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データサイエンティスト不足を外注と育成で補完する進め方
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- データサイエンティストはデータエンジニア・MLエンジニアとは役割が異なり、統計・機械学習でビジネス課題を分析して示唆を出す職種です。需要拡大に対して育成が追いつかず、採用難が続いています
- 受託・ラボ型外注と社内育成を組み合わせることで、データ活用を止めずに段階的な内製化を進められます
- 委託先を選ぶ際は、分析実績・ドメイン理解・示唆の質・知見移転への対応の4点を確認することが、長期的な成果につながります
目次
データサイエンティストとは:データエンジニア・MLエンジニアとの役割の違い
データサイエンティスト不足の補完策とは、ビジネス課題を統計・機械学習で分析して示唆を出す専門人材を、自社採用だけでは確保できない企業が、受託・ラボ型外注や社内育成を組み合わせてデータ活用を継続させる取り組みを指します。
データサイエンティストを正確に位置づけるためには、隣接する2職種との役割の違いを理解することが大切です。3つの職種は互いに連携しますが、担う業務の軸が異なります。
データエンジニアは、データを収集・加工・格納するパイプラインやデータウェアハウス(DWH)・データレイクといったデータ基盤を構築・維持します。データサイエンティストが分析に使えるデータを整備することが主な役割です。
MLエンジニア(機械学習エンジニア)は、データサイエンティストが設計したモデルを本番環境に実装・デプロイし、MLOps(機械学習モデルの継続的な訓練・評価・デプロイを管理する運用基盤)を維持します。実装・運用の専門家として位置づけられます。
データサイエンティストは、これら2職種が整えた環境を前提に、統計・機械学習を用いてビジネス課題を分析し、示唆と改善提言を出すことを担います。「データから何が言えるか」「経営・事業判断にどう活かすか」を可視化する役割です。
3職種は役割が異なるため、「データエンジニアを確保すればデータサイエンティストの不在を補える」というわけではありません。本記事が扱うのは、分析・モデリング・ビジネス課題のデータ化を担うデータサイエンティストの不足への対応策です。
なぜ不足するのか:需要拡大・育成の遅れ・採用難の3要因
データサイエンティスト不足は複合的な要因から生じています。需要と供給の両面から整理することで、採用一本足では解消しにくい理由が見えてきます。
要因1:AI・データ活用需要の拡大で求人が急増している
経済産業省が2019年に公表した「IT人材需給に関する調査」*1では、AI・クラウド・セキュリティなど先進IT分野のエンジニア需給ギャップが2030年に向けて拡大する見通しが示されています。同調査の試算ではIT人材全体で約79万人の不足が生じうるシナリオも示されており、データサイエンス・AI分野はその中でも需給逼迫が顕著な領域として位置づけられています。
クラウドサービスの普及とデータ量の増大を背景に、業種を問わず企業がデータ活用に取り組む動きは続いています。製造・小売・金融・医療など非IT業種でもデータドリブンな意思決定を求める事例が増えており、データサイエンティストへの需要は引き続き拡大する傾向があります。
要因2:育成に必要なスキルの幅が広く、戦力化までに時間がかかる
データサイエンティストに求められるスキルセットは多岐にわたります。主な領域を整理すると次のとおりです。
- 統計・数学:記述統計・推測統計・確率・回帰分析・仮説検定などの基礎知識
- 機械学習・モデリング:分類・回帰・クラスタリングなどのアルゴリズム選定と評価
- プログラミング:Python・R・SQLによるデータ加工・分析コードの実装
- データ可視化:TableauやPower BI(セルフサービスBI)等を活用した結果の可視化・説明
- ビジネス理解:課題を定義してデータ分析の問いに落とし込み、示唆をアクションにつなげる思考力
