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QAエンジニア不足を外注で補完する進め方と委託先の選び方
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- QAエンジニアはテスト設計・自動化・品質保証プロセス整備まで担う専門職であり、単純なテスト実行を担うテスターとは役割が異なります
- 採用難の背景には専門性の高さ・需要の急拡大・キャリアパスの整備不足という複合要因があり、外注による補完が現実的な選択肢になっています
- 委託先を選ぶ際はQA固有の実績・テスト自動化スキル・ドメイン理解の3軸で評価し、社内に残すべき判断軸と外注できる工程を事前に整理することが大切です
目次
QAエンジニアとは — 役割・テスターとの違い・求められるスキル
QAエンジニアによる外注補完とは、品質保証(Quality Assurance)を担うエンジニアを自社採用だけでは確保しきれない場合に、テスト設計・テスト自動化・品質プロセス整備などの工程を外部の専門パートナーに委ねてプロダクト品質を維持する取り組みです。
QAエンジニアとは、ソフトウェアの品質を保証するプロセス全体を設計・実行・継続的に高める専門職です。テスト計画の策定・テスト設計・テスト自動化スクリプトの実装・CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)パイプラインへの組み込み・品質メトリクスの可視化まで、幅広い工程を担います。
単純なテスト実行・バグ報告を主業務とするテスターとは役割が大きく異なります。QAエンジニアは「欠陥を検出する」だけでなく、「欠陥が生まれにくい開発プロセスを整える」という上流品質の視点を持ちます。要件定義・設計フェーズからレビューに参加し、品質リスクを早期に洗い出す能力が求められます。
また、開発者テスト(ユニットテスト・統合テスト)と品質保証テスト(受け入れテスト・探索的テスト・回帰テスト)を橋渡しする役割も担います。テストフレームワーク(Selenium・Playwright・JUnit・pytest等)やバグ管理ツール(Jira・Redmine等)を使いこなすプログラミングスキルも求められます。
QAエンジニア不足・採用難の背景:需要拡大と経験者希少の交差
QAエンジニアの採用難が深刻化している背景には、IT人材全体の需給ギャップという大きな文脈があります。経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年)では、高位シナリオで2030年に約79万人のIT人材不足が見込まれるとされており*1、QAエンジニアもその不足の一端を担っています。
QA職種特有の採用難要因は3点あります。第一に、QA専門職としてのキャリアパスを整備している企業が少なく、経験者が育ちにくい土壌があります。多くの場合、QA業務はエンジニアの兼務や手動テスターへの委託で対応されてきたため、「QAエンジニア」として経験を積める機会が限られていました。
第二に、技術的な要求水準が急速に高まっています。アジャイル開発・DevOpsの普及によってテストを自動化しCI/CDパイプラインに組み込む重要性が高まり、プログラミングスキルと品質保証の両方を備えた人材が求められるようになっています。
第三に、ソフトウェアサービスの拡大にともなってQAニーズが急増しています。スマートフォンアプリ・Webサービス・IoTデバイスなど対象プロダクトが増え、リリースサイクルが短縮されるほどQAエンジニアの需要は高まります。この需要増に対して経験者の供給が追いつかない状況が続いています。
外注で補完する選択肢:テスト設計委託からQAaaSまで
QAエンジニア不足を外注で補完する選択肢は、委託範囲と契約形態によっていくつかに分類できます。自社の状況・プロジェクトの性質・社内に残したいスキルに応じて選択することが大切です。
| 外注形態 | 委託範囲 | 向いているケース |
|---|---|---|
| テスト設計・実行委託 | テスト計画策定・テスト設計書作成・手動テスト実行・バグ報告 | リリース前のテスト強化や スポット的な品質補完をしたい場合 |
| テスト自動化導入支援 | 自動化フレームワーク選定・スクリプト作成・CI/CD連携設計 | 繰り返しテストを自動化して リグレッション対応を効率化したい場合 |
| QA体制構築の伴走 | QA戦略策定・テスト方針整備・社内チームへのコーチング | QAプロセスを内製で持ちたいが 立ち上げ知見がない場合 |
| QaaS(QA as a Service) | テスト設計〜実行〜報告を月次で継続提供 | 継続的なリリースサイクルに合わせて QAを定常運用したい場合 |
