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FileMaker移行・Web化を外注で進める方法
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- FileMakerはレイアウト・リレーションシップ・スクリプトをGUI上で組み合わせる開発基盤で、Clarisはローコード開発プラットフォームと位置付けています。
- FileMaker Proのピアツーピア共有は5クライアントまでに限られ、社外公開や他システム連携にはFileMaker ServerとWebDirect・ODBC/JDBCの構成が前提になります。
- 移行先はスクラッチのWeb/クラウドアプリ、ローコード/ノーコード、パッケージ/SaaSの3方向があり、棚卸しから段階移行までの進め方が外注先選定の材料になります。
目次
FileMakerとは——レイアウト・リレーションシップ・スクリプトで作る業務アプリ
FileMaker(Claris FileMaker)とは、画面(レイアウト)・データ構造(リレーションシップ)・自動化処理(スクリプト)をGUI上で組み合わせて業務アプリを構築できる開発基盤です。Clarisは公式ブログで、独自のスクリプト機能を使ってデータ処理を自動化するビジネスロジックをローコードで設定できるほか、フォーム・リスト・表形式・モバイル・印刷用帳票など多彩なレイアウトを用意できると説明しています*1。
顧客管理・案件管理・在庫管理といった部門内の業務アプリを、情報システム部門を介さず現場の担当者が内製できる点がFileMakerの特徴です。ただしこの手軽さは、利用規模が広がるにつれて別の課題に置き換わっていきます。上図のように、少人数の社内利用から始まったアプリが、共有範囲の拡大・社外からのアクセス・他システムとの連携を求められる段階に入ると、FileMaker特有の制約に直面する場合があります。詳しくは後述します。
リレーションシップは、一方のテーブルの照合フィールドの値がもう一方の照合フィールドの値と正しく比較されることで確立します*2。照合フィールドにはテキスト・数字・日付・時刻・タイムスタンプ・計算式を指定でき、関連テーブル側の照合フィールドには索引設定が可能である必要があります*2。この仕組みにより、複数テーブルを関連付けた業務アプリを比較的短い期間で組み立てられます。
FileMakerの業務アプリが属人化しやすい理由
FileMakerで構築した業務アプリが属人化しやすい背景には、スクリプトと計算式という2つの独自要素が関係します。スクリプトはボタンクリックや画面遷移、データ編集などのトリガイベントの発生時に、特定の処理を自動的に実行する仕組みです*1。計算式はリレーションシップの照合フィールドにも使われる要素で、テーブル間の値の受け渡しや表示条件の判定に組み込まれます*2。
これらはGUI上で設定するため学習の入り口は広い一方、複数のスクリプトや計算式が絡み合った状態は、設計した本人以外には読み解きにくくなりがちです。加えてFileMakerの開発・運用は、情報システム部門ではなく現場の担当者が通常業務と兼務で担うことが多く、仕様書やコメントが十分に残らないまま運用が続くケースも見られます。
この状態で作成者が異動・退職すると、スクリプトや計算式の意図を追跡できる担当者がいなくなり、軽微な仕様変更でも着手までに時間がかかるようになります。バージョンアップへの追随や、他システムとの連携要望への対応が滞る要因にもなりやすい構造です。
移行を検討する典型シナリオ——利用者増・社外公開・他システム連携・コスト
FileMakerからの移行が検討され始める場面には、いくつかの典型的なパターンがあります。
- 利用者が増え、ピアツーピア共有の想定人数を超える規模になった。FileMaker Proのピアツーピア共有は、5台までのFileMaker Pro・FileMaker Goクライアントの組み合わせで共有でき、これを超える利用にはFileMaker ServerやFileMaker Cloudが必要です*3。
- 社外の取引先や現場スタッフから、ブラウザでアクセスしたい要望が出てきた。FileMaker WebDirectを使うと、対応するWebブラウザとネットワークにアクセスできる利用者が、権限に応じてレコードの表示・編集・ソート・検索を行えます*4。ただし利用範囲を広げるにはFileMaker Serverでの構築・運用が前提になります。
- 基幹システムやOSSベースの他システムとデータを連携したい。FileMakerのデータベースファイルをネットワーク上のデータソースとして共有するにはFileMaker Serverが必要で、FileMaker ProやFileMaker Cloudで共有しているファイルはネットワーク上のODBC/JDBCデータソースとしては扱えません*5。
