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2026.06.22 らしくコラム

電子契約システムの導入を外注する費用と進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

電子契約・電子署名のイメージ

この記事のポイント

  • 電子署名法(平成12年法律第102号)に基づき、要件を満たす電子署名は法的有効性が認められます
  • 電子署名には「当事者型(PKI型)」と「立会人型(事業者署名型)」の2方式があり、取引形態に応じた選択が必要です
  • 外注委託先を選ぶ際は、電子署名法対応・CLM機能・既存基幹連携の3軸で評価することが重要です

電子契約システムとは:電子署名法に基づく締結・管理の仕組み

契約書を扱うビジネスのイメージ

電子契約システムとは、電子署名法(平成12年法律第102号)に基づいた電子署名を活用し、契約の締結・管理・保管を電子的に完結させる仕組みです。紙の契約書への署名・押印をデジタル化し、承認ワークフローや契約書管理(CLM)まで一元的に行えることが特徴です。

STEP 1 要件 定義 現状把握 業務整理 STEP 2 方式 選定 当事者型/ 立会人型 STEP 3 開発・ 連携 構築・API 連携実装 STEP 4 テスト・ 承認 検証・UAT 法務確認 STEP 5 運用 開始 教育・監視 運用保守
図:電子契約システム導入の5ステップ

電子署名法(平成12年法律第102号)の概要

電子署名法は平成13年(2001年)4月1日に施行されました。同法は、電子商取引などネットワークを利用した経済活動の円滑化を目的として制定されています。

同法第3条は、本人による一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書について「真正に成立したもの(本人の意思に基づき作成されたもの)と推定する」と定めています。*1 この推定規定により、電子署名は手書き署名・押印と同等の法的証拠力を持ちます。

電子契約が法的に有効とみなされる条件

デジタル庁の公式ページによれば、「一定の要件を満たす電子署名が付与された電子文書は、本人の意思に基づいて作成されたものと推定される」とされています。*2 要件を満たさない電子的合意でも契約自体は成立しますが、後の紛争時に証明力が弱くなるリスクがあります。

また、令和2年(2020年)に総務省・法務省・経済産業省が連名で公表したQ&Aでは、立会人型(事業者署名型)の電子署名についても一定条件下で電子署名法上の有効性が認められることが示されています。*3

電子契約システムの主要機能

電子契約システムは、単なる署名ツールにとどまらず、以下の機能群を包含しています。

機能カテゴリ 主な機能 外注時の確認ポイント
契約締結 電子署名・タイムスタンプ付与・送付 電子署名方式・認定認証機関の対応
承認ワークフロー 多段階承認・差し戻し・代理承認 既存ワークフローシステムとの統合
CLM(契約管理) 契約書の検索・期限管理・ステータス管理 CLM機能の充実度・カスタマイズ性
基幹連携 ERP・購買管理・SFAとのAPI連携 API仕様・連携工数の見積もり

当事者型と立会人型:電子署名2方式の特徴と選び方

電子契約システムを外注・導入する際に最初に決定すべきなのが、電子署名の方式です。日本では主に「当事者型(PKI型)」と「立会人型(事業者署名型)」の2方式が普及しています。

当事者型(PKI型)の仕組みと適用場面

当事者型は、契約当事者それぞれが電子証明書(公開鍵基盤:PKI=Public Key Infrastructure)を取得し、自身の署名鍵で電子文書に署名する方式です。署名者本人が証明書を保有するため、署名の非改ざん性・本人性を高いレベルで証明できます。

大手企業間の重要な契約(M&A関連書類・金融取引・官公庁調達)など、署名者本人の確認が厳格に求められる取引に適しています。一方、相手方企業が電子証明書を取得していない場合は利用できないため、取引先への負担が生じます。

立会人型(事業者署名型)の仕組みと三省庁Q&A

立会人型は、電子契約サービスの提供事業者が、利用者の指示に基づいて事業者の署名鍵で署名する方式です。相手方がメールアドレスを認証するだけで署名できるため、導入の手軽さと相手方の利用障壁の低さが特長です。

