべき役割を把握しておく必要があります。
ステップ1:現状データ資産の棚卸し——接続元システムと保有データの整理
どのシステムにどのようなデータが存在し、どの形式・どの更新頻度で生成されているかを整理します。この棚卸し作業は外注先に任せることもできますが、業務知識が必要なため社内主導が原則です。棚卸し精度が低いと、後工程でスコープが膨張して費用が増加します。
ステップ2:活用ユースケースの定義——「何のためのデータ基盤か」を先に確定する
「経営ダッシュボードを毎朝更新したい」「顧客行動データをMLモデルに供給したい」「部門別KPIをリアルタイムで可視化したい」——ユースケースが具体的であるほど、必要なデータ鮮度・粒度・結合パターンが明確になり、過剰なスペックを避けられます。
ステップ3:アーキテクチャ設計——クラウド選定と3層(レイク・DWH・マート)の設計
ステップ1・2の結果をもとに、外注先がアーキテクチャ案を提示します。複数案をROI視点で比較評価することが重要で、「安価なサービスを採用したが移行コストが高く総費用が増えた」という状況を防ぐには、TCO(Total Cost of Ownership、総所有コスト)視点での評価が有効です。
ステップ4:ETL/ELT開発とデータ品質設計——変換ロジックとテスト設計
ETL/ELTツール(Apache Airflow・dbt・AWS Glue・Azure Data Factory等)の選定と、変換ロジックの実装が主な作業です。データ品質テスト(行数チェック・NULL率監視・値域チェック)を開発段階から組み込むことが、後工程での手戻りを防ぎます。
ステップ5:BIツール接続とユーザー受け入れテスト——使われる基盤にするための工程
BIツール(Tableau・Power BI・Looker・Looker Studio等)との接続設定と、実際の業務ユーザーによる確認テストを行います。「技術的には動くが業務担当者が使えない」状態を避けるため、UAT(User Acceptance Testing、ユーザー受け入れテスト)に業務部門を参加させることが重要です。
ステップ6:運用移管と保守体制の構築——自走できる体制設計
本番稼働後の監視・障害対応・ETLジョブの追加・データ品質アラートの運用方針を確定します。外注先が保守を継続する場合と、社内チームへ引き継ぐ場合とでは、ドキュメント化・研修の深さが大きく異なります。後者を選ぶ場合は、引き継ぎ工程を契約スコープに明示することが大切です。
データ基盤外注の費用構造——工程別の相場感と変動要因
データ基盤構築の外注費用は、プロジェクト規模・データソース数・クラウドサービス選定・開発期間によって幅が生じます。以下に示す費用感はあくまで市場参考値であり、一次資料に基づく確定的な相場ではありません。実際の発注では複数社への見積り依頼と工程別明細の精査が不可欠です。
工程別の費用構造
| 工程 | 主な作業内容 | 費用の変動要因 |
|---|---|---|
| 要件定義・現状調査 | ヒアリング・データ棚卸し・ユースケース整理・アーキテクチャ選定 | データソース数が多いほど調査工数が増える。 既存システムの文書化状況が低いと大幅に工数が膨らむ。 |
| 設計(アーキテクチャ・詳細設計) | データモデル設計・ETLフロー設計・テーブル定義・セキュリティ設計 | テーブル数・変換ロジックの複雑さに比例。 ガバナンス要件が厳しいほど設計工数が増加する。 |
| 開発・構築 | ETL/ELT実装・DWH構築・データマート作成・BIツール接続 | データソース数・変換ルール数・BIレポート数が直接的に工数に影響する。 既存データの品質が低いほどクレンジング工数が増える。 |
| テスト・移行 | 単体テスト・結合テスト・UAT・本番データ移行 | 移行するデータ量と過去データの品質が工数の主因。 並行稼働期間が長いほど費用が増加する。 |
| 保守・運用支援 | 監視・障害対応・ETLジョブ追加・データ品質管理・バージョンアップ対応 | 月次定額型か工数精算型かで月額が変わる。 SLA(稼働保証水準)が高いほど費用が高くなる傾向がある。 |
