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IT部門のコスト削減方法7選|保守運用費を抑えDX投資を増やす手順
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
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この記事のポイント
- 国内企業のIT予算は保守運用費に大きく偏っており、IT部門のコスト削減にはこの構造を変えることが出発点となる
- クラウド移行・アウトソーシング・ライセンス最適化など7つの施策を組み合わせることで、段階的なコスト圧縮が実現できる
- 外部委託先の選定では、元請(プライムベンダー)への一括委託によるコスト透明性の確保が重要な判断基準となる
目次
IT部門のコスト削減とは — 保守運用費8割問題の正体
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IT部門のコスト削減とは、保守運用に偏ったIT予算を見直し、クラウド移行・アウトソーシング・内製化の組み合わせによって運用コストを抑制しながらIT投資の価値を高める取り組みである。経済産業省の「DXレポート」(2018年9月)によれば、国内企業のIT予算の約8割が既存システムの維持・管理・運用(ランニングコスト)に消費されており*1、新技術投資に充てられる予算が慢性的に不足している。
国内企業の約4割でIT予算の9割超が保守運用費
経済産業省の「DXレポート」では、ラン・ザ・ビジネス予算(既存業務を維持するためのIT費用)が全IT予算の90%以上を占める企業が約40%に上ることが示されている*1。この状態では、新たなシステム投資やデジタル化施策に充てる予算がほとんど残らない。
特にオンプレミス環境で稼働する基幹システムや、長年にわたって改修を繰り返してきたレガシーシステムは、毎年のハードウェア保守費・ソフトウェアライセンス費・運用人件費が固定費として重くのしかかる。IT部門が削減に取り組む際は、まずこの固定費の構造を把握することが先決だ。
DX投資を増やせない根本原因はレガシーシステムの維持費
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX動向2025」(2025年6月)によれば、日本企業の64%は業務効率化・コスト削減といった内向きのDXで成果を上げているものの、内向き・外向きの両方で成果を上げる企業は27%にとどまる*2。
この背景には、レガシーシステムの維持費が予算を圧迫し続けることで、新技術への投資に踏み切れない構造がある。IT部門のコスト削減は、単なる節約ではなく「投資配分の再設計」として取り組む必要がある。
IT部門のコスト削減効果が高い7つの方法
IT部門のコスト削減には、短期で成果が出やすい施策と、中長期的な構造改革が必要な施策がある。以下では、実務上効果が確認されている7つの方法を、着手しやすい順序で示す。
| 施策 | 主なコスト削減対象 | 効果の出方 |
|---|---|---|
| クラウド移行 | ハードウェア・データセンター費 | 中期(1〜2年) |
| 運用監視・ヘルプデスクの外部委託 | 人件費・固定費の変動費化 | 短期(3〜6カ月) |
| ベンダー契約・ライセンス棚卸し | 重複ライセンス・未使用契約 | 短期(1〜3カ月) |
| IT資産管理ツール導入 | 不要端末・ソフトウェア費 | 短期〜中期 |
| 標準化・内製化 | SES外注費・単価依存コスト | 中長期(2〜3年) |
| アジャイル開発への移行 | 開発手戻りコスト | 中期 |
| ゼロトラスト段階移行 | セキュリティツール重複費 | 中長期 |
方法1:クラウド移行でオンプレミスのハードウェア・ライセンス費を削減
オンプレミス環境からクラウドへの移行は、サーバーのハードウェア更新費・データセンター維持費・ソフトウェアライセンス費を大幅に圧縮できる手段だ。総務省「令和6年通信利用動向調査(企業編)」(2025年5月)によれば、2024年時点で企業のクラウドサービス利用率は80.6%を超えており*3、クラウドの活用は現代のIT部門にとって標準的な選択肢となっている。
ただし、オンプレミスとクラウドの並行運用期間はコストが一時的に増加する。移行計画を立案する際は、移行完了後のランニングコストと初期移行費用を比較したROI(投資対効果)試算を事前に作成することが、承認取得と後の評価において有効だ。
方法2:運用監視・ヘルプデスクを外部委託してコストを変動費化