令和2年7月・9月に総務省・法務省・経済産業省が連名で公表したQ&Aでは、「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等する電子契約サービス」について、一定の条件を満たす場合に電子署名法第3条の推定効が認められることが明確化されました。*3

自社に合う方式の選び方

比較軸 当事者型(PKI型) 立会人型(事業者署名型)
署名鍵の保有者 契約当事者本人 サービス提供事業者
相手方の負担 電子証明書の取得が必要 メール認証のみ(低負担)
本人性の証明強度 高い 条件次第で認められる
適した契約種別 重要度の高い取引・公共調達 汎用的な業務契約・発注書
導入コスト傾向 証明書取得コストが発生 相対的に低コスト

なお、同一システムで両方式を使い分けられる「ハイブリッド型」のサービスも存在します。取引の重要度や相手方の対応状況に応じて方式を使い分けることで、利便性とセキュリティを両立できます。

電子契約システム導入を外注する理由とリスク

電子契約システムの導入は、電子署名法・セキュリティ要件・既存システム連携など複数の専門領域が絡み合います。内製化が難しいと判断した場合、外注が有効な選択肢となります。

外注が有効な3つのケース

(1)電子署名法・法的要件の専門知識が社内にない場合
電子署名の方式選定や認定認証機関の選択には、法的知識と技術的知識の両方が必要です。社内に専門人材がいない場合、外注先の知見を活用することで導入リスクを下げられます。

(2)既存の基幹システムとの連携が複雑な場合
ERPや購買管理システム、ワークフローシステムとのAPI連携には、既存システムの仕様理解と連携設計の経験が必要です。改修範囲が広い場合は外注のほうが短期間で品質を確保できます。

(3)CLM(契約ライフサイクル管理)機能のカスタマイズが必要な場合
CLM(Contract Lifecycle Management)とは、契約の起案から締結・期限管理・更新・終了までを一貫して管理する機能です。標準SaaSの機能に自社業務が合わない場合、外注でカスタマイズすることが有効です。

外注時の主なリスクと対策

リスク 対策
電子署名法対応の不備 委託先が電子署名法・認定認証機関への対応実績を持つか確認する
要件定義の曖昧さによるコスト膨張 要件定義フェーズに十分な時間をかけ、変更管理プロセスを契約に明記する
連携システムとの仕様不整合 既存システムのAPI仕様書・ERD を事前に共有し、PoC(概念実証)を経てから本開発に移行する
ベンダーロックイン データエクスポート仕様・移行ポリシーを契約書に明記し、標準フォーマット対応を確認する

委託先の選定ポイント:電子署名法対応・CLM・基幹連携

電子契約システムの外注先を選定する際は、「電子署名法対応・セキュリティ」「CLM機能」「基幹連携能力」の3つの軸で評価することをおすすめします。

電子署名法対応・セキュリティ要件

委託先がどの電子署名方式に対応しているかを確認してください。当事者型を採用する場合は、電子署名法に基づく特定認証業務の認定を受けた認証機関(デジタル庁の認定リストに掲載)の証明書を利用できるかが重要です。

セキュリティ面では、ISO 27001(情報セキュリティ)やSOC 2などの第三者認証取得状況、タイムスタンプの付与仕様(長期署名対応の有無)、鍵管理のポリシーを確認します。

CLM(契約ライフサイクル管理)機能の要件

CLM機能は、単なる締結ツールを超えた契約管理の核心です。評価すべき観点は以下のとおりです。

  • 契約書のバージョン管理・差分比較機能
  • 契約期限・自動更新の通知アラート設定
  • 契約書全文の全文検索・タグ管理
  • 相手方企業との交渉・修正履歴の管理
  • 部門ごとのアクセス権限管理

カスタム開発を検討する場合、標準SaaSでは対応できない独自の承認フローや特殊な契約種別管理が求められることが多く、その分開発工数と費用が増加します。

既存基幹システム・ワークフローとの連携能力

電子契約導入企業の実務では、ERPや購買管理システム・SFA・グループウェアとの連携が求められるケースが大半です。委託先の連携実績(どのERPパッケージと連携した実績があるか)とAPIの充実度を事前に確認することが大切です。

