LASSIC Media らしくメディア

2026.10.20 らしくコラム

Passboltとは?チームでパスワードを共有する仕組みを解説

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

夜のオフィスで伏せ字が並ぶ一覧の画面を担当者が指し、同僚が自分のノートPCから確かめている

この記事の結論

  • Passboltはチームでパスワードを共有するためのソフトで、無償版は利用者数の上限なく自社のサーバーで使えます。
  • 共有は1件ずつ閲覧・更新・所有者の3段階の権限で決め、暗号化は利用者ごとの鍵で行います。
  • 導入前に、利用者の秘密鍵の保管方法とサーバーの鍵を含むバックアップの手順を決めておくことが大切です。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

サーバーやクラウドの管理者パスワードを、表計算ソフトのファイルやチャットで回している。担当者が異動したあと、誰がどのパスワードを知っているのか分からない——。複数人で同じシステムを管理する現場では、こうした悩みが起こりがちです。Passbolt(パスボルト)は、チームでパスワードを共有するためのオープンソースのパスワード管理ソフトです。

パスワードごとに使える人と権限を決め、暗号化したまま共有できます。ただし万能ではなく、鍵とバックアップの扱いを決めずに入れると、復旧できない事態を招くこともあります。本記事では、情報システムの担当者に向けて、Passboltの共有の仕組み、無償版と有償版の違い、導入と運用の進め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。

Passboltとは

Passboltは、ルクセンブルクのPassbolt社が開発しているチーム向けのパスワード管理ソフトです。*1 個人のパスワード帳ではなく、部署やプロジェクトの単位で「誰がどのパスワードを使えるか」を決めて共有することを主な目的にしています。

  • ソースコードはGitHubで公開され、ライセンスはAGPL-3.0(ソースコードを公開する条件つきで自由に使えるライセンス)です
  • 自社のサーバーに置いて使えるほか、Passbolt社が運用するクラウド版も選べます*2
  • パスワードは利用者ごとの鍵で暗号化され、サーバーには暗号化されたデータだけが置かれます*3
  • 画面はWebブラウザの拡張機能で開き、スマートフォンのアプリも用意されています

パスワード以外に、TOTP(ワンタイムパスワードを作るための情報)や暗号化したメモも同じ画面で扱えます。共有の単位を決めずに導入すると、結局は全員が全部を見られる状態に戻るため、最初に部署と権限の分け方を考えておくことが大切です。

チームで共有する仕組み

Passboltでは、パスワードを1件ずつ「誰に・どの権限で」共有するかを決めます。権限は3段階で、相手は個人でもグループでも同じ考え方です。*4

デスクライトの下でグループ管理者がノートPCを操作し、新しいメンバーがノートPCを抱えて横で待っている

Passboltの共有の3つの権限
権限 できること 向いている相手
閲覧(can read) パスワードを見て使う そのシステムを使うだけの人
更新(can update) パスワードを書き換える・削除する パスワードを変える担当者
所有者(is owner) 上の操作に加えて、共有する相手を決める そのシステムの管理責任者

1件のパスワードには、所有者を1人以上残す決まりがあります。更新の権限でも削除はできるため、書き換えを任せる人は絞っておきます。グループに共有した場合は、グループに人が加わるとその人も使えるようになります。このとき、グループの管理者のブラウザが新しい人の分の暗号化をやり直す仕組みのため、共有している件数が多いグループでは追加に時間がかかります。*4 暗号化はブラウザの拡張機能の中で行われ、サーバーは暗号化されたデータを渡すだけです。*9

無償版と有償版の違い

Passboltには、無償のCommunity Editionと、年額で契約する有償のPro Edition、個別見積もりのEnterprise Editionがあります。*2 共有やグループ、2段階の認証といった基本の機能は無償版にも含まれています。

Passboltの版ごとの違い
版 主な中身 サポート
Community Edition(無償) パスワードの管理と共有、フォルダ、利用者とグループの管理。利用者数の上限なし 利用者どうしのコミュニティ
Pro Edition(有償) 無償版の機能に加え、LDAP(社内のユーザー情報)からの利用者登録、SSO(1回のログインで複数のシステムに入れる仕組み)、アカウントの復旧、操作の記録 メール(翌営業日)
Enterprise Edition(有償) Pro Editionの機能に加え、冗長構成や障害復旧の相談、移行の支援 電話を含む

