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2026.07.03 らしくコラム

モバイルアプリのバックエンドをBaaSで構築する

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

モバイルアプリのバックエンド構築のイメージ

この記事のポイント

  • BaaSは認証・データベース・ストレージ・サーバーレス関数・プッシュ配信という5つの機能をまとめて提供する基盤です。
  • 自前でバックエンドを構築する場合と比べ、初期構築の負荷を抑えられる一方でベンダーロックインやコスト設計の見極めが必要になります。
  • 外注する際は要件定義の段階でBaaSと自前構築の使い分け、データ主権の要件を明確にしておくことが後工程の手戻りを防ぎます。

BaaSとは何か — バックエンド機能を部品として提供する基盤

認証・DB・ストレージ・関数の役割のイメージ

BaaS(Backend as a Service、バックエンドをサービスとして提供する形態)とは、モバイルアプリに必要な認証・データベース・ストレージ・サーバーレス関数などのバックエンド機能を、部品として組み合わせて使えるクラウド基盤を指します。自前でサーバーを構築せずに、アプリ開発者がフロントエンドの実装に集中できる点が特徴です。

図

モバイルアプリのバックエンドをBaaSで構築する5ステップ

従来、モバイルアプリのバックエンドを構築するには、サーバーの調達・OSやミドルウェアの設定・認証機能の実装・データベースの冗長化設計など、幅広いインフラ知識が必要でした。BaaSはこれらの機能をあらかじめ用意された部品として提供し、開発者は必要な機能を選んで組み合わせる形で利用します。

Google Firebaseは、認証・データベース・ストレージ・サーバーレス関数などを「Build」カテゴリの機能群としてまとめて提供しています*1。Supabaseも同様に、Postgresデータベース・認証・ストレージ・Edge Functions(エッジで実行するサーバーサイド関数)を一体で提供するオープンソースの基盤です*2。AWS Amplifyは、AWSの各種サービスを土台にしたAPI構築・認証・ストレージ機能を、専門的なクラウド知識がなくても扱える形で提供しています*3

法人がアプリ開発を外注する場面では、BaaSを使うかどうかは委託先任せにせず、発注側も判断軸を持つ価値があります。なぜなら、選定したBaaSによって将来の移行のしやすさや運用コストの構造が大きく変わるからです。

認証・DB・ストレージ・関数・プッシュ — BaaS5つの役割

BaaSが提供する機能は多岐にわたりますが、モバイルアプリで中心となるのは次の5領域です。それぞれの役割を理解しておくと、委託先との仕様のすり合わせがしやすくなります。

認証:会員登録・ログインの仕組みを一括提供

認証機能は、メールアドレス・電話番号・SNSアカウントなど複数の方法でのログインを、自前でパスワード管理の仕組みを実装せずに提供します。Firebase Authenticationは「ユーザー認証とサインインをセキュアな統合プラットフォームで簡素化する」機能として位置づけられています*1。パスワードの暗号化保存やセッション管理といった専門知識を要する部分を基盤側に任せられる点が利点です。

データベース:NoSQLとリレーショナルの2系統

BaaSのデータベースには、大きくNoSQL型とリレーショナル型の2系統があります。FirebaseのFirestoreやRealtime DatabaseはNoSQL型で、データをリアルタイムに同期する用途に向いています*1。一方SupabaseはPostgres(リレーショナルデータベース)を採用しており、テーブル同士の関係性を厳密に管理したい業務データとの相性がよいとされています*2。どちらの型が自社のデータ構造に適するかは、企画段階で整理しておく必要があります。

ストレージ:画像・動画などのファイル管理

ストレージ機能は、プロフィール画像や動画といったファイルを保存・配信する役割を担います。Firebase Cloud Storageは「画像、音声、動画などのコンテンツをホストする」機能として提供され*1、Supabase Storageは「Postgresデータベースと統合されたファイル管理」を特徴としています*2。ファイルのアクセス権限をデータベースの権限と連動させられるかどうかは、設計時に確認すべき点です。