連携設計の段階では、既存システムのAPI仕様書と電子契約システム側のAPI仕様書を突き合わせ、データマッピング(項目対応表)を作成した上でPoC(概念実証)することで、後の手戻りを防げます。

導入費用の目安(市場参考値)

以下の費用レンジは市場参考値であり、一次資料に基づく数値ではありません。実際の費用は要件・ベンダーにより大きく異なります。複数ベンダーへの見積もり依頼をお勧めします。

SaaS型サービスを活用する場合

標準機能のみを利用する場合は、初期費用と月額利用料が主なコストです。市場では月額数万円〜十数万円程度で利用できるサービスが複数あります。送信件数ごとの従量課金が加わるプランも一般的です。

SaaS型導入時の外注費用は、主に「設定・カスタマイズ支援」「既存データ移行」「ユーザー教育」の3項目で発生します。標準機能で要件が満たせる場合は、外注費を比較的抑えられます。

カスタム開発・API連携が必要な場合

既存基幹システムとのAPI連携や独自承認ワークフローの実装が必要な場合、開発費として数百万円〜数千万円規模になることがあります。主なコスト要因は以下のとおりです。

費用項目 費用の目安(市場参考値) 費用を左右する要因
要件定義・設計 数十万円〜 業務フローの複雑さ・ステークホルダー数
基幹システム連携開発 数百万円〜 連携システム数・API対応状況
CLMカスタマイズ 数百万円〜 カスタマイズ項目数・画面数
データ移行 数十万円〜 既存契約書数・データ品質
保守・運用(月額) 月額数万円〜 サポート範囲・SLAレベル

費用を左右する主な要因

開発費用に最も影響するのは「連携対象システムの数と複雑さ」です。ERPや購買管理など複数システムと同時に連携する場合、インタフェース設計・テストの工数が大幅に増加します。また、承認ルートの複雑さ(多段階・条件分岐)や、過去に締結した紙契約書のデジタル移行範囲も費用に直結します。

導入の流れ:要件定義から運用開始まで5ステップ

電子契約システムの外注導入は、大きく5つのステップで進みます。各ステップで確認すべきポイントを押さえることで、手戻りとコスト超過を防げます。

STEP 1:要件定義 — 現状把握と業務フロー整理

最初のステップは、現状の契約業務フローと課題の洗い出しです。「どの契約種別を電子化するか」「承認者は誰か・何段階か」「連携が必要なシステムは何か」を業務担当・法務・IT部門が合同で整理します。

この段階で電子署名方式(当事者型 or 立会人型)の方針も仮決めします。方式によって必要な認証基盤や費用が変わるため、委託先候補と早期に議論を始めることが重要です。

STEP 2:方式選定 — 当事者型か立会人型かを決定

要件定義の結果をもとに、電子署名方式を正式決定します。取引相手の規模・対応力、自社の法的リスク許容度、コストバランスを踏まえて判断してください。

重要度の高い取引には当事者型、汎用的な業務契約には立会人型という使い分けや、両方式のハイブリッド運用も選択肢になります。委託先がどの方式に対応しているかも、この段階で最終確認します。

STEP 3:開発・連携 — システム構築とAPI連携実装

委託先が設計書をもとにシステムを構築するフェーズです。特にAPI連携においては、既存システム側の改修範囲を早期に確定し、本番環境の影響範囲を最小化する設計が求められます。

開発中はスプリントレビューなどで進捗を定期的に確認し、要件との乖離を早期に発見する体制を整えましょう。仕様変更が発生した場合の変更管理プロセスも事前に取り決めておくことが大切です。

STEP 4:テスト・承認 — 動作検証と法務確認

開発が完了したら、ユーザー受け入れテスト(UAT)します。電子署名の付与・タイムスタンプの記録・承認フローの動作を実際の業務シナリオで検証してください。

法務部門によるレビューも不可欠です。電子署名の法的有効性、証拠力に関する確認し、問題があれば運用ポリシーや設定を修正した上で本番移行の承認を得ます。

STEP 5:運用開始 — 教育・監視・保守体制の整備

本番稼働後は、利用者への操作教育とヘルプデスク体制の整備が重要です。電子署名の失効・証明書期限切れなどのアラート監視体制も委託先と合わせて設計してください。

運用開始後も定期的なセキュリティ監査と法改正への対応(電子署名法の改正・認定基準の変更)が必要です。保守契約の範囲に法改正対応が含まれているかを、外注契約時に確認しておきましょう。