IT部門の人件費は固定費として積み上がりやすい。運用監視・インフラ管理・ヘルプデスク対応などのルーティン業務を専門の外部パートナーに委託することで、業務量の変動に合わせてコストを調整できる変動費化が実現する。
特に、深夜・休日対応を含む24時間365日の監視体制を内製で維持しようとすると、シフト人員の確保に相応の人件費が発生する。外部委託ではこの固定コストをサービス利用料として変動費化できるため、事業規模の変化に対して柔軟な対応が可能になる。
方法3:ベンダー契約の棚卸しで重複ライセンスを解消する
複数のベンダーとの長期契約が積み重なると、機能が重複するツールに二重でコストをかけているケースが発生する。年に一度、全社のソフトウェアライセンス・SaaS(Software as a Service、インターネット経由で利用するソフトウェアサービス)契約を棚卸しし、利用実績のない契約は解約または統合することで、即効性のある削減が期待できる。
棚卸しの際は「実際の利用ユーザー数」と「契約ライセンス数」の乖離を確認することが出発点だ。特にコラボレーションツールやセキュリティツールは、部門ごとに別途契約されているケースが多く、統合によるコスト最適化の余地が生まれやすい。
方法4:IT資産管理ツールの導入で不要端末・ソフトを可視化
IT資産管理ツール(ITAM: IT Asset Management)を導入すると、社内に存在する端末・ソフトウェア・ライセンスを一元管理できる。管理されていない端末が稼働し続けていたり、退職者のライセンスが放置されたりするムダを削減する効果がある。
ITAM導入は初期コストが発生するが、既存の管理ツール・台帳の整理と並行して進めることで、投資回収を早めることができる。先にスプレッドシートで資産一覧を整備し、管理ツールへの移行を段階的に進めるアプローチが実務上取りやすい。
方法5:標準化・内製化でSES単価依存から脱却する
SES(System Engineering Service、特定のシステム案件に技術者を派遣する形態)に長期依存すると、技術者の市場単価の上昇に合わせてIT費用が増加する構造になる。技術スタックを標準化し、社内エンジニアが対応できる範囲を広げることで、外注依存度を段階的に下げることができる。
ただし、内製化には社内のエンジニアリング力の育成が前提となる。経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年4月)によれば、2030年にIT人材が約79万人規模で不足すると試算されており*4、採用市場での競争も激化している。内製化と外部委託のバランスを見据えた計画が求められる。
方法6:アジャイル開発への移行でウォーターフォール型の手戻りを減らす
ウォーターフォール型の開発では、要件定義から実装・テストまで一方向に進むため、後工程で要件の変更が生じると大規模な手戻りコストが発生する。アジャイル開発への移行により、短いサイクルで動作するプロダクトを確認しながら開発を進めることで、手戻りの発生頻度と規模を抑えることが期待できる。
アジャイルへの移行には、チームのスキル転換・プロジェクト管理手法の見直し・顧客との関係性の変化が伴う。移行期間中は一時的に生産性が低下するケースもあり、段階的な導入が実務上の推奨アプローチだ。
方法7:ゼロトラストセキュリティへの段階移行でセキュリティ運用費を統合
ゼロトラストセキュリティ(「信頼しない・常に検証する」を原則とするセキュリティモデル)への移行は、分散したセキュリティツール群を統合する機会となる。複数のVPN・ファイアウォール・エンドポイントセキュリティを独立して運用している場合、ゼロトラスト基盤への段階的移行によってツール数とそれぞれのライセンス費を整理できる。
移行にはIDaaS(Identity as a Service、クラウド型のID管理サービス)やSASE(Secure Access Service Edge、ネットワーク機能とセキュリティ機能を統合したクラウドサービス)などの新たな投資も必要となるが、既存ツールの統廃合と並行して進めることで、中長期のコスト最適化につながる。
IT部門コスト削減の手順 — 現状把握から施策実行まで4ステップ
コスト削減施策を個別に打つ前に、IT部門全体のコスト構造を把握するプロセスが必要だ。以下の4ステップで進めると、優先度の高い施策から着手しやすくなる。
ステップ1:IT資産の棚卸しとコスト可視化
IT部門の全コストを以下の4カテゴリに分類し、カテゴリごとの金額と構成比を算出する。
- インフラ費用:サーバー・ネットワーク機器・データセンター・クラウド利用料
- ソフトウェア費用:ライセンス・SaaS・ミドルウェア
- 人件費・外注費:内製エンジニア・SES・アウトソーシング