サーバーレス関数:業務ロジックの実行基盤

サーバーレス関数(サーバーの管理をせずに処理コードだけを実行できる仕組み)は、決済処理や外部API連携など、クライアント側だけでは完結しない業務ロジックを担います。Firebase Cloud Functionsは「サーバー管理なしでイベント対応のバックエンドコードを実行する」機能です*1。Supabase Edge Functionsは「グローバルに分散したサーバーサイド関数で低遅延を実現する」と説明されています*2

プッシュ配信:アプリ利用を促す通知基盤

プッシュ通知の配信基盤も、BaaSが提供する代表的な機能の一つです。Firebase Cloud Messagingは、AndroidおよびiOSデバイスへの通知配信を担う機能として提供されています*1。セール告知やお知らせの配信をアプリ更新なしで実施できる点は、運用フェーズでの利便性につながります。

Firebase・Supabase・AWS Amplify — 主要BaaSの特徴

代表的なBaaSにはそれぞれ異なる特徴があり、自社の要件によって適したサービスが変わります。ここでは主要3サービスの位置づけを整理します。

サービス データベース 特徴
Firebase Firestore/Realtime Database(NoSQL) Googleが提供。認証・DB・ストレージ・関数・通知を一体提供。
PostgreSQLに接続する「SQL Connect」機能も追加されている*1
Supabase Postgres(リレーショナル) オープンソースとして公開されている*2
Firebaseからの移行ガイドが公式に用意されている*2
AWS Amplify AWSの各種データベースサービスと連携 「クラウドの専門知識を必要としない」設計を掲げる*3
AWSの他サービスをCDKコードで柔軟に追加できる*3

Firebaseは機能の網羅性と実績の豊富さが特徴です。Supabaseはオープンソースであることに加え、Postgresというリレーショナルデータベースを採用している点が、業務データを多く扱うアプリとの親和性を高めています*2。AWS Amplifyは、既に自社でAWSの他サービスを利用している企業にとって、インフラ全体を一つのクラウド事業者に統合しやすいという利点があります*3

どのBaaSを選ぶ場合も、機能名だけで判断せず、自社が想定するデータ量・同時アクセス数・将来の拡張方針に照らして比較する視点が欠かせません。

BaaSと自前バックエンド、どちらを選ぶか

BaaSを使わず自前でバックエンドを構築する選択肢もあります。両者にはそれぞれ向き不向きがあり、単純にどちらが優れているという話ではありません。

BaaSが向くケース:早期リリースと機能の標準化を優先する場合

認証やプッシュ通知のように仕組みが標準化されている機能は、BaaSの既製機能をそのまま使うことで開発期間を圧縮できます。新規事業の検証段階で早期にアプリを市場に出したい場合や、社内に大規模なインフラ運用体制を持たない企業にとって、BaaSは現実的な選択肢になりやすいでしょう。

自前構築が向くケース:独自の業務ロジックやデータ主権要件が強い場合

一方、既存の基幹システムと密接に連携する必要がある場合や、データの保存場所・アクセス制御を細部まで自社で管理したい場合は、自前でバックエンドを構築する選択が適することもあります。BaaSはあらかじめ用意された機能の範囲内での柔軟性にとどまるため、既存の業務フローに合わせて大きくカスタマイズしたい場合には制約になりえます。

両者を併用するハイブリッド構成という選択肢

実務では、BaaSと自前構築のどちらか一方に絞らず、認証やプッシュ通知はBaaSに任せ、基幹データとの連携が必要な部分だけ自前のAPIサーバーを別途用意するハイブリッド構成も選ばれています。AWS Amplifyが「AWSの他サービスをCDKコードで柔軟に追加できる」機能を備えているのは*3、こうした部分的な拡張ニーズへの対応が背景にあるからでしょう。どこまでをBaaSに任せ、どこから自社仕様にするかの線引きは、企画段階で決めておく必要があります。