費用を抑える3つのアプローチ
第一に、フェーズ分割発注が有効です。全工程を一括発注するのではなく、要件定義・設計フェーズを先行発注してアーキテクチャを確定し、その後に開発フェーズを発注する方法です。スコープを段階的に固めることで無用な仕様変更を防げます。
第二に、内製範囲を明確にすることです。データ棚卸しや業務ユースケースの定義は自社が主導できる工程です。ここを外注に丸ごと任せると費用が高くなります。業務知識の強い工程は社内で担い、技術的な工程を外注に絞り込む設計が費用対効果を高めます。
第三に、マネージドサービスの積極活用です。ETLツール・クラウドDWH・BIツールはすべてクラウドのマネージドサービスを活用することで、インフラ構築・運用の工数を削減できます。オンプレミスから移行する場合は、サーバー調達・OS管理などの工程が不要になります。
外注先の選定基準——技術スタック・体制・ガバナンス対応で評価する
データ基盤構築の外注先を選ぶ際は、価格だけでなく以下の観点で総合的に評価することが重要です。失敗事例の多くは「費用が安かったが技術力が不足していた」または「技術力はあったが業務理解が低く活用できないシステムになった」パターンです。
技術スタックの実績確認——扱うツールの習熟度を問う
提案されるクラウドサービス(BigQuery・Snowflake・Redshift等)やETLツール(dbt・Airflow・AWS Glue等)について、過去の構築実績と担当エンジニアの経験年数を確認しましょう。「対応可能」と「実績がある」は大きく異なります。可能であれば類似規模のデータ基盤の構築事例を示してもらうことが有効です。
体制の安定性——プロジェクト終了後の保守継続性
データ基盤は構築して終わりではなく、データソースの追加・仕様変更・品質劣化への対応が継続的に発生します。担当エンジニアが途中で変わるリスクや、保守フェーズへの引き継ぎ体制が整っているかを発注前に確認しましょう。
ガバナンス・セキュリティ対応——個人情報・秘密情報の取り扱い
データ基盤には顧客情報・取引データなど機密性の高い情報が集約されます。ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証やプライバシーマーク取得の有無、データ処理委託に伴う秘密保持契約(NDA)の整備状況を確認することが大切です。
元請(プライムベンダー)としての一元管理体制
データ基盤のプロジェクトでは、クラウド設計・ETL開発・BIツール設定・セキュリティ設計など複数の専門領域が関わります。各工程を別々のベンダーに分散発注すると、インターフェース設計の責任が曖昧になり、障害時の原因特定が困難になります。元請として全体を一括で管理できる体制を持つ外注先を選ぶことで、プロジェクトの調整コストを大幅に削減できます。
内製と外注の役割分担——失敗しない線引きの考え方
データ基盤を全面的に外注することには、高い技術力を早期に獲得できる利点があります。一方で、業務ロジックの理解・活用ユースケースの発見・データオーナーシップの維持は、内製チームが主導する方が品質向上につながります。
内製が向いている工程——業務知識を要するもの
- 業務要件・ユースケース定義(業務部門との対話が必須)
- データ品質の判断基準設定(業務上の「正しい値」の定義)
- BIダッシュボードの要件定義(誰が何を見るかの決定権は業務側にある)
- データオーナーシップの管理(どのデータを誰が管理するかの責任定義)
外注が向いている工程——専門技術を要するもの
- クラウドアーキテクチャ設計(各サービスの特性とTCO最適化の専門知識が必要)
- ETL/ELTパイプライン開発(データエンジニアリング専門知識が必要)
- データモデル設計(スター・スノーフレークスキーマ等の設計パターンの習熟が必要)
- インフラのセキュリティ設定とガバナンス基盤の構築
内製化を全て試みると生じるリスク——スキルギャップのコスト