テスト設計・実行委託は最も一般的な形態で、スポット的な品質補完に向いています。既存のQA担当者がいない、または繁忙期だけリソースを追加したい企業に適しています。
テスト自動化導入支援は、テストエンジニアリングのスキルが求められる領域です。Selenium・Playwright・Appium等の自動化フレームワークをプロジェクトに合わせて選定・構築し、CI/CDパイプラインに組み込む工程を委託します。一度構築すれば繰り返しのリグレッションテストを自動で回せるため、長期的な費用対効果が見込めます。
QA体制構築の伴走は、社内にQAの内製能力を育てながら外部の知見を活用する形態です。QA戦略の策定からテスト方針の文書化・社内エンジニアへのコーチングまでを含むため、将来的に外注依存度を下げたい場合に向いています。
QaaS(QA as a Service)は、テスト設計・実行・品質レポートを月次サービスとして継続提供する形態です。リリースサイクルが短いアジャイル開発や、定常的なQAリソースを抱えることが難しいスタートアップ・中小企業に適しています。
内製との使い分け:外注に任せる範囲・社内に残す範囲
QAを外注する際に重要なのは、「外部に任せる工程」と「社内が主体的に担う工程」を事前に明確にすることです。境界があいまいなまま外注を始めると、品質の最終責任の所在がぼやけ、リリース判断が遅れるリスクがあります。
外注に適した工程:テスト実行・自動化構築・バグ管理
テスト設計書の作成・テスト実行・自動化スクリプトの実装・バグ登録と管理・品質レポートの作成といった工程は、明確なインプット(仕様・設計書)があれば外注先に委ねやすい工程です。繰り返し性が高く、標準化されたプロセスに乗りやすいため、専門パートナーが効率よく担える領域です。
探索的テスト(Exploratory Testing:テスト担当者がプロダクトを自由に操作しながら潜在的な欠陥を探索する手法)についても、ドメインへの理解が深い外注先であれば効果的に実施できます。
社内に残すべき工程:品質方針・リリース判断・受け入れ基準
一方、「このリリースを許可するかどうか」の最終判断と「プロダクトとして許容できる品質基準の策定」は社内が担うことが不可欠です。ユーザーストーリーや受け入れ基準(Acceptance Criteria)の定義・品質方針の策定・リリース可否の意思決定は、プロダクトオーナーや開発リードが主体的に関与すべき工程です。
これらを外注先に委ねると、プロダクトの特性を踏まえた品質判断が難しくなります。外注先が出す品質レポートを受け取り、リリース可否を判断するのは社内の担当者でなければなりません。
内製とのハイブリッド運用が現実的
多くのケースでは、社内に1〜2名のQA担当者(品質方針・仕様把握・リリース判断を担う)を置き、テスト実行・自動化構築を外注するハイブリッド体制が現実的です。完全外注は品質の見通しが立てにくく、完全内製は採用難で現実的でないため、この中間点が機能しやすいです。
外注を進める4ステップ:課題整理から品質レポートの受け取りまで
QAエンジニア不足への外注対応を進めるには、場当たり的に委託先を探すのではなく、自社の課題と委託範囲を整理してから進める順序が重要です。以下の4ステップが実務的な進め方として機能します。
ステップ1:不足範囲と優先度の整理
まず「何が不足しているか」を具体化します。テスト実行リソースが足りないのか、テスト自動化のスキルが社内にないのか、QAプロセス自体が存在しないのかによって、適切な外注形態が変わります。リリースサイクル・プロダクトの規模・現状のバグ発生率・テストカバレッジの状況を整理することが出発点です。
不足を放置した場合のリスクも確認しておきましょう。バグが本番環境に漏れ出した場合の影響(サービス停止・ユーザー離脱・対応工数)を具体的に想定すると、外注投資の優先度を判断しやすくなります。
ステップ2:委託範囲と成果物の定義
外注先に委ねる工程・成果物・品質基準を文書化します。「テスト設計書を提出してもらう」「自動化スクリプトをリポジトリに格納してもらう」「週次の品質レポートを受け取る」など、具体的な納品物と受け入れ基準を事前に合意することが重要です。
曖昧な委託は後のトラブルの原因になります。「バグを見つけること」だけを目標にすると、重要度の低いバグばかりが上がってきて本質的な品質向上につながらないケースがあります。
ステップ3:委託先の評価と契約
複数の候補先にRFP(提案依頼書)を送り、QA実績・チーム体制・自動化ツールの知見・対応可能な工程範囲を比較します。過去の類似プロジェクト事例・担当エンジニアのスキルセット・コミュニケーション方法(報告頻度・ツール・言語)も確認します。