ベンダーロックイン・コスト・データ主権の注意点

BaaSと自前バックエンドの使い分けのイメージ

BaaSの導入を検討する際、機能面だけでなく運用上のリスクも事前に把握しておく必要があります。特に注意すべき点は次の3つです。

ベンダーロックイン:移行コストを見込んでおく

BaaSは各社が独自のAPIやデータ形式を採用しており、一度構築すると他サービスへの移行に相応の作業が発生します。BaaS間の移行には、認証情報の移行手順やデータベースのスキーマ変換など複数の工程を要するため、移行を前提とした設計をあらかじめ組み込んでおかないと、後から乗り換えたくなった際の負担が大きくなりかねません。Supabaseが「Firebaseからの移行ガイド」を公式に用意している事実は*2、移行需要が一定数存在することの裏返しと言えるでしょう。

コスト構造:無料枠と従量課金の境界を理解する

Firebaseの料金体系は、無料枠が用意されたSparkプランと、従量課金のBlazeプランの2種類に分かれています*4。Sparkプランには例えばCloud Firestoreで1GiBの保存容量、Cloud Functionsで月200万回の呼び出しといった無料枠が設定されていますが*4、アプリの利用者数が増えるとBlazeプランへの移行と従量課金が発生します。無料枠を前提に事業計画を立てると、利用拡大時のコスト増を見誤るおそれがあるため、想定ユーザー数でのコストを事前に試算しておく必要があります。

データ主権:保存場所と契約者情報の扱いを確認する

個人情報や機密性の高いデータを扱うアプリでは、データがどの地域のデータセンターに保存されるか、契約主体はどこかという点も確認が欠かせません。BaaSベンダーごとにリージョン選択の可否や既定の保存地域が異なるため、自社が準拠すべき業種規制や社内規程と照らし合わせ、必要なリージョン設定ができるかを導入前に確認する作業が求められます。

外注時に確認すべき5つの勘所

BaaSを使ったバックエンド構築を外部パートナーに委託する場合、発注側が事前に押さえておきたい確認点を整理します。

要件定義でBaaSと自前構築の切り分けを明文化する

どの機能をBaaSに任せ、どの機能を自社独自のAPIで実装するかを、要件定義書の段階で明文化しておく必要があります。委託先の提案に任せきりにすると、後工程で「想定していた機能がBaaSの標準機能だけでは実現できない」という事態に気づくことがあるためです。

内製で担うにはインフラ・セキュリティ・データベース設計の知識が要る

BaaSを使わずに自前でバックエンドを内製する場合、サーバーインフラの知識・認証まわりのセキュリティ設計・データベースのスキーマ設計という複数分野の専門知識が必要になります。これらを社内に確保できていない状態で内製に踏み切ると、設計の手戻りやセキュリティ面の見落としが生じるリスクが高まります。BaaSを使う場合も、認証ルールやアクセス権限(Security Rules等)の設計判断は専門知識を要する領域であり*1、委託先にどこまでの設計判断を任せるかを事前にすり合わせておくことが望ましいでしょう。

設定ミスによる情報漏えいリスクを契約前に確認する

BaaSのデータベースやストレージは、アクセス権限の設定を誤ると意図しない第三者がデータを読み書きできる状態になりえます。権限設計のレビュー体制を委託先が持っているか、公開前にセキュリティ設定を確認する工程が契約に含まれているかを確認しておく必要があります。

移行・拡張時の追加費用の見積もりを事前に取る

BaaSの無料枠を超えた際の従量課金や、将来的に別サービスへ移行する場合の追加費用について、契約前に委託先から見積もりの考え方を確認しておくと、後からの費用交渉を避けやすくなります。