技術と業務理解の双方が求められる職種であるため、既存の業務担当者やエンジニアを育成しても実務レベルに達するまで半年から1年以上かかるのが一般的です。育成環境が整わなければ、研修を終えても実践機会がなく習熟が進みません。
要因3:母数が限られ、採用競争が激しい
データサイエンティストの国内就業者数は、IT人材全体の中でも比較的少ない水準にとどまっています。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公表している「DX動向2025」*2においても、先端IT領域の専門人材の確保が日本企業のDX推進における課題として挙げられています。
分析スキルとビジネス課題解決力の両方を持つ人材は特に競争が激しく、大手企業・コンサルティングファーム・テック企業が採用市場を先行しています。中堅・中小企業では報酬面や実績案件の充実度で競り負けるケースがあります。
補完の選択肢:受託・ラボ型外注と社内育成の比較
データサイエンティスト不足に対する補完手段は、外部活用と内製育成の組み合わせが現実的です。採用が即座に解決策にならない場合、以下の選択肢を状況に応じて選んで組み合わせます。
| 補完手段 | 特徴・向いているケース | 留意点 |
|---|---|---|
| 受託分析 | 分析テーマや成果物(レポート・予測モデル・可視化ダッシュボード)を仕様書ベースで発注。 期間・スコープが明確なプロジェクトや初期分析・PoCに向く。 |
業務文脈の共有が浅いと示唆の精度が下がりやすい。 課題定義のすり合わせに十分な準備時間をかける必要がある。 |
| ラボ型外注 | 専任分析チームを月次契約で確保し、継続的な分析・モデル改善・示唆提供まで伴走。 課題が変化しやすい環境や長期的なデータ活用推進に向く。 |
月次固定費が発生するため、活用計画の明確化が必要。 成果をKPIで定義して定期的にレビューする体制が求められる。 |
| 社内育成(研修・OJT) | 既存の業務担当者・エンジニアにデータサイエンス技術を習得させる。 長期的な内製化を目指す企業・業務知識が豊富な社員を活かしたい場合に向く。 |
実践機会がなければ研修だけでは習熟しない。 外注との並走でOJT環境を作ることが育成加速のポイント。 |
| 中途採用 | 即戦力の経験者を迎えて社内チームを立ち上げる。 データ活用を事業の中核に据える企業に向く。 |
採用リードタイムが長く、母数が少ない。 採用競争が激しく、処遇面での準備が必要。 |
これらは排他的な選択肢ではありません。受託分析で初期検証を素早く進め、継続的な活用フェーズではラボ型に切り替えながら社内育成を並走させる、という組み合わせが実務上機能しやすいパターンです。
経済産業省の調査*1でも、IT人材の確保方法として外部委託と社内育成の併用が増加傾向にあることが示されており、採用一本足での解決を前提としない計画が現実的です。
外注と育成で補完する進め方:課題定義→外注分析→育成並走→内製化の4ステップ
「とりあえず外注する」だけでは外部依存が固定化し、ノウハウが社内に蓄積されません。以下の4ステップに沿って進めることで、外注と育成を組み合わせた持続可能な体制を構築できます。
ステップ1:分析テーマを定義し、優先順位を絞る
「データ活用を進めたい」という目標のまま外注を探し始めると、委託後に的外れな分析結果が返ってくるリスクがあります。まず「どのビジネス課題をデータで解きたいか」を社内で整理することが出発点です。
具体的には、①事業インパクト(改善幅・影響部門)、②データの存在と品質(分析に耐えうるデータが揃っているか)、③スピード(どの程度の期間で答えが必要か)の3軸で優先順位をつけます。データが整っていないテーマは、まずデータエンジニアによる基盤整備を先行させることが現実的です。
ステップ2:初期分析・PoCを外注で素早く進める
テーマと利用データの見通しが立ったら、受託またはラボ型で初期分析・PoC(概念実証:Proof of Concept)を実施します。外注の目的は「自社の課題にデータ分析が有効かを素早く検証すること」です。完全精度のモデルや完成された示唆を最初から求める必要はありません。
