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2026.06.25 らしくコラム

ローコード(Power Platform等)人材の不足を外注・委託で補完する進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

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この記事のポイント

  • Power Apps・Power Automate等のローコードツールは非エンジニアでも業務アプリ開発・ワークフロー自動化ができるが、ガバナンスや目的設計を担う専任人材の確保が課題になります。
  • 内製化には「個別対応型/自社CoE設置型/共有センター利用型」の3タイプがあり、自社の体制・目標に応じて選択する必要があります。
  • 外部のCoE・開発技術を活用して短期に立ち上げ、伴走支援で段階的に内製化へ移行するアプローチが、人材不足下で全社横断の課題解決に近づく現実的な打ち手として注目されています。

ローコード・Power Platformが注目される背景

ローコード(Low-Code)開発とは、プログラミングの専門知識がなくても、GUIや部品の組み合わせで業務アプリ・ワークフローを構築できる開発手法を指します。特にMicrosoftのPower Platform(Power Apps・Power Automate・Power BI・Power Pages等)は、Microsoft 365環境を持つ企業でそのまま利用でき、非エンジニア社員でも申請フォーム・承認ワークフロー・ダッシュボードを自ら構築できる点が評価されています。

経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年、みずほ情報総研受託)では、需要の伸びが高いシナリオで2030年に約79万人のIT人材不足が生じると推計されています*1。こうした人材不足を背景に、既存社員をローコードで「市民開発者(Citizen Developer)」として活用しようとする動きが広がっています。

DX推進の障壁として、レガシーシステムの課題と並んでIT人材不足が挙げられることも多く、ローコード・ノーコードはその解消策の一つとして位置づけられています。ただし、ツールを導入すれば自動的に人材が育つわけではありません。

現状把握 業務課題・ 人材リソース の整理 補完方針 育成 or 外注 or 両輪の 選択 外部CoE 活用で 短期立ち 上げ 伴走支援 内製化移行 ・ガバナンス 整備 内製化定着 市民開発者 育成・CoE 自走化
ローコード外注・委託から内製化定着までの5ステップ

ローコード人材が不足・育ちにくい3つの理由

Power Platformは「ノーコード」とも言われますが、実務レベルで全社展開するには、ツール操作以上の知識と体制が必要です。人材が育ちにくい理由は大きく3つに整理できます。

理由1:目的設定と業務設計ができるリーダーが不在

Power Appsで申請フォームを作ること自体は比較的容易です。しかし「どの業務課題を解決するか」「どのデータ源(Dataverseやリスト等)に接続するか」を設計する役割を担える人材がいないと、個人の思いつきで乱立する「野良アプリ」が増え、逆に管理コストが上がります。

こうしたアプリの乱立はシャドーIT(Shadow IT:管理者の把握外で使われるツール・サービス)と同じリスクを生み、セキュリティポリシーの統制が難しくなります。業務理解と技術設計の両方ができる人材が少ない点が、育成の最初の壁です。

理由2:ガバナンスと教育の仕組みが整わない

Microsoft社は自社のCoE(Center of Excellence:ローコード推進・ガバナンスを担う社内専門組織)構築を支援するため「CoE Starter Kit」を公開しています。しかし、このキットを導入・運用するには、Dataverse(Power Platformのデータ基盤)とPower Platformの管理者権限・知識が必要です。

社員教育も一度きりの研修では定着しません。継続的なナレッジ共有・サポート体制を社内で維持するには、専任担当者の確保と工数が必要であり、兼務では対応が困難になりやすいです。

理由3:ライセンス・コネクタ設計の専門性

Power Platformには複数のライセンス体系があり、利用するコネクタ(外部サービスとの接続機能)の種類によって必要なライセンスが変わります。誤った設計は想定外のコスト増や機能制限につながります。Power Automate・Power Apps・Power BIをまたいだ最適なライセンス選択には、Microsoft 365ライセンスの知識と実務経験が求められます。

補完の選択肢:社内育成 vs 外部CoE活用の比較

人材不足を補う手段は大きく「社内育成」と「外部CoE・外注活用」に分かれます。内製化の推進体制は「個別対応型」「自社CoE設置型」「共有センター利用型」の3タイプとして整理されることがあります。それぞれの特徴を比較します。

体制タイプ 概要 メリット デメリット・リスク
個別対応型 各部門の担当者が個別にローコードツールを活用する すぐ始められる。
現場主導で課題解決できる
野良アプリが乱立しやすい。
ガバナンス・セキュリティ管理が困難になる
自社CoE設置型 社内にCoEを設置し、推進・標準化・ガバナンスを担う 全社で標準化が進む。
ノウハウが蓄積される
立ち上げに時間・専任人材が必要。
即戦力のCoE担当者の採用が難しい
共有センター利用型 外部のCoE・開発技術を活用して推進を代行・支援してもらう 立ち上げが速い。
専門知識をすぐに借用できる
委託費用が発生する。
内製化への移行計画を明確に定めないとベンダー依存が続く