専門パートナーに依頼した場合との違いを比較する

BaaSを使ったバックエンド構築を専門パートナーに依頼する場合と内製する場合とでは、設計期間・セキュリティレビューの体制・障害発生時の対応スピードに差が生じやすくなります。内製では前述の複数分野の知識を持つ人材確保が課題になりやすい一方、専門パートナーは複数案件でのBaaS構築経験を踏まえた設計判断ができる点が違いとして挙げられます。自社の体制と照らし合わせ、どこまでを任せるべきかを判断する材料にしてください。

まとめ:BaaS構築を成功させる3つの判断軸

本稿では、モバイルアプリのバックエンドをBaaSで構築する進め方を整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、BaaSは認証・データベース・ストレージ・サーバーレス関数・プッシュ配信という5つの機能をまとめて提供する基盤であり、機能ごとの役割を理解したうえで選定する必要があります。第二に、BaaSと自前構築にはそれぞれ向き不向きがあり、両者を併用するハイブリッド構成も現実的な選択肢です。第三に、ベンダーロックイン・コスト構造・データ主権という3つのリスクを外注前に確認し、要件定義の段階で切り分けを明文化しておくことが、後工程の手戻りを防ぐ鍵になります。

LASSICに相談するメリット

LASSICは元請としてアプリ開発の受託・運用保守を担う立場から、BaaSと自前構築の使い分けを含めたバックエンド設計の相談を承ります。認証・データベース・ストレージの権限設計からコスト試算まで、貴社の要件に合わせて支援します。まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

BaaSとPaaS・IaaSはどう違いますか。

IaaS(サーバーやネットワークなどインフラ部分を提供する形態)やPaaS(アプリの実行環境を提供する形態)と比べ、BaaSは認証・データベース・ストレージといったアプリ特有の機能単位まで部品化して提供する点が異なります。開発者はインフラの構築やミドルウェアの設定をほぼ意識せずに機能を利用できます。

小規模なアプリでもBaaSを使う意味はありますか。

意味はあります。小規模なアプリほど自前でインフラを構築する固定費用の負担が相対的に重くなりやすく、BaaSの無料枠や従量課金の仕組みを使えば初期投資を抑えられます。ただし将来の利用者数増加を見込んで、料金プランの上限や移行のしやすさも合わせて確認しておくとよいでしょう*4

複数のBaaSを組み合わせて使うことはできますか。

技術的には認証は特定のBaaS、ストレージは別のクラウドサービスというように組み合わせることも可能です。ただし認証情報とデータベースの権限が別サービスにまたがると、権限設計やデータ整合性の管理が複雑になります。組み合わせる場合は、各サービス間の連携方法を設計段階で明確にしておく必要があります。

BaaSからの移行にはどの程度の作業が発生しますか。

認証情報の移行手順・データベースのスキーマ変換・ストレージファイルの転送など複数の工程が発生します。Supabaseが公式にFirebaseからの移行ガイドを用意していることからも*2、移行には一定の設計・検証作業が伴うと言えるでしょう。移行を見込む場合は、データ形式を特定のBaaSに強く依存させない設計を初期段階から意識しておくと負担を抑えられます。

BaaSのセキュリティ設定は自社で確認すべきですか。

委託先に構築を依頼する場合でも、認証やデータベースのアクセス権限の設定内容は発注側も確認しておくことが望ましいです。Firebaseにはデータベースとストレージを保護する細粒度のルールを設定する仕組みが用意されていますが*1、設定内容が自社の要件に合っているかどうかは、委託先の説明を受けて発注側が判断する必要があります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


モバイルアプリ開発・バックエンド構築のご相談はLASSICへ

元請(プライムベンダー)として、貴社の要件に合わせたBaaS選定からバックエンド設計・開発支援をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

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ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。

  1. *1 出典:Google「Firebase Documentation」https://firebase.google.com/docs/guides
  2. *2 出典:Supabase「Supabase Documentation」https://supabase.com/docs
  3. *3 出典:Amazon Web Services「AWS Amplify」https://aws.amazon.com/amplify/
  4. *4 出典:Google「Firebase Pricing」https://firebase.google.com/pricing


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