この段階で社内の担当候補者(将来の内製化要員)を外注先のレビューに参加させることが大切です。委託先が課題をどう分解し、どのデータを選び、何を示唆として提示するかを間近で観察することが、後の育成の出発点になります。
ステップ3:社内育成を外注と並走させて知見を蓄積する
外注で分析を進める期間中に、社内の育成を同時に進めます。研修・e-learning(Pythonや統計の基礎コースなど)で土台を作りながら、外注先のプロジェクトへの参加でOJT効果を得る形が習熟を早めます。
委託契約に設計ドキュメントの整備・コードレビューへの社内担当者参加・示唆の背景説明を義務として盛り込んでおくと、分析ノウハウが会社の資産として蓄積されます。「作って終わり」ではなく「一緒に考える」体制を委託開始前に合意することがポイントです。
ステップ4:外注比率を段階的に縮小して内製化する
育成が進み、社内担当者がデータ加工・分析・簡易モデルの構築と評価を担えるようになったら、外注の範囲を徐々に縮小します。外注先が担っていたタスクを社内担当者に移行し、外注は複雑なモデル開発や新しい分析テーマの立ち上げのみに限定する、という段階的移行が現実的です。
採用においても、外注を通じて社内に実際のデータ活用プロジェクトが生まれることで、求人票に記載できる実績が充実します。「データで課題解決した経験がある環境」は採用競争力の向上につながります。
委託先の選び方:分析実績・ドメイン理解・示唆の質・知見移転の4軸
データサイエンティスト不足を補う委託先の選定は、一般的なシステム開発の外注とは異なる観点が必要です。以下の4軸で確認することをお勧めします。
軸1:自社業種・ユースケースに近い分析実績があるか
製造業の品質異常検知と小売の購買予測では、利用するアルゴリズムも評価指標もデータの扱い方も異なります。ポートフォリオや事例紹介で自社の課題に近い業種・テーマでの実績を確認し、精度指標をどう設定・管理したかを具体的に聞いてみることが判断材料になります。
「AIを使って何かやった」という実績と「特定の課題をデータで解決した」という実績では、委託後の成果に大きな差が生じます。事例の具体性と再現可能性を確認することが大切です。
軸2:業務・ドメインの文脈を理解した上で分析できるか
データサイエンティストの成果の質は、技術力だけでなくビジネス理解の深さに依存します。委託先が自社の事業モデル・顧客構造・KPI体系を把握した上で分析を設計できるかどうかが、示唆の有用性を大きく左右します。
提案段階で「どのビジネス課題にどうアプローチするか」の仮説を示せるかどうかが見極めのポイントです。データを渡すだけで適切な問いを設定してくれる委託先は、単なるデータ処理業者とは異なるパートナーとして機能します。
軸3:「分析結果」ではなく「次の打ち手」まで示唆できるか
データサイエンティストに期待する価値は「データの可視化・集計」ではなく、「経営・事業判断につながる示唆の提供」です。委託先が分析結果を提示するだけで終わるのか、示唆から具体的なアクション提言まで踏み込んでくれるのかを事前に確認します。
「分析の限界と不確実性の明示」「前提条件の共有」「複数シナリオでの評価」ができる委託先は、示唆の質が高い傾向があります。契約前に小規模な分析案件で試してみることも、示唆品質を見極める有効な手段です。
軸4:知見移転・ドキュメント整備に対応できるか
外注依存を長期化させないためには、委託先が知見移転をスコープとして対応できるかが重要です。設計ドキュメントの整備・社内担当者へのレビュー説明・内製化ロードマップの策定支援を提供できる委託先は、単発の分析納品にとどまらないパートナーとして機能します。
契約時に知見移転の方法・頻度・成果物をスコープとして明示することがトラブル防止になります。元請(プライムベンダー)として窓口を一本化できる体制かどうかも確認します。複数の下請けが介在すると、分析の設計責任とデータ管理の責任の所在が曖昧になりやすく、品質課題への対応が遅れます。
LASSICは元請(プライムベンダー)としてデータ分析・AI受託からラボ型体制の構築まで対応しており、データ分析・AI受託の知見 の支援実績を持ちます。課題定義から分析・モデル構築・知見移転まで一気通貫で伴走できる体制を整えています。