人材不足の状態でゼロから「自社CoE設置型」を立ち上げようとすると、専任担当者の採用・育成に相当の期間がかかります。現実的な打ち手として注目されるのが、外部パートナーの知見を活用しながら段階的に内製化へ移行する「共有センター利用型」のアプローチです。

なお、IT人材の外注・委託形態の基本的な違い(派遣と請負の選択基準等)は本記事の主題ではないため、別途詳しく解説している記事を参照してください。

外注・委託で進める手順:短期立ち上げから内製化伴走まで

外部のCoE・開発支援を活用してローコード推進を進める場合、以下の手順で段階的に進めると全社最適につながりやすいです。

手順1:現状把握と優先業務の特定

最初に「どの業務・部門の課題をローコードで解決するか」を絞り込みます。全部門を一斉に対象にすると管理が追いつかないため、業務インパクトが高く繰り返し頻度の高い業務(申請・承認・集計・レポート等)から優先順位を付けます。この段階では外部パートナーが業務ヒアリングを担うケースが多いです。

手順2:ガバナンス設計とCoE準備

野良アプリ防止のため、アプリ登録・命名規則・共有ポリシー・DLP(Data Loss Prevention:データ損失防止)ポリシーを決定します。外部パートナーが持つCoE Starter KitやMicrosoftの標準テンプレートを活用すると、ゼロから設計する工数を大幅に削減できます。

ガバナンス設計を省略すると、後から野良アプリの整理に追われる事態になります。立ち上げ初期に外部の専門知識を借りてでも整備しておくことが、後の管理コストを抑える上で大切です。

手順3:パイロット開発と社内展開

優先した業務について、外部パートナーと共同でパイロットアプリを開発します。この際、社内の業務担当者(市民開発者候補)を開発プロセスに参加させることで、ツールの使い方と設計の考え方を同時に習得できます。

パイロット完了後、成功体験を横展開するためのナレッジ共有会・社内研修を実施します。外部パートナーが研修・ドキュメント整備を担うと、内製化移行のスピードが上がります。

手順4:内製化移行と伴走支援の縮小

社内に一定のナレッジが蓄積されたら、外部依存度を段階的に下げていきます。外部パートナーには「開発代行」から「レビュー・サポート」の役割に移行してもらい、最終的に社内CoEが自走できる状態を目指します。移行スケジュールは委託契約の段階で合意しておくことが重要です。

委託先選定の評価軸:Power Platform実績・ガバナンス・Dataverse設計・教育

ローコード推進の外注・委託先を選ぶ際、単に「Power Appsが使える」だけでは不十分です。以下の5軸で評価することを推奨します。

評価軸1:Power Platform全体の導入・運用実績

Power Apps単体の開発だけでなく、Power Automate(ワークフロー自動化)・Power BI(データ分析・可視化)・Power Pages(外部向けポータル)を含めた一体的な支援実績があるかを確認します。特に複数製品を組み合わせた全社展開の経験は、標準化・コスト最適化に直結します。

評価軸2:CoE構築とガバナンス設計の経験

CoE Starter Kitの導入経験、DLPポリシーの設計・運用実績を確認します。野良アプリ防止・シャドーIT抑止のためのガバナンス設計ができるかどうかは、委託先の技術力を測る重要な指標です。参考事例や構築ドキュメントの提示を求めると判断しやすくなります。

評価軸3:業務理解を起点とした設計力

ローコードの価値は「業務の問題を解くこと」にあります。ツール操作の習熟度だけでなく、業務フローのヒアリング・要件整理・優先順位付けができる上流工程の経験があるかを確認します。技術者と業務コンサルタントが連携している体制が理想です。

評価軸4:Dataverse・コネクタ・ライセンス設計

Dataverse(Power Platformのクラウドデータ基盤)の設計経験、標準コネクタとプレミアムコネクタの使い分け、Microsoft 365ライセンスとPower Platformライセンスの最適化を支援できるかを確認します。誤ったライセンス設計は月額コストの増大につながるため、設計段階でのレビューが重要です。

評価軸5:内製化教育・ナレッジ移転の支援体制

「開発して納品したら終わり」ではなく、社内担当者へのトレーニング・マニュアル整備・ハンズオン研修まで提供できるかを確認します。内製化を最終目標に置く場合、ナレッジ移転の設計が委託契約に含まれているかが、長期的なベンダー依存回避のカギになります。