データ基盤の構築・運用には、データエンジニア・クラウドアーキテクト・データアナリストの各スキルが必要です。これらの専門人材を採用で調達しようとすると、採用リードタイムが数ヶ月から半年以上かかる場合があります。外注を活用することでプロジェクトの立ち上げを加速し、並行して社内スキルを育成するアプローチが実務上取りやすい選択肢のひとつです。
外注先との協働を通じて社内エンジニアがETL開発・クラウド運用のスキルを習得する体制を、契約段階から明示することも重要です。「作って終わり」ではなく「作りながら育てる」外注の活用が、中長期的なデータ活用力の向上につながります。
まとめ——外注判断の3つの軸
本稿では、データ基盤の全体像(5層構成)・クラウドサービス選定の観点・構築の6ステップ・費用構造・外注先の選定基準・内製と外注の役割分担を整理しました。要点を3点にまとめます。
第一に、データ基盤はDWHを含む上位概念であり、収集・ETL/ELT・蓄積・活用・ガバナンスの5層を一体で設計する必要があります。どの層に課題があるかを先に特定することが、外注範囲と費用を適切に定める出発点です。
第二に、クラウドDWH(BigQuery・Snowflake・Redshift・Azure Synapse)の選定は「優劣」ではなく「自社の既存環境・データ規模・活用ユースケース」との適合性で判断します。外注先の提案をそのまま受け入れず、TCO視点での比較を求めましょう。
第三に、外注費用は工程ごとの分割発注・内製範囲の明確化・マネージドサービスの活用の3点で最適化できます。一括発注より段階的な発注の方が、要件変動によるコスト増加リスクを抑えられます。
よくある質問
データ基盤構築とDWH構築の違いはなんですか。
DWH(データウェアハウス)はデータ基盤を構成する蓄積層のひとつです。データ基盤はそれに加えて、収集・ETL/ELT変換・データレイク・データマート・BI連携・ガバナンスを含む上位概念です。「DWHを作ること」はデータ基盤構築の一部であり、データ活用全体を支える仕組みを整備するにはDWH以外の層も設計・構築する必要があります。
データ基盤構築の外注はどの工程から依頼するのが現実的ですか。
まず要件定義・現状調査フェーズから外注するのが現実的です。現状のデータ資産・接続システム・活用ユースケースを整理した段階でアーキテクチャ選定の判断ができ、その後の開発工程をより正確に見積もれます。最初から全工程を一括で発注すると、要件の不確実性が高い状態で費用が確定するリスクがあります。
クラウドDWHの費用はどのように見積もればよいですか。
クラウドDWHの費用はストレージ量・クエリ処理量・コンピューティングリソースの3要素で決まります。外注先への見積もり依頼時には、想定データ量(GB/TB単位)・クエリの実行頻度・同時接続ユーザー数を提示することが精度を高めるポイントです。各クラウドの公式料金計算ツールを使った試算も、外注先に依頼できます。なお料金は契約形態・リージョン・エディションによって変動するため、市場参考値として扱い、正式な費用は外注先からの見積もりで確認してください。
データガバナンスは外注できますか。
ガバナンス基盤(メタデータカタログ・アクセス権管理・データリネージの技術的な構築)は外注が可能です。ただしデータオーナーシップの定義(誰がどのデータに責任を持つか)や品質基準の設定は業務知識が必要なため、社内主導で決定し、技術的な実装を外注するという役割分担が実務上有効です。
外注後に社内でデータ基盤を内製化できますか。
段階的な内製化は実現可能です。まず外注先に構築・運用を委託しながら社内エンジニアが並走し、ETLジョブの追加・監視対応・データマートの拡張を社内で担えるよう知識移転を進めるアプローチが有効です。契約段階で「引き継ぎ前提のドキュメント整備と研修」をスコープに含めることが、内製化移行をスムーズにするポイントです。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:AWS「Amazon Redshift の料金」(2025年確認)
- *2 出典:Snowflake「Snowflake Pricing Guide」(2025年確認)