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インフラエンジニア不足を受託・委託で補う進め方
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- インフラエンジニアは、サーバ・OS・ミドルウェア・ネットワーク・仮想化を横断して基盤の構築と運用保守を担う汎用職であり、ネットワークエンジニアやSREなどの専門職とは担当範囲の広さが異なります。
- 経済産業省の調査では2030年にIT人材が需要に対して約79万人不足すると試算されており、オンプレとクラウドを両方扱える基盤人材の確保は難しさを増しています。
- 受託・常駐委託・ニアショアの3形態を課題に照らして使い分け、委託範囲と引き継ぎを整理してから提案依頼に進む進め方を解説します。
目次
インフラエンジニアとは基盤全体を横断する汎用ロール
インフラエンジニアとは、システムが稼働するための土台(インフラ)を、特定の一領域に限定せず横断的に構築・運用保守する技術者を指します。具体的には、物理・仮想サーバ、OS(Linux/Windows)、ミドルウェア(Webサーバ・アプリケーションサーバ・データベースエンジン等)、ネットワーク、ストレージ、仮想化基盤までを対象に、設計・構築から日常運用・障害対応・容量管理までを担います。
近年は、オンプレミス環境とクラウド環境(IaaS)の両方が並存する「ハイブリッド構成」が一般的になっています。インフラエンジニアは、オンプレミスの物理基盤とクラウド上の仮想リソースの双方を横断して扱い、どちらの環境でもシステムが稼働し続ける状態を保つ役割を担います。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「ITスキル標準(ITSS)」でも、ITインフラの構築・運用は専門分野として体系化されており、サーバ・ネットワーク・データベースなど複数領域にまたがる職務として整理されています*1。
特定領域を深く掘り下げる専門職に対し、インフラエンジニアは基盤全体を広く担い、領域間をつなぐ位置づけにあります。次の章では、関連する専門職との違いを整理します。
専門職(ネットワーク・SRE・DBA・クラウド)との役割の違い
「インフラエンジニア」という呼称は広く使われる一方、隣接する専門職と混同されがちです。採用や委託の検討では、どの範囲をカバーする人材が必要なのかを明確にすることが、ミスマッチを避ける出発点になります。汎用職としてのインフラエンジニアと、各専門職の主な違いは次の通りです。
| 職種 | 主な担当範囲 | インフラエンジニア(汎用職)との違い |
|---|---|---|
| インフラエンジニア(汎用) | サーバ・OS・ミドルウェア・ネットワーク・仮想化・ストレージを横断し、基盤全体の構築から運用保守までを担う。 | —(本記事の対象。各領域を広くカバーし、専門職ほど一領域を深掘りしないのが特徴) |
| ネットワークエンジニア | LAN/WANやクラウドネットワークの設計・構築・運用に特化する。 | ネットワーク領域を深く担う専門職。インフラエンジニアはネットワークも扱うが、サーバやミドルウェアまで含めて広く対応する点が異なる。 |
| SRE | サービスの信頼性をソフトウェア工学の手法(SLO設計・自動化・可観測性)で高める。 | 信頼性向上と自動化に主眼を置く役割。インフラエンジニアは基盤の構築・運用そのものを幅広く担い、コードによる自動化を中核とするとは限らない。 |
| DBA(データベース管理者) | データベースの設計・性能チューニング・バックアップ・可用性確保に特化する。 | データベース層に専門特化する役割。インフラエンジニアはDBミドルウェアの導入・基本運用までは担うが、高度なチューニングは専門職の領域。 |
| クラウドエンジニア/クラウドアーキテクト | 特定クラウド(AWS等)のサービス設計・最適化や、マルチアカウント設計・移行戦略といった上流設計に特化する。 | 特定クラウドへの専門特化、または上流設計に主眼を置く役割。インフラエンジニアはオンプレとクラウドを横断し、運用保守も含めた基盤全体を扱う点が異なる。 |
上記の専門職それぞれの不足・補完については、領域ごとに整理しています。自社の課題が一領域に偏っている場合は、各専門職に焦点を当てた検討が適しています。本記事は、複数領域をまたいで基盤全体を支える汎用ロールとしてのインフラエンジニアに絞って解説します。