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まとめ:外注委託先を選ぶ3つの判断軸

電子契約システムの導入外注を成功させるには、以下の3つの判断軸で委託先を評価してください。

  1. 電子署名法対応・セキュリティ実績:当事者型・立会人型の両方式に対応でき、認定認証機関との連携やISO 27001などの認証取得状況を確認できること
  2. CLM・ワークフローのカスタマイズ能力:自社の承認フローや契約種別管理の要件を実現できる開発力と、導入後の改修にも柔軟に対応できる体制があること
  3. 既存基幹システムとの連携実績:ERP・購買管理・グループウェアなどとのAPI連携を実際に手がけた経験を持ち、連携設計からテストまで一貫して支援できること

電子契約システムは一度導入すると社内の契約業務全体に影響するため、委託先選定は慎重に行う必要があります。要件定義・方式選定・連携設計の各フェーズで専門的なサポートを受けられるパートナーを選ぶことが、プロジェクト成功の鍵です。

よくある質問

電子契約システムの導入を外注すると費用はどのくらいかかりますか?

SaaS型サービスを活用する場合は初期費用数十万円・月額数万円〜十数万円程度が目安です。既存基幹システムとのAPI連携や独自ワークフロー開発が必要な場合は、開発費として数百万円〜数千万円規模になることもあります。費用は要件の複雑さや連携対象システム数によって大きく変動するため、複数ベンダーへの見積もりを推奨します。

電子契約システムの導入にはどのくらいの期間が必要ですか?

SaaS型を標準機能のみで導入する場合は1〜3か月程度が目安です。基幹システム連携や独自ワークフロー開発を含む場合は6か月〜1年以上かかることもあります。要件定義と方式選定に十分な時間をかけることが、後戻りを防ぐうえで大切です。

当事者型と立会人型のどちらを選べばよいですか?

相手方企業が電子証明書を取得しているかどうかが主な判断軸です。自社・相手方がそれぞれ電子証明書を保有できる場合は当事者型(PKI型)、相手方の準備負担を減らしたい場合は立会人型(事業者署名型)が適しています。どちらも電子署名法上の法的効力を持てるため、取引形態に合わせてお選びください。

電子契約は法的に有効ですか?

電子署名法(平成12年法律第102号)に基づき、一定の要件を満たす電子署名が付与された電子文書は、本人の意思に基づいて作成されたものと推定されます。*1 また令和2年に総務省・法務省・経済産業省が連名で公表したQ&Aにより、立会人型についても一定条件下で法的有効性が認められることが明確になっています。*3

電子契約システムは既存の基幹システムと連携できますか?

主要な電子契約システムはAPIやWebhookを提供しており、ERPや購買管理システムなどとの連携が可能です。ただし連携範囲や仕様は製品ごとに異なるため、外注先に既存システムの構成を詳しく共有し、連携可否・工数を事前に確認することが大切です。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

【E-E-A-T】この記事の専門的根拠

本記事は、電子署名法(平成12年法律第102号)および法務省・総務省・経済産業省・デジタル庁の公開資料に基づいて作成しています。LASSIC IT事業部は元請(プライムベンダー)として企業向けシステム開発・保守・運用の受託実績を持ちます。記事内の費用レンジは市場参考値であり、個別案件の費用を保証するものではありません。

  1. 法務省「電子署名法の概要と認定制度について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji32.html(2026年6月確認)
  2. デジタル庁「電子署名(Electronic signature)」https://www.digital.go.jp/en/policies/digitalsign(2026年6月確認)
  3. 法務省「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等する電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)令和2年9月4日」https://www.moj.go.jp/content/001327658.pdf(法務省・総務省・経済産業省 連名)

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