内製チームとの連携方法も事前に確認することが大切です。Jiraやバックログ等のバグ管理ツール・GitHubやGitLabのリポジトリアクセス・SlackやTeams等のコミュニケーションツールを共有できるかどうかを確認しておきます。
ステップ4:運用開始・品質モニタリング
委託開始後は週次または隔週で品質レポートを受け取り、バグの傾向・テストカバレッジ・未解決の品質リスクを確認します。外注先任せにするのではなく、社内の担当者が定期的にレビューする体制を設けることが品質維持のポイントです。
定期レビューを通じて外注先の品質判断の基準が自社の方針とずれていないかを確認し、都度フィードバックします。これを怠ると、外注先が出す品質報告が形式的なものになりやすいです。
費用・単価の目安(市場参考値)
QA外注の費用はプロジェクト規模・委託範囲・外注形態によって大きく異なります。以下に示す数値は市場参考値であり一次資料ではないため、具体的な金額は個別の見積もりで確認してください。
スポット型のテスト実行委託
リリース前の手動テスト実行・バグ報告を数週間単位で委託するスポット型では、テスト対象の規模・テストケース数・実行人数によって費用が変わります。テスター1名・数週間規模の小規模な支援であれば数十万円台から対応できるケースがある一方、複数名・複数スプリントにわたる対応では費用が増えます。
テスト自動化構築の場合
テスト自動化フレームワークの選定・スクリプト実装・CI/CD連携設計を含む工程は、技術的な専門性が高いため費用水準が上がります。対象プラットフォーム(Web・iOS・Android・API等)と自動化の対象範囲(スモークテスト・リグレッションテスト等)によって工数が変わります。構築費用に加えて保守・運用の継続費用も見込んでおくことが大切です。
QaaS(月次継続)の場合
月次のQaaS型では、テスト設計・実行・品質レポート作成をパッケージで提供するケースが多く、月次の定額または工数ベースの契約になります。チーム規模・テスト範囲・リリース頻度に応じて月次費用が変わります。スポット型より割高に見える月次費用でも、毎回の見積もりと調整の手間が省けるため継続運用での総コストを抑えやすい面があります。
いずれの形態でも、QAエンジニアとしての専門スキルを持つ担当者が関与するケースでは、単純なテスト実行だけの場合より費用が高くなる傾向があります。これはQAエンジニアの市場価値の高さを反映しています。
委託先の選び方:QA実績・自動化スキル・ドメイン理解の3軸
QAエンジニア不足を外注で補う際に失敗しないためには、委託先の選定が重要なポイントです。QA固有の実績・テスト自動化スキル・対象ドメインへの理解の3軸で評価することをお勧めします。
QA実績軸:テスト設計書と自動化スクリプトの成果物確認
委託先がQA専門のパートナーであるかどうかを確認する際は、過去の成果物(テスト計画書・テスト設計書・バグレポートのサンプル)を提示してもらうことが有効です。テスト設計の品質は「テストケースの件数」より「どのような観点でテストを設計したか」に表れます。同値分割・境界値分析・デシジョンテーブルなどのテスト技法を使っているかどうかは実力を見分ける指標になります。
テスト自動化の経験については、どのフレームワーク(Selenium・Playwright・Appium・JUnit・pytestなど)を実務で使ってきたかを確認します。「導入経験あり」と「実際にCIに組み込んで運用した経験あり」では実力に大きな差があるため、具体的な運用実績を確認することが大切です。
自動化スキル軸:CI/CD連携と保守運用の実績
テスト自動化は構築して終わりではなく、プロダクトの変更に合わせてスクリプトを継続的に保守することが前提です。CI/CDパイプライン(GitHub Actions・GitLab CI・Jenkins等)に組み込んだ自動テストを継続運用した実績があるかどうかは、委託先の実力を判断する重要な軸です。
自動化スクリプトのメンテナンスが滞ると、フレームワークの更新やUI変更のたびにテストが失敗し、自動化の恩恵が損なわれます。委託先が保守まで含めて担えるかどうかを契約前に確認することが大切です。
ドメイン理解軸:対象プロダクトの業種・技術スタックへの適合
QAの有効性はプロダクトへの理解度に比例します。金融・医療・EC・SaaSなど業種によって品質要件(セキュリティ・可用性・コンプライアンス)が異なるため、自社の業種での実績がある委託先は立ち上がりが速い傾向があります。