無償版で足りるかどうかは、利用者が鍵をなくしたときにどう復旧するかと、社内のアカウントとつなぐかどうかで決まることが多くなります。アカウントの復旧(Account Recovery)は有償版の機能だからです。*5 同じく自社のサーバーに置けるパスワード管理にVaultwardenもありますが、成り立ちが異なります。

PassboltとVaultwardenの成り立ちの違い
製品 成り立ち 使う画面
Passbolt Passbolt社が開発するチーム向けのパスワード管理ソフト Passboltのブラウザ拡張機能とアプリ
Vaultwarden Bitwardenの公式アプリとつながるよう作られた別のサーバー Bitwardenの公式アプリ

Vaultwardenの構築についてはVaultwardenで実現する自前パスワード管理で扱っています。*8

導入と運用の進め方

Passboltの導入は、サーバーに入れる作業よりも、鍵とバックアップの扱いを決める作業のほうが大切です。次の4つの段階で進めると、運用に入ってから慌てずに済みます。

Passboltの導入を4つの段階で左から順に並べた流れ図。STEP1 版と置き場所を決める、STEP2 サーバーを用意する、STEP3 利用者と権限を登録する、STEP4 鍵とバックアップを決める。

ステップ2のサーバーは、公式の最小の目安が2コア・メモリ2GB・ディスク20GBです。*7 ステップ4では、2種類の鍵を分けて考えます。1つはサーバーが持つ鍵で、バックアップに含める対象です。もう1つは利用者が1人ずつ持つ秘密鍵で、利用者自身がリカバリーキットとして保存します。無償版のままリカバリーキットをなくすと、そのアカウントには戻れず、ほかの人と共有していないパスワードは失われます。*5

  • データベース(パスワードを暗号化したデータや設定)
  • サーバーの鍵(公開鍵と秘密鍵の組)
  • 設定ファイル
  • TLS証明書(通信を暗号化するための証明書)

上の4つが、公式の手順でバックアップに含めるとされているものです。公式は、バックアップを本番とは別の場所に置くこと、暗号化して保管すること、実際に戻せるかを定期的に試すことも勧めています。*6

外部に頼むときに確認しておきたい点

自社のサーバーにPassboltを置く場合、無償版ならライセンス費用はかかりませんが、構築と保守の手間は自社で持つことになります。構築や運用を外部に頼むときは、次の点を見積もりの前に確かめておきます。

窓際の打ち合わせ机で外部の技術者が外付けディスクを差し出し、担当者が資料をめくっている

  • どの版で始めるか:アカウントの復旧や社内アカウントとの連携が要るなら有償版を前提に組むか
  • 利用者の鍵の扱い:リカバリーキットを誰がどこに保管するよう案内するか。なくしたときの手順を決めてあるか
  • サーバーの鍵とバックアップ:保存先、頻度、暗号化の方法、戻す練習を誰がいつ行うか
  • 移行:いまの台帳や別のツールからの取り込みを誰が行い、取り込む前と後の件数をどう確かめるか
  • 更新:新しい版への更新を誰がいつ行い、更新の前後で何を確かめるか

特に鍵の扱いは、導入時に決めないまま運用に入りやすい点です。担当者の異動や退職のときに、所有者が1人だけのパスワードが残っていないかも確かめておきます。

まとめ:Passboltで確かめておきたい3つの点

Passboltでチームのパスワード共有を始めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、部署やプロジェクトの単位で、誰にどの権限で共有するかを先に決めること。第二に、アカウントの復旧や社内アカウントとの連携が要るかどうかで、無償版と有償版のどちらで始めるかを決めること。第三に、利用者の秘密鍵の保管方法と、サーバーの鍵を含むバックアップの手順を導入の前に決めることです。この3点を踏まえておけば、「入れてはみたが、鍵をなくしたパスワードが戻らない」という事態を避けやすくなります。構築や運用の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSICは2006年の創業以来、システムの運用・保守に特化したプライム(一次請け)のシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。日本ニアショア開発推進機構の認定ベンダーとして、全国のリモート人材による開発・運用の体制を整えています。

Passboltの構築では、Docker ComposeかDebian・Ubuntuのパッケージのどちらで入れるかを保守の体制に合わせて選び、MariaDBのデータベース、OpenPGPのサーバー鍵、TLS証明書の置き場所と権限を設計します。有償版を使う場合は、LDAPやSSOとつなぐ範囲と、アカウントの復旧を承認する管理者の決め方をお客様と詰めます。運用では、データベースとサーバー鍵と設定ファイルを暗号化して本番とは別の場所へ保存する手順を文書にし、検証用のサーバーへ実際に戻す練習で手順の抜けを確かめます。版の更新は検証用のサーバーで先に試してから本番に適用します。