まとめ:データサイエンティスト不足に対応する3つの判断軸
本稿では、データサイエンティスト不足の背景から補完策の選び方・進め方・委託先の評価軸までを整理しました。要点を3つに集約すると次のとおりです。
第一に、データサイエンティストはデータエンジニア(基盤・パイプライン担当)・MLエンジニア(モデル実装・MLOps担当)とは異なる職種であり、統計・機械学習でビジネス課題を分析して示唆を出す役割を担います。需要拡大と育成の遅れが重なり、採用だけに頼ると着手が大幅に遅れるリスクがあります。
第二に、補完は「課題定義→外注分析→育成並走→段階的内製化」の4ステップで進めることで、外注依存を固定化させずに社内への知見蓄積ができます。外注開始段階から社内担当者を参加させ、並走する形が育成効率を高めます。
第三に、委託先の選定では分析実績・ドメイン理解・示唆の質・知見移転対応の4軸で評価することが成否を分けます。課題定義から示唆提供・内製化支援まで一気通貫で伴走できる元請(プライムベンダー)体制の委託先を選ぶことが、長期的なリスク低減につながります。
よくある質問
データサイエンティストとデータエンジニアはどう違いますか?
データエンジニアはデータを収集・加工・格納するパイプラインやデータウェアハウス(DWH)・データレイクなどの基盤を構築・維持する職種です。データサイエンティストはその基盤上にあるデータを統計・機械学習で分析し、ビジネス課題への示唆や予測モデルを提供します。役割が異なるため、データエンジニアを確保してもデータサイエンティストの業務は代替できません。データ活用を推進するには両職種の連携が必要です。
データサイエンティストを外注する場合、何を委託できますか?
外注では、データ分析・統計レポート作成・予測モデルの設計と構築・PoC(概念実証)の実施・分析結果のビジネス解釈と提言といった業務を委託できます。一方、業務文脈や社内データへの深い理解が必要な課題定義や、継続的な意思決定への組み込みは社内で担うことが現実的です。外注で初期分析・モデル開発を素早く進め、社内育成と並行して内製化を図る二段構えが有効です。
社内育成でデータサイエンティストを育てるにはどのくらいかかりますか?
既存の業務担当者やエンジニアをデータサイエンティストとして育成するには、統計・機械学習・プログラミング(Python/Rなど)・ビジネス理解の習得が必要で、実務レベルに達するまでには半年から1年以上かかるのが一般的です。研修・e-learning・外注先との並走OJTを組み合わせることで習熟を早められます。短期的なリソース確保は外注で補いながら、中長期の内製化を育成で目指す計画が現実的です。
外注に頼り続けるとどのようなリスクがありますか?
外注依存が続くと、分析ノウハウや業務データの解釈知識が社内に蓄積されずに流出します。委託先の契約終了や担当者変更があった場合に、モデルの再現・改善・説明が困難になるリスクがあります。また、分析依頼のたびに外注コストが発生するため、データ活用の頻度が上がるほどコストが増大します。段階的な内製化への移行計画を早期に組み込むことが、長期的なリスク低減につながります。
委託先のデータサイエンティストが示す示唆の質をどう評価すればよいですか?
示唆の質は「分析結果が出た」だけでなく「ビジネス課題に対して次の打ち手が具体的に示されているか」で評価します。具体的には、①分析の前提条件と限界が明示されているか、②課題の背景を理解した上での解釈か、③アクションにつながる提言(何をどの程度変えるべきか)が含まれているか、の3点を確認するとよいでしょう。契約前に小規模な分析案件で試してみることも、委託先の示唆品質を見極める有効な手段です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年公表)
- *2 出典:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「DX動向2025」(2025年公表)