なぜ今インフラエンジニアの確保が難しいのか
基盤運用を担う汎用人材の確保が難しくなっている背景には、IT人材全体の構造的な需給ギャップと、扱う技術領域の広がりという2つの要因があります。
IT人材全体の構造的な不足
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」(2019年4月公表・みずほ情報総研株式会社実施)では、IT人材は2030年に需要に対して約79万人(需要の伸びを高位に想定したシナリオ)不足すると試算されています*2。この試算は職種を限定したものではなく、IT人材全体を対象とした推計です。基盤の構築・運用を担うインフラ人材も、この需給ギャップの影響を受ける位置づけにあります。
扱う技術領域の広がり
クラウドの普及により、インフラエンジニアに求められる知識は、従来の物理サーバ・ネットワークに加えて、クラウドサービスの構成・運用、仮想化、構成管理ツールなどへと広がっています。総務省の「令和6年版 情報通信白書」では、企業のクラウドサービス利用が継続的に拡大していることが示されており、オンプレミスとクラウドを併用する構成が広く見られる状況です*3。1人の担当者が幅広い領域を横断して扱う必要が生じやすく、必要なスキルの幅が広がっている点が、即戦力の確保を難しくする一因となっています。
採用そのもののリードタイム
正社員としてインフラエンジニアを採用する場合、求人公開から選考・内定承諾・着任まで複数月規模のリードタイムを要するのが実態です。さらに着任後も、自社固有のシステム構成や運用手順を把握し、独立して障害対応を担えるまでには習熟期間が必要になります。退職や異動で担当者が抜けた場合、この期間中の運用品質をどう維持するかが課題になります。
内製だけで基盤運用を賄う際に直面する3つの課題
インフラ運用を全て内製でカバーしようとした場合、人材の頭数以外にも実務上の障壁があります。代表的な3つを整理します。
課題1:属人化と単一障害点
基盤運用を少人数でカバーする体制では、システム構成や運用手順の知識が特定の担当者に集中しやすくなります。手順書が整備されていない状態でその担当者が不在になると、障害対応や変更作業が滞り、運用上の単一障害点(SPOF)になりやすいリスクがあります。
課題2:24時間運用・夜間休日対応の負荷
基幹システムや外部公開サービスでは、夜間・休日も含めた監視や障害一次対応が求められる場合があります。少人数の内製チームでこれを賄おうとすると、特定メンバーへの負荷集中や、対応の継続性確保が課題になります。オンコール(待機)体制を内製だけで安定的に維持するのは、人数の制約から難しいケースがあります。
課題3:日常運用と構築・移行プロジェクトの両立
サーバのリプレースやクラウド移行などのプロジェクトは、通常の運用保守業務と並行して進みます。専任の体制がないと、日常運用の品質を落としながらプロジェクトを進めるか、プロジェクトを先送りにするかの選択を迫られます。基盤領域は障害がビジネスに直結しやすいため、両立の難しさが顕在化しやすい領域です。
受託・常駐委託・ニアショアによる補完の3形態
インフラ運用を外部に委ねる形態は大きく3つに分かれます。それぞれの特性を理解したうえで、自社の課題と照合することが重要です。
| 形態 | 概要 | 向いている状況 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 運用受託(アウトソーシング) | 監視・障害一次対応・バックアップ・パッチ適用などの基盤運用を、成果や役務の範囲を定めて一括委託する形態。SLA(サービス品質保証)で運用水準を定義する。 | 内製担当者が不在・後継者がいない場合。日常運用を一定の水準で継続させたい場合。 | システム構成書・運用手順書などのドキュメント整備が前提。対応範囲と責任分界を契約で明確化すること。 |
| 常駐委託(準委任) | 委託先の技術者が自社拠点やプロジェクトに参画し、指揮系統の整理のもとで作業を担う形態。構築フェーズや繁忙期にスポットで活用しやすい。 | 構築・移行プロジェクトで一時的に工数を増やしたい場合。内製チームと近い距離で連携したい場合。 | 業務委託(準委任)と労働者派遣は契約形態が異なる。指揮命令の所在を明確にし、偽装請負とならない体制設計が必要。 |