- 年間ライセンス費用の負担を見直したい。Clarisのプラットフォームライセンスは、クラウド展開・オンプレミス展開のいずれもユーザー数に応じた月額表示ながら、契約期間分を年単位で請求する課金体系です*6*7。
これらの事情が重なると、既存のFileMakerアプリを維持したまま個別に対応するより、Web・クラウドアプリケーションへの刷新を検討したほうが、中長期の運用コストや対応範囲を見通しやすくなる場合があります。
FileMaker特有の技術的な壁——共有・ライセンス・外部連携の制約
移行を検討する段階でまず整理しておきたいのが、共有方式ごとに異なる制約です。次の表に主な違いをまとめました。
| 共有・連携方式 | 概要 | 主な制約 |
|---|---|---|
| ピアツーピア共有 | FileMaker Pro同士でファイルを共有する方式 | 5台までのFileMaker Pro・Goクライアントの組み合わせに限られ、接続は暗号化されません*3 |
| FileMaker Server | サーバー経由で集中共有・公開する方式 | サーバー環境の構築・保守が必要で、ユーザー数に応じた年間ライセンス費が発生します*6*7 |
| FileMaker WebDirect | ブラウザからレコードを操作する方式 | 対応ブラウザとネットワークアクセスが前提で、FileMaker Serverでの公開が必要です*4 |
| ODBC・JDBC連携 | 外部システムからSQLでデータを参照する方式 | ネットワーク上のデータソースとして共有するにはFileMaker Serverの構成が前提です*5 |
これらの制約は仕組み上のものであり、設定変更だけでは解消できません。特にODBC・JDBC連携は、FileMaker ProやFileMaker Cloudで共有しているファイルには適用できず、FileMaker Serverでの共有が前提になる点は見落としやすいポイントです*5。社外公開や大規模利用、他システム連携を進めるほど、FileMaker Serverの構築・運用という新たな負担が積み重なっていきます。
移行先の3つの選択肢——スクラッチ開発・ローコード/ノーコード・パッケージ/SaaS
FileMakerからの移行先は、大きく3方向に分けて検討できます。
| 選択肢 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| (A)スクラッチのWeb/クラウド業務アプリ | 業務要件に合わせて個別開発し、既存のスクリプト・計算式のロジックを移植しやすい | 現行FileMakerの業務ロジックが複雑で、部門固有の要件を多く含む場合 |
| (B)ローコード/ノーコード | GUI中心の開発でFileMakerに近い操作感を維持しやすい | 開発スピードを優先し、社内でも一部を保守したい場合 |
| (C)パッケージ/SaaS | 業務領域に特化した既製の機能を利用し、自社開発は最小限にとどめる | 業務プロセスを標準機能側に合わせられる場合 |
どの選択肢を採る場合も、FileMakerのスクリプトや計算式に埋め込まれた業務ロジックを、移行先でどう再現するかが検討の中心になります。(A)は既存ロジックの移植範囲が広くなりやすく、(B)は開発スピードを優先しやすい一方、(C)は自社の業務プロセスを標準機能に合わせる調整が必要になります。3方向を並行で比較検討し、現行アプリの複雑さと社内の保守体制から絞り込むのが実務的な進め方です。
内製と外注の分かれ目——移行の進め方と外注時の勘所
移行の進め方は、次の4段階に分けて整理すると検討しやすくなります。
- 棚卸し:現行のFileMakerアプリで使っているテーブル・レイアウト・スクリプト・計算式を一覧化します。
- 仕様掘り起こし:スクリプトのトリガーと処理内容、計算式の参照関係を担当者から聞き取り、仕様書として書き出します*1*2。
- データ移行:リレーションシップで結ばれた既存データを、移行先のデータ構造に合わせて移します。
- 段階移行:部署単位・機能単位で並行稼働の期間を設け、段階的に切り替えます。
このうち仕様掘り起こしは、作成者本人以外が担うと工数がかさみやすい工程です。スクリプトと計算式はGUI上の各画面に設定が分散しているため、プログラムのコードレビューのように一括で見渡す手段が限られます。棚卸しの段階でこの分散状況を把握しておくことが、後工程の見積もり精度につながります。
外注先を選ぶ際は、棚卸しから段階移行までを一括で依頼できるか、FileMaker特有の要素(スクリプト・計算式・リレーションシップ)を読み解いた実績があるかを確認します。加えて、移行先が(A)〜(C)のどの方向でも対応できる体制か、データ移行時の検証環境を用意できるかも判断材料になります。内製の担当者が通常業務と並行して仕様掘り起こしを進める場合、対応に割ける時間が限られることも想定しておく必要があります。