- 保守・サポート費用:ベンダー保守契約・ヘルプデスク・障害対応
このカテゴリ分類は、経産省DXレポートが示す「ラン・ザ・ビジネス」と「グロー・ザ・ビジネス」の区分に相当し*1、IT費用のどこに削減余地があるかを把握する基礎資料となる。
ステップ2:「削減可能コスト」と「戦略投資」の仕分け
棚卸し結果をもとに、コストを以下の3つに仕分ける。
- 削減対象:未使用ライセンス・重複機能・レガシーシステムの余剰維持費
- 最適化対象:外部委託単価の見直し・契約形態の変更・クラウド構成の見直し
- 維持・増額対象:セキュリティ対応・事業成長を支える基盤投資
セキュリティ費用は「削減対象」に分類しないことが原則だ。インシデント発生時の対応費用・事業停止リスクを考慮すると、適切な水準を下回る削減はコスト増加につながる。
ステップ3:内製かアウトソーシングかの判断基準を設ける
各業務領域について「内製化する」か「外部委託する」かの判断基準を設定する。以下の観点で評価すると体系的に判断できる。
- 戦略的重要度:自社の競争優位に直結する領域は内製化が原則
- 専門性の調達コスト:社内で育成するよりも外部の専門パートナーへの委託が費用対効果で優れる場合は外部委託
- 業務の定型度:定型的・反復的な業務(監視・ヘルプデスク等)は外部委託でコスト変動費化しやすい
ステップ4:KPIを設定してPDCAを回す
JUAS「企業IT動向調査2025」(2025年4月)は、既存システムにかかるランニングコストの評価実施率が3割程度にとどまると報告している*2。IT部門のコスト削減を継続的に進めるには、削減目標と測定指標(KPI)を明文化することが大切だ。
KPIの例として「IT費用に占めるラン・ザ・ビジネス比率を翌年度末までに70%以下にする」のように、現状の構成比から目標値を数値で設定し、四半期ごとにモニタリングする仕組みを作ると、施策の優先度判断と上位層への説明が容易になる。
コスト削減の落とし穴 — 削減しすぎると失うもの
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IT部門のコスト削減を進める際、削減幅を優先するあまり事業継続に支障が出るケースがある。特に以下の2点は実務上で確認されるリスクだ。
過剰削減でセキュリティインシデントリスクが上昇する
セキュリティ対策費・監視体制・インシデント対応要員を過度に削減すると、不正アクセスやランサムウェア被害の発生時に対応が遅れ、結果として復旧費用・事業停止損失・信頼毀損が発生する。セキュリティへの投資は「コスト」ではなく「リスクコントロール費用」として予算計上することが適切だ。
IT部門でコスト削減の対象を検討する際は、セキュリティ関連費用を削減対象の優先リストから除外する社内ルールを設けることで、誤った判断を防ぐことができる。
IT人材不足が内製化の障壁になる
内製化は中長期的なコスト削減に有効な手段だが、経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年4月)が示すように、2030年にIT人材が約79万人規模で不足すると見込まれており*4、採用は容易ではない。
内製化計画を立てる際は、採用だけでなく「既存社員のスキル転換(リスキリング)」と「外部委託との役割分担」を組み合わせたハイブリッド型の体制設計を前提にすることが現実的だ。すべての機能を内製化しようとすると、採用コスト・育成コストが削減分を上回るリスクがある。
アウトソーシングでコスト最適化する際の委託先選定ポイント
IT部門のコスト削減においてアウトソーシングは有力な手段だが、委託先の選定を誤ると品質低下・二重コスト・責任範囲の曖昧化が生じる。以下の2点が実務上の主要な判断軸となる。
元請(プライムベンダー)への一括委託でコスト透明性を確保
複数の下請け企業に個別委託する多層構造では、各ベンダーのマージン・調整コストが積み重なり、総コストが不透明になる。元請(プライムベンダー)として一括で受け持つパートナーに委託することで、契約窓口が一本化され、コスト構造の可視性が高まる。
元請が全体の設計・管理・品質責任を担う体制では、IT部門のマネジメント工数も削減できる。この効果は、特に複数ベンダーが関与するシステム運用・保守・監視を統合委託するケースで現れやすい。
委託範囲の設計と契約形態(準委任・請負)の使い分け
アウトソーシングの契約形態は大きく「準委任」と「請負」に分かれる。準委任は「成果物」ではなく「業務遂行」に対して報酬が発生するため、継続的な運用業務(監視・ヘルプデスク・保守)に適している。請負は「成果物の納品」に対して報酬が発生するため、システム開発・改修など完成形が明確な案件に向く。