| ニアショア活用 | 地方拠点や同一タイムゾーン内の近隣拠点に担当を配置し、リモートで運用・保守を担う形態。コスト構造を調整しながら継続性を確保しやすい。 | 首都圏での採用が困難な場合。長期的に安定した運用体制を求める場合。 | リモートアクセス環境(VPN・多要素認証等)の整備と、セキュリティポリシーの事前確認が必要。 |
ニアショアが基盤運用に向く理由
監視・バックアップ確認・ジョブスケジューリング・パッチ適用といった基盤の日常運用タスクの多くは、リモートで完結します。対象システムへのリモートアクセス環境が整備されていれば、物理的な距離が運用品質に与える影響は限定的です。
地方拠点を持つITアウトソーシング企業を活用するニアショアモデルは、都市圏の採用コストの高騰を回避しながら、同一言語・同一タイムゾーンでのコミュニケーションを維持できる点が特徴です。オンプレミス・クラウドどちらの構成でも、セキュリティ要件(ログ管理・特権ID管理等)を満たす設計のもとでリモート運用と両立できます。
委託先を選ぶ際の実務チェックポイント
委託先を検討する際は、以下の観点でスコープを整理してから提案依頼に進むことが、工程短縮につながります。
対応領域とオンプレ・クラウド両対応の実績
インフラエンジニアの補完では、自社のシステムが「オンプレミス中心か」「クラウド中心か」「ハイブリッドか」によって、求める委託先の得意領域が変わります。候補先には、サーバ・OS・ミドルウェア・ネットワーク・仮想化のうちどの領域に対応できるか、オンプレミスとクラウドの両方で運用実績があるかを確認します。類似規模・類似構成の運用実績の開示を求め、自社の構成に近い経験があるかを見極めます。
SLAと責任分界・エスカレーション経路
運用受託では、インシデント対応の時間目標(例:障害検知から一次応答まで)とエスカレーション経路を契約書に明記します。基盤障害はビジネス継続性に直結しやすいため、対応窓口・対応時間帯・エスカレーション先の合意が事前に必要です。夜間休日対応の有無や範囲も、ここで明確にします。
委託範囲と内製に残す役割の切り分け
運用を委託する場合でも、変更の承認や社内からの依頼受付などは内製側に残るのが一般的です。この「委託範囲の内外」を事前に一覧化しておくと、委託後の認識齟齬を減らせます。委託先を選定するには、次のスキル・タスクが内部・外部のどちらにあるかを棚卸します。
- サーバ・OS(Linux/Windows)の構築・設定・パッチ適用
- ミドルウェア(Webサーバ・APサーバ・DBエンジン等)の導入・基本運用
- 仮想化・クラウド(IaaS)リソースの構成・運用
- 監視・バックアップ・ジョブ管理・障害一次対応
- 変更管理・構成管理・運用ドキュメントの整備
上記のうち社内に不在のスキルが、委託範囲の中心になります。スキルの棚卸しに工数をかけることで、委託コストの見積もり精度も上がります。
内製移行を見据えた進め方
外部委託は人材不足の局面で有効ですが、外部だけに依存し続けると、運用ノウハウが社内に蓄積されにくくなる懸念があります。将来的に内製比率を高めたい場合は、委託の初期段階から内製移行を見据えた進め方を設計することが有効です。
ドキュメントとナレッジの蓄積を委託条件に含める
運用手順書・構成管理情報・障害対応記録を、委託先に作成・更新してもらう条件を契約に含めると、ノウハウが文書として社内に残ります。担当者が交代しても引き継ぎやすくなり、将来の内製移行時の土台になります。
段階的に内製比率を調整する
当初は運用全般を委託し、社内の採用・育成の進捗に応じて委託範囲を段階的に縮小していく進め方があります。一度に全てを内製化しようとせず、定常運用の安定を保ちながら役割を移していくことで、移行期の運用品質の低下を抑えやすくなります。委託契約は、範囲を見直せる柔軟な条件にしておくと調整がしやすくなります。
判断を3つの軸に集約する
本稿で整理した内容を集約すると、インフラエンジニア不足の補完を判断する軸は次の3つです。第一に、必要なのは特定領域の専門職か、基盤全体を横断する汎用職かを見極めること。第二に、課題(属人化・夜間休日対応・プロジェクト両立)に応じて、運用受託・常駐委託・ニアショアの形態を使い分けること。第三に、委託範囲・SLA・引き継ぎドキュメントを事前に整理し、必要に応じて内製移行を見据えた条件を設計しておくことです。この3点を整理してから提案依頼に進むことが、工程短縮と運用品質の維持につながります。
よくある質問
インフラエンジニアとネットワークエンジニアやSREは何が違うのですか?