よくある質問

無償版は何人まで使えますか

Community Editionは利用者数の上限がありません。*2 ただし自社のサーバーに置く場合は、サーバーの費用と構築・保守の手間がかかります。サポートは利用者どうしのコミュニティが中心になる点も踏まえて選びます。

ブラウザの拡張機能は入れる必要がありますか

パソコンで使う場合は必要です。ログインの画面や暗号化の処理は拡張機能の中で動く仕組みのためです。*9 拡張機能を入れられない端末がある場合は、導入の前に利用する端末とブラウザを洗い出しておきます。

いまの台帳や別のツールから移せますか

KeePassや主なブラウザ、ほかのパスワード管理ツールから書き出したCSVやKDBX形式のファイルを取り込む機能があります。*10 自社で作った台帳は、グループ・名前・ユーザー名・パスワード・URL・メモの列に整えてから取り込むと進めやすくなります。

パスワード管理の仕組みづくりのご相談

Passboltなどのパスワード管理ソフトの構築から、鍵とバックアップの運用設計、既存の台帳からの移行まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。

2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。

無料相談はこちら

出典

  1. *1 参考:passbolt/passbolt_api(GitHub)README・LICENSE(https://github.com/passbolt/passbolt_api)。出典:チーム向けのオープンソースのパスワード管理ソフトであること、開発元の所在地、ライセンス(AGPL-3.0)、ブラウザ拡張機能・モバイルアプリの提供を参照(2026年10月確認)
  2. *2 参考:Passbolt「Pricing」(https://www.passbolt.com/pricing)。出典:Community Edition・Pro Edition・Enterprise Editionの区分、利用者数の上限、版ごとの機能とサポート、自社運用とクラウド運用の選択を参照(2026年10月確認)
  3. *3 参考:Passbolt「Security」(https://www.passbolt.com/security)。出典:OpenPGPによる暗号化、秘密鍵がサーバーへ平文で送られないこと、パスフレーズと秘密鍵によるログインの記述を参照(2026年10月確認)
  4. *4 参考:Passbolt Documentation「How to share resources」「How to Work with Groups」(https://www.passbolt.com/docs/user/basic-features/browser/share-resource/)。出典:3段階の権限、所有者を1人以上残す決まり、グループへの追加時の再暗号化の記述を参照(2026年10月確認)
  5. *5 参考:Passbolt Documentation「How to Download the Account Recovery Kit」「Account Recovery」(https://www.passbolt.com/docs/user/basic-features/browser/download-recovery-kit/)。出典:リカバリーキットの保管、アカウントの復旧が無効なときに失うもの、アカウントの復旧がPro・Cloudの機能であることを参照(2026年10月確認)
  6. *6 参考:Passbolt Documentation「Backup and Recovery」「Backing up a Docker passbolt installation」(https://www.passbolt.com/docs/hosting/backup/)。出典:バックアップに含める対象(データベース・サーバー鍵・設定ファイル・TLS証明書)と、別の場所への保存・暗号化・戻す練習の推奨を参照(2026年10月確認)
  7. *7 参考:Passbolt Documentation「What are the minimum server requirements?」(https://www.passbolt.com/docs/hosting/requirements/)。出典:推奨する最小の仮想マシンの仕様を参照(2026年10月確認)
  8. *8 参考:dani-garcia/vaultwarden(GitHub)README(https://github.com/dani-garcia/vaultwarden)。出典:Bitwardenの公式アプリとつながる別のサーバー実装であることを参照(2026年10月確認)
  9. *9 参考:Passbolt Documentation「Why a browser extension?」(https://www.passbolt.com/docs/user/faq/why-a-browser-extension/)。出典:ログイン画面と暗号化の処理をブラウザ拡張機能が担い、サーバーは暗号化されたデータを渡す仕組みを参照(2026年10月確認)
  10. *10 参考:Passbolt Documentation「Import」「Keepass (CSV)」(https://www.passbolt.com/docs/user/basic-features/browser/import/)。出典:取り込みに対応するファイル形式と、CSVの列の記述を参照(2026年10月確認)




View