まとめ:FileMaker移行で押さえる3つの判断軸
本稿ではFileMaker(Claris FileMaker)からのWeb・クラウド移行について、Claris公式情報をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、FileMakerはレイアウト・リレーションシップ・スクリプトをGUI上で組み合わせる開発基盤であり、この自由度の高さが属人化の温床にもなります*1*2。第二に、ピアツーピア共有の5クライアント上限、WebDirectやODBC・JDBC連携の前提条件など、FileMaker特有の制約は仕組み上のものであり、利用規模の拡大にあわせて向き合う必要があります*3*4*5。第三に、移行先はスクラッチのWeb/クラウドアプリ・ローコード/ノーコード・パッケージ/SaaSの3方向があり、棚卸しから段階移行までの進め方と外注先の実績が判断材料になります。
よくある質問
FileMakerからWebアプリへ移行すると、スクリプトや計算式のロジックはどうなりますか。
スクリプトのトリガー条件と処理内容、計算式の参照関係を仕様として書き出し、移行先の言語・仕組みに置き換えて実装します*1*2。仕様掘り起こしの精度が、移行後の動作を大きく左右します。
FileMaker Serverを使わずにブラウザからアクセスすることはできますか。
FileMaker WebDirectでブラウザアクセスを提供するには、FileMaker Serverでの公開が前提になります*4。FileMaker Pro単体のピアツーピア共有は、ブラウザからのアクセスには対応していません*3。
他システムとFileMakerのデータを連携する際の制約は何ですか。
FileMakerのデータベースファイルをODBC・JDBCのデータソースとしてネットワーク上で共有するには、FileMaker Serverの構成が必要です。FileMaker ProやFileMaker Cloudで共有しているファイルは、ネットワーク上のデータソースとしては利用できません*5。
移行先はスクラッチ開発とパッケージ/SaaSのどちらを選ぶべきですか。
現行のFileMakerアプリの業務ロジックが複雑で部門固有の要件を多く含む場合は、スクラッチのWeb/クラウド開発が移植先の選択肢になりやすい傾向があります。業務プロセスを標準機能に合わせられる場合は、パッケージ/SaaSも検討対象になります。両者の中間としてローコード/ノーコードを選ぶ企業もあります。
移行作業を外部に委託する場合、何を確認すればよいですか。
現行アプリの棚卸しからスクリプト・計算式の仕様掘り起こし、データ移行、段階移行までを一括で依頼できるかを確認します。加えてFileMaker特有の要素を読み解いた実績と、検証環境での確認範囲を委託先とすり合わせておくことが大切です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:Claris「Claris FileMaker の基礎知識」(Claris公式ブログ、2024年)(https://www.claris.com/ja/blog/2024/about-filemaker-02)
- *2 出典:Claris「リレーションシップについて」(Claris FileMaker Pro ヘルプ)(https://help.claris.com/ja/pro-help/content/relationships.html)
- *3 出典:Claris「ピアツーピア共有」(Claris FileMaker Pro ヘルプ)(https://help.claris.com/ja/pro-help/content/peer-to-peer-sharing.html)
- *4 出典:Claris「FileMaker WebDirect の使用」(Claris FileMaker Server ヘルプ)(https://help.claris.com/ja/server-help/content/hostsite-fmwd.html)
- *5 出典:Claris「FileMaker Pro での ODBC と JDBC の使用」(Claris FileMaker Pro ヘルプ)(https://help.claris.com/ja/pro-help/content/odbc-jdbc.html)
- *6 出典:Claris「クラウドで展開するための Claris プラットフォームライセンス」(Claris公式サイト)(https://www.claris.com/pricing/)
- *7 出典:Claris「オンプレミスで展開するための Claris プラットフォームライセンス」(Claris公式サイト)(https://www.claris.com/pricing/self-hosted.html)