インフラエンジニア(汎用職)は、サーバ・OS・ミドルウェア・ネットワーク・仮想化を横断し、基盤全体の構築から運用保守までを広く担います。一方、ネットワークエンジニアはネットワーク領域、SREはサービスの信頼性向上と自動化、DBAはデータベース層に、それぞれ専門特化する役割です。自社の課題が一領域に偏っている場合は専門職、複数領域を1人または1チームで横断的に支えてほしい場合は汎用のインフラエンジニアが適しています。委託の検討では、必要な範囲を先に定義することがミスマッチの回避につながります。
オンプレミスとクラウドのどちらにも対応してもらえますか?
対応可否は委託先の実績によります。近年はオンプレミスとクラウド(IaaS)を併用するハイブリッド構成が一般的になっており、両方を横断して運用できる体制が求められる場面が増えています。委託先を選ぶ際は、自社の構成(オンプレ中心・クラウド中心・ハイブリッド)を明確にしたうえで、それに近い構成での運用実績があるかを確認してください。総務省の情報通信白書でも企業のクラウド利用は拡大傾向にあり、両環境を扱える人材の重要性は高まっています。
受託・常駐委託・ニアショアのどれを選べばよいですか?
自社の課題によって適した形態が異なります。日常運用を一定の水準で継続させたい場合は運用受託(SLAベース)、構築・移行プロジェクトで一時的に工数を増やしたい場合は常駐委託(準委任)、首都圏での採用が難しく長期的に安定した体制を求める場合はニアショアが選択肢になります。複数を組み合わせる進め方もあります。いずれの場合も、委託範囲・対応時間・責任分界を契約で明確にすることが重要です。
夜間・休日の障害対応も委託できますか?
委託先の運用体制によりますが、夜間・休日を含む監視や障害一次対応(オンコール体制)を委託範囲に含めることは一般的に行われています。委託する場合は、対応時間帯・一次応答までの時間目標・エスカレーション経路を契約書に明記します。少人数の内製チームでは夜間休日対応の継続性確保が難しいケースがあるため、この領域を外部に委ねる判断は実務上よく検討されます。
委託すると運用ノウハウが社内に残らないのではないですか?
委託の設計次第です。運用手順書・構成管理情報・障害対応記録を委託先に作成・更新してもらう条件を契約に含めることで、ノウハウを文書として社内に蓄積できます。将来的に内製比率を高めたい場合は、当初は運用全般を委託し、採用・育成の進捗に応じて委託範囲を段階的に縮小していく進め方が有効です。委託契約を、範囲を見直せる柔軟な条件にしておくと、内製移行の調整がしやすくなります。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「ITスキル標準(ITSS)」(職種・スキル領域の定義を参照)
- *2 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査 調査報告書」(2019年4月公表・みずほ情報総研株式会社実施)(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf)
- *3 出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」(2024年公表)