委託範囲を明確に設計し、契約形態に合ったKPIと報告ラインを設定しておくことが、アウトソーシングにおけるコストコントロールの基本だ。委託内容が曖昧なまま契約すると、追加費用の請求や責任範囲の争いが生じやすくなる。
IT部門のアウトソーシングで必要となる主なスキル・対応領域は以下のとおりだ。
- インフラ運用・監視:サーバー・ネットワーク・クラウド基盤の24時間365日対応
- アプリケーション保守:既存システムの障害対応・バグ修正・軽微な機能追加
- ヘルプデスク・サポート:社内ユーザーからの問い合わせ対応・端末設定支援
- セキュリティ運用:ログ監視・脆弱性管理・インシデント初動対応
これらの領域を内製で賄おうとすると、経験豊富な技術者を複数名採用・維持する必要がある。外部パートナーへの委託は、採用市場での競争が激化する中で人材確保コストを抑える現実的な手段となる。
まとめ:IT部門のコスト削減で押さえるべき3つの要点
本稿では、IT部門がコスト削減に取り組む際の現状分析から施策選択・実行手順までを整理した。要点を3つに集約すると次の通りだ。
第一に、国内企業のIT予算は保守運用費に偏っており(経産省DXレポートでは約8割*1)、削減の出発点はこの構造を可視化することにある。第二に、クラウド移行・ライセンス棚卸し・外部委託の変動費化など7つの施策は、効果の出方と着手難易度が異なるため、短期・中期・長期に分けて優先度をつけて進めることが大切だ。第三に、セキュリティ費用の過剰削減と内製化コストの過小評価は、削減幅を実現できても後からコスト増となる典型的な落とし穴であり、事前に対象外領域を明文化しておくことが有効だ。
よくある質問
IT部門のコスト削減でまず着手すべきことは何か?
IT資産の棚卸しとコスト可視化が先決だ。インフラ費用・ソフトウェアライセンス・人件費・外注費の4カテゴリに分類し、それぞれの構成比を把握することで、どの領域に削減余地があるかが見えてくる。経産省DXレポートが指摘するように*1、保守運用費の割合が高い企業ほど構造的な見直しが必要であり、数値で現状を把握することが上位層への説明と施策承認の基盤となる。
クラウド移行してもコストが下がらないのはなぜか?
オンプレミスとクラウドの並行運用期間が長引くことと、クラウドのスケール設計が適切でないことが主因だ。移行完了前は両方のコストが発生するため、移行期間の短縮と移行後の不要リソース削除が削減効果を左右する。また、クラウドサービスを「非利用の理由」として29.6%の企業が「既存システムの改修コストが大きい」と回答しており*3、移行計画の精度がコスト削減の成否に直結する。
IT運用のアウトソーシングにはどれくらいのコストがかかるか?
委託範囲・SLA(サービスレベル合意)・対応時間帯によって大きく異なるため、公的機関の一律の相場データは存在しない。費用の主な変数は「対応時間帯(24時間365日か平日日中か)」「対象システム規模」「契約形態(準委任・請負)」の3つだ。複数のパートナーに見積もりを依頼し、委託範囲と料金体系を比較することが現実的な相場感の把握につながる。委託先選定ではコストだけでなく、SLA内容と責任範囲の明確性を重視することが大切だ。
IT部門を縮小するとセキュリティリスクが上がるか?
セキュリティ運用の要員・予算を削減した場合、インシデント発生時の検知・対応が遅延するリスクは上昇する。ただし、専門のセキュリティ運用パートナー(SOCサービス)への委託を組み合わせることで、内製体制を縮小しながら監視品質を維持することは可能だ。IPA「DX動向2025」*2が示すように、IT投資の方向性はコスト削減一辺倒から「質の維持と効率化の両立」に移行しており、セキュリティ費用は削減対象ではなく最適化対象として扱うことが実務上の原則となる。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:経済産業省「DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜(サマリー)」(2018年)
- *2 出典:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「DX動向2025」(2025年)/一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)「企業IT動向調査2025」(2025年)
- *3 出典:総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」(2025年)
- *4 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」(2019年)