以下に評価軸の早見表をまとめます。

評価軸 確認ポイント 判断の目安
Power Platform実績 全製品(Apps/Automate/BI)の導入事例の有無 複数製品の全社展開事例を提示できるか
CoE・ガバナンス CoE Starter Kit導入・DLPポリシー設計経験 構築ドキュメントや参考事例を見せてもらえるか
業務理解・設計力 業務ヒアリング→要件定義まで担えるか 技術担当と業務コンサルが連携しているか
Dataverse・ライセンス Dataverse設計・ライセンス最適化の支援有無 ライセンスレビューを提案プロセスに含めるか
内製化教育 研修・マニュアル・ハンズオンの提供範囲 ナレッジ移転計画が契約書に明記されるか

まとめ:外注・委託でローコード人材不足を補完する3つの判断軸

本稿では、ローコード・Power Platform人材の不足が生じる背景と理由、補完の選択肢と比較、外注・委託で進める手順、委託先の評価軸を整理しました。要点を3つに集約します。

第一に、ローコードは非エンジニアでも活用できるツールですが、目的設定・ガバナンス・ライセンス設計を担う専任人材がいないと野良アプリ・シャドーITが増え、管理コストが上昇します。人材不足の状態で個別対応だけで進めるリスクを認識することが出発点です。

第二に、内製化を最終目標に置くなら、外部のCoE・専門知識を借りて短期に立ち上げ、伴走支援で段階的に移行するアプローチが現実的です。最初から完全内製を目指すと、専任人材の採用・育成に相当の期間を要します。

第三に、委託先を選ぶ際はPower Platform全体の実績・ガバナンス設計・Dataverse設計・内製化教育の4軸で評価し、ナレッジ移転計画が契約に含まれるかを確認することが重要です。開発して終わりでは長期的なベンダー依存になりかねません。

よくある質問

Power Platformのローコード開発を外注・委託する際、費用はどのくらいかかりますか。

費用は開発するアプリの複雑さ・対象業務・伴走支援の範囲によって異なります。一般的にパイロットアプリ1本の開発支援から始めるケースや、CoE構築と研修をセットにした月額サポート契約まで形態はさまざまです。市場参考値としての費用レンジは一次資料での確認が難しいため、複数のベンダーに見積もりを依頼し、スコープを明確にした上で比較することをお勧めします。

Power Platform導入で「野良アプリ」が増えるリスクを防ぐには何が必要ですか。

野良アプリの乱立を防ぐには、DLPポリシー(外部コネクタの使用制限)とアプリ登録・命名規則・共有範囲のガバナンス設計が必要です。Microsoftが提供するCoE Starter Kitを活用すると、アプリの一覧管理・利用状況モニタリング・ライフサイクル管理を自動化できます。専任のCoE担当者を置くか、外部パートナーに初期設計を依頼することが現実的な対処として挙げられます。

外注・委託を使わず社内だけでローコード内製化を進めることはできますか。

技術的には可能ですが、ガバナンス設計・ライセンス最適化・CoE構築まで社内で完結するには、Power Platform管理者の経験を持つ専任担当者が必要です。採用または育成に相当の期間を要するケースが多く、立ち上げ期のみ外部支援を活用してから内製化に移行する段階的アプローチが、リードタイムを短縮しやすいです。

委託先に依存し続けるリスクを避けるには、契約時に何を確認すればよいですか。

委託先への長期依存を防ぐには、契約書にナレッジ移転計画(研修・マニュアル整備の範囲と時期)を明記することが重要です。また、開発したアプリのソースコード・設定ファイルが自社に帰属することを確認し、CoEの運用手順書を共有してもらうことを条件として盛り込むと、後の内製化移行がスムーズになります。

Power PlatformのCoE(Center of Excellence)とはどのような組織ですか。

CoE(Center of Excellence)とは、ローコード開発の推進・標準化・ガバナンスを担う社内専門組織を指します。Power Platform文脈では、全社のアプリ・フロー・ライセンスを一元管理し、市民開発者の支援・教育・アプリ品質レビューを行う役割を担います。MicrosoftはCoE構築を支援する「CoE Starter Kit」を公式に提供しており、管理ダッシュボードや自動化テンプレートが含まれています。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

LASSICに相談するメリット

LASSICは元請(プライムベンダー)として、Power Platform導入支援からCoEガバナンス設計・内製化トレーニングまでを一体的に提供する体制を整えています。業務理解を起点とした要件整理から、Dataverse設計・ライセンス最適化・社内担当者へのナレッジ移転まで担当できます。
Power Platform関連の外注・委託をご検討の際は、まずご相談ください。


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  1. *1 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年、みずほ情報総研受託)


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