技術スタック(使用言語・フレームワーク・インフラ構成)への理解も重要です。バックエンドAPIのテストとモバイルアプリのUIテストでは求められるスキルが異なります。対象プロダクトの技術構成に合ったテストエンジニアが担当チームにいるかどうかを確認することが大切です。
体制軸:元請として一貫して対応できるかどうか
QA業務を委託する際に、複数の下請けベンダーを経由する体制では、仕様の伝達ミスや責任の分散が起きやすくなります。元請(プライムベンダー)として一貫してQAを担える委託先であれば、テスト設計から実行・自動化・報告まで一貫した品質保証が期待できます。
LASSICのIT事業部では、元請(プライムベンダー)としての開発・保守の知見をもとに、テスト設計から品質改善まで一貫して対応しています。QAエンジニア不足への対応に関するご相談はIT開発支援サービスページからどうぞ。
まとめ:QAエンジニア不足に対応する3つの判断軸
本稿では、QAエンジニアの役割・テスターとの違い・採用難の背景・外注で補完する選択肢・内製との使い分け・進め方・費用感・委託先の選び方を整理しました。要点を3つにまとめます。
第一に、QAエンジニアはテスト実行だけでなく、テスト設計・自動化・品質プロセス整備・上流品質への関与まで担う専門職です。単純なテスターとは求められるスキルが大きく異なるため、採用難が深刻化しています。経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年)が示す高位シナリオでの約79万人規模の不足というIT人材不足の文脈の中でも、QAエンジニアの希少性は特に高い状況です。
第二に、外注の選択肢はスポットのテスト設計委託からQaaS型の継続契約まで幅広くあります。自社の不足範囲・内製に残すべき工程(品質方針・リリース判断)・外注に任せる工程(テスト実行・自動化構築)を事前に整理した上で、形態を選択することが大切です。
第三に、委託先の評価はQA固有の実績・テスト自動化スキル・対象ドメインへの理解の3軸で行うことをお勧めします。元請(プライムベンダー)として一貫して担える委託先を選ぶことで、テスト設計から品質改善まで一貫した体制を整えられます。
よくある質問
QAエンジニアとテスターはどう違うのですか?
テスターは主に仕様書に沿った確認作業(テスト実行・バグ報告)を担当しますが、QAエンジニアはテスト設計・テスト自動化・品質保証プロセスの整備・上流工程での品質リスク評価まで幅広い役割を担います。プログラミングスキルやCI/CD連携・テストフレームワーク活用等の技術的な能力が求められる点でもテスターとは異なります。
QAエンジニアが不足している主な理由は何ですか?
主な理由は3点あります。第一に、QA専門職としてのキャリアパスが整備されていない企業が多く、経験者が育ちにくい状況があります。第二に、テスト自動化やCI/CD連携など技術的な要求水準が高まり、即戦力として活躍できる人材の希少性が増しています。第三に、アジャイル開発・DevOpsの普及でQAを早期から組み込むニーズが増大し、需要が急速に拡大しています。
QA外注で委託できる範囲と、社内に残すべき範囲はどのように分けますか?
テスト設計・テスト自動化スクリプト作成・実行・バグ管理・品質レポート作成といった工程は外注に適しています。一方、プロダクトの品質方針・リリース判断・ユーザーストーリーや受け入れ基準の策定は、社内のプロダクトオーナーやエンジニアが主体的に担うことが望ましいです。外注先に全判断を委ねると品質の最終責任の所在があいまいになります。
QA外注の費用はどのくらいが目安ですか?
費用はプロジェクト規模・委託範囲・外注形態によって大きく異なります。以下は市場参考値であり一次資料ではないため、個別見積もりで確認してください。スポットのテスト実行支援であれば数十万円台から対応できるケースがあります。テスト設計・自動化構築まで含む場合や月次のQaaS型契約では、範囲と規模に応じた費用になります。
QA外注先を選ぶときに優先して確認すべき点はどこですか?
QA固有の実績(テスト設計書の作成経験・テスト自動化フレームワークの導入・運用経験)・対象ドメイン(Webアプリ・モバイル・API等)への理解・テスト計画から完了報告までを一貫して担う体制の3点を確認することをお勧めします。バグ管理ツール(Jira等)やCI/CDパイプラインとの連携経験があるかどうかも重要な確認項目です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年)— 2030年のIT人材需給差(高位シナリオ)として約79万人規模の不足が見込まれることを示す。URL: https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf